アンブレイカブルハンター【完結】   作:エアロダイナミクス

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61、一次試験(後編)

 

 

 試験開始のベルが鳴る。

 

 

 

 小さな出入り口から出てきたのは、髭の執事風な男だった。彼は参加者405名とし、参加するかどうかの確認をして歩き出した。

 …良かった。受験は認められたか。ハンター試験は再試験出来ない。今回はそこが最大の難関だと言ってもよかったからな…。その内スピードが上がり、マラソンとなった。我々も彼に付いて走る事となる。執事風の男の名はサトツさんと言うらしい。…この人も中々出来るな。恐らくプロの上位に入っているぐらいはある。コミックを読んでる時は分からない発見があって面白い。

 しかし…怠いな。こんなペースで走るのは久しぶりだから仕方ないが、確かかなりの長時間走った筈だ。…ヒソカの気持ちがほんの少しだけわかってしまった。だからといって試験官ごっこなんてやらないが。

 

 ゴンは早速新しい人物と話をしている。銀髪のゴンと同じ歳ぐらいの少年だ。…彼が()()()()()()()()の「キルア」だな。どれ、挨拶しとこう。

 

「やぁ、初めまして。私はカームと言う。ゴン達とご一緒させてもらってる。よろしく」

 

「!!? ……あ、あぁ、オレはキルア…よろしく…」

 

「どうしたの? キルア」

 

「……何でもねー。ゴン、ちょっとペース上げるぞ」

 

「あ、待ってよ! 本当にどうしたのさー!」

 

 

 彼等2人は離れていった。…おかしいな。一般人レベルに擬装していた筈だが。彼の危機センサーに反応したか? …だとしたらまだまだ上手く隠せて無いな…。仕方がない。レオリオがちょっとヤバそうだ。様子を見ながら一緒に行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツ……ゴン達はアイツとずっと一緒に居たのか?」

 

「アイツって…カームの事? ドーレ港からずっと一緒だったよ」

 

「ゴン…お前、アレ見て何とも感じないの?」

 

「いや……多少変わってるし、()()()()ってのは分かるけど…」

 

「アレがお前には〝人間〟に見えるのか!? どう見てもバケモンだぜ!」

 

「いや…流石に失礼だよ…。普通に見えるし。それに、()()()だよ。間違いない」

 

「ゴン、お前…。もっと危機感持った方がいいぞ…。アレはヤバい。オレでさえ見た事ないヤバさだ…。下手すりゃヒソカの何倍もヤバいぞ…」

 

「そんなに!? …でも、そんな風には見えなかったなぁ…」

 

「まぁ、ヒソカと同じであまり近寄らない方がいいと思うけどな」

 

「そう言えばあの人、ヒソカと親しげに話してたような…」

 

「やっぱりヤベー奴じゃねーか! いいか、死にたくなかったら今後はあんまり近寄るなよ!」

 

「う、うん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 80キロから100キロを超えた時点で漸く登り階段に着いた。レオリオが何回か危なかったが、気合いで持ち直したようだ。もう半裸に近いが気合いで何とか走ってる。彼のカバンは私が代わりに持っている。

 クラピカは、そんなレオリオを励ます様に自分のハンターについての動機を話していた。…仲間の緋の眼と幻影旅団の事だ。レオリオもそれに応えていた。……一度クラピカとは話をしなければならないな。

 そう思っていたら、私にも話を向けられた。

 

「カームは何故ハンターを?」

 

「…私は、…〝人間〟として生きたいからだ」

 

「ハァ? 何言ってんだオメー!」

 

「…そうだな。レオリオではないが、私も同感だ。人間として生きるだけならハンター試験に受ける動機が無い」

 

「なら聞くが…〝人間〟とは何だ?」

 

「!? …改めてそう言われると…難しいな」

 

「私も〝それ〟を探している…。私の敬愛する弟は、絶望しかかっていた私に〝希望を持て〟と伝えてくれた。私の尊敬する師匠は言った…〝生きる〟と言う事は〝前に進む事〟だと…。()()()()()、私はハンター試験を受けなければならない。私にとっては、それが、それこそが〝人間として生きる〟と言う事だからだ」

 

「希望を持って…前に進む…」

 

「君の目的や復讐を否定するつもりは毛頭無いよ、クラピカ。()()しないと前に進めない時もあるのは事実だ。……だが、君はもし…その〝目的〟を()()()()()()()()…どうするつもりだ?」

 

「………」

 

「……待っているのは〝絶望〟だ。私は状況も場面も全く違うが、似たような絶望を味わった。()()()()()、希望は必要なのさ。私が〝人間〟として生きる為に。…それが動機だ」

 

「…何だかよく分からんが、大変だったんだな!」

 

「目的を…終えたら、か…」

 

「何。これは人それぞれ。私の戯言だ。聞き流してくれ。…ただ、クラピカの〝目的〟は私の〝希望〟に合致するかもしれない。まだ話せないが、この試験を終えたら話そう。まずは無事に合格する事だ…。そうでないと始まらないからな」

 

「!! 〝奴等〟について何か知ってるのか!?」

 

「それもまた試験が終わってからだ…。()()()()突破出来ない様では話にならないし、私自身話す気も無い。…そうだろう?」

 

「…そう…だな。その通りだ。今は試験に集中しよう」

 

「その調子だ…。レオリオも頑張っているからな」

 

 見ると、凄い勢いで階段を走るレオリオがいた。()()これでいいだろう。まだまだ試験は長い。

 私も頑張らねば。まずはヒソカだな。上手く操縦せねば…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 階段を登り切ったら、見渡す限りの湿原が姿を表した。「ヌメーレ湿原」、通称〝詐欺師の塒〟だ。早速試験官を騙る奴が出てきたり、サトツさん諸共攻撃するヒソカもいたりしたが、まぁ余興だろう。…私の勘ではまず「ここ」で仕掛けて来るな。

 …退屈だったから逆に楽しみになっている。いかんな。自重せねば…。

 

 

 しばらく走っていたが、どんどん霧が深くなる。…懐かしいな。()()()も似たような感じだった。レベルは段違いだが。

 周辺の何名かは霧で方向を見失い、怪物に襲われようとしている。

 

 ……ムカつくな。自分が〝何〟にムカついているのか分からないが、非常にムカついている。〝この場所〟のせいか。「あの時」を思い出す。…無力で1000人を全滅させてしまった「あの時」を。

 

「レオリオ! クラピカ! 私は少し離れる! 君達は前へ進め!」

 

「おっ、おい! 大丈夫か!?」

 

「私なら心配要らん! また必ず合流する!」

 

 そう言ってカバンを返して強引に飛び出した。控えめのオーラダッシュで、イチゴを背中に生やした亀を半分にカチ割り、地面に擬態したカエルの腹を裂いて呑み込まれた者を救出し、嘘を言って人を誘導するカラスを念弾で消滅させた。その他にも危なかった者達を救出した。

 …自分でも自己満足とは分かっている。しかし、()()せずにはいれなかった。助けた形になった者には正しい方向を教えておいた。

 

 …しかし、そんな時に〝奴〟が来た。正確には、レオリオとクラピカの近くにいる集団に、だ。極力バレない様に奴に触れないぐらいで隠した《円》を展開しているから分かる。彼がトランプを投げたのが《円》に触れた! このままだと受験生に刺さるな。…仕方ない。《円》の一部を硬質化させ、トランプを弾く。そして私も現場へ辿り着く。

 

「仲間に手を出したら『あの話』は無しだと言った筈だが?」

 

「…まだ手を出してないからセーフだよ♣︎ それに過保護は良くないなァ♦︎ 成長を妨げちゃうよ♠︎  …それにしても、〝今の〟はどうやったんだい?」

 

「〝手品〟、さ。どうやったか当ててみなよ。君の本分だろう?」

 

「いいねえ…❤︎ じゃ…早速だけど闘ろうか♣︎」

 

「我々も援護する!」

 

 クラピカとレオリオが戦闘態勢に入るが、

 

「心配いらない。ヒソカは〝私〟に用事があるようだ。君達は先に行け!」

 

「だが…」

 

「なぁに、これぐらいは出来ないと〝希望〟に届かないのさ。直ぐに追いつくから大丈夫だ。君達も〝目的〟があるのだろう? いいから行け!」

 

「ッ…! 済まない! 恩に着る! 必ずまた会おう!」

 

「クソッ…! 無事でいろよ! カーム!」

 

 2人は私にそう声を掛けてから立ち去った。周りの受験生も便乗して付いて行った。

 

 

「さて……これで2人きりだ。邪魔は入らない」

 

「あぁ…愉しみだよ♦︎」

 

「あ、それだけどどうする? 『全部』ここでやる? 私としても割と楽しみにしてたから〝それ〟は試験後に回したいんだけど…」

 

「……いきなり腰を折らないで欲しいなぁ♠︎ じゃあ軽く手合わせって事で❤︎」

 

「殺気ムンムンのオーラしてて良く言うよ…。まぁいい。掛かって来い」

 

「……()()()()()()()♣︎」

 

 

 彼は私とクラピカ達との会話中にこっそり(と思っている)オーラを飛ばしてくっつけていたものを引き寄せる。私は素直に彼の策に乗って彼の元へ()()()()()

 

 ズギャッ!!

 

 彼のもとに着くや否や、強烈な蹴りをお見舞いされる。私はしっかりとガードを固め、その勢いで軸足に同時に足払いをしたが、ジャンプして躱された。そのまま踏みつけが来たが、こちらも躱し、足を掴んで放り投げる…が、ゴムで戻って来てパンチをして来たので、軽く()()()、そのまま手首を掴んで地面に叩きつけた…と思ったらブリッジで耐えてる! やるね! 彼は元に戻るその反動で逆に私を投げて来たが、また引っ張ってきた。いい加減鬱陶しいな。だがまぁ()()()()。カウンターをしようと構えていたら、ヒソカの頭に()()()()竿()()()()()()()()()()

 

 ドコッ!

 

 ヒソカも予想外だったらしい。私はそのままヒソカに突っ込んで共に倒れ伏した。

 

 

 …うわっ! コイツ股間が膨らんでる! 気持ち悪っ!

 

 

 慌てて彼から距離を取り、乱入者の方を見ると、案の定ゴンだった。

 

 

「……やるね ボウヤ♣︎ でも、タイミングが悪かったね♦︎」

 

 

 そう言ってトランプを割と強く念を込めて飛ばしたので、私も近くの石に念を込めて飛ばして弾いた。

 

 

「…〝彼〟も私の仲間だよ」

 

「ふ〜ん…まぁいいや。興が削がれちゃった♠︎ また後にしよう。…もうそろそろタイムアップみたいだし♦︎」

 

 すると、ヒソカの腰から着信音が鳴り出す。

 

「ほらやっぱり❤︎ ……OKすぐ行く♦︎」

 

 ヒソカはケータイを切った後、

 

「君は本当に楽しいなぁ♠︎ ()()()()()()()()()()()?」

 

()()、と言ったろう? それに()()()()だ」

 

「❤︎ じゃ、また後で…。また遊ぼうねぇ♣︎」

 

「あぁ…またな」

 

 

 そう言ってヒソカは立ち去った。さて…

 

 

「ゴン……無茶をする。君まで危なかったぞ。でも助かった。ありがとう」

 

「あぁ…うん」

 

「……大丈夫か? とにかく進もう」

 

「…そうだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくお互い無言で走っていた。光子オーラや《円》で探るとこっちで合ってる。足跡などで丸分かりだ。レオリオ、クラピカも同じ様に先を走っているから心配ないだろう。すると、ゴンが話かけて来た。

 

「カームはさ……何でヒソカと闘えるの? 怖くないの?」

 

 ……ふむ。彼の殺気の念に当てられたか。

 

「鍛えたからな」

 

「それでも! …オレは怖かった。でも、ワクワクも同時にした…。〜〜っ! 何て言ったらいいか分かんないけど、とにかく他にも闘える理由が知りたいんだ!」

 

「そうだな…。私には〝目的〟がある。〝希望〟と言ってもいい。その為に必要だからさ。私にとって、怪物や超人と闘うよりも、〝それ〟がなくなってしまう事の方がよっぽど怖い」

 

「それで自分が死んでも?」

 

「……そうさ。寧ろ、()()()()()()()()()でいたい。そんな度し難い〝人間〟なんだよ」

 

「……そっか。何となくは分かるかもしれない。オレもジンを追う目的が無いと、くじら島でのんびり暮らしてただろうし。()()()()()()()()()()()

 

「…そういう事さ。さて…クラピカ達が道を外れ始めたな。騙されたか。ゴン。ちょっと肩に肩車で乗ってくれ。飛ばすぞ」

 

「えっ…? 分かった…これでいい?」

 

「しっかり掴まってろよ」

 

 

 そう言ってかなりのダッシュを始めた。

 

 

 

「〜〜〜〜!!」

 

 

 

 …その後、正しい道を外れていた2人及び受験生達を回収して、正しい方角へと向かった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無事に湿原を超え、二次試験会場に辿り着いた。我々も、何とか無事に間に合ったようだ。いきなり波乱の連続だったが、何とかなったな。今のところは順調だ。着いた先はビスカ森林公園だった。

 

 

 

 

 そして…二次試験が始まる。

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