55、帰還
曰く、「光る人間大の物体が」、「超上空」を「目で追えない程の高速で」、「ヨルビアン大陸の方向へ」向かった。と。
目撃したハンターは即座に調査を開始した。しかし、結局は正体が掴めずに終わった。
後にそれぞれの情報を擦り合わせた所、全てが同じ特徴を示した。事の顛末はハンター協会に報告され、事態を重く見たハンター協会はただちに調査を動けるハンターの多くに依頼した。
なぜなら、
しかし、それでも調査は難航し、遂に打ち切られる事となった。ハンター協会会長は事態を重く見て、ヨルビアン大陸全域に警戒するよう呼びかけたが、それからは特に動きも無く、その後警戒し続ける事で終息を宣言した。同時に何かあった場合には即座に動ける様な態勢を整える様に指示して…
◇
私は確かにヨークシンに着いた筈だ。
だが………
まさか……いつの間にか私は異世界に来ていたのか?
いや、そんな筈は無い。だって
とにかく探そう。微かに覚えている道を頼りに…
◆
ここが…私の家の筈だ…。
思わず、フラフラとそのビル内に入る。中は清潔なフロントで、受付となっていた。
まさか……
私は本当に浦島太郎になってしまったのか……?
そのまま受付に近づくと
「いらっしゃいませ。株式会社『アンダーソン・ファミリア』へようこそ。本日はどういったご用件でしょうか?」
!!?
『
「……すみません。こちらの会社の概要を教えて頂いてもいいですか?」
「は、はい。分かりました…。こちらは各国の輸入物品を取り扱う会社となっております。『アンダーソングループ』直下の会社で、輸入物品取り扱いの先駆者として、ヨークシンを中心に世界規模で活動を行なっています。詳しくはこちらの概要が書いてあるパンフレットをご覧ください」
受付のお姉さんからパンフレットを貰った。後で読むとして…
「ありがとうございます。……最後につかぬ事をお聞きしますが、今日の日付けを教えてください。忘れちゃって…」
「今日は9月2日ですよ。あちらにデジタルで表示されてます」
見ると、本当にデジタルで9月2日となっている。しかし、
「あの、日付の前の数字は?」
「年号ですよ」
私は目の前が真っ暗になった。
数字は
◆
そこからは私もあまり記憶が無い。気がついたら公園のベンチに腰掛けていた。
………あれだけ苦労をして、漸く帰って来れたのに、待っていたのは
……私が何をしたと言うんだ! こんなのって……こんなのって…! あんまりだ!! どうして
瞬時にありとあらゆる手を考えたが……
私は……
◆
どれぐらい「そう」していただろう。頭を抱えながらベンチに座っていたが、
「あの〜。大丈夫ですか?」
顔を上げて発言した者を見る。その人物は
……しかし、
「…なんでもありませんよ。少し悩んでいただけです。ご心配なく」
「もしよろしければ、そのお悩みを聞かせて貰えませんか…?」
両手を前で組み、キラキラした眼で続けてくる。…グイグイ来るな。何故だ? 私は今《纏》すら解除している。更に一般人レベルに見える様に大き過ぎるオーラは自然に
この
とりあえずうまく躱すか…。
「いえ、本当に大丈夫ですよ。ご心配していただきありがとうございます。では、私はこれで」
そう言って立ち去ろうとしたが、
「待ってください! 私はビスケット=クルーガー。
そう言って電話番号の様なものが記載されている名刺を渡して来た。…やたらキラキラしてるな。
「わかりました。その時が有れば連絡しましょう。では」
「待ってください! 最後にお名前だけでも…!」
「カーム。カーム=アンダーソンですよ。
そう言って私はその場から離れた。…まだ視線を感じる。疑われて無ければよいが…。
◇
凄い…! 凄い
あの一瞬の油断無い視線の動き…。どれだけの修羅場を潜って来たのだろう。仮にあたしがあの場で全力で不意打ちを仕掛けたとしても、即対応される筈…。そのぐらいのポテンシャルを感じる。恐らく体術だけなら世界のトップクラスに匹敵する!! どのカテゴリーにも属さない、唯一無二の特徴を既に持っている。それは天からの贈り物。まさに幻と言われる「ブループラネット」!!
念能力という
あの若干違和感を覚えるオーラは、もしかしたらもう
あぁ…なんて素敵! 早く
うふふふふ……。楽しみだわ…。絶対に逃がさないわよ! 覚悟しなさい。カーム=アンダーソン
◇
厄介なのに目をつけられた以上、ここでうかうかしてる訳には行かないな…。正直まだショックから全然立ち直れてない。だが、今は出来る事をやろう。まずは家族の事を確認する。確認した上で私が前に進めるかどうか分からないが。
だが、やるしかない。
私には今「何も無い」。230年も経てば当然だ。唯一私を証明するのは、このハンターライセンスだ。だが、誰も信じないだろう。寧ろ信じた方が不味い。
また
家族と過ごす、「人間」としての安らぎが…。
家族との安らぎが得られなかった以上、せめて、せめて「人間」としては過ごしたい……。
だから、まずは地盤を固めよう。
私の実家はマフィアだった。しかもそこそこ大きな、だ。そして、マイケルがいた以上、潰される事はまずないだろう。「あの会社」がいい証拠だ。もしかしなくてもあれは大規模なフロント企業だろう。
気が進まないが、その辺のチンピラを捕まえてそこから辿って行こう。そうしたらマイケルの子孫にきっと会えるだろう。
今の私には、
と言う訳で、約230年経っていました。
そして、その時代は……。
何と言うご都合主義…!
まだだ……まだ(絶望は)終わらんよ…!
ちなみに、その原因は
①「神」の〝呪い〟
②異世界転移後の時間のズレ
③若返りの泉の空間が通常とは異なる(罠が無いとは言ってない)
でした。