「師匠!! 生きてらっしゃったのですね!」
「うるさいのぅ…もうちっと静かにせんか…。見ての通りじゃ。〝聖光気〟のおかげじゃな」
「良かった…! 本当に良かった…」
「馬鹿もん…。いい歳こいて泣く奴があるか…。だが、待っておったぞ。間に合ったようで何よりじゃ」
「……師匠、
「……〝仙〟は長命じゃ。…非常にな。ましてや〝聖光気〟を身に付けた〝仙〟はな…。だが、
「そんな…やっと…やっと会えたのに!」
「……よいか? 馬鹿弟子。儂は確かに肉体的には死ぬ。じゃが、それは一面を捉えただけの事。儂は世界と真に一つになるのじゃ…。つまり、あまねくこの世に遍在するという事。それが〝仙〟の最期の務めよ…。じゃから、寂しがる事は無い。儂はこれからは
「師匠、私は…私は!……もっと師匠と沢山話をしたかったのに!」
「我が儘言うでない…。大体お主が遅いのがいかんのじゃ。…その様子だと、
「……えぇ。これも師匠の教えのおかげです…大変苦労はしましたが…」
「〝仙〟の奥義がそんなに簡単に出来てたまるか…。しかし、儂の教えが役に立ったなら何よりじゃ…。すまんが見せてくれんかの?」
「分かりました…。では…」
ゴゴゴゴゴゴ…
「………! これは…まさしく〝聖光気〟…! 見事じゃ…。そしてそれを使いこなしておる…」
「……鍛えられましたからね…。暗黒大陸で」
「そうか……。あぁ…これでもう、思い残す事は無いな…」
「待って…待ってください…! もう少しだけ…。そ、そうだ! 私は〝若返りの水〟を持ってます! これを飲んでください!」
「馬鹿弟子よ…儂は充分に生きた。…そして死ぬ。もう思い残す事は無いし、儂の人生は自然に任せたいのじゃ…。それが〝仙〟の生き様でもある…。だから、ここまでじゃ…。最期にお主に教えておく…別れは辛いが…ずっと…
「何処へ…何処へ進めと言うのですか!!」
「最期まで…世話の焼けるのぅ……。それはお主が見つける事じゃ…。新しい出会いもあろう……。再び見つけるが良い……。さすれば道もひらけよう…。歩き出すのじゃ…。お主ならきっと出来る……。儂はずっと…見守っておるからな…」
「……分かりません! だから、師匠、もう少し…!」
「……最期に…お主に会えて…良かったぞ…。さらばじゃ……。そして…
師匠の〝気〟が…拡散してゆく……!
「師匠!? 師匠!! 起きてくださいよ!! 師匠!!!!!」
「……………」
………
◆
……師匠が再び目を開ける事は無かった。師匠は還ったのだ…。師匠の言う通り、世界と真に一つになって……。
私は、泣きながら丁重に師匠を埋葬した。師匠は……
最期に私に伝える為に……!
死は、確かに終わりだ。だが、始まりでもある。そして…父さん、母さん、マイケル…そして師匠…彼等は私の中で確かに〝生きている〟。私は……彼等に顔向けは出来ないが、これ以上彼等を失望させる訳にもいかない。
だから、歩き出さなくては…。
マイケルは道を示してくれた。
師匠は、前へ進む事を教えてくれた。
だから、行かなくちゃ。
それが、師匠の教えてくれた〝生きる〟という事なのだから…。
◆
「カームさん! またお会いしましたね! ……どうかしましたか?」
「あぁ……。ビスケさん。いえ、ちょっとね…」
「……少し向こうで話しませんか?」
「いえ……。いや、そうだな…。ご一緒しましょう」
「やった!…じゃなくて、良かったですわ。ではあちらのレストランにでも入りましょう」
「はは……。お手柔らかに…」
…………
………
……
「親しい方を亡くされたのですね……お可哀想に…」
「えぇ…まぁそうですね。私を導いてくれた師匠だったのですが…」
「それは…ショックも大きいでしょうね…」
「でも、一目でも会えて良かったですよ。私は幸せ者です。師匠も、待っててくれましたから」
「凄い方でしたのね…。その師匠は…」
「私も最後の最後まで叱られっぱなしでしたよ…。でも、おかげで私も前に進む事が出来ます。それも師匠のおかげですよ」
「それは良かったですわね…。カームさん、またこうしてお話ししませんか?」
「いいですよ…と、いいたいところですが、私も多忙でね。中々時間が取れない。そして、
「……分かりましたわ。必ず、ですわよ」
「えぇ…
私は立ち上がり、彼女の分の会計まで済ます。
「では、ビスケさん……
「♡………ハッ! えぇ、また!」
そう告げて、私は彼女のもとを立ち去った。
◇
いい……。これはいいものだわさ……。あたしの中でもベスト10に入る程のシチュエーション…! その名も「小洒落たレストランでの再会の約束」! あぁ…余韻を楽しみたい……。
しかし、不思議な人ね。
まぁ、
うふふふふ……。夢が広がるわ! 楽しみに待ってるからね! カームさん♡
◇
1999年1月6日。その日、ドーレ港に1人の男が辿り着いた。その男は、全身黒づくめのスーツと帽子を着用し、両手にそれぞれ腕輪をしていた。彼の目的は、
そして、今。3人の人物が彼と出会いを果たす。運命の歯車は少しずつ狂いながらも、構わずに動き出そうとしていた…。