アンブレイカブルハンター   作:エアロダイナミクス

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難産及び仕事で遅くなってしまいました…すみません。




63、三次試験

 

 飛行船から降ろされた場所は、円形の高い広場だった。しかもかなり高所だ。〝ここ〟は「トリックタワー」だな。懐かしい。最近は良く前世の記憶が戻って来るようになった。まだまだ先の細かい部分や日付等は記憶が薄い所があるが、それは仕方ない。大まかな流れがわかるだけでもかなりのアドバンテージだと思おう。

 さて、合格条件は72時間で下に降りて来る事。パッと見える範囲には何も無いが、床に仕掛けが施されている。そこから降りていくわけだ。私ならそんな事しなくても飛び降りる事は可能だが、()()をやってしまうと高確率で早く着いた変態に絡まれるだろう。よって、ここは正攻法で行こう。

 そう思っていたら、86番の男が壁面のとっかかりを伝って降り始めた。クライマーか。暫くは順調だったが、彼方から怪鳥が飛んできて狙われ始めた。

 …懐かしいな。私も経験がある。両手両足が塞がる為、オーラで対応せざるを得なかったし、時には奴等を足場にしながら殺して回るしか無かった。彼には無理だろう。監視も強まってるし、あまり念は使えないから仕方ない。隠した念弾を掠らせて追い払い、次元収納からこっそり長いロープを出して彼を引き上げた。次元の扉は服の中で展開している為バレないだろう。

 助けた彼はしきりに感謝していたが、これも私の自己満足だ。正攻法で脱出出来る事を祈ろう。

 

 その後、人数が減り始め、半分近くになった頃、漸くキルアやゴン達、クラピカやレオリオ達も気付いてきた。そして…()()()()()()()()()()を発見した。私を含む全員が入れる数だ。お互いに健闘を祈りながらも、そこから下へと降りた。

 

 

 …しかし、全員同じ部屋で合流した。…そうだったな。ここは○×の多数決で進む場所だ。キルアは私がいる事で若干嫌そうだったが、我慢して欲しい。揉める事もあまりないだろうからな。

 全員で腕輪をつけると扉が出現した。私は腕輪を左手の元からある腕輪の若干上に装着した。

 扉を開ける時から始まって、右左の選択まで聞かれた時、私はかのブリオンの都市の事を思い出した。…あの時は確か右を選択したな。レオリオとゴンは左を選択したようだ。理由を聞かれたが、その時にクラピカが解説してくれた。左を選びやすいからあえて右だそうだ。…そうか! この場面だったな! あの時は君の知識を覚えていて良かったよ…ありがとう…! 私は心の中で彼に感謝した。

 

 

 進んだ先は闘技場の様な場所だった。厳ついハゲ頭に傷のある男が解説してくれた。3勝したら我々の勝ちだ。勝負を受けるかの採決後、最初はあのハゲ頭が1番手と言った。

 他の奴等より少し危険だな。私が行くか。

 

 

 闘技場まで橋が伸びてそこを渡ると、ハゲ頭がデスマッチを要求してきた。望むところだ。「まいった」を言わせる方向で行こう。

 

 

 

 

 

 

「……あ〜あ。死んだな、アイツ」

 

「……ま、まぁ、あの人はそこまでしないと思うよ…。多分…」

 

「……やはり〝彼〟はそんなに強いのか? ヒソカと渡り合って無事だったから何となくは分かるが…」

 

「うん…。オレはちょっと見たけど、動きの次元が違ったよ。相手の人もかなり強そうだけど、レベルが違う感じがする」

 

「本当にそうならヤバい強さだな…。仲間で良かったぜ」

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、勝負!!!」

 

 

 彼は体勢を低くして突っ込んで来た。恐らく元軍人かな。戦闘訓練は受けているようだ。だが、まだまだ甘いな。狙いがバレバレだ。喉を潰してこちらを喋れなくした後、拷問でもするつもりかな? 

 中途半端にダメージを与えても「まいった」は言わないだろう。なので、オーラで片をつける。

 彼がマウント体勢を取りに突っ込んで来た所を、すれ違い様にカウンターを入れる。最小の力で関節部分に力を加えて「外す」。彼がすれ違い終わった時には()()()()()()()は動かなくなった。

 

「!!?」

 

「さて…これで君は()()()()。…どうする?」

 

「くそっ!! オレは言わないぞ!」

 

「…そう言うと思った。では()()()()()

 

 

 ズズ……

 

 

 私はオーラにほんの少し殺気を混ぜて彼に伸ばした。

 

 

「ひっ!!!!」

 

 

「さぁ………()()()()?」

 

 

「わ、わかった!! オ、オレの負けだ!!!」

 

 

「よし。いいだろう」

 

 

 私は出したオーラを解除した。

 

 

 

 

 

「……なんだ!? 何が起きた!?」

 

「〝彼〟から一瞬凄い気配を感じたぞ!」

 

「キルア! あれは一体…って! 端っこに貼り付いて何やってるの!?」

 

 

 

 

 

「やはり念能力者…! しかもかなり熟練の!」

 

「〝アレ〟は強いわね…。確かにあたし達でも難しいかも…」

 

「でも、オレ達を超えるかっていうと──って、会長! どうしたんですか!?」

 

「……素晴らしい…。久しぶりに血が沸くぞい…! 久しくあれ程の者は現れんかったからのぅ…。お主らも先程のテープを後で見直すといい…。()()()()()が見えるぞ」

 

「…と言うと?」

 

「どうやっとるかは知らんが、奴は余剰分のオーラを()()()()()()()()おる…。もし〝それ〟が全部見えたら…どうなる…?」

 

「!!?」

 

()()()()が出来るんですか!?」

 

「分からん…。本当にそうかも分からん。…だが、()()()

 

「馬鹿な……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの〜…。そんな事より、何故みなさん〝ここ〟に集まってるんです? やりづらいんですけど…。しかもそれ、私のお菓子…」

 

 

 三次試験官リッポーの部屋は、会長及びそれまでの試験官の駄弁り場と化していた。

 

 

 

 

 

 

 

「よっしゃ! これで一勝だな!!」

 

 私が彼の関節を全て()()()()()戻ると、レオリオやゴン、クラピカが祝福してくれた。キルアは顔色が悪そうだ。

 

「……アンタが改めてヤバい奴だと再認識したよ」

 

「…まぁ無理はないが、これもれっきとした〝技術〟だ。君達にもいずれ分かるだろう」

 

「ねぇねぇ、〝アレ〟、オレ達にも出来るの!?」

 

「あぁ。時間をかける必要があるが不可能じゃない。人間なら誰でも可能性は持っている。機会が有れば教えてもいいが…まずは試験に集中しよう」

 

「あ、そっか…。そうだね…」

 

「向こうは揉めてるな。まぁ1番手があれじゃそうなるか」

 

「おっ…やっと次が出てきたぞ。誰が行く?」

 

 

 次の男は、どちらかと言えばヒョロガリだ。頭脳派かな?

 

「オレが行く!」

 

 そう言ってゴンが飛び出した。…まぁ大丈夫かな? 相手は長短のロウソクを2本出してきて、その炎を消さない勝負を申し込んできた。…あいつ2本しか出してないけど後ろにもう2本隠してるな。汚い。流石試験官汚い。まぁ気付かない方が悪い…か。

 案の定、ゴンの選んだ長いロウソクは激しく燃え出したが、彼は自分のロウソクを床に置いて相手の炎を吹き消した! …こういう奇想天外な、しかし非常に理にかなった発想が彼の素晴らしい所だろう。普通の発想では辿り着けない天性のギフト。それを持っている。…やはり彼は素晴らしい。私には無いものだ。

 

 

 彼が戻ってきた。これで2勝だ。さて…どうするかな? すると、向こうから女性のシルエットが見えた。マントや手錠を取ると、やはり女性だった。

 …レオリオが行きたそうだ。…スケベめ。そして、向こうは「時間」をチップがわりに賭けを提案してきた。最初のアレのせいで絡め手を多用してきたな。…ここはクラピカが行った方が良くない? しかしレオリオはヤル気満々だ! まぁ武闘派に当たってボコられるよりマシか…。

 そして…スケベ心や心理戦の虚を突かれ、ものの見事に負けて帰ってきた。50時間まるっと負債を抱えて…。あのさぁ…。もっと真面目にやろうよ…。

 皆の気持ちが1つになった瞬間だろう。流石にレオリオも反省したか、土下座ポーズで固まっていた。…まぁしょうがないか。〝人間〟だものな。

 こちらの残りはクラピカとキルア…中々いいな。

 

 次に出て来たのは、大柄の髭の男だ。…何となくアンソニーを思い出す。いや、姿形は全く似てないが、雰囲気が似てるのだ。マッド具合的な意味で。多分彼も何処かしら狂っているのだろう。

 レオリオが解説してくれた。反省から立ち直ったらしい。早いな! ……奴はザバン市犯罪史上最悪の大量殺人犯で、「解体屋(バラシや)ジョネス」と言うらしい。やっぱりね。

 快楽の為に人を殺す…ね。ヒソカもそうだがやはり理解出来そうにない。まだゾルディックの方が理解出来る。まぁマフィアも似た様なもんだが、流石に快楽的に殺人はしない…と思う。少なくともアンダーソンではそうだ。

 とにかく、向こうがそう来るならここは彼に行って貰おう。

 

「キルア。出番だ」

 

「お、おい! オレの話聞いてたか!?」

 

「……何でオレ?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()。そうだろう?」

 

「……チッ。わーったよ。行くよ」

 

 

 そう言って彼は闘技場へと向かう。クラピカまで心配していたが、何も問題無いだろう。

 

 

 試合が始まって速攻でジョネスは()()()()()()()()()。…彼も好き勝手していただろうから自業自得だな。それにしても、一分の狂いも無い精密な肉体の動き。流石だ。この歳で極限まで鍛えている。同じ歳のマイケルより肉体的には数段上だ。勿論私の同じ歳よりも、だ。別格の才能がある。ゴンとキルアは才能の底が見えない。暗黒大陸を真の意味で攻略できるのは、こういった人物なんだろうな。だからこそ、未来のキメラアントの襲撃は本当に憎たらしい。多くの才能や人材が失われてしまった。

 だが、()()()()()()。情報が入った時点で即潰しに行ってやる。覚悟しろよ。虫ども。…巻き込まれたゴンやキルアもそれまでには鍛えておきたいな。万が一があっては困るからな。

 

 それはともかく、キルアも戻って来た。称賛の言葉を述べたら憮然とした表情をしていた。「アンタに言われたくない」だと。本音で言ってるんだが嫌味に聞こえてしまったかな?

 

 

 無事に3勝を先行出来た我々は、レオリオの負債を払うべく、別室待機となった。50時間か…。結構な長さだな。ただ、これはチャンスだ。彼等にも少し念についての概要を伝えておこう。

 別室に着いた時、軽く《円》をして監視カメラを発見して、念弾で破壊する。彼等は私から〝何か〟が発せられた事に気付いたようだ。

 

 

「カーム、今の〝これ〟がさっきの?」

 

「そう…。〝これ〟が『念』と言う」

 

「…親父や爺ちゃん、兄貴からたまに感じてたのは〝これ〟か」

 

「なんだか分からねーけど、すげー圧迫感だな…冷や汗が止まんねー…」

 

「知ってる者と知らない者では天地程の差が出るからな。『念』とは、極論〝なんでも出来る〟。無論、得意不得意はあるが。君たちもハンターを目指すのであれば、必須事項と言える。ハンターは望む望まないに関わらず〝武〟を要求される。よって習得は急務だ。習得していない者では、習得している者にほぼ勝ち目は無い」

 

「ずりーよな。〝そんなの〟があるなんて。…何でオレには教えてくれなかったんだろうな…」

 

「…『念』を支えるのは〝強い肉体〟と〝強い意志〟だ。これが中途半端では中途半端な能力者にしかなれない…。逆に言えば、君は余程期待されている、と私には映る」

 

「………」

 

「ねぇ! 〝なんでも出来る〟って言ってたけど、例えばどんな事が出来るの!?」

 

「そうだな…。例えば会長が空から降りて来て無傷だったろう。あれもそうだ」

 

「「なるほど…」」

 

 2人は納得いったようだ。会長には遊んで貰っただろうから心当たりもあるのだろう。

 

「それ以外にも〝こんな事〟も出来る」

 

 私はメモ用紙を破ったものに《周》をして、壁に投げつけた。紙は()()()()()、見えなくなった。

 

「私も! 私にも出来るのか!?」

 

「当然だ。クラピカ。寧ろ()()()()()()。君の敵は全員『念能力者』で、しかもその達人だからな」

 

「!」

 

「だからこそ、この絶好の機会に概要だけは伝えておこうと思う。本来ならばかなり長期スパンで習得するものだ。だから今すぐに習得は出来ない。しかし目覚め方は教えよう」

 

「やった!」

 

「だが、『念』は奥が深い。目覚めただけでは大した事は出来ん。修練が必要だ。だから、ハンター試験を無事合格したら私が教えてやろう。無論、不合格なら無しだ」

 

「…わかった。これでまた試験に合格する理由が増えたな」

 

「へーっ。すげ〜な! 〝なんでも出来る〟か…。医療にも使えるかな?」

 

「使い方次第だが…可能だな。実際に私は『念能力』で治療する医者を知っているからな。…嫌な奴だったが」

 

「最後の情報はいらねぇよ…。だが希望が見えてきたな! オレも頑張るぜ!」

 

「よし。では、初歩の初歩、〝何の為にこの力を使うか〟を瞑想しながら考えるのだ。自分の意志をはっきりさせろ。それ一点のみに思考を絞れ…まずはそこからだ。簡単そうに思えるが、中々難しい。まずはやってみるといい。私も様子を見ながら共にやろう」

 

 

 

 そう言って、残り時間はそれに費やした。最初が肝心だ。こんなにも才能溢れる彼等を即席で目覚めさせるなど、勿体ないにも程がある。まずは〝意志〟を強くもつこと。そして、それが出来たら身体に循環するオーラを探る事に移ると伝えた。時間は限られていて、オーラを探る所迄は行かないが、ハンター試験後もまだまだ先は長い。充分間に合うだろう。何せ、彼等は〝天才〟なのだから…。

 

 

 

 

 

 

 

「くっ! カメラが破壊された! 残念!」

 

「しかし…部屋全体を満遍なく網羅する《円》ですか…」

 

「オレは《円》は苦手だから羨ましいよ…」

 

「ふむ…。流石に見せてくれんか。残念じゃが仕方ないのぅ。他の受験者でも見とくか」

 

 

 

 

「あの〜…そろそろいいですか…? ホントにやりにくいんで…」

 

 リッポーの苦難はまだまだ続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間が来た。残りの攻略を行う。全員、集中して取り組めたようだ。顔つきも更に意志が強まった様なものになっている。これならすぐにオーラにも目覚める事が出来るだろう。

 さて、残り時間も迫っている。攻略を急ごう。

 

 その後、幾度となく○×の選択を迫られたが、全員で力を合わせて無事に乗り越えた。気持ち一つで意地悪な試験も協力して難なく乗り越えられる。それもまた〝人間〟の良いところだろう。

 残り時間も後4時間程度だ。急がねば。そして…。最後の別れ道の設問に来た。5人で進める困難な道と3人の簡単な道だ。残り時間的には前者は選べない。これはどうしたかな…と思った時にゴンが解決法を提案した。()()()()()()()()()()()()()、というやり方だ。やっぱりゴンは天才だ。全員で壁の破壊にかかろうとしたが、お礼に私から念弾で一撃で大穴を開けてあげた。皆唖然とし、念能力の凄まじさに改めて戦慄したようだ。ともあれ、これでクリアだ。若干危なかったが何とかなった。

 中は滑り台となっていた。無事に全員合格を果たす事が出来た。我々は最後では無く、最後はトンパともう1人の2人組が降りてきて、そこでタイムアップとなった。これにて三次試験は終了だな。

 

 

 さぁ、あと少しだ。




マジタニさんはビビって引っ込んでました(笑)

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