あれからどれ程の時間が経ったか…。1年の様にも思えるし、5年の様にも思える。最初は簡単かと思ったが、かなり苦戦している。理由は「この世界」が
暗黒大陸を内包する様な世界だ。それもそうか。しかしそれで諦める訳にはいかない。
それに、時間感覚が狂うのは〝この場所〟のせいでもある。不思議な事に太陽は
だからこそ、修行は捗るが、私も取得した後出られるか不安になった。ここは余りにも
しかし、そうも言ってられない。暗黒大陸に来てからもうかなりの年数が過ぎてしまった。急がなければ。幸い〝聖光気〟の取得も後僅かだ。焦って何とかなるものでも無いが、急がなければ。
◆
本当に苦労した。「この世界」が
漸くだ。漸く帰れる!
最後に挨拶をしておこう。〝ここ〟には、やはり高次の存在が
「出てきてください。お世話になった礼を言いたい」
すると、泉の中心から
「……まさか、久しぶりに探し当てた者が〝星の使徒〟だとは思わなかったわ」
〝それ〟は非常に美しい女性の姿をしていた。薄い羽衣の様な衣装を着ている。
「
「もう
「嬉しいお誘いですが……私には行かなければならない所がありますので」
「……たとえ、それが
…何を言ってるんだろう。私の願いが分かるのか?
「……
「そう……分かったわ。数奇な運命を持つ人。貴方はこれからも苦難の連続でしょう。…でも、それでも、
そう言うと、彼女は私にとても古い鍵を寄越した。…何の金属か見当もつかないが、何らかの念のこもったアイテムなのは間違いない。
「それは、〝ここ〟に繋がる鍵。
「…! 私の名を…」
「これでも『神』、だからね。わかるわよ。私の名は『アレトゥーサ』…。鍵は私を思い出しながら使ってね。ただし、一度きりしか使えないから使い所は良く考えるのよ」
「……何から何までありがとう。最後に少し水を貰っても?」
「構わないわ。それは〝ここ〟に来た人の特権。無限に湧くから気にしないで」
それならば、多少貰っておこう。私は近くにあった岩石を頑丈な木の樽に変化させて水を汲み、蓋をした。
「お世話になりました。さようなら。『アレトゥーサ』」
一礼をし、その場を立ち去ろうとすると、彼女はこう言った。
「さようなら。
◆
さて、急がねば。私は〝聖光気〟で浮上し、上空に飛び出した。あまり上に行くと上空の馬鹿でかいオーラを持つものから襲撃をくらいそうなので少し控えめに、だ。
…やはり見えない…。
周囲は地平線の先まで一面の大地が続く。もしや
しかし、遠目から見ただけでも浮遊大陸や浮島などが多数見えるし、奇想天外な地形、例えばどれぐらいの大きさかわからない巨大な穴も見える…。そしてまた、
……アレはヤバいなんてもんじゃないな。どんだけの大きさだよ。絶対に近寄らないようにしよう。
浮いていれば襲撃もそこまでないだろうし、あったとしても以前とは段違いだ。ヤバいのだけに気をつけて進もう。
◆
途中で、浮遊島の一つに黄金の木の実がなる大きな木を見つけた。その木自体も輝いている。
少し気になって、その実に近づき実を捥ごうと近づいた時、今まで影も形も無かった気配が背後から現れた!
相当デカい…!
気配も、サイズもだ。
振り返って見ると、巨大な3つ頭の多頭竜がこちらを睨みつけている。 迂闊だった! こんなに分かりきった罠に掛かるとは…。周囲はオーラの結界の様な物で閉じ込められてる。逃走不可、か。向こうもヤル気満々だな…。
仕方ない。
全力で相手してやる!!
そこからは激闘に次ぐ激闘だった。先ずはその頭を落とそうとブレード弾で切ってやったが、当然の如く直ぐに再生した。しかも、切った切り口から溢れる体液からミニサイズのトカゲみたいな竜や毒蟲みたいなのが次々と発生して襲ってくる…!
なんて厄介な…! 切った首も似た様なのに変わって一気に多対一になってしまった。本体もチビも「神」クラスの強さだ…! しかもチビは消滅させないと更に増える。よってチマチマと潰していくしかない。
流石にこれだけの大群だと、何回か毒を貰ってしまう。そしてその毒は〝呪い〟クラスの毒だ。私は〝聖光気〟で呪い系は無効化出来るが、肉体的なのはある程度は効果がある。何とか適応したが、どうしたものかと困った。これじゃジリ貧だ。毒や浸透勁など色々試してみて、炎が有効だとやっと気付いた。
そこからは反撃が始まった。オーラに細胞を燃やした炎を纏わせて削るのだ。切り口が燃えると増殖しないらしい。よって、その炎オーラで再生させないように一気に削り、何とか勝利を収めた。
オーラの結界が解け、再び浮遊島の木の前に立った。奴が結界を張ってすら島はボロボロになっていたが、不思議とこの木の周辺だけは全くの無傷だった。金色の果実を手に取る。あんな奴が守ってると言う事は、相当な〝リターン〟だろう。万が一毒でも今の私は適応できるだろうからな。
……!!!
細胞が活性化し、その力が更に引き出される…! これは…
まさか…
急いで2個目も食べたが、効果は無かった。一回切りらしい。まぁ仕方ない。それでも常識外れだ。そして味も凄まじく美味い。幾つか貰っておこう。
木に大量に生っている実を、幾つか残して収穫する。
30個程取れたな…。まぁ苦労した価値はあった。帰ったらマイケルにもコッソリ食わせてやろう。
あれから結構な時間が経った。皆心配しているだろう。もうすぐ…もうすぐだからな。
泉の精霊
・遥か昔に、それこそ「神」の如き力を持った生命体が、星の力を利用して創造した特殊な空間の守護者。人間でいう〝念獣〟に近いが、泉を基本として創造された為、人間の基準とは異なるが「肉体」と「自我」を持つ。「神」の創造物であるため強力な権能を持ち、星の力を供給されている為、不滅に近い。泉を探し当てた者に、褒美として若返りの水を提供する。権能によって邪悪な念を持つ者には見つける事すら出来ない。気に入った者には泉のある場所に住まないかと誘う事もある。
黄金の木の実
・同じく、「神」クラスの生命体の創造物。星のエネルギーを効率良く吸収する為に作られた「神」のおやつである。人間が食べれば、一度だけ肉体が限界を超えて活性化することが出来るが、2回目以後は効果が無い。それは肉体の限界以上まで力を引き出すからである。それでも破格の性能を誇る為、「神」は、人間如きに取られない様にガーディアンをつけた。近づいて実を取ろうとした者には容赦なくガーディアンが襲いかかる為、採取は命懸けである。
追記
主人公に〝呪い〟系は無効なのでそこと実の情報を少し修正しました。