「え──これより会長が面談を行います。番号を呼ばれた方は2階の第1応接室までおこし下さい」
──遂に来たな。最終試験の為の面談。この面談を参考にして、お互いで試合をする事になる筈だ。漸くはっきり思い出したが、やはりそうか。まぁ無かったら直談判するところだったから手間が省けた。
私にとってはこれがもう一つの目的だった。貴重なハンター協会会長とのサシでの話し合いだからな。他にも方法はあったかもしれないが、1番穏便に、且つ邪魔が入らないのは
ここまできたら、後は私の交渉力が試される…。父さんやマイケルはこういう所も上手かったのだろうな。特にマイケルなんか国とハンター協会から不干渉を勝ち取るぐらいだから、並大抵の能力じゃない。…今だけは、彼らに並べる様に私も努力するしかないな。気合いを入れていこう。
今、44番のヒソカから呼ばれた。…という事は私は最後だな。向こうも疑っているから最初か最後のどちらかだと思ってはいた。ならばその時まで待っていよう。いついかなる時も動じない様に、心を落ち着かせ、瞑想をしながら……。
◆
「受験番号406番の方、406番の方おこし下さい」
よし、行くか。
第1応接室に入ると、座敷の様な部屋で、向かいには会長が座っていた。…監視はないようだな。本当にサシでの面談らしい。ありがたい。
「よく来たの。まあすわりなされ」
私は言われるがままに座布団へと座る。
「さて……お主には聞きたい事が幾つかあるが、まずは先にこちらを済ませよう。お主以外の9人で注目している者と、闘いたくない者を教えてくれんか?」
成る程。メインは後か。
「…注目しているのは405番、404番、403番、99番、ですね。闘いたく無いのは44番です。彼とはこの試験後に約束があってね」
「成る程のぅ……。では、お主はなぜハンターになりたいのかな?」
……おいでなすったな。
「私の場合は、〝人間として生きる〟ためですね。だからぶっちゃけて言えば
「ほう! ここまで来たお主がハンターにならなくても良いと申すか! では何の為にハンター試験を受けたんじゃ?」
「……私の存在は周りには少々刺激が強いみたいでね。私が人間らしく生きたくとも〝そう〟させてくれないらしい。だからハンターと言う身分は必要なのですよ…。逆に言うと、〝それ〟が保証されさえすれば、極論私はハンターライセンスすら必要ないのです」
「……どういう意味じゃ?」
「会長…貴方は、アンダーソン及び私についてはかなり知っている筈だ。最近までハンター協会に身の回りをウロチョロされてましたからね…とぼけないで知ってる事を擦り合わせた方が話が早いですよ?」
「……カーム=アンダーソン。20歳。サヘルタ合衆国を束ねるマフィアのドンにして十老頭の1人であるジョン=アンダーソンの3男。我々が調査した結果はこれじゃ。…しかし、230年前に暗黒大陸に赴きMIAとなった同性同名の男がおる。その男はハンター協会のシングルハンターとして登録されており、二つ名まである大変優秀な怪物ハンターじゃった。その二つ名を『
「ふむ。それで?」
「…アンダーソン家と協会はその男の事で揉め、最終的に『カーム=アンダーソンが帰還した場合、如何なる干渉をも禁ずる』という正式な条約を結んだ…。そして、昨年、未知の飛行物体が暗黒大陸から現れた。調査してみると、アンダーソン家まで辿り着いた。そして、先程出たジョン=アンダーソンの3男の情報が〝突然生えた〟。…お主の事じゃ。それからというもの、アンダーソン家はお主の名義で突然慈善事業を始めた…。サヘルタの各地の家庭に直接赴き、無償で支援や補助を行っていたのじゃ。〝昔の借りを返す〟とな。…その家系を辿れば230年前の暗黒大陸上陸作戦に参加した者まで辿り着いた。中には墓前に〝ドッグタグ〟が供えられた家もあった…。ここまでがワシらが把握しておる事じゃ。……ここまでで何か異論があるか? ワシが聞きたいのは、お主が〝本当は〟何者か、という点じゃ。〝それ〟によって我々も対応がガラッと変わるでな」
「ほう! 流石はハンター協会! 『アンダーソン家には不干渉』〟という条約もあるのに、そこまで調べるとは中々優秀ですね」
「茶化すでない…。ワシらハンター協会にとっても『暗黒大陸』の話は最重要事項じゃ。調べない訳にはいかん」
「散々な目に遭ったからですね? 知ってますよ会長。不可侵条約がV 5で締結された後も、協会や国は無謀な渡航を繰り返した。その数なんと149回! そして戻って来れたのはたったの5回! そして帰還者は驚きの28名!! さて…何人が犠牲になったんでしょうねぇ…。まるで〝あの時〟から学習してない。案内人も嘆くわけだ」
「…やはり…お主…!」
「その通り。
私は懐からハンターライセンスを取り出して見せた。
「私が望むのは、『これ』の〝更新〟。流石に今の機能には対応していなくてね。ハンターライセンスは再取得は出来ないようだから是非お願いしたい」
「……何故わざわざこの場を選んだ?」
「私はね…貴方の事は評価しているのですよ。ネテロ会長。貴方が途中から渡航を差し止めた事で無駄な犠牲は減った。貴方の目の黒いうちは大丈夫という安心感がある。もう〝あんな所〟に行って無駄に命をすり潰す事は無い…とね。だからこそ、この場を選んだ。…貴方と一対一で話せる場をね…。協会が一枚岩じゃないのは昔からの伝統だ。変なチャチャを入れられるのは嫌いでね。副会長辺りからちょっかいをかけられたら思わず全て〝無茶苦茶に〟したくなる、かもしれないですしね」
私は部屋からはみ出ない程度で濃密なオーラを滲み出させる。
「……もし我々が〝それ〟を認定しなかったら、どうするつもりじゃ?」
「わかってるくせに。
「…それは脅しかな? 本当に出来る、とでも?」
「いやだなぁ。『提案』ですよ。私も〝人間〟だから、出来るだけ暴れたくはないですしね」
「もし〝更新〟した場合は我々も国も手は出せん、という事じゃな?」
「その通り。よくお分かりで」
「これまた愉快な『提案』じゃのう! 結局我々はお主に手を出せんと言う事じゃな! …しかし我々もそのまま言いなりでやってあげるわけにはいかんでな。ワシの権限でそれを通すには〝それなり〟の証拠を見せて欲しいもんじゃのぅ。ライセンスなど極端な話どうとでも出来るからの」
「そう言うと思いましたよ。じゃあこれ」
私は次元収納をワザと大きく開き、そこからあるものを取り出した。
「これは…」
「『万病に効く香草』。〝向こう〟のリターンの一つですよ」
「!!! お主…攻略したのか! 例の『迷宮都市』を!!」
「えぇ。しました。…非常に多大な犠牲を払ってね。正直ハンター協会にはその件で私も少なからずムカついているのですよ。危うく私も緑頭の一人になる所でしたからね。ですが、数少ないけれど〝それ〟は差し上げましょう。それが私に対する不干渉の報酬とでも思ってください」
「〝これ〟…は…受け取れん。今の人類にはいたずらに混乱を招くだけじゃ。お主、分かって言っておるじゃろう」
「はは、バレましたか。しかし困りましたねぇ…。どうしたら納得出来ますか?」
「
会長から闘気が漏れ始める。うっすらと背後に観音像が見える。私ももう少しオーラを漏らす。
「ほう…。シンプルに来ましたね。で? 方法と場所は?」
「今すぐこの場で…といいたい所だが、無理だろうな。いつでもいいぜ。合わせる」
「口調が変わってますよ。会長。まぁいいでしょう。この試験終了後、44番との約束を終えたら、でいいならね」
「ふふふ…それでよい…久方ぶりだなぁ。こうまで血沸くのは…! がっかりさせるんじゃねぇぞ」
「それが素のキャラですか? 私も楽しみですよ…。失望はさせないのでご安心ください。とりあえず立会人は極力無しでお願いします。…そうだな。1人までなら許可しましょう。最後に、私はこの後最終試験ですが、組み合わせは適当に入れといてくださいね。あ、44番以外でお願いしますよ。では…」
私は立ち上がり、退出した。ネテロ会長は獰猛な笑みを浮かべている。はぁ…やっぱりこうなったか。まぁいい。大体ここまでは想定通りだ。
◇
やっぱりな。ほぼ間違い無いとは思っていたが、これで確定じゃ。あやつが真の暗黒大陸の帰還者で間違いない。その強さは…身近で見て分かる。相当な強者! 凄まじい研鑽の跡が動きに見えよる。ワシよりも確実に…。
オーラはやはり大気に溶かしておったな。どうやっとるのか全く分からんが、偽装も一級品じゃ。果たしてどれ程の強さか…。ワシも思わず闘いを要求しちまった。この歳で挑戦者になるとは、長生きするもんじゃい。恐らく44番もあやつには勝てんじゃろう。何故44番にこだわるかはまだ分からんが、何がしかの意図があるに違いない。…とりあえずは試験後、彼奴に日付と時間と場所を交渉せねばな。
あの漏れ出したオーラから見るに、ワシの今の実力が通じるかどうかまるで分からん。こんな事は久方ぶりじゃ。本気で楽しみになってきたのぅ。カーム=アンダーソン。暗黒大陸の真の帰還者よ。その実力を存分に見せて貰うとするかの。
◇
最終試験はそれから3日後に行われた。内容は「決闘」だ。勝ち抜けというか、負け上がりシステムという前代未聞のシステムだ。私と言えば対戦相手はハンゾー君だな。意地悪はされなかった様だから助かる。ハンゾー君も中々の才能を持っているようだし、ここは一つ、純粋な体術で相手しよう。懐かしいな。私も最初はジャポンで修行しようとしてたんだっけな。ジャポンの体術、実に楽しみだ。
会長との対話こそが彼の目的の一つでもありました。
そして再びワリをくってしまうハンゾー君。彼の運命や如何に!?