60、一次試験(前編)
船に乗ってドーレ港まで着いた。同じ船にも受験者は乗っていたが、ここまで着いたのは
…昔を思い出す。ミテネに行った時だ。あの時は酷いボロ船で、しかも巨大タコに襲われかけたな…。今思うと、あのタコ、暗黒大陸の近海から逃げて来たな? あんな程度だと、あの大魔境じゃものの1分で餌になるしかない。寧ろよく生きて辿り着いたものだ。門の近くから来たのかな?
とにかく、他の受験志望者は全滅したという事だ。これに耐えられない様じゃ、試験は厳しいな。彼等は小船で引き返して行った。来年頑張ってほしい。
私1人になってからは、船の操縦を手伝い、船員を手助けするなどしていたら、船長から「合格!」と言われた。そういえば、試験はすでに始まっていたんだったな。
合格ならありがたい。確か、ナビゲーターが案内してくれるんだったか。
降りたら船長から、街とは別方向の一本杉を目指せと言われた。そうだった。魔獣が案内してくれるんだったな。船長に礼を言い、道なりに進む。目指すは一本杉だ。行こうとしたら、話しかけられた。
「ねぇ、お兄さんもハンター試験を受けるの?」
黒髪で短髪の活発そうな少年だ。
「あなたも同じ方向を目指しているのならば、我々もご一緒していいだろうか?」
同じく、金髪の中性的な少年?が一緒に提案してくる。
「おいおい! こんな怪しそうなのと一緒に行くのか!?」
黒髪のスーツを着た、背の高い青年が反発する。
あぁ……。
「あぁ…。私はカーム、と言う。受験生だ。船の船長からあの一本杉を目指せ、と言われてね」
「良かった! じゃあ一緒に行こう! 俺はゴンって言うんだ!」
「私はクラピカという。しばらくの間よろしく頼む」
「だーっ! 勝手に話進めてんじゃねぇ! 俺は反対だからな!」
「何言ってんのさ、レオリオ。どうせ向かう場所は一緒だよ?」
「
「だからといって、別方向に行くわけでもなし。こうなった以上は一緒に行った方が効率はいいだろう」
「もし騙されたらどうすんだよ! 後、勝手に名前呼ぶんじゃねぇ!」
「大丈夫だよ。この人はそんな人じゃない。それに…
「まぁゴンがそう言ってるんだ。私もそれに従おう」
「〜〜〜!! わーったよ!! 一緒に行くよ! 俺はレオリオだ! よろしくな!!」
「そうか…。では、これからご一緒させてもらうよ。よろしく」
こうして私達は共に行動する事になった。…そう言えばそうだった。最初はこの3人で行動していたな。すっかり思い出した。私は3人とお互いについて簡単に話しながら、道を進んだ。
麓の廃墟のような街で、婆さんから「ドキドキ2択クイズ」があった。先に我々を付けていた奴が出て来て答えて、違う道を行かされたが、これの答えは「沈黙」だ。
レオリオがキレかけたが、クラピカが止め、概ね原作に沿って合格した。……私は思わず「両方助ける」と言いかけたが。
日も暮れ、レオリオがぐずるのを宥めながらも先を急ぐ。もうすぐ一本杉だ。
一本杉の下にある一軒家に着いたら、魔獣に襲撃されていた。まぁ
扉を開けると、準備万端の魔獣が飛び出して来た。クラピカとゴンは女性を抱えて飛び出した魔獣を追いかけた為、私は2人にレオリオと旦那を治療すると伝えた。追いかけてもいいが、ここは彼らの為に任せるべきだろう。全員が認められないといけないしな。
まずはレオリオの腕を拝見……。中々手際がいい。そんな事を思っていたら怒られた。
「ボーっと見てないでお前も手伝え!」
…ごもっとも。
ひとしきり治療を終え、妻を案じる(フリをした)旦那を励まし続けるレオリオだったが、私もそろそろ力を示さないとな。
「さて…。
「お、おい…何言ってんだカーム! この人は…」
「傷が浅い。躊躇い傷もある。
彼がニヤリと笑う。
「……いつから?」
「生憎、最初から。
「お、おい! じゃあゴンとクラピカは大丈夫なのか!?」
「彼等なら心配ない…。
「……っか〜〜ッ! 最初からバレてましたか! いや、これはお恥ずかしい」
「中々の演技でしたよ。普通なら騙されてます」
「慰めにもなりゃしませんよ…」
「と、言うわけで
「レオリオでいーよ…参ったぜ、全く」
その後、無事全員合格を貰い、束の間の空中遊泳の後ザバン市に到着した。定食屋に入り、凶狸狐さんがステーキ定食をじっくり弱火で注文し、別室に案内して貰った。そこからエレベーターで定食を食べながら降りていった。
ステーキ定食は美味しかった。
◆
エレベーターで地下100階迄降りた時、そこには400名程の人々が屯していた。番号札を受け取ったが、私は406番らしい。ゴン達はずんぐりむっくりした男に話しかけられているが、私はある人物を探していた。…
ゴンが一口飲もうとして下剤入りだと見破ったため、企みは不発に終わったが、私は後で美味しく頂こう。
さぁて…そろそろ仕掛けるか。ちょっとゴン達と離れて、僅かに殺気を乗せた《円》を伸ばして……おっ、気づいた。うわっ。満面の笑顔。やっぱり変態だな。普通あんなリアクション取らないぞ。直ぐに歩いて近づいて来た。
ゴン達は遠くから心配そうに見ていたが、心配無いとジェスチャーした。
「キミ……いいね❤︎ ボクに何か用かい?」
「あぁ…。君に用事があってね。ヒソカ君。私はカームという。よろしく」
「これはこれは…ボクも有名になったもんだね♦︎ で、用事って?」
「取り引きをしたい。君の知ってる情報を教えて欲しい」
「……それで、ボクに何の得があるのかな?」
「試験終了後、
「うーん…君の
「では、
私は隠しているオーラを解除し、《纏》を行った。
「!!!? これは! ハハハハハ! 君……
うわっ…食い付き過ぎ…。しかも股間が盛り上がってないか…? 流石に引くわ…。すぐさま《纏》を解除して
「まぁ落ち着け…。私もハンター試験が終わるまでは大人しく受けたい。…他にも用事が有るからな…。だが、軽くなら試験中に相手してもいい。私の用事はハンター試験終了後に話そう。それでいいか?」
「うんうん! それでいいよ❤︎ 愉しみだなぁ♦︎」
「そうそう、私の仲間があそこにいるから手を出したらこの話は無しね」
「お、アレかい? う〜ん…勿体無いケド…でもいいよ♣︎」
「よし。それじゃ。あぁ、仲間が近くにいない時は
「あぁ…あぁ…最高だよ…君は♠︎ タルい試験だと思ったら最高の遊び相手が来てくれたなァ♦︎ お互い頑張ろぅねぇ…❤︎」
何か恍惚の表情でトリップしてるヒソカを置いて、私はゴン達のもとに戻った。彼らには心配されたが、用事があったからとだけ伝えた。
そして……試験開始のベルが鳴った。
◇
ヒソカは退屈していた。大した獲物も居ないこのハンター試験に2度も受験しなければならなくなった事に。
だが、それは仕方がない。前回は自分が
今回も適当に品定めをして、殺人衝動を満たしながら試験官ごっこでもやろう。今回は頼りになる友人も受験しているから何も問題は無い。そう思って絡んできた受験生を切り刻んでいた所…
ヒソカは歓喜した。先程のオーラにあの佇まい。
ヒソカは「彼」の前までたどり着く。平静を装いながらも用件を聞くと、ヒソカの持つ情報に興味があるらしい。ヒソカは少し落胆したが、次のセリフを聞いて再び興奮した。「彼」と闘り合えるらしい。ヒソカが満足出来る様に期待しながらも、実力を見せて、とせがんだら、凄まじい《練》が返って来た。それ程の《練》は見たことが無い。…あの以前から狙っていた
「彼」は別れ際に仲間が居ない時は
彼の頭の中は「カーム」で埋め尽くされた。どうやって