かなり近づいて来た。もう後僅かだ。しかし、そんな時に怪物に見つかってしまった。かなり気を使って移動していた筈だが、奴は
敵は超大型巨人だ。以前のとは別個体のようだが、やはり相当な〝力〟を有している事が分かる。遭遇した時、全力で逃げようとしたが、次の瞬間、
……!?
全力で再生したが、一体何が起きた…!? と、思う間もなく再生した側から巨大な手で殴られまくって四散する事が続いた。
ど、どういう事だ…。動きが
とにかくこのままじゃ、いい様にボコボコになるだけだ。かと言って逃してくれそうも無い。逃げようとした瞬間に回り込まれて攻撃を受ける。私の動きが読めるのか!?
耐えなければ…! 幸い何故か少しずつ【
その後、ひたすら巨人の猛攻をこの身に受け続けた。いくら躱そうとしても、次の瞬間には攻撃が目の前にくる。直前で避けようとしても次の瞬間には修正される…! どうしろってんだ!!
しかも相手は楽しくて仕方がない様な顔をしている。こんなちっぽけな人間を虐めて楽しいか!
とにかく即死しない様に抗うのみ…!
普通の人間基準で言うと100回以上は死んだ時、
…反則じゃないか。私はずっと
私がそうなった事で、奴もびっくりしているようだ。まだまだスローだが、対応できつつある! やってみて分かったが、〝これ〟は一時的に
そうと分かったからには覚悟しろ! 今までの分ボコボコにしてやる!
……しかし、残念な事にボコボコになってるのは未だに私の方だ。コイツ…
サイズ差とオーラ質の関係で浸透勁も効果が薄い。奴のオーラが不思議な事に〝聖光気〟に近いせいだ。それに、急所にも当てさせてくれない。そうなると純粋にサイズ差の問題になる。他のありとあらゆる攻撃も同様に当たらないし、効果が薄い。私と奴の差は歴然としてる。もう自由に動けるのにこれだ。
しかし、その時天啓が走る…!
…
何故そこに思いつかなかったか不思議だが、思いついたら即行動! 顔面に向かって莫大な範囲の毒ブレスを撒き散らした!
咄嗟に顔を逸らしたが、少し残ったものが目に入ったらしい。叫び出し無茶苦茶に暴れ出す! 今だ!!
正に脱兎の如く逃げ出した。私だけでは〝この力〟はほんの少ししか干渉出来ないが充分だ。かなり離れた所で莫大な範囲の《円》が展開されたが、もう範囲外だ。ざまぁみろ。そのまま一直線に大木へ向かう……。
◆
着いた。
デカい。
デカいとしか言いようがない。
巨大な山脈サイズの木の麓から、上は霞んで見えない程に。
さぁ最後だ。後は木に沿って上昇し、そこから方向を確認して帰るだけだ。油断せずに細心の注意を払っていこう……としたら、頭に声が響いた。
────珍しいな。
……勘弁してくれ。もういいだろう? しかし〝声〟はお構い無しに語りかける。
───久しぶりに楽しめそうな相手だ。我に付き合って貰おう───
そう聞こえた瞬間、いきなり私は
────ヒトよ。ヒトの英雄よ。我は世界樹の守護者にして〝天と地を覆うもの〟 〝宿命の闘い〟 〝逃れられぬ死〟。そして〝終末の日に死を運ぶ者〟。ヒトよ。死にたくなくば抗え。我の試練を乗り越えて見せよ────
すると、山肌の影から〝それ〟は現れた。姿形は
勝って帰るのだ。必ず。
◆
奴の攻撃は苛烈を極めた。吐くブレスはただの炎じゃない。何らかの念が込められている。恐らく〝死〟の概念だろう。その証拠に掠っただけでそこが上手く
これまでの経験が私を強くした。奴の突進や尻尾にも同様の概念攻撃が乗っているが、全て躱せる! そして…〝聖光気〟の〝外浸透勁〟! お前みたいな奴には相当効くだろう。どうだ…!
……効果は覿面だ!!
奴も苦しがっている! 行ける! と思ったところで思わず身体が止まる。奴が身も凍る程の〝咆哮〟をして来たからだ。
……この〝咆哮〟にも何か念がのってるな。…〝恐怖〟、か。
すると、奴の莫大なオーラが更に増大した。…今まで《纏》で闘ってたのか…。するとこれが奴の《練》…だな。最早オーラが青白く発光している。
…だが、やる事は変わらない。今までと同じだ。
生きて、帰るのだ。
それから、極大のエネルギーの球に引き込まれかけたり、突如現れる隕石の様な念弾だったりを何とか躱して懐に潜り込み、何度も〝聖光気〟をぶちこんだ。正直これ以外の攻撃が効く気がしない。効果は先程より薄いが、効かない訳じゃない! 例え通りづらくても重ねていけば、ダメージは増える!
本当に、あの巨人から〝時止め〟を適応しておいてよかった…。でなかったら躱せる気がしない。そうこうしている内に奴も「キレた」。
凄まじい〝咆哮〟の後、大地が振動し始める。
辺りから
出て来たのは……
紅く染まった奴の姿だった。
…第二形態か…。さっきよりも更に禍々しいオーラになっている…。奴はマグマから這い上がって来ると、いきなり空中に大量のマグマ弾の様な隕石を精製し、落として来た。さっきと違うのは更に
少しずつ適応し、少しずつ炎に対抗出来る様になると、後は先程と同じだ。何とか躱して打ち込む。たまに避けられない時は周囲のマグマを金属に錬成して盾にしたり、念弾で逸らしたりして闘った。長く険しい闘いの末、奴は漸く動きを止める。
────ヒトよ。よくぞここまで練り上げた。最後の試練だ。耐えてみせよ────
おい、やめろ。
ゴゴゴゴゴゴ…
コイツ……
奴の身体が白く発光する!!! これは…〝聖光気〟!
馬鹿な…!
奴の周囲に白い雷が舞う。〝あれ〟は触れちゃ駄目なやつだ。何とか躱さなければ…。
奴は雷を伴い、私に迫る! 動きも先程とは段違いだ!
奴が雷を操作し、複数の雷が私を襲う。
〝時よ 止まれ!〟
よし、止ま…らない! 馬鹿な!
回避行動を取っていて良かった。半身は
……駄目だ。さっきより強い概念が乗ってる。くそっ! 何とか躱しながら適応するしかない…!
奴は容赦なく次弾を放って来る。私は半身で飛び回りながら回避するが、この雷は一定の予備動作がある。放つ寸前にそれを見切って避けるしか無い!
命を燃やせ! ここが正念場だ!!
右! 右! 左! 前!
躱す! 躱す! 躱す! 躱す!
必死に避ける! 当たったら即消滅だ。そうやって躱す内に、【
適応完了するまで耐え切る!
膨大な数の雷やブレスや攻撃を躱した果てに遂に
漸く、漸く当てられる! しかし、雷を我慢して当ててみたが、やはり同じ〝聖光気〟…! 殆ど効果が無い…! 毒攻撃は多少は通るが、それでも効果が薄い。…出力が足りないせいだ。奴を倒すには
あまりやりたく無かったが仕方ない。覚悟を決める!!
世界よ!
ゴゴゴゴゴゴ…
その瞬間、莫大な量の力が流れ込む! そして…ドンドン意識が曖昧になってゆく…! 〝星の意思〟が主導権を強めて来ているからだ。
まだだ…まだ
「私ハ!!
奴に匹敵するオーラが身体を覆う! だが、意識は
ドゴォッ!!!
初めての有効打! 奴も痛みで咆哮をあげる。
ズギャッ!!!
奴もオーラの籠った腕で反撃してくる。
一撃毎に大気が震え、地面が鳴動し、マグマが吹き出す。私も身体が削れたり、捥がれたりするが、奴の堅殻も剥がれ落ち、血の様な体液が吹き出す。
壮絶な削り合いだ。
もっとだ! もっと寄越せ!! ギリギリになるまで!!!
そして…遂に奴を上回った。私の意識はもうあと僅か。既に闘いはオートに近い。私は、必ず戻って来れる様に最後の意識は手放さない。だが……
ダメダ……。モウ………
その時、脳裏に家族の姿が微かによぎる
…………………
………
……
…ワタシハ、
ここマデ、ここまでキテあきらめテなるモノか!!
私ハ!! 必ず帰るノだ!!!
これで…終いだ!!
バッゴォォォン!!!
私のパンチが奴の頭部に突き刺さり、角が折れ、血が吹き出した。そして…
ズウゥン……
咆哮をあげながら、奴の巨体が倒れ臥した
や、やっと…勝っ…た……
すぐに〝聖光気〟を解除したが、反動が重い…。人間の器ではこの力は
無情にも、私はその場で意識を失った。
巨人
・戦闘民族であり、太古から生息する高次の生命体。いずれも〝聖光気〟とは別方向の〝世界との接続〟を僅かながら行える、神に近い存在。それぞれ固有の念能力を持ち、今回の巨人は〝時止め〟という力を持つ。止めてる間は他の物に干渉出来ないし、止められる時間も3秒弱である。また、止めた時間と同じ時間の溜めが必要になる。基本的に戦闘が大好きで、特に「人の強者」を見つけた場合は喜んで潰しに行く。流石に世界樹に棲む怪物には、ちょっかいはかけるがあまり手を出さない。
黒い龍
・世界樹の麓に生息し、世界樹の根を齧ってエネルギーを得ている。太古から存在する龍。その姿は西洋のドラゴンに近い。世界樹からエネルギーを得ているという事は、そのエネルギーを使う事も可能である。
古くから死の象徴として恐れられ、その力は天地を覆う。その強さから様々な名を持つが、1番有名な名は「ニーズヘッグ」である。念能力としては、「死」を操る事ができ、その攻撃全てに乗せる事が出来る。
また、星と接続して、〝聖光気〟に近い状態になる事も可能。その場合、能力がパワーアップして、「神の雷」を操る事が出来る。喰らった場合は、この世界から〝消滅〟するという、恐るべき力を持つ。
普段は世界樹の根に穴を空けてそこをねぐらにしているが、何か気に食わない事があったり、「人間の英雄」に出会ったりすると、その力を遺憾無く発揮する為に出てくる。龍の中でも非常に強い存在である。
ニーズヘッグさん
「おっ、人間のつよいの来た! ちょっと絡みにいこ」
↓
「…中々やるやん。ちょっと本気出す」
↓
「テンション上がって来た! 全力全開!!」