アンブレイカブルハンター   作:エアロダイナミクス

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83、200階バトル

 

 

 

『さあ! 本日は大注目の一戦です! ここ数日、凄い勢いと奮闘で190階を突破したゴン選手!! 早くも200階のバトルに参戦!! 対するギド選手はここまで7戦して、5勝2敗とまずまずの成績を残しています!!』

 

 

「ゴンさんがんばれー!!」

 

 

 ズシが叫ぶが、ゴンはリラックスしている。…やはりあのレベルじゃそうなるか。クラピカも既にゴンに大金をかけているようだしな。5億は貯まったはずだが、万が一を考えて更に増やしたいらしい。私も賭けているし、キルアも賭けている。多分ビスケもレオリオもそうだろう。ちゃっかりリベロも賭けてるしな。彼女にプレゼントを買いたいらしい。…ウチも大概自由だよな。

 

 

『始め!』

 

 

 

「ボウズ…初戦がオレでよかったな。オレは非力だから」「ふっ!!」「って、な、なんだ…! そのオーラは!!」

 

「スキだらけだけど…いいの?」

 

「くっ! 【戦闘円舞曲(戦いのワルツ)】!」

 

 

 

 ギドから独楽が複数弾き出される。だが、複雑に動く独楽をゴンはいとも容易く躱していく。まぁ、あの程度なら余裕だろう。最初は《円》をしていたが、後から《円》をしなくても躱す様になった。そして…充分躱せると判断したのか、本体に向かっていく。しかし、ギドもそうはさせじと自分で回転し始める。

 本体が激しく回転し、相手を寄せ付けない。【竜巻独楽】と言うらしい。目が回らないのは凄いな。そのまま【散弾独楽哀歌(ショットガンブルース)】という独楽の散弾を撃ち出してきたが、あっさり躱す。安易に防御しないのはポイントが高い。ヒットが能力の起点になる事も多いからな。

 ゴンは右回転しながら最小の動きで躱し、()()()()()()()()()()。一本足でバレリーナの様に回っているが、器用なものだな。バランス訓練が役に立ったか。そのままどんどん加速してジャンプし…ギドにぶつかる!

 

 

 ゴッ!!

 

 

 非常に鈍い音がして、ギドが弾き飛ばされ、そのまま壁まで吹っ飛んで、壁に埋まった。瞬間、審判がKOを宣言する。

 

 なるほど。回転には回転を、か。しかもインパクトの瞬間に同時に拳をぶち込んでいる。こりゃひとたまりもないな。死んではいないが、しばらく復帰は無理だな。

 

 

 

 多分ゴンなら急接近して右ストレートでぶっ飛ばしても同じ結果になったとは思うが、相手の出方を待って、念攻撃がどんなものかを体験したかったようだ。あまり参考にはならなかったようだが。

 何はともあれ、安定の立ち回り。ヒソカ戦が心配だが、これならある程度は大丈夫だろう。ゴンが退場し、廊下で私と反省点を詰めていると、拍手が聞こえてヒソカがやってきた。

 

 

「う〜ん、文句の付けようもなく合格♣︎ この短期間で良く鍛えたものだね♦︎ 試合日はキミが指定していいよ♠︎ 連絡を楽しみに待ってるからね…❤︎」

 

 

 そう言って去っていった。相変わらず何を考えているかわからないヤツだ。ゴンも気合が入った様だ。オーラに如実に表れている。実際どうなるかは予想が付かないが、せめて無事である事を祈ろう。

 

 

 

 レオリオは無事に試合が決まった。キルアの次の日だ。相手はサダソ。ま、問題ないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、私の警戒網に引っ掛かった奴らがいた。ズシにちょっかいをかけるつもりか。また姑息なマネを…。まぁいい。行くか。

 

 

 

 

 

「やぁ。ズシ君。こんな所でどうしたのかな?」

 

「あ、カームさん! この方達が師範代が呼んでるって教えてくれたっす!」

 

「ほう…。ズシ。ウィングさんはさっきホテルにいたよ。君を探していたから行くがいい。私はこの人達に()()を言っておく」

 

「あ、そうなんですね! ありがとうございました! お二人ともありがとうございます!」

 

 

 

 ズシをとりあえず離す。さて…

 

 

 

「これはこれは…。明日試合があるリールベルトさんとサダソさんじゃないか。お二人揃って何をしていたのかな?」

 

「い、いや…オレ達は親切で案内していただけだぞ!」

 

「その割にはズシ君に念攻撃を仕掛ける直前に見えたが? 姑息なマネはやめて貰いたいものだな。君達の対戦相手である彼等は、私の弟子だ。彼等には気持ち良く闘って欲しくてねぇ…。なに、彼等も君達を殺すまではせんだろう。心配しなくても気持ち良く闘ってくれればそれでいい。さすれば私も君達に害を加える様な事はせん。ただし、再び姑息なマネをしようとしたり、逃げ出そうとしたりしたら…」

 

 

 

 私は《円》の《隠》を解く。

 

 

 

「ごらんの通り、私には直ぐに分かる。結果は言わなくていいだろう? 頑張って闘ってくれたまえ。期待しているよ」

 

 

 

 それだけ伝えると、私は踵を返して戻っていく。これで多分安心だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒューッ、ヒューッ…。な、何だ…!? あの化け物は!?」

 

「と、とんでもない奴に目をつけられちまった…! 今すぐにでも逃げ出したいが…やるしか無さそうだな…」

 

「畜生!! 嵌められたか!! ………仕方ない。正々堂々と勝負するしかないか…」

 

「だが…ギドが病院送りになった連中だぜ!? どうしろってんだよ!!」

 

「まだ、ノールールで()を相手にするよりはマシだ…。まだまだオレ達も先が無いわけじゃない。無事に終われる様に全力を尽くそうか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日、キルアの対戦だ。リールベルトと言ったか。車椅子の青年だ。彼はまず爆発的な移動で後方に下がる。【爆発的推進(オーラバースト)】と言うらしい。…まぁ、悪くは無いが…それだけ? 

 その後、椅子に装着していた鞭を2つ取り出して、振り回し始める。更に彼は鞭に電撃を流してより近づけない様にする。なるほど。鞭だけじゃ有効打にならないと判断したか。ただ…

 

 

 

「ヒャーッハッハッ! これが【双頭の蛇による二重奏(ソングオブディフェンス)】と【双頭の蛇の正体(サンダースネイク)】のコンボだ! この状態では手出し出来まい! このまま端に追い詰めて狩ってやる!」

 

 

 

 多頭の蛇には嫌な思い出が多い。黄金の木の実を護ってたアイツとか。本当に強かった。他にも蛇系は強い奴や厄介な奴が多かった。おかげで爬虫類、特に蛇系と蟲は未だに大嫌いだ。思い出したらムカムカしてきた。逆に言えば、鞭を振り回しているだけで偉そうに双頭の蛇を名乗るなと言いたい。まぁ、これはキルアの闘いだ。彼がどう処すか見ておこう。

 

 

 キルアはニヤリと笑って…おっ。バレない様に帯電した? そしてスタスタとリールベルトに向かって歩き出した。もう射程圏内だ。すると…

 

 

『おおっと! キルア選手の姿が消えたーッ!! 実況席からは彼の姿が見えない!! 姿が一瞬鞭の中に見えますが、まさか全部避けてるのかーッ!? 困惑しながら鞭を振り回すリールベルト選手! しかし当たらなーいッ!!! 何という身体能力かーッ!!』

 

 

 

 なるほどね。彼の速さは弟子内で右に出る者はいない。ましてや「あの状態」になったら尚更だ。あれぐらいは当然出来るだろう。細かいステップと最小の動きだけで全ての鞭を余裕をもって躱している。その姿が瞬間瞬間で残像となって現れるのだ。自分で雷を使ってあそこまで細かい動きを制御出来るなら充分、及第点だな。彼も能力の試運転、といったところか。

 ある程度躱しきった後、キルアはリールベルトの正面に立ち、肩に手を触れて電撃を瞬時に流す。敢えなくリールベルトは気絶し、審判からKOを宣告された。

 

 

 

「毒や電撃を使うんなら、自分も使われた時の対策ぐらいは持ってねーとな。って聞こえてねーか」

 

 

 

『勝者、キルア!!』

 

 

 

 

 

 うん…。強いね…。これ、普通の能力者って勝てるの? 普通がどの辺かは分からないけど、少なくともヒソカクラスじゃないと対処出来なくない?

 この速さは会長の百式を想定したものだと言ってたな。もしかしたら…彼なら躱せる様になるかな? いや、会長のは時間を圧縮した様な中で繰り出される速さだからなぁ。ただ、雷速を極めれば分からないな。全く、優秀な弟子達だな。私達も稼がせてもらったしな。

 

 

 …ゴンはレオリオの試合の次の日、6月21日にヒソカと対戦を連絡してオッケーを貰ったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 6月20日、レオリオの試合の日だ。初の念での対戦という事で若干の緊張が見えるが、オーラを見ればヤル気に満ちている。相手のサダソは左腕が無く、目にもダメージを負っている様に見える。これまでの対戦相手は、ここに来た時に念の〝洗礼〟を受けてそうなった様だ。哀れと言えば哀れだが、念能力を身に付けたならいくらでも生きていく術はある。ここに拘らなくてもいいのにな…。或いは自分も同じ様に別の奴にしてやりたいという歪んだ感情がそうさせるのか…。

 

 

 

 

 

 試合が始まった。ズシに攻撃しようとした時チラッと見えたが、左腕から手をかたどったオーラが出ているな。【見えざる手(ブラックハンド)】と言うらしいが、あんなに見え見えで何とかならないものだろうか。見えざる手ならせめて《隠》ぐらいしてほしい。アレじゃ狙いがバレバレだ。レオリオは困惑してるな。逆に何か罠が無いか《凝》で探っている様だ。まぁ正しいが、私やビスケ、会長やクラピカの《隠》と比べると可哀想だ。

 それを見せ札にサダソはレオリオに体術で迫るが、悉く躱されてゆく。190階の闘士の攻撃を20倍重力下で対処出来るレオリオには余裕だ。

 

 そして…レオリオが手からオーラを放出し、相手に浸透させて診察を開始する。サダソはオーラを分け与えられた様な気分になり、困惑している。

 あーあ。喰らっちゃったか…。もうレオリオの独壇場だ。しばらく解析し…充分に相手を把握したら身体に手を当て【細胞干渉(セルリカバリー)】が発動する! そもそもこれは細胞に干渉する能力だ。つまり…

 

 

 

 

『あーっと!! 攻勢を強めていたはずのサダソ選手! 謎の失神KO!! レオリオ選手、勝利です! あっ、レオリオ選手がサダソ選手の気付けを行なっています! …復活した様です!! 素晴らしい試合でした! 2人の闘士に拍手を!!』

 

 

 

 

 えっぐいなぁ…。多分だが、脳細胞への血液供給をほんの少し減らしたな? それこそほんの少しだけ、毛細含む脳への血管を窄めたのだ。それだけで人は失神してしまう。もしかして、弟子内で1番恐ろしい可能性を秘めた能力かもしれない。しかも、まだまだこの能力は進化しそうだしな…。やっぱりドクターは怖い。アンソニーのトラウマが蘇りそうだ。

 ただ、レオリオのいい所はどこまでもアツく、どこまでも善人だという点だ。

 

 

 試合後、彼が言っていた。

 

 

「試しにやってみたが…オレにはやっぱり性に合わねーぜ。今後は極力能力を使った戦闘は控える。むしろ制約にしてもいい。今後は治す専門としての能力でいくわ。アイツの目も以前よりは見えるようになっただろーしな」

 

 

 と言っていた。それもいい。それでいい。ヒーラーとして活躍出来るならそれはそれで重宝されるだろうし、制約を付けたならば更に効果が上がる筈だからな。彼には最低限の体術があるし、〝浸透勁〟を使えれば戦闘でもそんなに不便ではない筈だ。今度じっくり教えてやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて…いよいよ、か。流石のゴンも緊張を隠せないようだ。ヒソカね…。彼が一体何を考えているかが分かればいいが…。ゴンにも、無理だけはするなと伝えて、彼は頷き、闘技場へと続く廊下に消えて行った。気合は充分。適度な緊張はあるが、変な力みもない。動きも先日の試合で慣らしている。つまり、今の彼はベストの状態だ。

 ヒソカよ…。何を考えているかは分からないが、あまり原作主人公(私の弟子)を舐めない方がいいぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ようやく姿を現した死神!! ヒソカ選手の登場だァ──────!! 休みがちの死神、奇術師ヒソカ! 以前のカストロ選手との闘いを覚えている観客も多い事でしょう!! 正に! 圧倒的な力量とその名に恥じぬ奇術を魅せてくれたヒソカ選手! 今宵は新たな犠牲者が増えてしまうのか!! 現在、戦績は9勝3敗7KO!! 今最もフロアマスターに近い男と言えるでしょう!! 対するは、今ノリにノッているルーキー!! ゴン選手!! ギド選手を圧倒的な力量でKOしました! さぁ、いよいよ始まります!!!』

 

 

 

 

「……いい目だ♣︎ そしてそのオーラも…♠︎ キミの師匠は指導者としても超一流のようだね♦︎」

 

「…………」

 

「ふふ……さぁ、始めよう……かかっておいで❤︎」

 

 

 ……奴のこの禍々しいオーラは一体何なんだ? 既に人間が出せる様な種類じゃないぞ…。潜在オーラも底知れない。人類最高峰を…超えはじめてないか? アレと対峙しただけで、弱い能力者は気絶しかねない。一体どうやって…。臆する事無く対面できるゴンも流石だ。近くに座っていたリベロも流石に「旦那…アレ、ゴン君大丈夫っすか?」と心配していたが、ゴンもそんなヤワな鍛え方はしていない。大丈夫と信じるしか無い。

 

 

 

 ゴンが仕掛ける! 並大抵のスピードでは無い。だが、相手はヒソカ。ゴンの右ストレートを余裕をもってガードする。そして、激しい攻防が続く。しかし…やはりヒソカの方が体術は数段上手! 彼はその場から動かず、ゴンの対応をしている。そのうち、ヒソカの蹴りを喰らって一旦離れるも、審判からクリーンヒットの宣告を貰ってしまう。

 ヒソカは余裕の表情だ。

 

 

「くくく…中々やるね? でもまだまだ♣︎ ボクはここから一歩も動いてないからねぇ…♠︎」

 

「…分かってる! くそー。じゃあ、これならどうだ! さい、しょは、グー!!」

 

 

 キイィイイン…

 

 

 凄まじいオーラが収束しだす! 流石のヒソカも驚いた様だ。大体4000オーラぐらい集まってるからな…。だが、どう当てる?

 

 

「なるほど♦︎ 必殺技か❤︎ 凄まじいポテンシャル…でもボクに当てられるかな?」

 

 

 ゴンは構わずその状態で接近する。ヒソカも躱してカウンターの準備をするが…。ゴンが射程の直前で止まり、

 

 

「ジャンケン! グー!!!」

 

 

 

 

 ドゴン!!!

 

 

 

 彼は()()()()()()()()()()()()()!! クレーターが生まれ、ヒソカも流石に回避する。アッパー気味に放った為、周囲には武闘場の破片が飛び散り、ヒソカはその対応に追われるが…その隙を突いて瞬時に《絶》をしたゴンが、破片に隠れて飛び上がり、ヒソカの顔面に相当念を込めたパンチをお見舞いした! 

 

 

 

 一瞬の静寂の後、審判がクリティカルヒットをヒソカに宣告する!

 

 

 

 ゴンはヒソカに歩いて近づき、例の試験のナンバープレートを突き返す。ヒソカもそれを受け取り、また両者は離れた。

 

 

 

「ゴン…❤︎ キミ、とってもいいね! もう1人前の獲物としてボクも認めよう♠︎ だが、まだまだ実戦不足♦︎ それをこれから教えてあげるよ♦︎」

 

 

 

 ザワッ…

 

 

 ヒソカのオーラが更に膨れ上がる! なんだありゃ…。 完全に想定外だ。ますます訳が分からない…。最悪割って入るか…? だが、ヒソカはまだゴンを殺す気は無いようだ。もう少し様子を見よう。

 

 

 

 瞬間、ゴンに急接近したヒソカが肘打ちを喰らわせる! 瞬時に移動して背後から攻撃! 速い! 全力のキルアを上回ってるぞ! そして、くっつけたオーラを引き戻し、両手で叩きつける! ゴンも対応出来てない!

 

 

「クリーンヒット、クリティカルヒット! プラスポインッ! 4─3!!」

 

 

 審判が宣告する。妥当だ。寧ろ、早く終わらせられる様にしてくれてる。いい審判だ。ゴンもヒソカの能力を大体分かったようだが、分かっていても対処が難しいのがこの能力だ。

 更に引き寄せられ、なすすべなく叩きつけられる! が、ゴンもただやられてるわけではない。引き寄せられた瞬間に、密かにジャン拳を溜め、喰らった直後にパーで放出する! ヒソカは気付いていて、念弾を弾くが、叩きつけられたゴンが反動で彼に向かって蹴りを入れる! その蹴りを脇腹に貰ったヒソカは後ろに下がり、審判が両者にポイントを入れる。これで5─4だ。

 

 だが…その直後に大小の石の破片が飛んで来る! ジャン拳の時に弾いた破片だ。予め付けといて、《隠》で隠し、今の叩きつけで移していた。

 ゴンはそれでも幾つか砕いたが、複数の破片を喰らってしまい、ダウン。クリティカルで8─4だ。…アレは私に使った戦法だな。あの時はアレで更に身動きを封じてきたが、まだそこまでする気はない様だ。ちょっとホッとした。

 

 

「分かったかい? ボクの能力♣︎ 【伸縮自在の愛(バンジーガム)】って言うんだけどね♦︎ 便利だろう?」

 

「くっ…! オーラがゴムみたいに伸び縮みしてる…! それにくっついて離れない…!!」

 

「正解♣︎ よく出来ました❤︎ さぁ、後2ポイントだよ? どうする? 逃げ回るかい?」

 

「どうせ引き寄せられるなら…こっちから行く!」

 

 

 

 シュオオォオ…

 

 

 

 アレを使うか…! 確かに今使う場面だ。顕在オーラが極端に下がり始める。ヒソカも訝しがっているが、明らかに若干のバンプアップが見て取れる。ヒソカから受けた裂傷や打撲も恐ろしい勢いで回復してゆく。

 

 

「なるほど…奥の手か♦︎ じゃあ試してみようか♣︎ こっちにおいで❤︎」

 

 

 ヒソカが引っ張るが、ゴンは強く抵抗する。一瞬均衡が起こり、次の瞬間には勢いよく飛び出す! ヒソカのゴムの反動すら利用し、目にも止まらぬスピードで接近する! ヒソカはゴンが接近する間、何故か恍惚の表情を浮かべている。そのままゴンのラッシュを無抵抗で顔面に何発も貰う。普通はアレでKOだ。だが、そこはヒソカ。喰らいながらもゴムを引っ張ってカウンターを無理矢理ねじ込み、ゴンを吹っ飛ばすと、ゴムごと地面に叩きつける! ゴンもすぐ立ち上がるが…

 

 

 

 

「両者クリティカルヒット! プラスポインッ! 10─6!!」

 

 

 

 

『試合終了ォ────!! 勝者、ヒソカ選手! TKOです!! 言葉に出来ない程の素晴らしい闘いでした!!! ゴン選手も奮闘しましたが、惜しくも届きませんでした!!』

 

 

 

「ゴン、さっきも言ったケド、キミはとってもいいね♦︎ もっともっと積み上げておいで♣︎ そしたら今度はルール無しの世界で闘ろう♠︎」

 

 

 

 負けた事でその場で立ち尽くすゴンに、ヒソカはそう告げて立ち去る。まだヒソカも全然本気じゃ無かった。以前の彼なら善戦ぐらいはした筈だ。少なくとも、ここまで余裕は無かったと思う。

 しかも不可解なのは、最後のヒソカ…あの超絶ラッシュをモロに喰らっても平気だったのはまだギリギリ納得出来る。オーラ差という奴だ。それでも並大抵の攻撃では無かった。ダメージは少なからずあったはず。()()()()()()()()()。血で見えづらいが、私には分かる。新しい能力か? いや…しかし…。

 

 

 仕方ない。直接会ってみるか。

 

 

 

 

「ヒソカ」

 

「やぁ❤︎ キミの方から来てくれるとはねぇ…♣︎ なんだい?」

 

「君の事が気になってね。いてもたってもいられなくなったのさ」

 

「ふふ…♦︎ それはそれは♣︎ とっても嬉しいねぇ…♦︎ 正に相思相愛じゃないか❤︎」

 

「そうだな。なんなら今、闘るか?」

 

「ああっ! 何て魅力的な提案!! 思わず興奮して勃っちゃうじゃないか…♠︎ でもねぇ…この先、大規模なショーを準備中なんだ♦︎ キミにはそこに是非招待したいから、もうちょっと待ってくれるかなぁ?」

 

「……まさか、オークションじゃあるまいな」

 

「まさかぁ♠︎ もっと刺激的なコトさ♣︎ 心配しなくても、キミはオークションの時は好きにしていいよ♦︎ ボクもアレにはあんまり興味が無くなっちゃったからね♣︎ 君が食べ残したら美味しく頂こうかな?」

 

「……何を企んでいる?」

 

「さぁ? 何だろうねぇ…♣︎ 楽しみにしてなよ♦︎ 開演日は近いからね…♠︎」

 

 

 

 そう告げると、彼はヒールの音を立てて去っていった。彼はウソつきだ。あまり真に受けない方がいいだろうが…。()()()()()()()? しかもオークションじゃない? 幻影旅団の団長すら眼中にあまり無いような彼に激しい違和感を抱く。アレは…本当にヒソカか?

 

 

 いずれにせよ、大惨事になる前に彼とは決着を付けなければならないようだ。私も……その時は覚悟を決めるしかないか。


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