アンブレイカブルハンター   作:エアロダイナミクス

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遅くなってすみません。展開を考えてて遅くなりました(汗)


51、暗黒大陸再び

 

 

 

 緑の石に触れると、私はまた意識が遠くなり、気づいたら荒野に1人佇んでいた。……戻って、来れたのか?

 

 手には、先程の石が握られていた。もう鈍い光は放っていない。ただの緑色の石だ。

 

 …やはり〝聖光気〟ができない…。あれは「あの世界」だからだ。急ぎ、こちらでも検証する必要がある。だが、コツは掴んでいる。再習得は前程時間がかからないだろう…。

 

 

 と、思っていたら、荒野の地面から複数の巨大な蠍が飛び出して来た! しかも強力な念使いだ!!

 

 ()()()()()()()()()()()()! …嫌な納得の仕方だが、間違いないだろう。

 

 まだまだ、〝聖光気〟とのギャップで身体が上手く動かないが、何とか動かして鋏攻撃や突進を躱す!

 しかし、何匹かの蠍が振り上げた尻尾からレーザーが飛び出してきて、その一部が左脚を掠った。

 

 

 不覚…! 以前なら()()()()は喰らわなかったのに…!

 

 しかも、そこから徐々に石化していく…! くそッ! 石化レーザーか!?

 【完全適合(パーフェクト・コンバート)】! 適応しろ!!

 

 私の足が止まったのを確認し、蠍達は一斉に尻尾を振り上げる! 不味い! 全力で防御…! 急所さえ守れば適応出来る! そう思って腕を上げてレーザーを防ごうとした瞬間

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 何が起きた! 他の乱入者か…!? しかし、今は他に敵の気配は感じない。蠍共も困惑している。そして、()()()()()()! 今がチャンスだ! ようやく慣れてきた動きで奴等に接近し、〝内浸透勁〟を撃ち込む! 殻のある奴にはコレが効果的だ。今のうちにたたみかけるッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ようやく、全部倒し終わった…。服はもう既に無い。〝聖光気〟なら誤魔化せたが、今は使えないからな…。仕方ない。原始人スタイルに逆戻りだ。蠍の甲殻を切って、繊維で繋いで…と。

 

 何とか形になった。やはり〝聖光気〟の再取得は急務だ。若しくは服装問題の解決か。このスタイルだと、人間性が一気に下がった気がするからな…。

 

 

 

 …それにしても、さっきのは何だったんだろう? 急に次元の扉みたいな物が開いた気がするが…。やはり〝この石〟が原因か…?

 

 と、考えて試しにオーラを流してみた所、緑の石がスルスルと形を変えて腕輪状になっていく…! そして、私の右手に引き寄せられるかの様に装着された。また、それと同時に目の前に先程の裂け目が現れた。

 

 …やはり〝コレ〟が原因か…! 何だ、この裂け目は…!?

 

 中を覗き込んで見ると…先程のレーザーが中から飛んできた! 慌てて避けたが、恐らく〝コレ〟は、次元の違う別空間を作り出しているのだろう。

 先程のレーザーが()()()()()()のも、それが原因か。所謂時間の止まる〝アイテムボックス〟の様な物かも知れない。…検証が必要だが。

 

 これは「あの世界」からのプレゼントか。だとしたらありがたい。しかもこの腕輪。()()()()()()()()()()()()()()()()()()、離れたら私を追跡して戻ってくる…。ありがたく頂いておこう。

 

 

 あの後、試しに石や蠍の死骸を入れて検証してみたが、どうも私の推察で当たりらしい。良かった。これでハンターライセンスや例の香草も無事に収納出来る。あの闘いの時は流石に別の場所に隠して置いてから行ったが、これからはそうもいかないからな…。私の身体も半分以上消滅することはざらにあるし…。

 

 とりあえず、「あの世界」に感謝しながらこの場を離れる。いつまた怪物共が襲って来るかわかったもんじゃない。落ち着ける場所を探す為にも早めに退散しなければ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はまた1人、荒野を歩く。それにしても、()()()()()()()()? 以前、あれ程遠くに見えた巨大な木が、今や割と近くに見える。とは言え、それでもまだ遠いが。多分、全く違う場所に送られてきたのだろう。

 …私は「あの世界」でおよそ3年程過ごしたが、こちらではどうなんだろう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()…。浦島太郎は勘弁だ。

 

 とにかく今は、私に出来る事をするしかない。怪物共の襲って来ない、落ち着ける場所を探して〝聖光気〟を再取得しなければ…!

 

 

 ()()では、気候も変化が激しい。灼熱の砂漠地帯かと思ったら、極寒の吹雪に変わったり、かと思えば雨の降り続けるジャングル地帯となったりもした。更に放射線が撒き散らされている様な場所だったり、重力が異なる場所すらあった。変化が余りにも急すぎる。そして、これらは()()()()。おそらく中心には怪物がいるのだろう。こういった莫大な、自然現象すら操る奴らが。

 極力避けて通ろうとしたが、何回かは遭遇して闘う羽目になった。

 

 具体的には、「熱」を操るジャガーの様な怪物。そして、「重力」を操る超巨大な巨人だ。

 前者は【自己貪食(オートファジー)】をフル活用しながら何とか適応して倒したが、後者はキツかった。遭遇していきなり()()()()()()()。そこからあまりの重力に復活も出来ない。巨人は私を潰して死んだと思ったか、そのまま去っていったが、重力は据え置きだった。私は時間をかなりかけて適応し、何とか脱出したが、もう2度と遭遇したくない。ちなみにジャガーの様な怪物は私自身の服になった。蠍の甲殻よりはよっぽど人間に近づいたが、着てみると自身の周囲の熱を適度な温度に調節する機能がある事が分かった。

 もっといい様に加工出来れば、非常に便利な物になるに違いない。帰った時に加工してもらえる様に、残りの本体を収納した。倒した怪物は出来るだけ収納する様にしよう。

 

 

 そうこうしながらも、安息の地を見つけようとしたが中々見つからない。あれからもう3ヶ月は経ったか。時間感覚も曖昧になるが、太陽の浮き沈みで何とかそうだと把握出来るようなものだ。しかし、ここでは何が起きるか分からない。その太陽ですら欺かれるんじゃないかと疑心暗鬼になる。

 実際に、時空間が歪んでいそうな場所もたびたび見かけた。()()()経験はもうごめんなので、見つけ次第迂回して避けて通った。

 仕方なく、戦闘後や襲撃の隙間時間に瞑想しようとしたが、中々出来なかった。当たり前か。襲撃はひっきりなしだし、なんなら戦闘中に乱入してくる事もざらにある。そんな中で精神集中など出来よう筈も無い。何とかならないものか。このままでは、強い敵複数に消滅させられるか、強烈な呪いを喰らって死ぬ未来しか見えない。

 今まで無事だったのは、強い()()()()が無かったからだ。あの「神」の様に。いや、あの巨人はそれに近かったが、物理現象の変化に近かった為に助かったようなものだ。早く落ち着ける場所を見つけねば…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 岩石が多い険しい森の中を移動していた時、〝それ〟を見つけた。私は普段探知はオーラ光子を使って行っている。これの方が向こうから発見されにくいからだ。いつもの様に慎重に進み、襲撃を躱しながら進んでいると、オーラ光子が()()()()()()()

 敵か!? と思って更に慎重に探るが、中は天然の岩の空洞になっており、中心には木と泉があった。敵は居なさそうだ。

 試しに石を投げると、それもすり抜けた。いくつか考えられる限りの実験をしたが…どうやら罠は無さそうだ。

 意を決して岩に触れると…()()()()()。どうやらこれはオーラで出来た幻らしい。私を欺けるとは、相当高位な使い手だ。ただ、中には気配を全く感じない…。

 そのまま岩の中に入ってみると、中の空間は静謐で、かつ神聖な雰囲気が漂う。…こんな所があったんだな…。木のそばまで行き、泉のそばに腰掛ける。

 

 

 あぁ…。こんな安らぎは久しぶりだ。思えばこれまで闘ってばかりだった…。少しだけ横になろう…。少しだけ…。

 

 

 

 

 

 

 

 ……………

 

 

 

 

 

 

 ハッ!! どれくらい寝てた!? 空はあれから変わらず、周りも変化は無い。…参ったな。()()が平和な場所で良かった…。いや、平和だからこそ…か。

 いつまでもここでのんびりしている訳にはいかないな。泉の水を飲んだら修行を始めるか。澄んでいるし、毒は無さそうだ。流石に無補給は堪えるしな…。

 

 

 

 

 ……!!!

 

 

 

 

 

 何だコレは!? 細胞が異常に活性化していくぞ!? 信じられん…。私には効果が薄いが、これは…()()()()()()ありそうだ。しかも、尋常じゃなく強い…。恐らく、肉体を最適な状態まで戻す事ができる様だ。しかも、その効果は限りなく長く保つ…。ある意味不老の水だな。

 これも〝リターン〟の一つか。こんなのを持ち帰れたら大騒ぎだな。まぁ、〝聖光気〟を再習得したら持ち帰る事も視野に入れよう。

 

 

 

 さて、漸く目処がついてきた。早く帰れる様に頑張らねば。




次元の腕輪
・「あの世界」の星が、〝救世主〟の為に用意したプレゼント。人を転移させる次元の力を利用して作成されたもので、所謂〝アイテムボックス〟の性質を持つ。亜空間内は時間が停止しており、生物、無機物、果てはエネルギー問わず収納できる。容量は無限に近く、星程度の容量も収納可能である。
 かの星が、〝救世主〟の情報を基に作成したため、〝救世主〟の意図に合わせて次元収納を展開出来、離れても使用者の元に戻ってくる。更に、例えバラバラになっても復元する為、限りなく不壊に近い。
 使用出来るのは〝救世主〟のみである。

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