試験開始のベルが鳴る。
小さな出入り口から出てきたのは、髭の執事風な男だった。彼は参加者405名とし、参加するかどうかの確認をして歩き出した。
…良かった。受験は認められたか。ハンター試験は再試験出来ない。今回はそこが最大の難関だと言ってもよかったからな…。その内スピードが上がり、マラソンとなった。我々も彼に付いて走る事となる。執事風の男の名はサトツさんと言うらしい。…この人も中々出来るな。恐らくプロの上位に入っているぐらいはある。コミックを読んでる時は分からない発見があって面白い。
しかし…怠いな。こんなペースで走るのは久しぶりだから仕方ないが、確かかなりの長時間走った筈だ。…ヒソカの気持ちがほんの少しだけわかってしまった。だからといって試験官ごっこなんてやらないが。
ゴンは早速新しい人物と話をしている。銀髪のゴンと同じ歳ぐらいの少年だ。…彼が
「やぁ、初めまして。私はカームと言う。ゴン達とご一緒させてもらってる。よろしく」
「!!? ……あ、あぁ、オレはキルア…よろしく…」
「どうしたの? キルア」
「……何でもねー。ゴン、ちょっとペース上げるぞ」
「あ、待ってよ! 本当にどうしたのさー!」
彼等2人は離れていった。…おかしいな。一般人レベルに擬装していた筈だが。彼の危機センサーに反応したか? …だとしたらまだまだ上手く隠せて無いな…。仕方がない。レオリオがちょっとヤバそうだ。様子を見ながら一緒に行こう。
◇
「アイツ……ゴン達はアイツとずっと一緒に居たのか?」
「アイツって…カームの事? ドーレ港からずっと一緒だったよ」
「ゴン…お前、アレ見て何とも感じないの?」
「いや……多少変わってるし、
「アレがお前には〝人間〟に見えるのか!? どう見てもバケモンだぜ!」
「いや…流石に失礼だよ…。普通に見えるし。それに、
「ゴン、お前…。もっと危機感持った方がいいぞ…。アレはヤバい。オレでさえ見た事ないヤバさだ…。下手すりゃヒソカの何倍もヤバいぞ…」
「そんなに!? …でも、そんな風には見えなかったなぁ…」
「まぁ、ヒソカと同じであまり近寄らない方がいいと思うけどな」
「そう言えばあの人、ヒソカと親しげに話してたような…」
「やっぱりヤベー奴じゃねーか! いいか、死にたくなかったら今後はあんまり近寄るなよ!」
「う、うん…」
◇
80キロから100キロを超えた時点で漸く登り階段に着いた。レオリオが何回か危なかったが、気合いで持ち直したようだ。もう半裸に近いが気合いで何とか走ってる。彼のカバンは私が代わりに持っている。
クラピカは、そんなレオリオを励ます様に自分のハンターについての動機を話していた。…仲間の緋の眼と幻影旅団の事だ。レオリオもそれに応えていた。……一度クラピカとは話をしなければならないな。
そう思っていたら、私にも話を向けられた。
「カームは何故ハンターを?」
「…私は、…〝人間〟として生きたいからだ」
「ハァ? 何言ってんだオメー!」
「…そうだな。レオリオではないが、私も同感だ。人間として生きるだけならハンター試験に受ける動機が無い」
「なら聞くが…〝人間〟とは何だ?」
「!? …改めてそう言われると…難しいな」
「私も〝それ〟を探している…。私の敬愛する弟は、絶望しかかっていた私に〝希望を持て〟と伝えてくれた。私の尊敬する師匠は言った…〝生きる〟と言う事は〝前に進む事〟だと…。
「希望を持って…前に進む…」
「君の目的や復讐を否定するつもりは毛頭無いよ、クラピカ。
「………」
「……待っているのは〝絶望〟だ。私は状況も場面も全く違うが、似たような絶望を味わった。
「…何だかよく分からんが、大変だったんだな!」
「目的を…終えたら、か…」
「何。これは人それぞれ。私の戯言だ。聞き流してくれ。…ただ、クラピカの〝目的〟は私の〝希望〟に合致するかもしれない。まだ話せないが、この試験を終えたら話そう。まずは無事に合格する事だ…。そうでないと始まらないからな」
「!! 〝奴等〟について何か知ってるのか!?」
「それもまた試験が終わってからだ…。
「…そう…だな。その通りだ。今は試験に集中しよう」
「その調子だ…。レオリオも頑張っているからな」
見ると、凄い勢いで階段を走るレオリオがいた。
私も頑張らねば。まずはヒソカだな。上手く操縦せねば…。
◆
階段を登り切ったら、見渡す限りの湿原が姿を表した。「ヌメーレ湿原」、通称〝詐欺師の塒〟だ。早速試験官を騙る奴が出てきたり、サトツさん諸共攻撃するヒソカもいたりしたが、まぁ余興だろう。…私の勘ではまず「ここ」で仕掛けて来るな。
…退屈だったから逆に楽しみになっている。いかんな。自重せねば…。
しばらく走っていたが、どんどん霧が深くなる。…懐かしいな。
周辺の何名かは霧で方向を見失い、怪物に襲われようとしている。
……ムカつくな。自分が〝何〟にムカついているのか分からないが、非常にムカついている。〝この場所〟のせいか。「あの時」を思い出す。…無力で1000人を全滅させてしまった「あの時」を。
「レオリオ! クラピカ! 私は少し離れる! 君達は前へ進め!」
「おっ、おい! 大丈夫か!?」
「私なら心配要らん! また必ず合流する!」
そう言ってカバンを返して強引に飛び出した。控えめのオーラダッシュで、イチゴを背中に生やした亀を半分にカチ割り、地面に擬態したカエルの腹を裂いて呑み込まれた者を救出し、嘘を言って人を誘導するカラスを念弾で消滅させた。その他にも危なかった者達を救出した。
…自分でも自己満足とは分かっている。しかし、
…しかし、そんな時に〝奴〟が来た。正確には、レオリオとクラピカの近くにいる集団に、だ。極力バレない様に奴に触れないぐらいで隠した《円》を展開しているから分かる。彼がトランプを投げたのが《円》に触れた! このままだと受験生に刺さるな。…仕方ない。《円》の一部を硬質化させ、トランプを弾く。そして私も現場へ辿り着く。
「仲間に手を出したら『あの話』は無しだと言った筈だが?」
「…まだ手を出してないからセーフだよ♣︎ それに過保護は良くないなァ♦︎ 成長を妨げちゃうよ♠︎ …それにしても、〝今の〟はどうやったんだい?」
「〝手品〟、さ。どうやったか当ててみなよ。君の本分だろう?」
「いいねえ…❤︎ じゃ…早速だけど闘ろうか♣︎」
「我々も援護する!」
クラピカとレオリオが戦闘態勢に入るが、
「心配いらない。ヒソカは〝私〟に用事があるようだ。君達は先に行け!」
「だが…」
「なぁに、これぐらいは出来ないと〝希望〟に届かないのさ。直ぐに追いつくから大丈夫だ。君達も〝目的〟があるのだろう? いいから行け!」
「ッ…! 済まない! 恩に着る! 必ずまた会おう!」
「クソッ…! 無事でいろよ! カーム!」
2人は私にそう声を掛けてから立ち去った。周りの受験生も便乗して付いて行った。
「さて……これで2人きりだ。邪魔は入らない」
「あぁ…愉しみだよ♦︎」
「あ、それだけどどうする? 『全部』ここでやる? 私としても割と楽しみにしてたから〝それ〟は試験後に回したいんだけど…」
「……いきなり腰を折らないで欲しいなぁ♠︎ じゃあ軽く手合わせって事で❤︎」
「殺気ムンムンのオーラしてて良く言うよ…。まぁいい。掛かって来い」
「……
彼は私とクラピカ達との会話中にこっそり(と思っている)オーラを飛ばしてくっつけていたものを引き寄せる。私は素直に彼の策に乗って彼の元へ
ズギャッ!!
彼のもとに着くや否や、強烈な蹴りをお見舞いされる。私はしっかりとガードを固め、その勢いで軸足に同時に足払いをしたが、ジャンプして躱された。そのまま踏みつけが来たが、こちらも躱し、足を掴んで放り投げる…が、ゴムで戻って来てパンチをして来たので、軽く
ドコッ!
ヒソカも予想外だったらしい。私はそのままヒソカに突っ込んで共に倒れ伏した。
…うわっ! コイツ股間が膨らんでる! 気持ち悪っ!
慌てて彼から距離を取り、乱入者の方を見ると、案の定ゴンだった。
「……やるね ボウヤ♣︎ でも、タイミングが悪かったね♦︎」
そう言ってトランプを割と強く念を込めて飛ばしたので、私も近くの石に念を込めて飛ばして弾いた。
「…〝彼〟も私の仲間だよ」
「ふ〜ん…まぁいいや。興が削がれちゃった♠︎ また後にしよう。…もうそろそろタイムアップみたいだし♦︎」
すると、ヒソカの腰から着信音が鳴り出す。
「ほらやっぱり❤︎ ……OKすぐ行く♦︎」
ヒソカはケータイを切った後、
「君は本当に楽しいなぁ♠︎
「
「❤︎ じゃ、また後で…。また遊ぼうねぇ♣︎」
「あぁ…またな」
そう言ってヒソカは立ち去った。さて…
「ゴン……無茶をする。君まで危なかったぞ。でも助かった。ありがとう」
「あぁ…うん」
「……大丈夫か? とにかく進もう」
「…そうだね」
◆
しばらくお互い無言で走っていた。光子オーラや《円》で探るとこっちで合ってる。足跡などで丸分かりだ。レオリオ、クラピカも同じ様に先を走っているから心配ないだろう。すると、ゴンが話かけて来た。
「カームはさ……何でヒソカと闘えるの? 怖くないの?」
……ふむ。彼の殺気の念に当てられたか。
「鍛えたからな」
「それでも! …オレは怖かった。でも、ワクワクも同時にした…。〜〜っ! 何て言ったらいいか分かんないけど、とにかく他にも闘える理由が知りたいんだ!」
「そうだな…。私には〝目的〟がある。〝希望〟と言ってもいい。その為に必要だからさ。私にとって、怪物や超人と闘うよりも、〝それ〟がなくなってしまう事の方がよっぽど怖い」
「それで自分が死んでも?」
「……そうさ。寧ろ、
「……そっか。何となくは分かるかもしれない。オレもジンを追う目的が無いと、くじら島でのんびり暮らしてただろうし。
「…そういう事さ。さて…クラピカ達が道を外れ始めたな。騙されたか。ゴン。ちょっと肩に肩車で乗ってくれ。飛ばすぞ」
「えっ…? 分かった…これでいい?」
「しっかり掴まってろよ」
そう言ってかなりのダッシュを始めた。
「〜〜〜〜!!」
…その後、正しい道を外れていた2人及び受験生達を回収して、正しい方角へと向かった。
◆
無事に湿原を超え、二次試験会場に辿り着いた。我々も、何とか無事に間に合ったようだ。いきなり波乱の連続だったが、何とかなったな。今のところは順調だ。着いた先はビスカ森林公園だった。
そして…二次試験が始まる。