あれから2日間、ネテロ会長は修行に付き合ってくれた。夜になると手合わせという名の激闘が繰り広げられる。中々ハードではある。だが、私にとっては充実した3日間だった。最終日の帰る前に、会長には私から例のキメラアントの事について伝えた。
「何と……そんな奴らが来るとは…正に厄災級じゃの。時間と場所は分からんのか?」
「えぇ…。本当に申し訳ない事に。ですが近々というのは確実です。私は『それ』が発見され次第、即討伐に向かいます。被害を最小に抑えるつもりですが、0にするのは厳しいかもしれません。その場合はそれなりのお覚悟をお願いします…」
「ふむ…。分かった。事後、事前処理は任せい。ワシも被害が広がらん様に対策を練っとく。万が一も考えてワシも更に鍛えておこう。…どういう能力か分からんが、助かるぞい」
「ありがとうございます。私はこの世界が好きだ。滅びてほしくない。だからこそ、今後も人類に対する厄災級の事態になれば私が潰しに行きます。会長もその様な事案が有ればすぐ私に連絡をください」
「それは助かるのぅ。……そうなれば、まさしくお主は『厄災ハンター』じゃな」
「ふふ…。そうかもしれませんね。ですが非公式でお願いしますよ?」
「分かっとる。ではその時は頼んだぞ、『厄災ハンター』。『
会長は名残惜しそうに帰って行った。次に会う時はゲーム内かな? ゴン達には私がジン制作のゲームを持っている事はまだ秘密だ。自分の《発》を形に出来たらその存在を匂わせてみよう。そう言えば、ジンさんはゴンの故郷にヒントを置いてきたとか言ってたな。ある程度修行の目処がたてば、向かってみるのも悪くない。弟子達も自分の《発》開発に余念が無いらしく、厳しい基礎修行をこなしながらも皆一生懸命に取り組んでいる。私も時にはアドバイス等をしたり、修行法を教えたりしながら充実した日々を過ごした。
そして、20日ほど経った頃…
ボゴン!!
「やったー!!!」
「遂に開通したな!」
遂に、トンネルを掘り終えた。…早いな。予想を遥かに上回るスピードだ。実に全長約20キロの大トンネル! 見事だ。それに加えて基礎的な修行やバランス訓練、そしてそれぞれの系統別修行も大分こなせる様になってきている。
最早基礎的な力は中堅ハンターぐらいなら軽く上回るであろう。そして、オーラ量も全員中堅ハンター程度ならある。平均で潜在オーラ約20000程度、といった所か。カルトに至っては、50000オーラぐらいはありそうだ。
そして…それぞれの《発》も完成が見えつつある。まずはゴン。彼は強化系ゆえ非常に悩みながらも、自己強化を極める方向に向かった様だ。レオリオの講義と私の〝聖光気〟の変身から思い付いた様だが、全身の細胞から出て満遍無く強化するオーラの一部を
彼はもう一つ能力を考えていて、【ジャン拳】というのもあった。ぶっちゃけ念を込めた拳による攻撃だが、溜めの間無防備になる代わりに強烈なオーラを引き出せる。グー・チョキ・パーの3種類あるらしいが、コレは原作で見た記憶があるな。2つの能力のどちらかで悩んでいたが、強化系だし、折角だから両方やったらというアドバイスをしたら喜んで取り組んでいた。特に【
キルアはこの1ヶ月でオーラを電気に変化させた。これも原作で見たな。極めるとヤバい性能になる奴だ。充電が必要なのがネックか。私なら解決出来るアイテムを持っているが、そう甘やかすのもどうかと思うので試行錯誤してもらおう。現在彼は、身体の細胞から発する電気信号をどうにか増幅し、バッテリーとして使う事を考えている様だ。ゴンや私の変身を面白がっていた所を見ると……どうなるか見ものだ。
クラピカは、鎖を具現化していた。指に鎖を具現化し、それぞれ特殊能力を備えるという、原作でも見た奴だ。彼は何と将来的には10本全てを使う能力にしたいらしく、メモリは大丈夫かと思ったが、本人としては多分いけそうだとの事。本人の能力者としてのレベルアップも大きい為だろう。基本的には片腕を斬り飛ばされた時や、使えなくなった時の為にスペアとして両方で使える様にしたいらしく、作る能力は5個プラスαだ。現在能力もある程度完成している。大筋では原作と同じだ。整理してみよう。
・親指…【
原作通り、強化系の回復役。鎖を当てる事で患部を癒す事が出来る。緋の眼状態なら尋常じゃない回復速度になる。先端は十字架。
・人差し指…【
コレはオーラを吸収する奴だ。緋の眼状態だと《発》まで吸収出来るとの事。試しに私も吸って貰ったが、余りにも私のオーラが多すぎて破裂しそうになったらしく、断念した。まぁあまり期待してなかったし、上手くいったらそれはそれでヤバいのでよかった。先端は吸うための注射器。
・中指…【
戦闘用の鎖。当初クラピカはコレともう一つに旅団専用の命懸けの誓約を付けようとしていたらしいが、珍しく彼が相談して来た為に、相談に乗った。私とビスケとの協議の末、普通の拘束用でも十分強いという結果となり、特別な誓約は付けなかった。ただ、緋の眼限定に限り、両手の中指の両方で相手を縛る事で強制的に相手の《練》までは解除するという性能になった。…フラッグの効果を参考にした様だ。また、彼の感情によって鎖の性能が変わるとの事。後で尋ねたら、復讐はもちろんするが、それに縛られて自分の未来を閉ざしてしまうのは本末転倒だと思ったらしい。また、焦って将来的に使えなくなる念を作るよりも、地力を上げて対処出来る様にしたいとの事だった。…彼にもこの期間で少し将来を見据え始めたのは嬉しい事だ。先端は鉤爪。
・薬指…【
集中力を増すことで、ダウジング効果を発揮する。探し物やウソ発見などに役に立つ。防御にも使える非常に便利な鎖。正直これ一本でもかなり使える。また、緋の眼限定で操作系の複合により、催眠効果をもたらす事も出来るらしい。中指とのコンボが期待出来る。先端は球。
・小指…【
放出・操作系担当。まだまだ精度は甘いが、中指とのコンボで必殺の一撃になりうる。その強さは修行次第で変わるが、修行を重ねて使いこなせれば凄まじい強さを発揮する。普段は刺突用だが、緋の眼限定時の効果は、相手の体内に刃を刺して侵入させて掟を課し、相手が掟を破れば自動操作で体内の臓器を抉りまくるというとんでもなくヤバい奴だ。当初は標的の心臓に刃を刺し、掟を宣告した上で遵守させるという能力だったが、私から、心臓や脳を破壊した程度では死なない奴もいるという話を聞いてこちらに切り替えた様だ。私が実際そうだし。現時点でも緋の眼ならある程度使える性能。先端は短剣。
・【
緋の眼前提の超必殺技と言うべき技。両手全ての鎖を解放し、敵の周囲360°を囲み、逃げられなくした後、そのまま縮めて体内外から鎖まみれにして圧殺する技。相手が転移系で無ければ逃げられない上に、どこまでも追ってくる。発動する時はその場から動けず、手も使えなくなる為に無防備になるが、それを差し引いてもヤバい。現在、殆ど出来ない為、修行中。完成したら昔の私でもモロに喰らえばちょっとヤバいかもしれない。本当に完成するかは疑問だが。
……何というか…強すぎない? というか緋の眼の性能が強すぎる。正にワンマンアーミーの極みである。彼としても仲間との修行の日々や、私達の闘いを見て、思うところがあった様だ。この数ヶ月で私もそれとなく彼とは様々な話をしていたし。
多少は緋の眼前提になってしまったが、原作の様な勿体無い能力にならずに済んでいると思う。まだまだ未熟だし、性能も完成には程遠いが、修行によって強度や威力が更に増すはずなので、緋の眼が無くとも使える能力になる様に出来る限り強くしてあげたい。緋の眼自体が彼のリスクとも言えるし。恐らく寿命を削る系だと私は見ている。おかげで今でも緋の眼状態なら、旅団員をタイマン限定でいい勝負が出来るはずだ。
レオリオは当初の予定通り、医療に特化した能力にした様だ。だが彼は放出系だ。よって非常に悩みつつ試行錯誤していた。結果、彼が出した答えは、オーラによる治療だ。そのままだと思われるが、患部の細胞にオーラを浸透させて診察した後、病原菌やウィルスを操作して排除、又は無害化する能力、【
これは彼の診察を必要とし、豊富な医療知識が要求されるが、非常に便利な回復能力と言える。前者2つは流石に至近距離で行う必要があるが、最後のは、パッと見で怪我の程度が分かれば
ガチガチの戦闘タイプではなく、サポート特化だが、例のアンソニーの様に戦闘にも使える可能性がある。どう進化していくか見ものだ。…仲間たちは5人中2人はセルフ回復持ちだが。病気や毒にも対処出来る所が彼のスペシャルポイントだろう。
カルトだが…彼女は最早一流の能力者と言ってもいい。《発》も出来ていたしな。師匠役の私にだけその概要を教えてくれた。彼女の能力は【
また、この能力の最も凄いのは受けたダメージや呪いを紙人形に移す事が出来る点だ。ある程度準備が必要だが、戦闘時に受けた特殊能力や大ダメージを一度だけ身代わりしてくれるらしい。これは新しく開発した能力らしく、ようやく完成したとの事。素晴らしい。戦闘時の生存率を大幅に引き上げる事が出来る。手放しに褒めたら喜びながら近くにすり寄ってきた。まるで猫だな。とりあえず頭をワシワシしておいた。
さて、いよいよトンネルも開通し、バイトも一旦終わりを告げる。そろそろ対人のやり方に移行していかなければ。そのタイミングで、クラピカが私に話があると言ってきた。
「カーム…。お願いがある。私を君の家で雇って欲しい」
「……なるほど。《発》も大体完成が見えて来たからか」
「その通りだ。アンダーソンファミリーは裏社会に強い影響力を持つ。正直に言ってしまえば、私の目的も達成しやすいのだ。その代わり、組織には絶対の忠誠を誓う。私の能力は組織にかなり貢献出来るはずだ。この通りだ、頼む!」
彼は私に土下座をしようとしたので、慌てて止める。
「ふむ…君の気持ちは理解した。ドンに掛け合ってみるが…ドンがどう判断するかだな。それに、マフィアは綺麗事ばかりじゃ回らない。君にもキツい仕事が来るかもしれないがそれでいいのか?」
「全て覚悟の上だ。私は目的を遂げるまでは如何なる困難も辞さない。それに、私は自分で言うのもアレだが『使える』と思う」
「分かった…。ただし! 私は君をドンに会わせるだけだ。後の交渉は君がやれ。私は一切口を出さない。それが条件だ。いいか?」
「もちろんだ。恩に着る。よろしく頼む」
「よし…。では早速だが、ドンに会いに行こう。直ぐに発つ。用意をしてくれ」
「ありがたい。直ぐに準備する」
そうして私とクラピカは走ってヨークシンの家に向かう。約3時間。車とほぼ同じスピードで行けるとは成長したものだ。さて、アンダーソンの屋敷に到着した。我々はヴィンセントさんに案内され、応接室へ向かう。ジョンは座って待っていた。
「待っていたよ。とりあえず掛けたまえ」
我々はジョンの目の前に座る。
「おかえり、
「ただいま、
「そうか。それは良かった。ま、お前の資金から出てるから何も問題は無いがな。それで? 彼がそうか?」
「あぁ。そうだ。弟子の1人で将来有望だが、どうしてもウチに入りたいって聞かなくてね。ほら、自分で挨拶を」
私が促し、ジョンも頷く。
「発言の許可を頂き感謝を。私はクラピカといいます。この度は直接お会いできる機会を与えて頂き、望外の幸運を感じています。私はカーム氏のもとで念能力を学び力を得ました。この恩を返す為に、是非このファミリーで働かせて頂きたい」
しばらくジョンは沈黙した後、話し始める。
「ふむ……。0点だ。失望したよ、クラピカとやら。どうやら君は勘違いしているようだな。カームのコネで会ってやったが、普通だったらウチに雇われたいなら例外無く下部組織の下っ端からのスタートだ。信用のほとんど無い、どこの馬の骨か分からん君を雇う事に我々にどんなメリットがある? 我々はファミリーだ。それだけに非常に結束が固い。だからこそ、マフィアはウソを嫌う。今の君の発言を聞いてみれば、この私に対して欠片も本音を喋っていない。私を舐めるなよ、小僧」
ジョンがオーラを放ち、威圧をかける。彼は現在世界最高峰の1人だ。しかも職業柄、相当な修羅場を潜っている。生半可な威圧では無い。冷や汗をかきながらも、クラピカは真正面から受け止めた。胆力は中々のものだ。そして…彼も覚悟を決めた様な顔をした。
「……大変失礼な事をしてしまった。ここに謝罪する。……私には…どうしても成し遂げたい事がある。私はクルタ族だ。昔、私の集落が緋の眼を狙った幻影旅団に襲われて全滅した。…世にも残酷な方法でだ。だから私は復讐したい。そして、奪われた仲間の眼を回収したい。それにはここで働く事が私の目的に1番近づく方法だと感じた故、ここで雇われたい。これは私情によるものだが…私は雇われた以上、このファミリーには絶対の忠誠を誓う。そして…すぐにでも私はこのファミリーに利益を齎す事が出来る」
「ほぉ……言ってみろ」
「近々、十老頭主宰のオークションが開かれるのは知っている。だが、私の仇…幻影旅団はそこに襲撃をかけるだろう」
!!?
驚いた…。
「……それは確かか?」
「ほぼ間違いない。方法は…私の調査と能力とだけ」
「……成る程な。多少は役に立つ様だ。確かにその情報は超極秘ながらあった。確定では無いがな。だが、それを修行しながらも自力で得るとは中々の物だ。良かろう。君がある程度有能なのは分かった。私の権限で試しに君を仮に雇う事にしよう。あくまで仮採用だ。最後に2つ、私が課す試験を超えられたら本格的に採用しよう」
「分かった。何をすれば良い?」
「まずは君の力を見せて貰おう。中庭の修練場へ」
我々が移動すると、リベロさんがいた。彼は今は別の人物と交代して本家に使用人として詰めている。なるほど。彼なら試し相手には丁度良い。クラピカは知ってる人物で驚いていた様だ。
「今回はルール無しの一本勝負だ。決着はお互いでつけろ。勝負の立ち会いは私が務めよう。では、始めろ」
「よぉ。しばらくぶりだな。ちょっと前までヒヨッコだった癖に随分と育った様だなぁ。だが俺っちもドンの前で無様は見せられねぇ。悪いが全力で行くぜ。恨むなよ。ヤバそうになったら『まいった』すれば見逃してやるぜ」
「私の方こそ負けられん。恨むなよはこちらのセリフだ。私も殺すまではせん。直前で止めてやろう」
「そこまで言えりゃ上等だな。…じゃあ始めるか」
お互いに《堅》をする。リベロはやはり中々の術者だ。顕在オーラが3000ぐらいある。潜在だと50000以上か。ほぼダブルスコアだな。緋の眼でトントンぐらいか。
リベロが仕掛ける。念弾を作り出し、放つ。凄まじい速度でクラピカに迫るが、クラピカは薬指の鎖を鞭の様に操り、弾を弾く。アレを弾くとはやるな。既に緋の眼になってる様だ。だが、リベロは次々に念弾を生み出しては向かわせていく。クラピカは防戦一方に見えるが、弾きながら中指の鎖で反撃する。リベロも躱さざるを得ず、攻撃を中断して飛び退いた。
そして今度は念弾を蹴って撃ち出す。これは威力とスピードが段違いだ。恐らくこれが彼の本命だろう。流石のクラピカも避けて対処しようとしたが、弾がカーブして迫る。ギリギリで何とか躱すと、今度は先程弾いていたにもかかわらず空中に残っていた念弾にバウンドし、クラピカに跳ね返る! クラピカは腕の周りに鎖を出してガードするも、押し込まれ、かなりのダメージを貰った様だ。そして…ガードした腕が垂れ下がる。
「ハンドだぜ…。イエローカードだ」
「これは…!」
「テメーの片腕はもう使えねぇ。能力もな。もう片腕も次に喰らったら使えなくなる。そしたらレッドカード。PKが始まる。そこまで来たら…最悪死ぬぜ?」
「……ただ片腕が使えなくなっただけだ。まだまだこれからだ」
「その威勢はいつまで保つかな?」
リベロが新たな念弾を生み出す。今度は2個だ。だが、クラピカはその間に反対側の手の中指の鎖で反撃を試みる! しかし、制御が甘く、狙いが外れて地面を叩いてしまう。…いや、アレはわざとか。土埃が舞い、一瞬視界が切れる。だが、リベロは関係ないとばかりに弾を蹴り出そうとして…いつの間にか足に絡まった鎖で地面に引きずり倒される。《隠》だ。そのままクラピカが鎖を辿って急接近してタックルし、馬乗りになる。決まったか? クラピカの肉体性能とオーラでリベロは抵抗するが中々抜け出せない。最初の2発は蹴る用だったためか浮いたままだ。
周囲に念弾が浮かび上がる。自分ごと攻撃する気か。リベロもいい根性してる。しかし、クラピカは慌てずに薬指から鎖を出して顔の前に垂らして揺らし始める。
少しして、リベロが表情が抜けた顔をして「まいった」と宣言した。なるほど。催眠術か。
「そこまで! 勝者、クラピカ!」
ジョンが宣言する。そこで、クラピカは鎖を解除し、リベロを起こす。リベロもハッとして起き上がり、能力を解除した様だ。クラピカが治療をしながら話しかける。
「……
「いーや、全力でかかったさ。少なくとも
「…シンプルながらも威力と効果は恐ろしい。貴方のヒントが無ければそのままやられた可能性もある」
「ありゃヒントじゃなくて制約だ。片方奪ったら次に繋げるためにイエローカードを宣告せにゃならん。ま、多少ヒントは付けたがな。お前さんの鎖も中々いい能力だな。具現化ってのは分かってたが、《隠》まで使えるとは思わなかったし、蹴る直前を狙われたから避けきれなかったぜ」
「…ありがとう。いい試合だった」
「決着は付いたな。双方、よくやった。真剣勝負は技量にかかわらずいいものだ。…クラピカとやら。ある程度の力は証明したな。この場で2つ目の試験を言い渡す」
「………」
クラピカが緊張した顔で続きを待つ。
「君は、自分の探し物がどれだけの値段がつくか知っているかね?」
「……それは、関係ある話か?」
「あるから口を挟まず答えるがいい…。次に余計な口をきいたらこの話は無しだ」
「…すまない。末端価格で最低5億ジェニーとは聞いている」
「その通り。今から3か月以内に5億。それだけ用意して持ってこい。それが2つ目の試験だ」
「!? そんな大金…」
「無理なら良いのだぞ? 君が言ったのだ。今すぐにでも我々に利益をもたらす事が出来ると。期限は8月5日だ。この件に関しては、カームも手助けや援助を禁じる。監視にリベロをつけよう。カーム、いいな?」
「OK。分かったよ、父さん」
「では、解散だ。クラピカよ。健闘を祈る。これが出来れば君の採用を認めよう」
◆
帰路、彼は一言も喋らず思案しながら走っていた。ちなみにリベロも併走している。大方先程のジョンの試験について考えているのだろう。私から話しかけてみる。
「クラピカ。先程は初の念での戦闘だったが…どうだった?」
「……あ、あぁ。すまない。考え事をしていた。思った以上に消耗が激しいな。そして、相手の真価を発揮させてはいけない事は学べた。…私もまだまだ課題が多い」
「その通り。それが分かっているならばとやかく言う事はやめよう。…君も考える事は多いだろうからな。ドンからの試験について、とかな」
「……まぁ…そうだな。カームの手助けを借りないのは当然だが…3か月以内に5億、か…」
「まぁ悩むがいい。私からはこれ以上なんとも言えん。だが、1人で考えるのは限界もある。私は言えないが、偶には人に頼る事も重要だ。もしかしたら突破口が開けるかもしれんからな」
「……? カームに頼らないのは分かるが……人に頼る?」
「………全く。君の悪い所だ。君は自分が思っているより
クラピカは仲間を失った影響か、1人で何とかしようとしすぎる。まさか同じ窯の飯を食った仲間を頭から外しているとはな…。これもいいきっかけになるだろう。
……私も昔そうしていれば、あの様な…。いや、よそう。状況は違うが、クラピカが同じ様な道を辿らない様にする。それが私の役目でもある。私も彼に、あぁは言ったが偉そうな事は言えないな。だが、今はジョンとファミリーに頼りっぱなしだ。会長や、ジンさん、ビスケにもだ。そして、私はその幸運を忘れない様に、そして少しでも返していかなければならない。
それが私の生きる意味でもあるからな。
◇
『ジョン、ありがとう。無茶を言ってすまない』
『いえいえ。楽しかったですよ。貴方の父役になれるとは、人生面白いものですな。そして…彼は有望ですね。少しばかり私情に囚われ過ぎるキライが有りますが、十分幹部級の能力がある。彼の目的が終われば、ファミリーにとって素晴らしく優秀な人材になるでしょう。アレで念を習い始めて4カ月とは…。末恐ろしい』
『彼は逸材だよ。念もそうだが、頭も抜群に切れる。胆力もある。私も彼の成長が楽しみだ。それに、彼が襲撃を予言したのには私もビックリしたよ』
『全くですな。少し計画の修正が必要かもしれませんね』
『あぁ。折角だから彼も今回のパーティーに加えよう。我がファミリーに仇なす者には容赦はせんが、成長の場としても申し分無いしな』
『ふふ……奴等の慌てふためく姿が楽しみですなぁ。私も出番はあるかな?』
『おいおい。ドンはどっしり構えていてくれよな…。まぁもしかしたらあるかもしれないけど、万全の状況で対応しよう』
『ま、楽しみにしておきますよ。では、また…』
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【
使用者:リベロ=マッケンジー
・放出系能力
念弾を撃ち出す能力。ただ放出する念弾とは別に、専用の念弾を術者が蹴る事により圧倒的に威力が増す。ある程度操作も可能。また、放出して弾かれた念弾を周囲に浮かせて、蹴る念弾をバウンドさせる事も可能。特筆すべきは、蹴った念弾を手でガードした場合、その手が《発》ごと使用不可になる。その際、イエローカードを相手に宣告する事で次の段階に入る。
【PK】
イエローカードの状態で、更にもう一つハンドを貰ったら、両手が《発》ごと使用不可になる。また、その状態でレッドカードを宣告されると、同時にその場から動けなくなり、リベロの計5発の念弾キックをオーラのガードのみで受ける事になる。
相手が耐え切ったら腕ごと能力は解除されるが、リベロの技量的に凄まじい強さの念弾(レイザーの球投げに近い)の為、防ぎきれた者は中々いない。
〈制約〉
・特殊能力は蹴る事でしか発動しない。
・攻撃に直接手を使えない。
・特殊能力の発動後、次の段階に進む為には宣告が必要となる。
能力故、近距離が弱点ではあるが、そこは当然本人も分かっており、蹴り専門のカポエラの様な体術も習得している為、安易に飛び込むのもNGではある。よって、足を封じて飛び込んだクラピカの戦法は大正解である。