アンブレイカブルハンター   作:エアロダイナミクス

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76、四大行と「彼女」の合流

 

 

 

 初日から数えて3日。皆もこの修行に慣れてきたらしい。ただ、初日のデザート争奪戦は1週間に一度だけだ。夕方は筋トレタイムとなった。アレは毎回やると面白くないし、特別感が無くなるからな。それを伝えた時のカルトはこの世の終わりみたいな顔になって、私も一瞬揺らいだが、ここは心を鬼にしてダメなもんはダメだと断った。甘やかし、良くない。だが、カルトは甘やかしたくなるんだよなぁ…。これが妹属性ってやつか。いかんな。「彼女」の到着が待たれる。

 

 

 3日目の午後の瞑想にて、遂にレオリオが目覚めた。

 そして、やはり力強いオーラ…! 細胞一つ一つを連動させて、より効率的にオーラを生み出している。間違いなく初心者組では1番力強い。レオリオ、渾身のドヤ顔。今度はゴン達がぐぬぬとなる番だった。さて、そうなったら夕方の筋トレは中止して、早速四大行の修行に入ろう。

 

 

 まずは座学。念とはオーラを操る技術である事を改めて説明した。そして基本の四大行。《纏》、《練》、《絶》、《発》の説明をし、使用人の1人に《発》以外をやってもらった。彼は襲撃の人員の1人で、名はリベロという。28歳。熟練の能力者だがハンターではない。気さくな使用人でノリもいい。普段は寮の管理を他2人とこなしていて、ゴン達とも休憩時間にサッカーで遊んでくれる素敵なナイスガイだ。

 

 彼にお願いしたのは私じゃ参考にならないからだが、リベロさんは中々いい能力者で、実力もかなりある。いい見本だ。

 

 

 早速それぞれで《練》の修行に入る。カルトは出来るため、《練》を維持する訓練だ。まぁ大体2時間以上保つだろう実力はある。だからちょうどいいな。私も見て回って、苦戦している所はアドバイスするなどして、夕方の訓練は終了した。

 

 夜は夜で、レオリオにお願いして、人体の細胞に纏わる講義をしてもらった。彼にとっても勉強になるだろう。約1時間の講義だが、これがレオリオの《纏》の秘訣かとみんな真剣に聞いていた。

 もちろん、バイト代は出る。今日は例のパフェだ。こっそり自室に持って行ったら喜んでいた。しばらくは講義をお願いして続けて貰おう。次回以降は現金になるがな。

 

 

 

 

 何と彼らは1日半で《練》をマスターした。やはり習得スピードが早い。凄まじいな。実際。ここで系統の話をしながら水見式をやってもらう。原作通り、ゴンが強化系、キルアが変化系、クラピカが具現化系。そして、レオリオが放出系、カルトが操作系だった。これは知らなかったから驚いた。しかし、こうしてみると特質以外の全ての系統が揃ったな。面白い。ついでにクラピカは緋の眼だと系統が変化し、水の色が変わって葉っぱが回るという特質系になったのも確認した。これで全系統が揃ったわけだ。

 

 続けて《絶》の修行に入る。これに関してはゴン、キルア、カルトは言う事は無い。既に出来ていたしな。また、クラピカもある程度コツを教えたら出来た。レオリオは苦戦したが、細胞から発生するオーラを留めるコツを理論を交えて教えたら出来た。まだまだ精度は甘いが、1週間以内でモノにするだろう。《絶》の訓練がてら、寮内で隠れんぼなどをして遊んだ、もとい訓練したのは楽しかった。ちなみに最後まで見つからなかったのはゴンだった。彼はその日のメインの絶品ハンバーグを増やす権利が与えられた。

 

 そうして更に3日が経過した。基本的に午前はマラソンと念修行、レオリオの講義。午後は筋トレと念修行及び瞑想だ。レオリオの講義から更にイメージを深めて、オーラを生み出そうと瞑想も真剣に取り組んでいる。理解が深まると《纏》も徐々に力強くなっていくのが面白い。

 今はどちらかと言うと念を鍛える事に重点を置いた修行であり、皆ウキウキでやっている。今は《凝》の鍛錬に入っている。まだまだぎこちないが、だんだん早くなってきた。大体出来る様になったら、私が《隠》で指の先に作った数字を当てるゲームだ。1番遅い奴は腕立てをやってもらっている。確かこれ、「彼女」がやってた訓練だったな。丸パクリだが怒られないだろう。

 《凝》は、戦闘には必須の能力なので、しっかり鍛えていこう。

 

 

 そして…。4日目の夜に《発》以外の四大行習得を確認できたという事で、お祝いのパーティーを開いた。

 

「ゴン、クラピカ、レオリオ。『裏ハンター試験』、合格おめでとう!」

 

「『裏』?」

 

「そう。『裏』だ。念は大っぴらに試験内容にできないからな。実はコレはハンター十ヶ条という取り決めの2番目にもある、正式なものだ。ハンターたる者、最低限の武の心得は必須で、その最低限とは念能力である、とされている。今、君達は念の最低限を全員クリアした。よって裏試験は合格だ。おめでとう。私は今回皆の試験官役だったから、協会にも報告しておいたぞ」

 

「なるほど…。でも、念ってコレが全てじゃないでしょ? 《発》も習って無いし」

 

「その通りだ、ゴン。今のままではヒソカをブン殴るのも到底無理だし、クラピカも幻影旅団に勝てる訳もない。本来ならば、ここから先は君達で見つけろ、というのが一般的だが、今のままでは確実に死ぬ。よって、引き続き、私が指導を続けるが、良いか?」

 

「うん! お願い。どうせなら《発》まで行きたいし、これまでの代金もバイトで返さなきゃね」

 

「レオリオはどうする? 一旦勉強に専念するか?」

 

「いや…オレもトコトンやっておきたい。むしろ念を習得した方が勉強効率がいい気がするからな。ちょっと考えてる事があんだよ」

 

「なるほどな…。他の者もそれでいいか?」

 

「あぁ。ゴンがいいならいいぜ」

 

「ボクもそうするよ」

 

「私もだ」

 

「よし。では予定通り、念修行をやると同時にバイトも始めていこう。明日からはよりキツくなる。今日はゆっくり休んで、明日に備えるといい。食後にはスペシャルケーキも出るからお楽しみにな」

 

 

 

 カルトの顔が輝く。そういう顔を見るとほっこりするな。

 

 

 

 さて…そろそろ「彼女」が到着してもおかしくないはずだが…。まだかな?

 しばらく私も修行していると、使用人から連絡があった。着いたらしい。急いで迎えに行かねば。…怒ってないといいな。

 

 

 玄関に到着したら、リムジンから懐かしいゴスロリ服の女の子が降りてきた。そう。お分かりだっただろうが、「彼女」とはビスケット=クルーガーその人だ。ただ、その表情は…

 会長! ちゃんとフォローしたんだろうな!

 

 

「遠い所からはるばるようこそ。急に連絡して申し訳ありません。ビスケさん。久しぶりですね」

 

「ありがとうございます。カームさん。でも、あまりにも連絡が無いからてっきり忘れられたかと思いましたわ。あと、ハンター試験での事、よろしければ後で教えてくださるかしら」

 

 

 

 oh…。やっぱり若干お怒りだった! 確かに連絡遅くなったけどさ…。でも会長も悪いよ会長も。仕方ない。こちらでフォローしつつ、全ては会長のせいにしておこう。

 

 

 

「わかりました。まぁ立ち話もなんですから、上がってください。応接室に案内します」

 

 

 

 一応、この館にも書斎件応接室の様なものがある。当主級が修行する際に必要な場合が多いからだ。また、客人の対応もこの部屋で行う。

 使用人がコーヒーか紅茶を尋ね、紅茶と答えた。私はコーヒーをお願いする。

 

 

「まずは連絡が遅くなって申し訳ない。私も試験に向けて準備などで忙殺されて遅れてしまいました。ようやく試験も終わったので連絡した次第です」

 

「それはいいんですの。こうしてお会い出来ましたからね。でも…聞きましたよ。貴方の事」

 

 

 

 まずはお詫びから入る。しかし、やはり焦点はそこだよね…。

 

 

 

「私もみだりにいいふらす訳にはいかなくてですね…。貴女ならお分かりかと思いますが」

 

「そうですね。分かってます。全てはあのジジ…もとい、会長のせいですわ。全く…あの方ときたら。だからカームさんに怒っているわけではないですわよ。誤解なさらず。でも、連絡一本欲しかったのは本当ですが」

 

「そこは申し訳ないとしか。ですが、こうしてお会いすることが私の誠意だと受け取っていただきたい。貴女も会長に聞いたのでしょう? 私に関する事を」

 

「えぇ。聞きました。やはり貴方は…。ですが、今回はどうして私を()()に?」

 

「貴女に私から依頼があります。依頼内容は、私が今育てている弟子の共同育成、です。期限は、育成の様子を見ながらですが、全員が上位クラスになるまで」

 

「なるほど…。弟子ですか。貴方が教えるならば本当に幸運なコ達ですね。私は要らないのでは?」

 

「それが…私も昔1人教えただけで、しかも自己流です。人数も5人もいる。それぞれが大変優秀なだけに慎重にいきたくてですね…。特に、その中に女の子もいるから分からない事が多いのですよ」

 

「女の子!? …いえ、失礼しました。わかりました。しかし、報酬はいかがなさいますか?」

 

「逆にお聞きしますが、いかほどで?」

 

「そうですね…。私はこれでもダブルですし、資金は全く困っていません。私はハンターですから、自分の惹かれる物によって動くかどうか決めます。カームさん。私を動かしたいなら…お分かりでしょう?」

 

「なるほどね…そう来ましたか。わかりました。では、こちらをご覧ください」

 

 

 

 

 そう言って私は予め用意して置いた〝あるモノ〟を取り出す。

 

 

 

 

「こ、これは…!」

 

()()()で採れたモノです。当然、超希少ですよ?」

 

 

 

 私が取り出したのは、紫に妖しく光る結晶だ。元は原石の様な状態だったが、私がキレイにカットした。ダイヤ以上に硬かったから苦労したな…。アンダーソンで分析した結果、害が無いと判断されたものの一つだ。名を…

 

 

 

「輝晶石、と仮に名付けました。『これ』の特異な点は、まずその高貴な色と美しさ。渦を巻く様な文様に紫が仄かに光る。それなのに硬度は通常の宝石と一線を画す。同じ紫のアメジストと比べても、その輝きは歴然! 更に…手に取ってみてください」

 

 

 

 もはやビスケは目が釘付けだ。私に言われてハッとして恐る恐る手に取る。

 

 

 

「オーラを流してみてください」

 

 

 言われた通りにオーラを流すと…妖しくも美しい光が満ち溢れる! そのあまりの美しさにビスケは呆然としている様だ。よし! 畳み掛けるぞ!

 

 

「コレはオーラに反応して更に美しく光り輝く。世にも珍しい一品です。いかがですか? お眼鏡に適いましたか?」

 

「………」

 

「ビスケさん?」

 

「ハッ!? え、えぇ。これ程の物は見た事がありませんわ。素晴らしい一品です! わかりました。引き受けましょう!」

 

「ありがとうございます。では、〝それ〟は前払いで差し上げます。…ただし、分かってると思いますが、出所は絶対に秘匿してください。…後は、とりあえず、これからの滞在費はこちらで負担します。まずは部屋に案内しますが、明日から共に指導をお願いします。荷物を置いたら育成について打ち合わせをさせてください。時に、夕食はとられましたか? 簡単なものなら用意がありますから、ぜひ召し上がってください」

 

「何から何までありがとうございます。では30分後に打ち合わせをお願いしますね」

 

 

 そう言ってくれたので、私は彼女を部屋に案内した。言えない。〝アレ〟は異世界から戻ってきたあと、結晶地帯に迷い込んだ時にその辺にゴロゴロ転がってたモノなんて言えない。おかげで在庫はまだ山ほどある。バレないだろうしいいけど。光るから夜間に便利だったんだよな。あの時は結晶のデカいトカゲとか出て来て苦労したなぁ。一通り倒したあと、何かに使うだろうと思って周辺を採掘しまくったのはいい思い出だ。お陰で私の宝石リストは108以上あるぞ! 中にはヤバいのもあるけど。だからこそ輝晶石は逆に「光るだけ」だから問題ないだろう。出所はバラせないがな。でもビスケなら大丈夫だろう。

 さて、強力な助っ人をゲット出来た。修行が捗るな。もともと原作でもゴン達の師匠だから期待が出来る。それに、彼女は何か便利な能力を持ってた様な…。まぁ、おいおい分かっていくだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やったわね! 遂に辿り着いたわさ! ジジイにはムカついたけど結果オーライね。彼の依頼も私にとっては願ってもない事だったわ。渡りに船とはこの事よね。例の弟子も、彼がわざわざ選ぶぐらいだから相当優秀なはず。ジジイに聞いた後で調べてみたら、彼が昔教えたであろう唯一の弟子は、()()マイケル=アンダーソン! 今となっては伝説の念能力者だわ。彼がどの様に育成するかのノウハウを知れるだけでも儲けものね。楽しみだわ。

 そして…報酬をふっかけてみたけど、大正解だったわね! なんて呼ぼうかしら。キーちゃん? それともスーパーアメジスト略してスパメちゃん? あぁ…これだけで3年は闘える…。でも、まだまだ持ってそうね…。弟子の女の子ってのが気になるけど、絶対に落としてみせるわさ!




すみません…バイトまで行きませんでした…!

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