アンブレイカブルハンター   作:エアロダイナミクス

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思ったより早くできました。


ヨークシン修行編
74、ヨークシンへ


 

 

「しっかし、ゴンも本当にガンコだよな〜〜〜。折角のハンター証、使っちまえばいいのによ」

 

 あれから山を降りて全員で食事を摂る。いい感じのパスタ屋があってそこに入った。山盛りで出てくるパスタは壮観で、育ち盛りの皆にはとても良い。キルアがゴンに対してライセンスを使わない理由を尋ねていたが、ゴンは最終的にヒソカにプレートを叩き返したい、という。…まだ持ってたのか。よっぽど腹に据えかねていたのだろう。

 それを聞いて全員(カルトちゃん除く)が呆れ返るが、まぁゴンだし…と納得する。ヒソカの居場所も知らないのにどうするつもりだったのかとか、今の実力でどう叩き返すのかとかをツッコミつつ、今後どうするかという話になった時、それぞれが修行兼、〝念〟の習得をしたい、という事で一致した。

 ゴン、キルアは言うに及ばず、クラピカは彼の目的についても私の家が手助けできるだろうし、丁度いい。そしてレオリオも勉強と並行してまずは習得に力を入れたいらしい。カルトちゃんは…とりあえずついていくとのこと。まぁハンターになった以上、何をするにも念能力の習得は必須だからな。それが〝裏ハンター試験〟でもあるし。

 

 

「みんな今後はそれでいいのか? それでいいなら、引き続き私が〝念〟について教えよう。修行には良い場所を知ってる。まぁ私の住んでる地域だが」

 

「そう言えば、カームはどこに住んでるの?」

 

 

 

 

 

「ヨークシン、さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 飛行船を乗り継いで1週間。ようやくリンゴーン空港に到着した。この1週間も無駄にはできない。基本的な瞑想のやり方を再び伝え、全員でみっちりと瞑想を行った。ぶっちゃけ、カルトちゃんは既に〝念〟を習得済みなので迷ったが、どうするかコッソリ尋ねたら一緒にやるという。という事は1人《点》をやるという事か。大人しく、余り発言しない子だが自分の意志はしっかり持っているようだ。ただ、いまいち彼女の目的と意図が分からないな…。本音としてはどう思ってるんだろう。そして私もあんまり女の子の扱いは良く分からないんだよなぁ…。この辺も要検討、だな。

 とりあえず、飛行船の広場内で車座になって瞑想する近寄りがたい集団が発生し、周りに新興宗教かと疑われたのはいい(?)思い出だ。

 

 

 空港に着く直前、事件が起きた。といっても大した事じゃないが、ゴンとキルアが自身のオーラを見出し、《纏》を発現できたのだ。早い…。早すぎる。この2人は本当に天才なんだな、と今更ながら実感した。テンションアゲアゲになる2人を見てクラピカは焦り、レオリオはぐぬぬ、となっていたが、その2人も発現しかけてるから焦らずにとフォローした。

 しかし、アゲアゲの2人だったが、カルトちゃんが既に習得済みなのがバレてキルアとプチ兄妹喧嘩になりかかってしまい、こちらもフォローに奔走した。そこで判明したのは、カルトちゃんは女子の嗜みと共に母親に習ったらしい。それはそうと、とにかく疲れた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空港に着いてからは、予めジョンに連絡していたので、黒塗りのデカいリムジンが迎えに来ていた。運転手はヴィンセントさん。それぞれがビックリしていたが、とりあえず全員リムジンに放り込み、発進した。

 

 

「カームの家って…お金持ち?」

 

「あぁ。まぁね。とはいえ、私が稼いでる訳じゃないからなぁ。ただの居候なんだよ。まぁ世話になってる分、お返しはしてるけどね」

 

「ちなみに…カームの実家、というかファミリーネームは何だ?」

 

 

 クラピカが聞いてきた。あれ? 言ってなかったか。

 

 

「あぁ、すまない。伝えるのを忘れてたよ。私の名はカーム=()()()()()()、という」

 

 

 その言葉にゴンとカルトちゃん除く全員が反応した。

 

 

「「「アンダーソン!!?」」」

 

「何? 有名人?」

 

「バカ! ゴン、いいか? サヘルタでアンダーソンって言えば、サヘルタ合衆国全体を束ねるマフィアの大元だ! ()()()()()ではある意味超有名人だぞ!?」

 

「これはありがたい…。どうやら裏社会のボスと強烈なコネを持つ者がこんなに近くにいたとはな…」

 

「…親父が昔仕事後に俺たちにボヤいていたよ…。幻影旅団とアンダーソンには手を出すなってさ」

 

「いやいや、だから私は居候だって。ただ、私の実家だから今は甘えているけどね。ある程度自由は利くから君達の修行場も存分に提供できる。というわけで、修行するならウチでやった方が効率もいい」

 

 

 それを聞いて、クラピカは何やら考えこんで、ゴンは周りの都会っぷりとリムジンの豪華さにはしゃぎながら今後の事でキルアとレオリオと雑談を交わす。

 

 

「……ボクも行っていいの?」

 

 

 そんな中ちょっと時間を置いてカルトちゃんが身体を寄せてコッソリ尋ねてきた。今まで簡単な受け答えぐらいしかしてこなかったのに大胆だな。1週間は経つが、私も距離感が中々掴めない。とりあえず質問には答えよう。

 

「カルトちゃん、気にすることは無い。ただ、まぁ実家で見た事に関してはある程度守秘義務な物もあるだろうから、そこはその都度伝えるし、こちらも気をつけるよ。特に君たちは親御さんから預かってる大事な客人だからね」

 

 

 納得したのか、身体を離してくれた。

 

 

「ボクの事は『カルトちゃん』じゃなくて、カルト、と呼び捨てで呼んでほしい。ボクも仲間の1人だから。その代わりボクもカーム、と呼ばせて」

 

「あ、あぁ。もちろんだとも。これからよろしく。カルト」

 

 

 

「あーっ! カームばっかりズルい! オレもカルトって呼んでいい!?」

 

…ッ!あぁ。いいよ。ボクもゴンって呼ぶね。他のみんなもそう呼んでね」

 

 

 …ほんのごく僅かな一瞬、カルトの顔の一部が曇った。上手く誤魔化してはいたが、私は近くに居たからこそ察知できた。ただ、変化は一瞬だけで、後は朗らかな顔で談笑している。

 恐らくだが、ゴン達に対してはまた別の複雑な感情がある様だ。それが何かはまだ分からないが。原作でもこの子がどういう所で出て来たかいまいち思い出せない。故にまだキャラが掴めない。かと思えば、

 

「おい! あんまりカルトに馴れ馴れしくすんなよ! ソイツは仮にもアンダーソンだからな!」

 

「あ、兄さん、嫉妬? 嬉しいな」

 

「バ、バカ! そんなんじゃねーよ! オレはただ…」

 

「ただ…何?」

 

「うるせーな! この話はもうおしまい!」

 

 

 と、キルアに対して笑いながら揶揄って遊んでいる。日本人形みたいな見た目で、性格もそういう印象だったが、こうして見ると仲のいい兄LOVEな妹にしか見えない。ただ、それが正しいかも分からない。やっぱり私には年頃の女の子の扱いは難しい。今から不安になってきた。…ホントに大丈夫かな? まぁ引き受けた以上仕方がない。何とか上手くやっていくしかないか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バレたかな? 上手く隠せていたらいいけど、隣の人にはバレたかもしれない。やっぱり兄さんと仲のいいコイツらに対してはまだまだいい感情で対応する事が難しい。あーあ。失敗しちゃったな…。でも、まだ挽回できる。これから取り返せばいい。これもゾルディックの為。兄さんの為だ。最上は、兄さんと、隣の人をゾルディックに引っ張り込む事。少なくとも兄さんは()()()()()()()()()()()に帰ってきて欲しい。その為にはまだまだ我慢が必要だ。そして僕も柔軟にならなくちゃ。コレはチャンスだ。兄さんと同行できて、しかもそれが家族の承認を得ている。

 そして、隣に座るカーム。この人は僕もまだまだ読めない。あれだけの〝力〟がありながらも、常識的な対応にこだわり過ぎるキライがある。暗殺者としては向かない性格かもしれない。でも、その〝力〟だけでも取り込めたらゾルディックにとっては福音でしかない。家族との連絡が取れない中、責任は重大だ。何としても引き込める様に努力していかなきゃ。なんなら伴侶になるかもしれない人だ。これからしっかり見極めていこう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 楽しく(?)備え付けの飲み物を飲みながら雑談をしている間、ヨークシンの郊外を抜けて、ドンドン都心から離れていく。車で3時間ぐらい走り、ようやく目的地に到着した。周囲は広大な自然が広がる山の麓である。アンダーソンの別荘でもあり、また、昔からアンダーソンが鍛錬に使っていた場所でもある。周囲一帯はアンダーソン所有であり、ウチでは当主以下の部下達も鍛錬に使用していた。開拓もできて一石二鳥、との事だ。こういった山での開拓兼修行はマイケルの代からの伝統らしい。アンダーソン家は幾つかこの様な修行場を所有していて、ここはそのうちの一つであり、それを今回借り切っている。

 ヴィンセントさんがドアを開けると、デカい別荘、というか寮に近い建物が目の前に広がる。

 

 

「さて…。着いたね。皆にはここで滞在してもらう事になる。まぁ降りてくれ」

 

「これは…デカい家だな」

 

「ウチの所有の修行場みたいなもので、寮みたいな造りになっている。さぁ、ヴィンセントさんが案内してくれるから行こう」

 

 

 

 我々はヴィンセントさんに案内されるままに別荘に入り、食堂に案内される。全員何故食堂? と思ったらしいが、これは事前に頼んでおいたのだ。そろそろ昼時だしな。腹も減ってるだろう。ヴィンセントさんは案内が終わると戻って行ったので、お礼を言っておいた。

 食堂は大人数が座れるような学食に似た作りになっていて、長いテーブルが複数設置されている。今回の使用者は我々だけなので、気兼ねなく座れる。

 我々も適当なテーブルに着く。メニューは今回指定していて、定番のアンダーソンパスタだ。他にも数多くのメニューがあり、飽きる事は無いだろう。しばらく待つと用意が出来たようで、食堂のおばちゃんが呼んでいる為、全員で取りに行く。アンダーソンパスタは全員口にあったようで、皆モリモリ食べている。

 

 

「そういえば、カームってパスタ好きだよね」

 

「あぁ。正確に言えば私はこのパスタが好きなんだ。ウチの伝統的な味だからな。私も作れるぞ」

 

「へーっ。家庭的なんだね!」

 

「料理はいいぞ。最高の趣味になり得る。今度食堂借りてやってみるか?」

 

「…オレはパス〜」

 

「ボクはやってみようかな…?」

 

 

 などと、雑談を交わしながら食事を済ませて、片付け終わったらそれぞれの部屋に案内する。

 

 

 

「ここが皆が入る部屋だ。それぞれ個室になっている。ネット環境も完備でフロ、トイレ付きだ。まぁ、整理整頓や掃除ぐらいはそれぞれでやってもらうが」

 

「カーム…大変ありがたいのだが、お代は幾らだ?」

 

「あぁ、金の心配はしなくてもいい。何故なら、ここでバイト出来るからな。ここは修行も出来て金も稼げるいい場所なんだ。滞在費はそこからさっ引くから大丈夫だよ。とは言え、来たばかりだから最初は私が貸しにしておく。早く稼げるようになってくれ。あぁ、レオリオの為にも医学書や入試関連の書籍は集めておいた。ウチは医学を志す者も多いからね。心おきなく勉強できると思う」

 

「…なるほどな。合理的だが…バイトとは?」

 

「ま、そのうち分かる。とりあえず、ゆっくりしてくれ。この施設や周辺を探索しててもいい。今日は移動初日だからゆっくり休んで、明日から開始だ。夕食は18時。食堂に遅れないようにな。メニューに希望が有れば食堂のおばちゃんに伝えてあげてくれ。私はちょっと今後について打ち合わせしてくる」

 

 

 そう告げてから、私は皆のもとを離れた。さて、ジョンに連絡しておくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カームが去ってから、皆は何となくゴンの部屋に集まった。

 

 

「なんつーか…至れり尽せりだな」

 

「あぁ。本当にありがたい事だ。だが、ここは自然が多くていい場所だな。修行はキツいだろうが楽しみだ」

 

「キルア! 探検行こうよ!」

 

「いいぜ! 家の外も見てくっか!」

 

「ボクも行く!」

 

「え〜。お前も来んのかよ」

 

「まぁまぁ、キルア。一緒に行こうよ」

 

 

 

 

 

「……行っちまったな。オレ達はどうする? …おい、クラピカ!」

 

「ん? あぁ…すまん。レオリオ。考え事をしてた」

 

「全く…さっきからボーっとしがちだぜ。…アレか。幻影旅団とかの事か?」

 

「うむ。仲間の緋の眼の回収や、旅団を追うためにも、裏社会の繋がりは必要だろう。だからこそ本当は私もマフィア辺りの雇われを目指していたが、まさかその大元に近付けるとは思わなかった。思わぬ幸運だったな。これを逃す手はない。修行を頑張って力を付けて、この家の中枢に雇われるようにしていこう、と考えている。そういう君はどうなんだ?」

 

「オレもなぁ…。医者の夢は諦められねぇ。だが、〝念〟を知った以上、習得しないっつー選択肢もねぇ。アイツはかなり熟練っぽいから期待出来るしな。それに、勉強もさせてくれるらしいから言う事は無いな。ありがたいこった」

 

「カームがどう考えているかイマイチ分かりづらいが、我々を仲間と思ってやってくれるならその恩は返せるようにしないとな。彼が言ってたバイトとやらをまずは頑張るしかないか」

 

「そうだな…。何やらされるか不安しか無いが、やるしかねーな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ジョンか? カームだ。今回()()を貸してくれてありがとう。修行には本当にいい場所だな。費用は前渡した中から使ってくれ』

 

『いいんですよ。カームさん。費用も本当は要らないんですがね…。なにせ、あそこはもう古いからしばらく使って無かったですし。まぁ使用人は何人か派遣しましたから好きに使ってください』

 

『ありがとう…。しかし、先程も概要だけ告げたが、勝手にゾルディックと取り引きしてしまって申し訳なかった。とりあえずアンダーソン暗殺の依頼を受けないか、カウンターをする事で合意した。その代わり、彼らの子息2人預かったけどね』

 

『他の有象無象ならともかく、ゾルディックには我々も手を焼いてましたからね…。むしろそんな好条件で手出しさせなくなったならありがたいですよ。大体前にそうするかもしれないって言ってたじゃないですか。その〝取り引き〟もカームさんにしかできませんよ。まぁこれでオークションも安心ですね』

 

『少なくとも、私がいる限りはアンダーソンには手を出させないよ。約束する。それと、例の部族の援助と交換留学はどうだい? こちらも任せっきりで申し訳ない』

 

『援助は今の所順調ですよ。最早ミテネの北側辺りでは彼等は大勢力ですね。いい連携が取れてます。そのうちリターンも返ってくる見込みですよ。それに彼等は大変優秀です。頭の回転もいいし、肉体性能も言わずもがな、ですな。現時点で商社勤めすら出来る程のポテンシャルを持つ人材の宝庫です。逆に未開地開拓などのノウハウを教えて貰ってWIN-WINですね。ただ…カームさんに会わせろとうるさいのが玉に瑕ですが』

 

『それは…本当に申し訳ない。私の資金プールはまだ余裕があるはずだから、それでよろしく頼むよ。どうも彼等は私を〝神〟扱いして崇め出すから対処が難しいんだ』

 

『任されました。まぁ経緯を考えれば仕方ないですな。諦めてください。こちらも上手くやってきますよ。我々にとっても利益のある話ですからね』

 

『本当に世話になるな…。ありがとう。とりあえず高速用のトンネルぐらいは開通しておくよ』

 

『いえいえ。どういたしまして。ではメールで予定地は送っておきます。こちらは気にせず楽しくお過ごしください』

 

『では、近いうちにまた連絡する』

 

『えぇ。待ってますよ』

 

 

 

 

 さて、とりあえずは大丈夫のようだな。本当にジョンには頭が上がらないな。私も気合を入れて明日から取り組む事にしよう。本当に楽しみだ。

 

 

 

 後は…あまり気が進まないが、()()を呼ぶか。女子は女子で上手くやってくれる事を期待しよう。どうなるか分からんが、最近はセクハラの判定も厳しいからな。会長がフォローしている事を期待しておこう。

 こんな事で悩める事もいい事だろう。あぁ…本当に楽しみだなぁ。


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