アンブレイカブルハンター   作:エアロダイナミクス

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長らくお待たせしてしまって申し訳ありません。中々書けず、ここまで伸びてしまいました…。ちょくちょく伸びがちになるかもしれませんが、これからもよろしくお願いします。


73、再会

 

 

「やぁ、4日ぶり!」

 

「「「カーム!!」」」

 

「遅れてきたが、無事に合流出来てよかったよ。ここにいたのか」

 

「あぁ。我々でも正式に扉を潜れる様にゼブロさんの家に厄介になっている…。カームは門は通れたのか?」

 

「私は鍛えてるからね。問題無いよ。それよりも、君たちが通れないのは問題だな。ハンターなら1の扉ぐらいは開ける様にしないとな」

 

「ケッ! わーってるよ! でもアレ片方2トンだぜ!? それとも〝念〟の力か!?」

 

「純粋に肉体のパワー不足だ。ハンターがそれじゃすぐ死ぬぞ。というわけでこれから特訓開始だ」

 

「もう既にやってるが…」

 

「大丈夫。私が来たからにはもっと早くクリア出来るように鍛えよう。ゴンも早く会いたいだろう?」

 

「うん! よろしく頼むよ、カーム」

 

「ゲーッ! 〝この状態〟で更に訓練すんのか!?」

 

「ワガママ言わない。早く行けるに越した事はないだろう。ゴンのビザ問題もあるしな」

 

「うん? ライセンスは使わなかったのか?」

 

「あー。そうだね…。オレは自分が納得するまでライセンスは使わないって決めたんだ」

 

「成る程…。では尚更急がねばな。早速やろう。しかし、ゴン。君の腕は大丈夫か? それじゃ修行もままならないだろう」

 

「うん。でも大分治りかけてるから大丈夫だよ!」

 

「……まぁ仕方ないか。ならばしばらくは下半身の強化に充てよう。早速だが、外に出てマラソンだ。無論、重りは付けたままな」

 

「うげ、苦手なんだよな…」

 

「私も一緒にやろう。あと、ゼブロさんとかは何処に?」

 

「あぁ、ゼブロさんなら今は門に居るかな?」

 

「よし。それなら挨拶してから向かおう」

 

 

 

 そうして、我々は門に向かう。ちょうど守衛室に彼は居た。

 

 

 

「ゼブロさん。戻りましたよ。先程はありがとうございました」

 

「おぉ! カームさん! 戻られましたか」

 

「これからこの4人で行動する事になります。まずは全員で本邸を目指します」

 

「なるほど…貴方がいれば大丈夫でしょうな。引き続き、使用人小屋をお使いくださいね」

 

「大変お世話になります。お言葉に甘えてご厄介になります」

 

 

 

 それから我々は一旦外に出て、ククルーマウンテンの外周をマラソンし始めた。全員ゼーハー言いながらも着いてきた。この4日間もゼブロさんやもう1人のもと、マジメに訓練に取り組んでいたようだ。まずはどれぐらいで限界を迎えるかチェックだな。

 

 

 40キロを超え、60キロを超えた辺りで全員ダウンした。まぁ150キロのジャケットを着けたままならばそんなもんだろう。

現在地点はククルーマウンテンの麓付近だ。街とは反対方向ではあるが。

 

 

「ゼーッ、ゼーッ、おい! いきなり無茶苦茶だぞ! 死ぬかと思ったわ!」

 

「うん…これはキツいね…。でも鍛えられそう…」

 

 

「いや、すまない。皆の大体の体力を把握しておきたくてね。しかし、これなら大丈夫だろう。これから時間短縮の為に少し〝特殊な力〟を使う。だが、これをやるにはまず、君たちに確認をしなければならない」

 

「……秘密遵守、という奴か」

 

「その通り。クラピカ。往々にして念能力者とは、自分の能力は極力明かさない。何故なら、バレた時点で不利になってしまう能力もあるからだ。特に私の場合は諸事情でよりバレたくない。よってこれから起こる事の秘密を()()()守れるか?」

 

「わかった。誓うよ」

 

「私もだ」

 

「オレもいいぜ!」

 

「よし。ならば始めよう」

 

 

 

 私はなるべく圧をかけない様にゆっくり〝聖光気〟状態に移行する。

 

 

 

「な、何だ! この凄まじい圧迫感は!?」

 

「だけど、ヤな感じじゃない…! むしろ懐かしい感じがするよ!? それに服が白く光ってる!」

 

「…圧倒的だな…。一般人が念能力者に勝てないという理由がよーくわかった」

 

 

「〝これ〟は特殊で念能力とはまた微妙に違うが…似たようなものだ。では行くぞ。まずゴン、こっちに来てくれ」

 

「う、うん…」

 

 

 近寄って来たゴンの折れた腕を取り、()()()()()

 

 

「!!? 治ってる…」

 

「どうだ? 違和感はないか? 一応偽装の為にまだギプスは取らないで、自然に治った振りをしてから取ってくれ」

 

「馬鹿な!! そんなに簡単に治るわけねーだろ!」

 

「言ったろう、レオリオ。〝念〟とは極論()()()()()()()と。私は〝たまたま〟出来る範囲が広いけどね。本題はここからだ」

 

 

 そうして、私は3人にそれぞれ3倍の重力をかける。

 

「うっ…」

 

「か、身体が…重い…動かねぇ!」

 

「今、君たちの身体のみに()()()()()を掛けた。ジャケットもいいが、全身くまなく鍛える為にはこれが1番だ。60キロが大体180キロになる計算だな。さて…そうなると、ジャケットは苦しいだろう。預かろうか?」

 

「……いや! 大丈夫…! このままでやるよ…! キルアを早く迎えに行かなきゃ!」

 

「よし。その意気ならばいいだろう。君達はこれから歩いてもいいから門までその状態で()()()()()()()。夕方までにだ。大体ここから30キロほどだから厳しいだろうが頑張って戻ってこい。私は一足先に戻っていよう」

 

 

 そうして私は〝聖光気〟を解いて門まで戻る事にする。念攻撃ではないので、念に目覚める事は多分ないだろう。もう1人の交代要員の使用人さんに挨拶でもして待つとしようかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行っちゃったね…」

 

「〝これ〟はヤベェな。夕方迄に帰れるか…?」

 

「やるしかあるまい。しかし、本当になんでもアリだな…」

 

「あぁ。本当にヤベェ力だ。修得者も秘匿するワケだ。こんなのが一般に広がったら大混乱間違いなしだぜ」

 

「だからこそ、秘匿は必須だな。だが、その中でも恐らくカームは最上級の使い手だと考えられる。我々はラッキーだったな」

 

「みんな、とにかく行こうよ! もう夕方までそんなに時間がないから急がなきゃ」

 

「そうだな…まずは歩きながら慣らして、小走りぐらいで行くか…」

 

「マジでハードだな…。だが、やるしかねぇか」

 

 

 

 そうして3人は進み出した。1時間後、ジャケットを預けなかった事を大変後悔することになるが、その下りは割愛する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──試しの門前──

 

 

「やぁ。ギリギリで間に合った様だね」

 

「ブハーッ、ブハーッ、な、何とか間に合ったぜ…」

 

「さ、流石に動けないな…」

 

「めっちゃキツかったよ…」

 

 

 

「いい感じにギリギリだな。お疲れ様。さて、では次に…」

 

「まだやんのか!?」

 

「いや、()()だよ。夕飯にしよう。麓の街で買い出しをしてきた。小屋で頂こう」

 

「夕飯後は…」

 

「もちろん、修行だ。今度は筋トレな」

 

「やっぱり…」

 

「まぁ、間違いなく結果は出る。だから頑張ってほしい」

 

「ハァ…。やるしかねぇか…」

 

 

 その後、小屋に一旦戻り、もう1人の門番の使用人、シークアントさんと夕食を囲み、そこから筋トレ祭りが開催された。もちろん重力はそのままなので苦しそうだったが、何とかこなしていた。

 

 

 

 

 

 

 〜〜5日後〜〜

 

 

 

 

 

 

 ギィオオオン…

 

 

 

「よっしゃー! 開いたぞ!!」

 

「驚いた…。全員1週間ちょいでやっちまうとは…」

 

「お世話になりましたね。ゼブロさん、シークアントさん」

 

「いや〜身体が軽い軽い! 今なら何でも出来そうだぜ!」

 

「調子に乗らない。まだ1の扉しか開けてないんだ」

 

「まぁな。でも、カナリ強くなった感はあるぜ」

 

「よし! これで堂々とキルアを迎えに行けるね! ゼブロさん、シークアントさん、長い間本当にありがとう!」

 

「えぇ。ここから道なりに沿って山まで行けば辿り着く筈だ。坊ちゃんに会える事を祈っているよ」

 

「うん!」

 

「ゼブロさん、私まで世話になってありがとう。助かったよ」

 

「気にしなくていいですよ。向こうの方によろしくお伝えください」

 

「では」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…いっちまったねェ。どうなる事やら」

 

「まぁ…なんだ。話はもうついてんだろう? 雇い主もその使用人も大概な化け物だが、〝あいつ〟も相当な化け物だからな」

 

「どうやらそうみたいだね。まぁ我々にはどうすることも出来ない事だ。無事にキルア様が合流出来る事を祈っておくかね」

 

「違いねぇ。ま、化け物同士で話がついてんなら大丈夫だろ。全く世界って奴は広いもんだぜ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 我々は山道を進む。もちろん、彼らの重力は解除してある。しかし普通なら潰れている所だが、流石は主人公組、という所だ。順応するスピードが早すぎる。

 しばらく進めば、鉄条網と石の門が見えて来た。これがゾルディック家の庭の入り口かな? その前に()()()()()()()()()()が立っていた。

 

 

「ようこそ。お客人。これより先はゾルディック家の邸宅内。よってこれからはこの(わたくし)めがご案内いたしましょう。(わたくし)はツボネと申します。御見知りおきを…。先ずは〝ここ〟をお通りください」

 

 

 雰囲気たっぷりの威圧感。ツボネさんか…。少なくとも序盤には出てこない人じゃなかったっけ? それにしても、隠そうともしないもの凄い殺気。なるほど。〝試し〟か。私は兎も角、他の者にも〝これ〟をものともしない程度にはいて欲しいという事かな。普通の人間にとっては睨んでくる怪獣の横を通るような物だ。そういう事なら私は黙って見ていよう。念、ではなくただの殺気だからな。

 

「うっ…。これは…」

 

「……成る程な…歓迎はされてないらしい。通ったら何が起きるかわからんな」

 

「さて…寝惚けた事を仰る。(わたくし)はご案内するのみ。まさか()()()()()()()()()が坊ちゃんを迎えに来た…という事は無いでしょうからねぇ。ただ、通れないようでしたら是非回れ右をしてお帰り頂く事をオススメしますよ。(わたくし)から坊ちゃんに『尻尾を巻いて帰った』とでも伝えておきます」

 

「私からも言っておく。私はここから()()()()()()()()()()()()。どうするかは君達が決めろ」

 

「そんなの決まってる! オレ達はキルアに会いに来たんだ! 案内してもらう為にも通してもらうよ」

 

 ゴンが切り出し、ズンズン進んでゆく。危ういな…。だが、それが彼のいい所でもある。どんな脅威に対しても意志を貫き通す、断固たる決意。それが念能力者にとっては代え難い資質となる。

 他の2人も、ゴンがそう言ったら顔を見合わせて覚悟を決め、ゴンに続く。その目に迷いは無い。いい仲間だ。彼らもきっと強くなる。

 

 

 門を3人が通り過ぎた瞬間、ツボネさんが3人の死角に瞬時に移動した。しかし、3人は分かっていても動じない。

 

 

「ホッホッホッ…成る程。胆力だけはお有りのようで。よいでしょう。この(わたくし)めがご案内しますよ。付いて来てください。…後ろの方も是非どうぞ?」

 

 

 

 ふむ…。向こうも、こちらがどれぐらいのものかを知っておきたいという事かな。とりあえず通れたならよしとしよう。あまり出しゃばるとゴン達の成長を妨げてしまうからな。これからも後ろで控えておくとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きろ!!」

 

 

 バシ!!

 

 

 拷問部屋の様な場所で、黒髪の太った男が鞭で吊るされた子供を引っ叩く。身体中に鞭の跡が残り、悲惨な見た目になっている。

 

 

「……ん…ああ、兄貴、お早う。今何時?」

 

 

 何と、吊るされた子供は寝ていたようだ。図太いにも程がある。勿論キルアである。太った男は咥えていた火のついた葉巻をキルアの胸の皮膚に押し付けた。

 

 

「いい気になるなよキル」

 

「あちち、そんなァ。オレ、すげー反省してるよ。ゴメン悪かったよ兄貴」

 

 

 反省しているような顔を全くせずにそうのたまう。案の定、キルアに兄貴と呼ばれた男は鞭を再度頭部に振り抜く。

 

「うそつけ!!」

 

 バキャ!

 

 

 キルアは打たれた後、ニヤリと笑い、

 

 

「やっぱわかる?」

 

 

「……………」

 

 

 太った男のイラつきはMAXの様だが、どうしたらこの生意気なガキが反省するか思案中のようだ。その時、太った男の胸ポケットから「ピルルル」と、着信音が流れて、電話を取る。

 

 

「はい! あ、ママ? うん? うん…。時間切れか…。わかったよ…ちぇっ。おい。終わりだ。行っていいぞ」

 

「うん? 終わり? はー痛かった」

 

 

 

 バキッ ベキッ バキッ

 

 

 キルアは全ての拘束具を自力で外す。

 

 

「……………」

 

 

「兄貴、そう睨むなって。オレも悪いとは思ってるんだぜ。だから大人しく殴られてやったんだよ」

 

 

 

 コンコン

 

 

 

「入るぞ」

 

 

 

 そう言って入って来たのはキルアの祖父。ゼノである。

 

 

「ミル。終わったか? キル…シルバが呼んどるからな」

 

「親父が? …わかった」

 

 

 そう言って、キルアはスタスタと部屋を出て行く。残された男は鞭を床に放り投げ、ゼノに愚痴る。

 

 

「くそ〜〜〜!! ゼノじいちゃん、アイツゼッテー反省してないよ!」

 

「んなこたわかっとる」

 

「大体、じいちゃんはキルアに甘いよ! だからつけあがるんだ!」

 

 

 

「アイツは特別だからな。ミル…お前から見てキルアの力量はどうだ?」

 

「……そりゃすごいよ。才能だけなら長いゾルディックの歴史の中でもピカイチじゃない? それはママも認めてるしオレもそう思う。ただ、暗殺者としては失格だよ。ムラっけがあってさ。友達なんか作ってる奴にゾルディック家は継げないよ。要するにあいつは弱虫なんだよ。精神的にさ」

 

「ふむ。そういうことだな。しかし、だからこそ今回の件は渡りに船、とも言えるな」

 

「あぁ…アレね。未だにビデオを再生して見ても信じらんないよ…。恐ろしい〝化け物〟だ。あの時はここにいたけど肝を冷やしたね。流石のキルも訳も分からずビビってたからね」

 

「ソイツにキルアは気に入られたからな。シルバも強くなったし、言う事無しじゃな」

 

「そう! アレすごいね!? パパがやたらパワーアップして、ヤバい事になってるよ! まぁいい事なんだろうけどさ」

 

「奴との〝取り引き〟の結果だな。奴の言った事が証明されたわけだ」

 

「そんな事があるなんてね…前代未聞じゃない?」

 

「そうだな…。奴とは今後も良い〝取り引き相手〟である事を祈ろうかの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キルアが奇妙な部屋に入室する。そこは機械と生物が入り混じった様な部屋。父の自室である。ただでさえ入るのは躊躇われる場所だが、今回はよりそれが強い。原因は久しぶりに見た父が更に圧倒的に強くなっていたようだからである。この短期間で何があったというのだろうか。

 

 

(……前より強くなってる……威圧感が半端ない)

 

「キル。友達ができたって?」

 

「う、うん… 」

 

「どんな連中だ?」

 

「どんなって……一緒にいると楽しいよ」

 

「そうか……。試験はどうだった?」

 

「ん…簡単だった」

 

「……」

 

「……」

 

「キル…こっちに来い」

 

「え?」

 

「お前の話を聞きたい」

 

「試験でどんなことをして、誰と出会い何を思ったのか……。どんなことでもいい。教えてくれ」

 

「…うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──でさ、そしたらゴンがなんて言ったと思う? 足は切られたくないし、まいったとも言いたくないだって。わがままだろ──?」

 

「はははは。面白いコだな」

 

 

 

 

「キル。友達に会いたいか? 遠慮することはない。正直に言え」

 

「思えば…お前とは父子で話をした事がなかったな。オレが親に暗殺者として育てられたように、お前にもそれを強要してしまった」

 

「オレとお前は違う……。お前が出て行くまでそんな簡単なことに気づかなかった」

 

「お前はオレの子だ。だがお前はお前だ。好きに生きろ。疲れたらいつでも戻ってくればいい。な……?」

 

「もう一度聞く。仲間に会いたいか?」

 

 

 

「うん!!」

 

 

 

「わかった。お前はもう自由だ。だが、一つだけ誓え」

 

 

 そう言ってシルバは親指の皮膚を噛みちぎりながら差し出しながら告げる。

 

 

「絶対に仲間を裏切るな。いいな」

 

 

 キルアも同じ様にして答える。

 

 

「誓うよ。裏切らない。絶対に!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄さん。行く前にちょっと待って」

 

「うん? ……カルトか。どうした?」

 

「僕も…一緒に連れて行って欲しい」

 

「は? ヤダよ。どうせ監視だろ?」

 

「兄さん。兄さんが家出してずっと考えてたんだ。僕は、本当はお母様やこの家にはもうウンザリだって。だからいい機会だし僕も家出しようと思う。でも、僕は暗殺しか知らないから外の事はまるで分からないんだ。兄さんだけが頼りなんだよ! お願い、一緒に連れて行って…!」

 

「ついこの間までおふくろにべったりだった奴がよく言うわ! ……第一、それが本当である証拠も無いし、おふくろも許さねーだろ? 無理だね」

 

「お母様には社会勉強と兄さんの様子を見てくるって言って〝取り引き〟までしてきた。家を出ちゃえばこっちのものだよ。今後僕は家とは一切連絡を断つ。兄さんの行動を報告しない。兄さんの行動を咎めない。兄さんの友達を尊重して危害は絶対に加えない。誓うよ」

 

 そう言って、親指の皮膚を噛みちぎって差し出した。

 

「!! …〝それ〟をするからにはもう裏切りは許されねーぞ! 分かってるのか?」

 

「もちろん。この意味は分かってる。それに、イヤだと言ってももう僕は決めたんだ。拒否られても勝手に付いていくよ。それも僕の自由、でしょう? これは僕の誠意だよ」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 しばらくの間、沈黙が2人を包む。その後、キルアが観念した。

 

 

「………あ〜あ。しゃーねーな。面倒くせーけど。でもそこまでやるならまぁいい。ただし! 約束は守れよ! あと、アイツらが拒否ったらダメだからな!」

 

 

 そう言って、渋々先程切った親指をカルトのそれに合わせた。

 

 

 

「ありがとう! 兄さん。これからよろしくね!」

 

 

 

 と、カルトは花の様な笑みを見せた。愛しい兄と行動出来る。それだけでもカルトにとっては望外の喜びである。故に自然と出た表情だった。その笑みを見てキルアも満更ではなく、疑いが少し晴れた。まだ若干疑ってはいるが。

 一方、カルトは予想以上に上手くいった事にコッソリほくそ笑む。敬愛する兄は絡め手よりも正攻法で行った方が上手く行く。そう思ってはいたが不安だった。

 だが、上手くいった。後は彼等と如何に上手く交流していけるか、である。耐えるのは慣れている。何年掛かろうとも必ず達成してみせる。そう心に誓いながら…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらでお待ちくださいな」

 

 

 と、案内されたのは本邸である。執事達も勢揃いだ。〝取り引き〟を重視している証拠だろう。だからこそ、この歓迎だ。

 4人で広い応接間のソファーに座って待つ。しばらく待つとキルアが出てきた…が、()()()()()()()()()()()。着物姿の女の子だ。カルトちゃん…だっけ?

 

 

「おぉ! ゴン! 久しぶり! あと…ついでにクラピカとリオレオ! と…ゲッ、カーム!」

 

「我々はついでか?」

 

「名前ぐらい覚えとけよ! レオリオだっつーの!」

 

「ゲッとは何だ。ゲッとは。全く」

 

「キルア、その子は?」

 

「あぁ、オレの()のカルト。コイツも家出したいっつーから一緒に来た。ワリーけど一緒に来たいっつーんだが大丈夫か?」

 

「オレはいいけど…弟!?」

 

「ああ。ウチは下の世代は男女例外無く男って数えられるっつー変な風習があるんだ。とりあえずコイツの性別は女の子だ。ほらカルト。挨拶しろ」

 

「はじめまして。僕はカルトといいます。突然押し掛けてすみません。よければご一緒させてください」

 

「オレはゴン! よろしくね!」

 

「クラピカだ。よろしく頼む」

 

「レオリオだぜ。可愛いお嬢さんだな」

 

「カームという。よろしく頼む」

 

「ねぇねぇ、キミいくつ? キルアの妹でしょ?」

 

「年齢的にまるっきり子供じゃないか。大丈夫か?」

 

「うーん…10年後が楽しみだな…」

 

 

 

 …などなど、早速質問攻めにあっている。約1名変な事考えてる奴がいるが。しかし私は前に会ったが、そこには触れて来ないようだ。前は日本人形みたいな陰気な印象だったが、今は朗らかに対応している。こちらに合わせてるのかな? 向こうの狙いを考えるとアレだが、上手く対応していくしかないか。大体10歳前後の子を嫁に勧めるとは、やっぱりゾルディックはちょっとどうかと思う。そうこうしているうちにキルアが我慢できなくなったようだ。

 

 

「だーっ! お前ら、質問は後にしろ! 早く行こうぜ! ここにいちゃうるせーのがいるし、落ち着かねーからな! とりあえずここ出るぞ!」

 

「そうだね。キルアにも会えたし、行こうか」

 

 

 

「キルアちゃん! うるせーの、とは(わたくし)のことですか?」

 

「ゲッ! ツボネ。聞こえてた?」

 

「聞こえてたも何も、あれだけ大声で言えば丸聞こえですよ。大体キルアちゃんはいつも言葉遣いに気を付けるようにと昔から言ってますのに! これからしばらく家から離れるでしょうが、(わたくし)の助言は覚えておいてくださいね! いいですこと!?」

 

「わ、分かった分かった…じゃ、行ってくるよ…。……お前らのせいだぞ」

 

「いや、今のは明らかにキルアの自爆でしょ…とりあえずいこ?」

 

 

 そうして我々は本邸を後にした。行くとき、執事達一同が頭を下げて見送ってくれた。我々も会釈を返して出ようとした時、最後尾の私だけツボネさんに引き留められた。

 

 

「カーム様。ゼノ様からのご伝言です。『見送りできずにすまんな。だが、ワシらがいない方がキルアにとってもよいじゃろう。キルア達をよろしく頼む』とのことです」

 

「……なるほど。承りました。お任せください、とお伝えください」

 

(わたくし)ら執事一同からも、お2人をどうかよろしくお願いします」

 

「皆さんのお気持ちも承りました。ツボネさん、案内ありがとうございました。では…」

 

 

 そうして、我々はゾルディック邸を後にした。2人を託されたからには責任をもって当たらないといけないな。そう改めて決意しながら、私はキルア達についていった。




徐々に歴史がズレていく感じ。しかし、カルトちゃんは絶対女の子。

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