アンブレイカブルハンター   作:エアロダイナミクス

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82、いまさら天空闘技場

 

 

 

「あるぜ。大金稼げるトコ」

 

 

 あれからクラピカはしばらく1人で悩んだ様だ。その姿を見るに、まだまだ彼には一般人の感覚が残っているみたいだな。

 彼は悩んだ末…私の助言を思い出し、ゴン達に相談したらしい。すると、解決方法をキルアが持っていた。

 

 

「修行も出来て、カネも稼げる。天空闘技場って言うんだけどな。お前なら今から行けばギリギリ何とかなりそうだぜ?」

 

「本当か!? 仮にライセンスを質に入れたとしてもそこまではならなかったが…」

 

「おいおい、勿体ねー事すんなよ。んな事しなくても大丈夫だろ。多分。万が一足りなかったらオレが貸してやるよ」

 

「オレも!」

 

「クラピカも水臭ぇな。困ってんならすぐに言ってくれよ。しっかし…就職する為に5億か…とんでもねー世界だな」

 

「……横紙破りをするからには、それだけ役に立つ事を証明しなければならない、という事だろう…。ありがとう。資金調達の目処が立った。直ぐにカームに言って出発する」

 

「久しぶりに行ってみるか。バイトも終わったし、金稼ぎもここらでしとかねーとな」

 

「キルアは行ったことあるの?」

 

「あぁ。6歳の頃な。200階まで行ったら戻って来いって放り込まれたぜ」

 

「キルアの実家もヤベー所だな…。まぁカネは幾らあっても困らねーからな。オレも行こう」

 

「兄さんが行くなら…ボクも行く」

 

 

「みんな…ありがとう」

 

「な〜に、気にすんなって! そろそろここ以外も見てみたいしな」

 

「楽しみだね!」

 

 

 

 

 

 と言う会話があったようで、全員で出発する事になった。まぁ正解の1つだ。というかむしろ想定内だ。上手くいったと内心ほくそ笑む。当然だが、私もビスケも着いて行く。ついでにリベロも。

 クラピカが天空闘技場直通の高速船のチケットを予約すると、リンゴーン空港に出発だ。これまでお世話になった寮の片付けを全員で済ませ、使用人達にお礼を言い、出発する。

 しかし、天空闘技場ね…。記憶が曖昧だが、原作では「奴」が出て来た気がする。確かにあのバトルジャンキーにはお似合いの場所だ。時期的に「奴」がいるかどうか分からんが…もしいたとしたら面倒だな。だが、ゴンのこだわりを解消出来るかもしれない。どうなるのか分からんが、行ってみれば分かるか。今回の船旅は高速船という事もあって、15日程度で着くらしい。船旅の中でも出来る修行を考えなければな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 船の中では、《練》を伸ばす修行をしたり、船でもできる系統別の修行や、それぞれの《発》の開発を行ったりしたが、これまた飛躍的に実力が伸びた。まず、《円》が全員出来る様になった。精々4、5メートルだが、最低でもそれだけ有れば十分だろう。不器用なゴン、キルア、レオリオは苦戦していたが。クラピカは小さい部屋なら覆える様になったし、カルトに至っては20メートル四方まで伸ばせた。

 また、それぞれ最低5時間は《練》を持続出来る様になったと言えば、成長度が分かるだろうか。数値にすると、平均で約35000オーラぐらいか。数値的には最早ルーキーでは無いな。特に、実戦を経験したクラピカの伸びが凄まじい。オーラ量で言えば、弟子内で2位につけている。緋の眼になるとトップだ。ちなみに変身が出来るゴンがマジで伸びまくって3位。その下にキルアとなる。レオリオは4位だが、彼でも中堅以上はあるので問題ないだろう。この頃本格的に勉強しだしたしな。キルアはゴンに負けたのが悔しいらしく、必死こいて修行に取り組み、僅差、というかほぼ同じぐらいまで伸ばした。いいライバル関係だ。

 

 そして、それぞれ《発》の精度も段違いに上がった。ゴンはオーラに余裕が出てきて、変身時もオーラが操れる様になってきた。また、ジャン拳も、グー以外の斬撃と放出が安定して出る様になった。変身といってもパッと見、姿形は変わらないから実は厄介かもしれない。

 キルアは、電気のオーラを自分で発電出来る様になった。何を言ってるか分からないかもしれないが、実際出来たのだからしょうがない。1番電気信号を発する脳から発電出来る様に、頭にバッテリーを具現化したのだ。金属のサークレットの様な兜で、額に目玉みたいな意匠がある。これは彼が好きなヒーロー物から取ったらしい。まだ発電の為に時間がかかるが、その内全身にバッテリー兼鎧の様な物を作りたいらしい。彼もノリノリで考えているし、そっと見守ろう。

 クラピカ、レオリオの両名も順調だ。これはもしかして…全員幻影旅団とある程度闘えるレベルになるか? まぁ圧倒的に実戦不足だからなんとも言えないがな。

 

 

 

 

 そんなこんながあって、ようやく天空闘技場に到着した。今更来るとはな。私も原作の大筋は覚えていても、詳細までは忘れている。確か原作では速攻でここに来て念を覚えたと記憶しているが…今はたっぷり私が修行して、全員念を覚えちゃったからなぁ。歴史が変わっちゃったな。いい方に変わってるといいが。

 キルアがシステムについて説明してくれた。一階からスタートして、後は勝つごとに10階単位で上がっていくシステムだ。何となく思い出したな。キルアが200階で止められたのは、そこから念能力が出て来るからだろう。それならそれで都合がいい。ここで一つ。修練の為にある枷を課す。それは……。

 

 

 

「おい! カーム! ()()()って、どういう事だよ! 動けねーだろ! アホか!」

 

「しかもご丁寧に低酸素…死ぬわ! こんなん!」

 

「だが、死んでいないな。それだけ言えれば十分だ。修行が終わったとは誰も言ってないしな。どこだろうが修行はやる。それがカーム流だ」

 

「私もやるのか……」

 

「当たり前だろう? クラピカ。君の目的からすればまだまだ甘いぐらいだ。君も強くなる為の時間があまりない事ぐらい分かっているだろう? というか、これは対戦相手の為でもある」

 

「? どういう事?」

 

「あ〜。分かった…。ゴン。お前、もう既にアレになればウチの7の扉ぐらい開けられるだろ? その力をちょっとでも一般人にぶつければ…」

 

「ぶつければ…?」

 

「潰れたミンチの出来上がり、だ」

 

「………それ、ホント?」

 

「そうだな。キルアの言った事は間違ってない。それに加えて、一般人にオーラを纏った攻撃をしたらより酷くなる。万が一生き残っても、念に強制的に目覚めてオーラが出尽くして死ぬ。よって、参加する者は200階までは《纏》すら解いて挑め。そこまで行ったら解放してやろう」

 

「おいおい、マジか…」

 

「大マジだ」

 

「……まぁ、カームの言う事は間違いでは無いわね。アタシでもそう指示するわ」

 

「それでも参加するか?」

 

 

 

「…私はやる。何があろうともやらなければならない」

 

「まぁ修行だしね。オレもやるよ」

 

「しゃーねーな。やるか」

 

「クラピカの為にじゃねーぞ! オレの為に参加する!」

 

「ボクも…」

 

「みんな…」

 

「よし。全員参加だな。では登録に行こうか」

 

 

 

 

 

 全員が一階の受付に並ぶ。長蛇の列だ。2時間ぐらい並び、全員登録を済ませると、早速一階の闘技場で全員試合だ。

 なんだかんだ言って彼等も、20倍重力下である程度動けているから脅威的な身体能力と言えるな。

 さて…私はビスケとリベロと観戦しよう。リベロが「旦那も相変わらずエグいっすね…」とか言ってたが、先の事を考えれば今やらないとダメだからな。

 

 一階の試合はアッサリと終わった。レオリオとクラピカ以外は子供に見えるから舐められてたが、それぞれ一撃で相手をのしていた。

 …ま、150階までは20倍でもこんなもんだろうなぁ。パワーや防御力は据え置きだし。それぞれが50階行きを宣告され、移動する。

 

 その日のうちに2回目の試合が組まれる。同じ様な繰り返しだ。結局この日はここで終わった。

 その日はホテルに泊まり、次の日からは、ガンガン試合をし、階級を上げていく。やはり大したハンデにもならないか。まぁそりゃそうか。大体15倍までは普通にやってたしな。ただ、90階でカルトと対戦した者だけは別だった。

 

 

「押忍!」

 

「……それは挨拶?」

 

「自分、ズシと言います! お名前を教えて貰ってもいいですか!?」

 

「カルト…。時間が惜しい。早く始めよう」

 

「カルトさんっすね! よろしくお願いします!」

 

 

 

 ズシが構えを取る。ほぉ…。《纏》をやってるな。あの年齢で大したもんだ。それに、隙のない良い構えだ。ビスケも反応した。

 

「あれは…心源流の構えね。…もしかしたら師匠は知り合いかもしれない」

 

「ふむ…。この辺の階の奴よりは強いか?」

 

「うーん…。あの年齢だし。基礎もまだまだみたいだから無理じゃないかしら。ほら」

 

 

 ちょうど、ズシが仕掛けて、カルトがガードしたところだ。直後のカルトのフェイントに反応してしまい、敢えなく腹部にデカイのをもらってしまっていた。ま、そりゃそうか。ダウンでポイントを取られる。だが、流石に念能力者。起き上がってきた。だが…起き上がったのを確認したカルトが急接近してボコボコにして吹っ飛ばしまくり、結局TKOとなった。負けた彼は何故か満足気な顔をしていた。

 

 

 

「カルトさん! すっごい強いっすね! 自分、感動しました! 是非連絡先を教えてください!」

 

「おい、カルト。なんだコイツ?」

 

「あ、兄さん。さっきの対戦相手。念能力者っぽくてしぶとかった」

 

「お兄さんですか! 自分、ズシって言います! よろしくお願いします!」

 

「暑っ苦しいなー。でも、その歳で念能力者って中々やるな」

 

「すごいねキミ! オレ達も苦労したのに」

 

「みなさん『念』を修めてるんですね! あまり歳も変わらないのにますます凄いっす! でも、知ってるのにどうしてやってないんです?」

 

「あぁ。オレ達はハンデ付けられながらやってんだよ。鬼や悪魔みてーな奴からな」

 

「…その鬼や悪魔みてーな奴とは、私の事かな?」

 

「げぇっ! カーム! とビスケ!」

 

「ほぅ。まだまだ余裕があると見える。更に増やすか?」

 

「アタシまで同じ扱いとは解せないわさ。これはお仕置きが必要かしらね?」

 

「い、いや、やっぱりスゲー師匠だよな! なぁ、ゴン!」

 

「そうだね! 2人は凄いよ!」

 

 

 

 …まぁいいか。これも師匠の特権だ。

 

 

 

「君がズシ君だね? いいオーラをしてる…。師匠は誰かな?」

 

「はっ、ハイ! ウィング師範代の下で修行をしてます! 師範代も凄い方です!」

 

 

 冷や汗をかきながら答えるズシ。威圧はしてないんだけどなぁ。そう思っていたらビスケが反応した。

 

 

 

「へぇ。あのひよっこウィングがねぇ。確かに弟子を取ったとは言ってたけど」

 

「あの…あなた方は……」

 

「あぁ。すまない。彼等の師匠をしている、カーム=アンダーソンと」

 

「昔ウィングの師匠をやってたビスケット=クルーガーよ」

 

「そ、そんな凄い方々とは…」

 

 

 

 ズシが絶句している横で、キルアがヒソヒソと「アイツの師匠の師匠って…ビスケはやっぱりババアじゃねーか」とか言ってビスケにぶっ飛ばされてた。女性に年齢は禁句。そろそろ覚えた方がいい。そうこうしてると更に新しい人物が来た。

 

 

 

「驚きましたね…。こんな所でお会いできるとは…。お久しぶりです。ビスケ師範代」

 

「ウィング…もうアンタは卒業したんだから師範代はやめなさいっつってんでしょ! 大体アンタも師範代でしょーが! 全く…寝癖もシャツも、相変わらずだらしないんだから」

 

「おっと、すみません。しかし、まさかビスケ師範代がまた弟子を育ててるとは思いませんでしたよ。そして…はじめまして。カームさん、でよろしいですか? ズシの師であるウィングと申します。ここで立ち話もアレなので、場所を移しませんか?」

 

 

 

 

 彼の提案を受けてその場にいた全員でホテルに移動する。もう本日の試合は無いしな。クラピカは戦闘のイロハをリベロと詰めてる様だ。いつの間にか仲良くなった様でなによりだ。レオリオも勉強の為に自室へ戻っている。

 

 一通りの挨拶を済ませ、本題に入る。

 

 

 

「なんと…20倍の重力と低酸素化の中で天空闘技場を…」

 

「20倍って…どんだけっすか!?」

 

「方法は秘密ですけどね。普通の状態だと彼等は楽勝になってしまうからの措置ですよ」

 

「……恐ろしい人達だ。しかも念を習得して4、5カ月とは…末恐ろしい。既に私にも通用しかねないぐらいのポテンシャルを全員から感じるとは…」

 

「まぁ、それだけ彼等の才能があったという事です。…ビスケの弟子だった貴方に会えたのも何かの縁。短い間かもしれませんが一緒に頑張りましょう」

 

「えぇ…。よろしくお願いしますね。カームさん。そしてビスケ師範代」

 

「だ〜か〜ら〜師範代はやめなさいってば! ビスケちゃんと呼びなさい!」

 

「いや…師範代は師範代なので…。それに…ビスケちゃんって…」

 

「あによ!」

 

「ではみなさん! また試合場でお会いしましょう!」

 

「あぁ。また試合場で」

 

 

 

 ビスケがキーキー言ってたが、スルーして帰る。カルトが何故か私の腕を取ってきた為歩きづらかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「カルトさん…やっぱりあの人に…。でも歳が離れてるからまだチャンスは…」

 

「……ズシ。君は今そんな事に現を抜かしている場合かな?」

 

「ハッ! 違うっす! …でも凄い方々だなあって…。歳も近いのに自分とはレベルが全く違ってて…。しかも師範代の師匠なんて雲の上の存在っすよ」

 

「…そうだね。彼等は…我々とは次元がまるで別だと考えなければならないね。まさしく怪物級の才能ばかりだ。だが、君にも才能がある。それに、まだ君はスタート地点に立ったばかりだ。焦る必要は無い。地道な努力が才能を打ち破る可能性があるのが念能力だからね。少しでも彼等に追いつける様に、修練を積む事だ」

 

「ハイ! 師範代!」

 

 

 

(いいコだ…。才能もある。あの別格な才能を目の当たりにしても僻む事が無いのは嬉しい事だ。だが…彼等は本当に怪物だ。恐らく《発》まで至っている。そこにあのビスケット=クルーガー師範代がつくか…。それに…カーム=アンダーソン。彼等を主で導いているのは彼女ではなく彼だ。彼こそが真の怪物。一体どれほどの…)

 

 

「……師範代?」

 

「あぁ、ゴメンゴメン。では、まずは《練》からいこうか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う〜ん。あのウィングって奴、強そうだったなぁ」

 

「当たり前よ。アレでも心源流師範代だからね。生半可な事じゃ名乗れないわさ。アンタらでもまだまだ軽くあしらわれる…かもしれないわね」

 

「まぁ現時点で君らよりは間違いなく格上だよ。弟子を見るに、教え方も丁寧だ。かなり優秀な教師であり、念能力者だ」

 

「ふっふ〜ん。それを育てたアタシはもっと優秀って事よ! さぁ、敬いなさい!」

 

「ププッ。敬えって…ババアの発言だよな」

 

 

 

 また余計な事を言ってキルアがぶっ飛ばされる。今度は天井に突き刺さった。アホだなぁ。最早恒例行事と化しているな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホテルに滞在する間は割と自由にしてる。筋トレしたり、念修行したり、勉強したり、雑談したりだ。当然重力とかはかかったままだが、早くも慣れ始めたらしい。適応力が上がってきたな。試合では動きこそ鈍いものの、攻撃を予測して避けたり、ガードしたりして対処していた。攻撃も同じだ。念を使わない戦闘も慣れてきた様だな。

 階層が上がって100階を超えた時、それぞれが個室をもらえた。後最短で9回も勝てば目的の金にも近づくだろう。だが、そろそろ対処が難しくなってくる。攻撃の速度についていけなくなってくるだろう。そこからがどうするか見ものだな。大体150階以降と見ているが…。現在130階。日付は6月3日だ。日程的にはまだまだ余裕ある。ここからが正念場だな。

 

 

 

 

 

 150階以降、予想通り苦戦し始めた。本来の動きだと楽勝だが、流石に20倍が枷になる。まず攻撃が当たらない。そして向こうの攻撃は避けられない。当たったとしても大して効かないが、じわりじわりとポイントを取られて負けるパターンが増えてきた。世の中には万全で闘える事などあまり無いからいい経験になるだろう。それでもカウンターや相討ち、攻撃の瞬間を狙うなど、様々な工夫をしながら勝ったり負けたりを繰り返した。当然団子状態なので、同門対決も発生し、熾烈な闘いが起こっていた。

 そうして様々な体術を経験するうち、防御の重要さや、相手を観察しながら対応する事、攻防の読みや足捌きなどの理解を深めていった。そして…

 

 

 

 

「よっしゃー! 1番のりだぜ!」

 

 

 

 とうとうクリア者が出た。一抜けがキルア、次いでカルト。やはり暗殺者2人は体術への理解が高い。そして、ゴン。彼は試合以外は変身して過ごしていた為、凄まじい勢いで重力と低酸素に適応していった。身体も気の所為ではなく成長し、身長でキルアを2センチ程度抜かしていた。最終的にはスムーズに動けるようになり、無事にこの3人が同日に突破できた。

 その記念にその場で重力と低酸素を解除してやったら、凄まじく喜んでいた。クラピカとレオリオは羨ましがっていたが、彼らも明日には突破出来そうだ。特にクラピカは所持金が5億を超える様にバレない程度に調整していた節があるし。

 

 さて、200階への挑戦をするかどうかだが、ここから先は念能力者同士のバトルになると伝えたが、とりあえず覗いて見るそうだ。

 付き添いでエレベーターに乗り、200階に到達する。すると…

 

 

 

 ズゥン…

 

 

 

 …やはりいたか。これは「奴」のオーラ! 前回会った時よりもより禍々しくなっている。私以外の3人は瞬時に戦闘態勢に移行する。

 

 

 

「…ッそこに居るのは誰だ! 姿を現せッ!」

 

 キルアが呼びかけると、受付嬢が出て来てフロアの説明を始める。だが、当然彼女じゃない。

 しばらく待っていると、漸く姿を表した。

 

 

「ヒソカ!!」

 

「どうしてお前がここに!?」

 

「やぁ、久しぶり♣︎ 別にボクがいても不思議じゃないだろ? ボクは戦闘が好きで、ここは格闘の中心地だ♠︎ 君達こそどうしてここに?」

 

「しらじらしい。君こそ待ってたんだろう?」

 

「正解♦︎ 君達がようやくヨークシンから動いたからね❤︎ 飛行船の行き先を先回りしたのさ♣︎ 見ないコもいるけど…全員君の弟子かい? 『壊れない男(アンブレイカブル)』」

 

「……そこまで調べているとはな。で? 対戦を希望か? 悪いが私は登録してなくてね」

 

「それは残念♠︎ 楽しめると思ったんだけどなぁ…君は本当に興味が尽きないよ♦︎ ボクもまだまだ調整中でね♣︎ で、気分転換につけてみたら…この短期間でよく育ったものだねぇ❤︎」

 

「まぁ、かなり鍛えたからな。カンタンにはやられない程度には。なんなら試してみるか?」

 

「それはありがたいねぇ❤︎ で、誰が相手かな? 全員とヤリたいケド、ボクもこの後予定が入ってて時間があまり無いからねぇ♣︎」

 

「オレがやる!」

 

 

 ゴンが名乗りをあげる。まぁ因縁の相手だからな。そうなるだろう。

 

 

「ゴン、キミか❤︎ では、ここで1回でも勝ったら相手してあげるよ♣︎ またね♦︎」

 

 

 

 ヒソカが立ち去っていく。しかし、奴から感じられる不穏な気配は…一体なんだろう。少なくとも、以前会った時よりも更に大きくレベルアップしている。にもかかわらず、あのバトルジャンキーがあまり闘いに積極的じゃないとは…。ここに至るまで仕合いの連絡もなかったのも不気味だ。〝調整〟と言っていたが…今まで何をやっていたのだろう。

 また、私の事も少なからず調べていた様だ。あの二つ名は当時の関係者と会長含むごく僅かしか知らない筈だがな…。ヒソカの動向が気になるが、考えてもしょうがない。

 

 

「さぁ、気を取り直して登録しよう」

 

 

 結局、ゴン、キルアが登録を済ませた。カルトは極力念での戦闘は見せたくないらしく、今回は見送った。まぁそれもアリだ。キルアは今回見送ると登録抹消らしいので登録していた。登録時に廊下ですれ違った3名の選手が登録後もこちらを見ていた。大方カモだと思っているのだろう。

 ゴンとキルアは2人とも明後日から明々後日の期日で提出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、クラピカとレオリオも190階をクリアした。クラピカは200階以降の戦闘に興味は示したが、自分の能力は極力隠しておきたいらしく、見送った。レオリオは参加をしてみるらしく、登録を済ませていた。

 

 

 

 

 

 そして…試合の組み合わせが発表された。ゴンは次の日の6月18日、対戦相手はギド。キルアの試合が6月19日、対戦相手はリールベルトとなった。

 さて…ようやく修行の成果が試されるな。初の全力解放の戦闘。結果は余りにも見えているが、どの様な動きをするか楽しみだ。ゴンに至ってはヒソカ戦も控えている。最悪死ぬ手前なら回復出来るし、本人もセルフ回復持ちだから何とかなりそうだ。弟子の成長を期待しておこう。


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