アンブレイカブルハンター   作:エアロダイナミクス

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 肉体改造に入るカーム君。貧弱な身体からスタートしてどこまで行けるか。

そして、スクール生活。カーム君はどんな子でしょうね。


6、身体を鍛えよう!

 

 

 

 

 いよいよ、このヒョロガリ君もといカーム君の肉体改造計画に移ろう……と思っていたが、両親からの待ったがかかった。そりゃそうか。ここ1ヶ月病気にかかりっぱなしだったから警戒されて当然だ。仕方ないので屋内でできる強化をバレない様に部屋で行う。並行して念能力の強化、制御も行っていこう。

 まずは、純粋に肉体を鍛えるために《纏》を解除して、腕立て伏せからやってみよう。1!…1………ムリぃ!

 マジか。1回も出来ない…。いくらなんでも弱すぎる。体重軽いのにヤバくない?スプーンより重いの持った事無いし当たり前か。

 仕方ない。ちょっとずつやってこう。いきなり苦行をしても長続きしないからね。続けるコツはちょっとずつを連日やる事だよ。腕立て、腹筋、背筋、スクワットをそれぞれ1セットずつ。出来る回数の限界までやったら終わりにする。一度習慣になってしまえばこっちのものだ。長い目線で【日々是健康(ヘルシーマン)】の修行プランに耐えられる身体づくりしなきゃ。

 

 次に、念修行だ。正直操作系なのに念操作が下手糞ってどうかと思うため、そこを鍛えるとしよう。言い訳させて貰うと、やはりこのヒョロガリには似つかわしくないオーラ量が原因だと思う。どっから来てるんだろうね。このオーラ。もう中堅ハンターぐらいあるんじゃない?正直暴れ馬に乗って宥めながら計算とかしてる感じ。非常に難しい。最初オーラなかなか動かなかったしね。それでもゆっくりと《流》や《凝》が出来る様になってきている。油断して気を抜くとすぐにオーラが増えるせいで制御が出来なくなってくるので、毎日この修行も欠かせない。

 当面はこの肉体改造とオーラ制御に費やすとしよう。当然瞑想もセットで。もはや癖になってしまってるんだよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから約1年経ち、7歳になった。弟のマイケルもつかまり立ちが出来るようになっている。毎日毎日少しずつ、地道に筋トレを続けたおかげで、20回はそれぞれできるようになった。漸く人並みになった…。ヒョロガリカーム君はふつうのカーム君に進化した!

 念使いになったのと胃腸が丈夫になったため、良く食べる様になったんだよ。ちょっとずつの日々の筋トレも効いてるかも知れない。やっと人並みの生活が出来る様になってきた。成長曲線にも遅れながらも乗って来た気がする。

 さて、この1年の様子を見てこの度両親から漸く外出の許可を頂いた。まだまだ時間も僅かだし遠出は出来ないが十分だ。もうほとんど病気に罹らなくなったからなぁ。そう考えると非常に感慨深い。作って良かった【完全適合(パーフェクト・コンバート)】。最近では虫刺されとかも効かなくなった。前世でもこれがあったらなぁとつくづく思う。

 家から出られる様になったから先ずは走り込みだな。ただ、そろそろ学校が始まるから中々時間取れないかもしれない。隙をみて走れる様にしておこう。

 

 念修行はあまり進展がない。と、いうのも、オーラの制御が非常に難しいのだ。ゴンたちは何ヶ月かの修行である程度形にしてたが、やっぱりあれは才能なんだなぁ。現状、オーラ移動、オーラ集中に2、3秒かかっている。これでも大分短くなった。やはりこれも長期スパンで考えなければならない。

 あと、そろそろ系統別修行の方法考えなくちゃ。覚えているものは何かに書き出して、後は自分で考えるしかないね…。具現化系とか特質系の修行ってどうやるんだよ…。

 

 

 そうこうしてるうちに学校が始まった。こちらではエレメンタリースクールか。9月入学らしい。基本的には授業があって、昼メシ有りで帰ってくる。前世とあまり変わらないが、大半がお休みだったので新鮮だ。うちは顔役の家系という事もあり、友人の皆さんはあまり近づいて来ないのが悲しいが、まぁいい。今更ちみっこ達と同じ様に話すのも難しいからな。

 ただ、遊びを通して体力づくりはしたいところだ。幸い、父の舎弟(?)の子息が同じ所にいるため、付き合ってもらおう。本人もなんかやたら構って欲しそうに来るし。

 そんな訳で、お友達のジョセフ=ルチアーノ君(8)と学校終わりには我が家の管理する広大な空き地に集合してエンドレス鬼ごっことかかくれんぼを楽しんだ。もちろん、念は使わない。体力的には互角に近いため、いい訓練になった。

 しばらく放課後はその様に過ごしていたが、クラスメートも少しずつ参加する様になって最終的には10人以上が、ワイワイ遊んでくれるようになった。ちなみに両親は私が外で元気に遊ぶ様子がとても嬉しかったようで、大工を呼んで一画に簡単な木製のアスレチックや遊具を用意してくれた。

 めっちゃいい人やん。これでマフィアかよ。家族サービスをより強化せねば…。おかげ様で空き地は一大テーマパークとして、エレメンタリースクールの皆さんに広く使われる様になった。なんかいいよね、こういうの。前は出来なかった事だったから本当に嬉しいよ…。

 しばらくテーマパーク(仮)は来るもの拒まずだったが、ある時浮浪者がテントを建てだして、住み着き始めた。すぐにチクったら翌日黒服のおにーさんたちが来て、テントを問答無用でブチ壊し始めた挙句、浮浪者を捕まえてどっかに連れてかれた。やっぱりマフィアだった。

 またある時は、上級生の群れが広大な敷地の占領を宣言しだした。本来我々下級生には争う術はないが、丸々占領はないだろ。ウチの敷地だぞ。他の子たち泣いてるし。と、言うことで代表として話をつけに行こうとしたら、先にキレ散らかしたジョセフ君(8)が、飛びかかって行った。うん。やっぱり君もアレな感じなんだね。

 年齢差に勝てるはずも無く、集団でボコられ、投げ捨てられたジョセフ君を見て、流石に私もキレた。

 

 

 

「僕たちに謝ってすぐにここから立ち去るなら許してやる」

 

 

 

 言われた方は暫く呆然としていたが、やがて私の発言だと気付き、爆笑し始めた。何がそんなにおかしい?

 

 

 

「おい、チビ。冗談はその身長だけにしときな。嫌だねっつったらどうすんだ?」

 

 

 

「お前らを泣いて謝るまでボコる」

 

 

 

 チビな私にそこまで言われてムカついたのか、リーダー格のガタイのいい少年(既にタバコとかやってそう)が、手下共に短く「やれ」と命令する。私はといえば友人にジョセフを頼み、離れてもらって、すかさず《練》を発動する。

 

 野生の勘か、何かヤバそうな事に気付いた手下どもは一瞬躊躇してボスの方を振り返るが、ボスは厳しい目で睨んだため、渋々向かって来た。そもそも最初は殴らせてやる予定だったので、黙って突っ立っていたら、代わる代わる殴られ始めた。

 が、当然全くダメージはない。殴った側もゴムタイヤ殴ってる感じじゃないかな?中々倒れない私にイラつき、更に強く殴る蹴るを繰り返してきてボコボコになっていたがそろそろ反撃しよう。加減をミスらない様に慎重にやらないと殺しちゃうよね。とりあえず、手だけうっすいオーラ(ただ覆ってるだけ。絶の一歩手前)で纏い、目の前の奴の腹に振り切った。

 その瞬間相手は1メートルぐらい吹っ飛び、のたうち回って苦しんでいる。良かった。ちょうどこれぐらいか。という事で呆然としてる他の奴も次々しばいていく。なす術もなく蹴散らされる仲間達に焦り出したボスは私の背後から角材で攻撃してきた。オイオイ。それ他のやつなら死ぬよ?私にはノーダメージだけど。ちょっとこんな危ない奴放置出来ないので、念入りにいじめておいた。

 

 

 暫くして、動いてる奴が居なくなったら一人一人に念入りに謝らせて解放した。

 

 

 うん。やりすぎた。

 

 

 友人達ドン引きよ。回復したジョセフ君は「アニキすげぇ!」とか言ってるし。いや、君の方が年上だからね。でも友人達は私が身体を張って守った事に感謝してくれた。カーム君のおかげだって。いい子達や…。気を取り直して沢山遊んだ。身体の心配をされたがノーダメージだったしね。ジョセフには口止めしといた。

 

 

 その日の夜、うちの父が私を書斎に呼び出した。多分例の件の事だよな…。書斎に着いたらすこぶるいい笑顔の父がいて、

 

 

「よくやった。流石私の息子だ。」

 

 

 主語も無く突然褒められた。あーもうこれは全部知ってるな。しらばっくれるのは無理だな。

 

 

「いやいや、父さん。むしろそこは怒るところじゃない?僕は怒られるかと覚悟してたよ」

 

 

「ふむ。身体を張って強い奴らから仲間を守ったお前を何故怒らねばならん。褒められこそすれ、怒りはせんよ。聞けばお前はジョセフ君がやられた相手に立ち向かったそうじゃないか。中々出来ん事だよ」

 

 

 ジョセフー!やっぱり情報源お前かー!!それにしても、うーん、このマフィア脳。無駄かもしれないが、カタギアピールしとこう。

 

「いや、何がなんだか分からなかったよ。たまたま上手くいっただけ。下手すれば皆が危なかった。今思うと、その場は引いた方が賢かったと思うよ」

 

「確かにそうだな。お前の言う通り、苦汁をなめてでも引いた方が良かったかもしれん。後々確実に勝てる様に策を練るとか、助っ人を呼ぶとかな。しかし、その場合仲間の信頼を多少なりとも失う。難しい選択だな。大人でも迷うところだろう。だがお前はやり切った。仲間も失わずにだ。私はそこを評価したい」

 

 

 いや、逃げた場合復讐とかせんけど。仲間ってマフィアのボスじゃないんだからもっとドライな関係でいいのよ?父上は相変わらずニコニコ顔だ。『ゴッドファーザー』のマーロン=ブランドを若くした様な貫禄がある。畜生、絵になるなぁ。なんだかんだ言って私はこの人達が好きなのだ。まぁしょうがない。最後に聞きたいことを聞いて終わるとするか。

 

 

「父さんなら、どうした?」

 

 

「…もちろん、お前さんと同じだよ。勝つにせよ負けるにせよ、ね」

 

 

 ニヤリと笑いながら答えてきた。

 

 

 そうでしょうね。

 

 

 会釈して部屋を出る時、微かに「やはりアイツかな…」とかいう呟きが聞こえた気がしたが、何も考えないようにした。




 カーム君の念能力者としての才能は実はかなりある方です。ゴン達とまではいかなくても、ズシより上。転生とかの関係と、念を知ってることがアドバンテージとなっています。ただ、前も言ったとおり、念の発現に時間がかかったのは理由があります。後々出てくるでしょう。


 ちなみにアンダーソン家のモデルは『ゴッドファーザー』のコルレオーネ家。マーロン・ブランドかっこいい。あ、若いときの役のロバート・デニーロも好きです。でも貫禄あるマーロンさんの方が好み。
 つまりマイケル君のモデルは当然…。


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