アンブレイカブルハンター【完結】   作:エアロダイナミクス

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後半、クロスオーバー注意です。


85、お試しプレイ

 

 

 我々のくじら島のバカンスもいよいよ終わりを迎える。ここはいい所だ。海や森などの自然も豊富だ。我々も束の間の休息を楽しむ。時には船で釣り大会をやったり、森でキノコなどを集めて鍋パーティーなどして過ごした。レオリオは勉強の合間に毒キノコを集めて自分で食べ、それを治療するという恐ろしい訓練を行なっていたが。砂浜では弟子達がカキ氷をかけてビーチフラッグ争奪戦をやったが、誰もキルアに勝てず、また、それ以外のメンツはゴンに勝てなかった。逆にビーチバレーではカルトの独壇場だった。ボールを操作しちゃうから、魔球みたいに機動が変化しまくるし。私やビスケはパラソルでのんびりだ。ビスケが背中にオイルを塗って欲しいという要望に応えたが、触ってみて分かる。素晴らしい肉体だ。惚れ惚れする。カルトもそれを見てねだってきたので、同じ様に応えたが、まだまだだな。だが成果は出てきてると思う。精進を続けてほしい。

 

 

 

 

「バイバイ、ミトさん。元気でね。また連絡するから」

 

「ゴン…。連絡待ってるわ。また帰ってきてね」

 

「わかったよ。みんなによろしくね!」

 

 

 

 

 いよいよ船出の時だ。とはいえ、またヨークシンに戻るだけだが。充実した休息を経て、彼等も本格的に訓練を再開した。オーラの扱いについてがメインだ。港に着いたらヨークシンまでダッシュ。大体500キロの道のりを走破する。彼らも慣れたものだ。大体2日程で余裕をもって辿り着いた。

 

 

 

「クラピカ!!」

 

「久しぶりだな。みんな」

 

 

 アンダーソンの構成員となったクラピカだが、随分と鍛えられているようだ。顔付きが若干精悍になっている。だが、張り詰めてはち切れそうな程ではない。これまでの修行と我々やアンダーソンとの交流が彼の精神にいい影響を与えているようだ。久しぶり(とは言っても2週間程度だが)の再会に会話を花開かせていると、ジョンがやってくる。クラピカは一礼するが、ジョンは手を振り、彼の頭を上げさせる。

 

 

「カームよ。おかえり。クラピカもよくやってくれてるぞ」

 

「それは良かった。父さん。今日は『例の』ゲームをやりに来てね。落ち着いて出来る環境がウチしか無かったんだ。しばらく滞在するよ」

 

「何も遠慮することは無い。ここはお前の家だ。セキュリティも万全だから問題ないだろう。…ただ、日付は気にしておけ」

 

「もちろん、わかってるよ。それまでには切り上げとく…。じゃあ、みんな行こうか」

 

 

 

 クラピカ達と別れ別邸へと向かう。連絡したからか、もうジョイステとマルチタップがセットしてあった。用意がよくてありがたい。

 早速始める。まずはゴンからだ。ゲームの説明に従ってソフトを入れたジョイステーションに両手を添えて《練》をすると、見事にその場から消えた。次にキルアが、そしてレオリオ、カルトと続く。ビスケも入り、最後に私が飛ぶ。…この感じ。あの異世界に飛ばされたのと似ているな。あの時とは規模が段違いだが。

 しばらく機械的な待機部屋で1人、待たされる。何も無い部屋だが、周りの文様が近未来的で結構楽しい。

 30分ぐらい経っただろうか。部屋の一角のドアが開き、次の部屋に通される。これまた近未来的な円形の部屋だ。奥の不思議な形のデスクと椅子?に1人の不思議な形のヘルメットをした女性が座っていた。

 

 

 

 

G・I(グリード・アイランド)へようこそ…。これよりこのゲームへの登録を行います。お名前を教えてください」

 

「カーム、と言う」

 

「ありがとうございます。カーム様ですね? では、ゲームの説明の前にこの指輪をお受け取りください」

 

 

 女性から指輪をもらう。

 

 

「では、早速つけてください。どの指でも構いません…。ありがとうございます。では、これよりゲームの説明を始めます」

 

 

 女性がシステムについて話し始める。彼女曰く、このゲームには指輪をはめていれば使える魔法が二つあるという。「ブック」と「ゲイン」だ。女性が指輪の手を前に出して「ブック」と唱えてくださいと言う。言われた通りにしたら、本、というかバインダーが飛び出してきた。これが誰でも使える魔法の一つである。

 このバインダーは2種類のカードケースになっている。

 一つが指定ポケットカード。No.00からNo.99迄の100種類だ。これを揃えるのがこのゲーム最大の目的であり、クリア条件だ。

 もう一つがフリーポケットカードだ。これは任意のカードを入れる事ができる。全部で45枚入る。

 グリードアイランドの特徴として、入手したアイテムは例外なくカード化する。これをアイテムに戻すスペルが「ゲイン」だ。ただし、一度ゲインしたら再びカード化はできない。

 また、注意点として、カードにはカード化限度枚数があり、これを超えたアイテムはカード化できない。また、カード化したアイテムは1分以内にバインダーに収めていないとカードは自動的にアイテム化するという事だ。

 

 これで説明は終わった。私ももうこの辺はうろ覚えどころかサッパリ忘れている為、新鮮な気持ちで聞く事ができた。しかし、どれをとっても凄まじい効果の念能力だ。やはり暗黒大陸の遺産、と言ったところだな。説明が終わると階段が現れ、降りたら平原が現れた。…上への階段は閉じた様だ。

 

 

 さて、全員いるな。そして…見ているな。一方向に3人、もう一方向に2人か。わざとやってるのか分からんが、未熟だな。

 

「うーん。気持ち悪いね」

 

「あぁ。大した事ない連中だが、ムカつくな」

 

「…ボクが〝見て〟みようか?」

 

「その必要はないだろう。彼らの為に能力を出す必要は無い。街の方角がわかっただけでもいいだろう」

 

「街の方角?」

 

「あぁ。見てるって事は拠点があるって事だ。だからその方向に向かえばいい。……あと、みんなに一つ言っておく事がある。今回は私は申し訳ないが()()()()()()となる」

 

「? どういう事だ?」

 

「今、8月2日だろう? コレが9月頭になると、ちょっとウチ周辺、というかヨークシンが大騒動になるイベントが起きる。……具体的には、ヨークシンで世界最大級のオークションが開かれるが、そこに幻影旅団が襲撃をかけてくるという情報が入っている」

 

 

「「「「!!?」」」」

 

 

「幻影旅団って…クラピカの仇じゃ!?」

 

「その通り。しかもかなり信憑性が高い情報だ。ここはリアルタイムで時間が経過する。よって私は8月末には一旦外に出る事になる。……君達には関係ない話だから、プレイを続行しといていい」

 

「ちょっと待てよ。クラピカの仇が襲撃をかけてくんのに、オレは関係ねーってほど薄情じゃねーぞ? 大体そんな状況でおちおちゲームしてらんねーだろ!」

 

「そうだよ! 絶対にクラピカが無茶しちゃうから止めなきゃ!」

 

「だが…奴等は強い。ヒソカに近いクラスが12人もいるんだ。クラピカには私もアンダーソンもつく。それでもか?」

 

「当たり前だよ! 就職したってクラピカは仲間だから、少しでも力になりたいんだ!」

 

「そうか…。他のメンツはどうだ?」

 

「ゴンが言い出したら聞かねーからな…。しゃーない。付き合ってやるぜ」

 

「ボクはカームと兄さんについていく」

 

「全く…アンタ達だけじゃ心配だからアタシも行くわ」

 

「みんな…ありがとう。クラピカも喜ぶだろう。では目標変更だ。今回は『お試しプレイ』。この数週間でシステムや情報を収集し、期日までに帰還する!」

 

 

 

 

 おー!!! と威勢のいい返事が返ってくる。みんなノリがいいな。とりあえず今回は私主導で動くとするか。次回は弟子に任せるが。そう考えていると、上空から音がする。ゴンも気付いたようだ。アレが移動スペルかな? 丁度いい。初心者狩りの類ならアレを試しに使ってみようかな。

 黙って見てると、我々の目の前に男が到着した。

 

 

「おっと…。ここはスタート近くの平原か。──君達はゲームは初めてかい? ん?」

 

 

 

 男はDJの様な格好をしたタンクトップの男だ。我々を見て初心者と判断したらしい。我々はまだゲームの作法などしらないからな。

 

 

 

「さて、どうだろうね? 君もプレイヤーだね」

 

「キシキシ、まぁね…。しかし、団体さんでかなりの手練れだな。こりゃ警戒が必要か……」

 

 

 男は出したバインダーで操作をしている。アレで色々出来るのかな?

 

 

 

「…? 何してるの?」

 

「さぁて、何でしょうねぇ〜〜〜。うん。カーム君ね。君がリーダーかな。『密着(アドヒージョン)』オ」

 

 

 ピッ

 

 

「ン! カームを……えっ!?」

 

 

 

「ほう……。コレが呪文(スペル)カードか。『密着(アドヒージョン)』…対象プレイヤー1名の指定ポケットカードの全データを常に知ることができる、か。なるほどなるほど」

 

「ば、馬鹿な…! 何故…!?」

 

「攻撃の際は常にカウンターや先の先を警戒すること。1番無防備になるからね。自分の攻撃じゃないカードスペルなら尚更だ。しかし初心者狩りとは感心しないなぁ。でも君はこのゲームに詳しそうだ。()()()()()()()()()()()()()

 

「クソッ! 化け物め…! 『再会(リターン)』オ……ン……」

 

 

「………」

 

「まずは我々を狙った方法と動機からどうぞ。カードはしまってね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい…。まず、ワタシがこちらに来たのは『衝突(コリジョン)』という呪文(スペル)カードです…。コレは会ったことの無いプレイヤーの場所に移動するスペルですが、初心者に会う確率が高いため良く使われます…。初心者には呪文(スペル)カードがほぼ確実に決まるから、よく狙います…。このゲームで最も重要なものの1つが他プレイヤーの情報だからです…。更に、遭遇した時、みなさんをワタシは初心者と判断しました…。理由は、相手が(バインダー)を出しているのに、自分達の(バインダー)を出現させなかったからです………」

 

 

 

 

 

(なぁ、ゴン。アレ、見えた…?)

 

(いや…。全然見えなかった…。気づいた時にはカームがカードを奪ってたよ…)

 

(だよなぁ…。オレも最近速さには自信でてきたケド、ありゃ無理だ…。改めてどんだけ強いんだよ…。しかも、()()も能力か? いくつ特殊能力持ってんだよ、アイツ)

 

(〝聖光気〟の能力かな? ……ホントに敵じゃなくてよかったよね…)

 

(全くだぜ……)

 

 

 

 

 

(カームって、本当に強いね…)

 

(アンタがコメントするなんて珍しいわね。でも、それには完全に同意ね。やっぱり異次元な強さだわさ。相手もソロプレイヤーだし、ある程度は出来る筈なのにね)

 

(少なくとも、オレの理解を完全に超えてるな。修行すればする程遠く感じるからな…。仮に人間のツラ被った化け物って言われても即座に納得するぜ)

 

(彼は結構その辺を気にしてるから、それは本人の前じゃ絶対に言っちゃダメ。ボクらだけはカームを理解してあげないといけない)

 

(あったりまえよ。んなこた言われなくても分かってるさ。上手く隠してるつもりだろうが、アイツが何を気にしてるかなんて丸わかりだからな。アイツには世話になりっぱなしだし、オレにできる事って言えば、せめて楽しく過ごしてもらうぐらいだけどな)

 

(ふふ…。いい心がけね。後は、彼の望み通り、アンタ達も精進する事ね…。アンタ達が充分に育ったなら、カームも喜ぶわさ)

 

(……そうだね。ボクもまだまだだ。せめて貴女ぐらいには追いつかなきゃ…)

 

(そう思ってんなら努力しなさいな。ちびっ子。アタシはまだまだアンタに負ける気はこれっぽっちもないけどね)

 

(………ババアめ)

 

「何ですって! クソチビ!!」

 

「わ〜〜やめやめ!! 全く……カームが折角情報を引き出してんだからお互い挑発すんなや!」

 

 

 

 

 

 何やらビスケとカルトが騒いでるが、聞かなくていいのかなぁ。とりあえず、聞きたいことは粗方聞いたので、いくつか練習用に呪文(スペル)カード及び幾つかのカードを譲って貰い、彼を先程行こうとしていた所に行くように促した。カード全部を取らなかったのは、せめてもの慈悲だ。殺す気は無かった奴にそこまでしたらかわいそうだしな。

 

 逆に言えば、殺す気の奴にはそこまでするが。

 

 

 

 さて、とりあえず視線の方向に向かう。しばらくすると、街が見えて来た。入ってみて分かった。懸賞都市アントキバ、というらしい。ここでは毎月15日に月例大会が行われており、そこで優勝するとレアアイテムがもらえるらしいが、ゴンにどうするか聞いたところ、いろいろな街を見てみたいらしいから、また来た時に挑戦するとの事。確かに13日後は遠すぎるしな。とりあえず資金調達が先だが、ここでは通貨もカードらしいので気をつけなければ。

 

 資金調達のためのめぼしい懸賞がないか探していた所、我々をずっと見ていた奴が遂に話しかけてきた。無精髭が目立つおっさんだ。

 

 

 

「君達はゲームを始めてすぐだね? 見たところ、かなり出来るようだが…。新規のプレイヤーだと中々勝手が分からないだろう。我々はチームを組んでやってるが、確実にクリアできる方法を確立した。どうだろう、是非一緒にやってみないか?」

 

「ふむ…。申し訳ないが、ちょっと我々も予定があってね。チームプレイは今はできないんだ」

 

「そうか…。だが、これも何かの縁。今、他の新規プレイヤーも含めて説明会を開いている。よかったらそれだけでも聞いてみないか?」 

 

「だそうだが…ゴン、どうする?」

 

「う〜ん…。おじさんには悪いけど、オレもこのゲームを楽しみたいからチーム組まずに自分でやるかな。ヒントもこれ以降は自分で探すよ」

 

「だそうだ。すまんが、そういうわけで他を当たってくれ」

 

「そうか…。残念だ。もし気が変わったら連絡をくれ。ゲーム内の魔法で連絡はできるからな。では…」

 

 

 

 

 そう言うと、男は大人しく去っていった。バインダーで確認すると、ニッケスと出ていたから、これが彼の登録名だろう。ゴンに良かったのか? と聞いたら、「ジンの作ったゲームだから自分の力でじっくりプレイしたいし、チームを組む気はないから期待させたら悪いしね」と言っていた。キルアも「なんかうさん臭かったからな〜」とコメントしていた。

 これからそれぞれ分かれて資金稼ぎをして、宿泊場所を探そうと思う。誰が1番稼げるかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───某所

 

 

 

「こちらが、お目当ての物件です。貴方にとてもオススメですよ」

 

「ふ〜ん♦︎ 確かにイイ感じのオーラをビンビンに感じるね♣︎ で、概要ぐらいは教えてくれるのかな?」

 

「〝ここ〟は元々処刑場だったらしくてですね。住宅企業が無理に更地にして、一軒家を建てたらしいですが、お決まりの家主が事件、事故に巻き込まれて次々と変わる家だったらしくて。遂に一家惨殺事件が発生したのが決定打でしたね。ダンナが幼い子と妻を殺して、自身はそのしばらく後で自宅内でナゾの死を遂げたらしいですよ? まぁ狂っちゃったみたいですねぇ。更にダンナは死ぬ前に妻の不倫を妄想で疑っていて、自分の妻子を殺した後、妻の不倫相手と目を付けた別の家庭の妻を惨殺しちゃったらしくて。なんでも、その殺された別の奥さん、妊娠中で、胎児を引き摺り出されてゴミ箱に投棄されてたとか。不倫なんて一切無かったらしいですから、殺された方はたまったもんじゃありませんね。ちなみにその旦那も事件直後に〝ここ〟に乗り込んで失踪してますよ。今じゃ誰かれ構わず足を踏み入れるだけで死んでしまう、特A級の事故物件ですね。取り壊しも計画段階で不審死の山で、結局放置して封印が精一杯といった所です」

 

「ふ〜ん♠︎ いいじゃない❤︎ 念能力者でも太刀打ちできないほどかな?」

 

「協会の除念師が匙を投げる程ですからねぇ。貴方ぐらいなモノですよ。好き好んで〝ここ〟に入りたがるのは」

 

「ふふ…それぐらいじゃないと〝彼〟には届かないからね♣︎ ま、後はボクがヤるから帰っていいよ❤︎」

 

「つれないなァ。身を粉にして探してきたのに」

 

「なんなら一緒に来るかい?」

 

「そうですねぇ。見せて欲しい所では有りますが、遠慮しておきますよ。なんせボクもまだまだ忙しい身ではありますからね。では結果を期待していますよ」

 

 

 そう告げると、スーツの男は颯爽と去っていった。だが、残されたピエロの様な男は既に目の前の獲物に釘付けになっていて、気にも留めない。そもそも彼はスーツの男に興味がない。精々便利な協力者程度にしか見てないからだ。 

 

 

 彼はまるで、自宅の庭に踏み込む様な気軽さで、神字まみれの封印のテープを乗り越えていった。

 

 

「う〜ん…やっぱりいい空気❤︎ ゾクゾクするね♣︎」

 

 

 広めの庭から玄関に入り込む。既に至る所から粘つくような視線を複数感じるが、()()()()()()()()。彼が玄関の扉を開こうとすると、勝手に一人で開いた。

 

 

「招待してくれるのかい? 気が利くなァ♦︎」

 

 

 迷わず扉を潜る。中は広い玄関ホールになっていて、奥に広いリビングが見える。夜中の為に薄暗く、ハッキリとは見渡せないが、この男も尋常ではないため、さほど問題無い。玄関から進むと、後方で扉が閉まる音が聞こえた。

 途端、室内は真っ暗になる。しばらくして目が慣れると、いつの間にか壁面は血まみれに変わっており、血痕が至る所に付着している。しかも今しがた付いたかの様に新鮮で滴っている。ゴミ箱と思わしき物体の横にはビニール袋があり、そこからひっきりなしに赤ん坊の泣き声が聞こえていた。彼は興味を示さず、床に目をやると、何かを引き摺った様な血痕が付着しており、リビングから階段に続いている。

 

 

「まだ現れないか♣︎ このパーティーの主催者はもったいぶるねぇ…♠︎ まぁご招待に与ろうか♦︎」

 

 

 彼は気にもせずに床の血痕を辿ってドンドン進む。既に視線は物理的な重みを持ってきている。一般人ならここで死ぬだろう。それぐらいの圧だ。

 階段を登ると、いくつかの部屋があるが、血痕は一つの部屋に続いていた。部屋はガムテープで厳重に封印されていたが、彼はそこを蹴破って気軽に入室すると、そこにはデスクがあり、ノートが置かれていた。

 

 

「おやおや…案内状かな? 何々…♣︎」

 

 

 彼は何の躊躇いもなくページをめくり始める。読み始めると、どこからか猫の鳴き声がした。中は支離滅裂な言葉の羅列があったが、読み進めて行くと女性的な文字で記されている事が分かり、更にコレを記した者はある男性に懸想していた事が読み取れた。恐らくこの日記は()()()()だろう。部屋の天井付近で凄まじい程の禍々しいオーラが徐々に実体を伴うほどの濃さになって凝縮し始める。普通は読むだけでも無防備な念能力者はアウトだ。いや、最早専門の者でも危ない。だが、彼には関係なかった。

 

 

「ふ〜ん……ダンナが〝核〟になってるかと思ったケド、どうやら違う様だねぇ♦︎ すると、ここの奥さんが主催者かな♣︎ で、上にいる、と❤︎ じゃ、そっちに行くから待っててね❤︎」

 

 

 彼は天井裏の階段を探し始める。血痕を辿ればすぐに分かる。簡易的な天井裏への折り畳み階段を見つけて登ると、そこは広く何もない部屋だった。灯りは当然無いが、天井裏の窓から差し込む月の光でかろうじて中央に何かが有るのが分かる。ただ、見えなくとも最早関係ない程のオーラがその物体を中心に渦巻いていた。

 

 

「やぁ♣︎ キミに会いにきたよ♠︎ じゃあ早速ヤろうか♦︎」

 

 

 

 

「ア”ア”ア” ア”ア”ア”…」

 

 

 

 喉の奥から発生した様な声なき声。聞く者を不快にさせる音を立てながら物体が動き出す。よく見るとそれは大きなビニールのゴミ袋だ。()()()()()()()()()()()()。そこから白い手が徐々に出てくる。彼はニヤニヤと笑いながら見ている。気づけば傍らに白い男の子が座っていた。その子が口を開くと猫の鳴き声がした。

 

 

 

「数百人……じゃあきかないね♠︎ 素晴らしいよ、キミら親子は❤︎ じゃあ、パーティーを楽しもうか♦︎ そしてボクの糧になってね❤︎」

 

 

 

 彼が初めて臨戦態勢に入る。彼からは相手に匹敵する、いや、更に上回る程の禍々しいオーラが噴き出す。だが、相手も()()()()()()()。関係無いとばかりに彼に襲いかかる。

 

 

 ここに、人の想像を絶する闘いが幕を開けた。




死者の念
・原作にもある通り、「深い恨みや未練を持ったまま死ぬと、その念はおそろしく強く残る。残された念は行き場を求めて憎悪や執着の対象へ自ずと向かう」というものである。これは一般の者にも当てはまるが、一般人のものは通常はそこまで強くは無い。
 死者の念は大別して2つある。1つは執着している目的を必ず遂行しようとする「目的遂行型」。もう1つは憎悪などを無差別に振り撒く「無差別型」である。「目的遂行型」は強力な念だが、目的を達成すれば消える可能性が高い(それでも残り続けて「無差別型」に変化する例外もある)。「無差別型」はなりふり構わず周囲に害を振り撒くが、その性質故に環境が整わなければ弱く、祓われやすい。だが、場合によっては周囲に呪い振り撒き、更に生まれた負の念を吸収して増強させてしまう場合もある。そこまで来ると、最早念能力者すら抵抗できない程の呪いとなる。
 今回のケースは、元になった人物に、たまたま尋常ではない念の素養があった事、死者の念が「目的遂行型」だったが、怨みの強さから目的を遂げても尚力は強まり、更に「無差別型」に変化した事。そして、その強力な力が、元からあった周囲の負の念に共鳴し、その力に指向性を与えてしまった事などが原因で、彼女を中心とした非常に強力な怨念と化している。正に最悪のケースを辿ったと言えよう。


 強い怨みを抱いて死んだモノの呪い。 それは、死んだモノが生前に接していた場所に蓄積され、「呪怨」となる。 





 ホラーを夜に書いてはいけない(戒め)
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