緑の石に触れると、私はまた意識が遠くなり、気づいたら荒野に1人佇んでいた。……戻って、来れたのか?
手には、先程の石が握られていた。もう鈍い光は放っていない。ただの緑色の石だ。
…やはり〝聖光気〟ができない…。あれは「あの世界」だからだ。急ぎ、こちらでも検証する必要がある。だが、コツは掴んでいる。再習得は前程時間がかからないだろう…。
と、思っていたら、荒野の地面から複数の巨大な蠍が飛び出して来た! しかも強力な念使いだ!!
まだまだ、〝聖光気〟とのギャップで身体が上手く動かないが、何とか動かして鋏攻撃や突進を躱す!
しかし、何匹かの蠍が振り上げた尻尾からレーザーが飛び出してきて、その一部が左脚を掠った。
不覚…! 以前なら
しかも、そこから徐々に石化していく…! くそッ! 石化レーザーか!?
【
私の足が止まったのを確認し、蠍達は一斉に尻尾を振り上げる! 不味い! 全力で防御…! 急所さえ守れば適応出来る! そう思って腕を上げてレーザーを防ごうとした瞬間
何が起きた! 他の乱入者か…!? しかし、今は他に敵の気配は感じない。蠍共も困惑している。そして、
◆
ようやく、全部倒し終わった…。服はもう既に無い。〝聖光気〟なら誤魔化せたが、今は使えないからな…。仕方ない。原始人スタイルに逆戻りだ。蠍の甲殻を切って、繊維で繋いで…と。
何とか形になった。やはり〝聖光気〟の再取得は急務だ。若しくは服装問題の解決か。このスタイルだと、人間性が一気に下がった気がするからな…。
…それにしても、さっきのは何だったんだろう? 急に次元の扉みたいな物が開いた気がするが…。やはり〝この石〟が原因か…?
と、考えて試しにオーラを流してみた所、緑の石がスルスルと形を変えて腕輪状になっていく…! そして、私の右手に引き寄せられるかの様に装着された。また、それと同時に目の前に先程の裂け目が現れた。
…やはり〝コレ〟が原因か…! 何だ、この裂け目は…!?
中を覗き込んで見ると…先程のレーザーが中から飛んできた! 慌てて避けたが、恐らく〝コレ〟は、次元の違う別空間を作り出しているのだろう。
先程のレーザーが
これは「あの世界」からのプレゼントか。だとしたらありがたい。しかもこの腕輪。
あの後、試しに石や蠍の死骸を入れて検証してみたが、どうも私の推察で当たりらしい。良かった。これでハンターライセンスや例の香草も無事に収納出来る。あの闘いの時は流石に別の場所に隠して置いてから行ったが、これからはそうもいかないからな…。私の身体も半分以上消滅することはざらにあるし…。
とりあえず、「あの世界」に感謝しながらこの場を離れる。いつまた怪物共が襲って来るかわかったもんじゃない。落ち着ける場所を探す為にも早めに退散しなければ…。
◆
私はまた1人、荒野を歩く。それにしても、
…私は「あの世界」でおよそ3年程過ごしたが、こちらではどうなんだろう。
とにかく今は、私に出来る事をするしかない。怪物共の襲って来ない、落ち着ける場所を探して〝聖光気〟を再取得しなければ…!
極力避けて通ろうとしたが、何回かは遭遇して闘う羽目になった。
具体的には、「熱」を操るジャガーの様な怪物。そして、「重力」を操る超巨大な巨人だ。
前者は【
もっといい様に加工出来れば、非常に便利な物になるに違いない。帰った時に加工してもらえる様に、残りの本体を収納した。倒した怪物は出来るだけ収納する様にしよう。
そうこうしながらも、安息の地を見つけようとしたが中々見つからない。あれからもう3ヶ月は経ったか。時間感覚も曖昧になるが、太陽の浮き沈みで何とかそうだと把握出来るようなものだ。しかし、ここでは何が起きるか分からない。その太陽ですら欺かれるんじゃないかと疑心暗鬼になる。
実際に、時空間が歪んでいそうな場所もたびたび見かけた。
仕方なく、戦闘後や襲撃の隙間時間に瞑想しようとしたが、中々出来なかった。当たり前か。襲撃はひっきりなしだし、なんなら戦闘中に乱入してくる事もざらにある。そんな中で精神集中など出来よう筈も無い。何とかならないものか。このままでは、強い敵複数に消滅させられるか、強烈な呪いを喰らって死ぬ未来しか見えない。
今まで無事だったのは、強い
◆
岩石が多い険しい森の中を移動していた時、〝それ〟を見つけた。私は普段探知はオーラ光子を使って行っている。これの方が向こうから発見されにくいからだ。いつもの様に慎重に進み、襲撃を躱しながら進んでいると、オーラ光子が
敵か!? と思って更に慎重に探るが、中は天然の岩の空洞になっており、中心には木と泉があった。敵は居なさそうだ。
試しに石を投げると、それもすり抜けた。いくつか考えられる限りの実験をしたが…どうやら罠は無さそうだ。
意を決して岩に触れると…
そのまま岩の中に入ってみると、中の空間は静謐で、かつ神聖な雰囲気が漂う。…こんな所があったんだな…。木のそばまで行き、泉のそばに腰掛ける。
あぁ…。こんな安らぎは久しぶりだ。思えばこれまで闘ってばかりだった…。少しだけ横になろう…。少しだけ…。
……………
ハッ!! どれくらい寝てた!? 空はあれから変わらず、周りも変化は無い。…参ったな。
いつまでもここでのんびりしている訳にはいかないな。泉の水を飲んだら修行を始めるか。澄んでいるし、毒は無さそうだ。流石に無補給は堪えるしな…。
……!!!
何だコレは!? 細胞が異常に活性化していくぞ!? 信じられん…。私には効果が薄いが、これは…
これも〝リターン〟の一つか。こんなのを持ち帰れたら大騒ぎだな。まぁ、〝聖光気〟を再習得したら持ち帰る事も視野に入れよう。
さて、漸く目処がついてきた。早く帰れる様に頑張らねば。
次元の腕輪
・「あの世界」の星が、〝救世主〟の為に用意したプレゼント。人を転移させる次元の力を利用して作成されたもので、所謂〝アイテムボックス〟の性質を持つ。亜空間内は時間が停止しており、生物、無機物、果てはエネルギー問わず収納できる。容量は無限に近く、星程度の容量も収納可能である。
かの星が、〝救世主〟の情報を基に作成したため、〝救世主〟の意図に合わせて次元収納を展開出来、離れても使用者の元に戻ってくる。更に、例えバラバラになっても復元する為、限りなく不壊に近い。
使用出来るのは〝救世主〟のみである。