結局私はアスレチックの様なアトラクションを制限時間以内にクリアするという懸賞を行なって報酬のカードをゲットした。売り払ったら80000ジェニーになった。中々時間がシビアで、クリア出来なかったら参加費を取られるから難易度は高い。私にはあまり関係ないが。
カルトはこの短期間で得意な探し物を2件済ませており、中でも報酬の「呪われた幸運の女神像」が高く売れ、100000ジェニーを稼いでいた。
レオリオは似顔絵大会に参加して、優勝して50000ジェニー。彼は人体やら人間の臓器のデッサンとかも勉強がてらに良くやるからな。カナリの腕前だ。
ゴンとキルアはメシがてらに大食いチャレンジをして、「ガルガイダー」という魚のカードをゲットしていた。ちなみにこのカード、一枚で30000ジェニーである。
ビスケは効き酒イベントで連続で見事に当て、幻の銘酒とやらをゲットしていた。驚異の150000ジェニーである。流石はダブルハンターといった所か。
「ちぇ〜。まさかカルトにまで負けるとはなぁ…」
「ビリか〜。行けると思ったんだけどな〜」
「得意なのが見つかって良かったぜ。カームの奴の方が結果的に良かったけどな」
「ホントそれ。オレ達もそっちにすりゃ良かったぜ」
「あの景品は先着一名で1日1回だったからな。ラッキーだった。…カルトは探し物になると無敵だな」
「結果的にボクが2位だったから良かった…。ビスケは大丈夫?」
「ら〜いじょ〜ぶ〜だわさ〜。これしきの酒でアタシを倒そうなんて甘いのよ〜」
「ダメだこりゃ。完全に酔っ払いだ」
「アルコール耐性は人によって違うからな。試飲なのに調子こいて全部飲みまくるから当然の結果だぜ! ホラ、水飲んどけ」
レオリオが酔っ払いの世話をする。医者だからこそ、酔っ払いを治療する気はない様で、チクチク説教していたが、ビスケはどこ吹く風だ。
「カ〜ム〜、お水飲まして〜」
「あ〜あ〜。ババアの酔っ払いの悪絡みなんて見てらんねーな」
と、キルアが発言した瞬間、ビスケが神速の速さでキルアをぶっ飛ばした。…こんだけ酔っ払っといてあの動きができるとは、やっぱりダブルは伊達じゃない。というか、最低限の警戒や戦闘に支障が無い程度で抑えていたな? 多分悪絡みはワザとだろう。しかし、ビスケも全体的に更にレベルアップしているようだ。キルアも油断していた様でモロに喰らっていた。
とりあえず、全員でこの日は一泊し、次の日には地図や食料、水を全員買ってから魔法都市マサドラへ向かう事にした。情報を買うと、この場所から山を越えて北へ80キロ進み、湖沿いに北西に向かうそうな。朝飯食べてからの腹ごなしには丁度いい距離だな。
途中の山道で、山賊に出会い、戦闘かと思ったら山賊がスライディング土下座で助けて欲しいと懇願してきた。…何このイベント。どうしたものか分からないからゴンとキルアに任せよう。
山賊達の間では伝染病が流行っているらしく、病に倒れている少年の為に薬代の為の金を要求し、我々は結局のところ一文無しになった。全員上着まで要求されて(私とビスケとカルトのは要求されなかった。女性陣はわかるが、私のは服とはみなしていないらしい。どう判断しているのか…)文字通り身ぐるみ剥がされた形になり、更に情報やアイテムも何も無しだった…まぁいい教訓だ。ジンさんらしいイベントだったな。
これから先は怪物が出るらしいから、倒して金にするとゴン達は息巻いている。テンションアゲアゲなので、怪物は弟子達に任せるとしよう。
山を抜けたら岩石地帯に入る。すると、早速複数の気配があるので、ここからはお任せしよう。
まずは1つ目巨人が襲撃をかけてきたが、即座に動きを分析して皆危なげなく倒していた。彼等曰く、会長の観音と比べたら屁の様なものだそうな。
…そりゃ、あんなのと比べられる方がかわいそうだが。
次に、超巨大トカゲ。コレも攻撃を幾つか当てて、弱点を発見してアッサリ倒していた。
また、高速移動するマリモも、軌道を読んですぐ捕まえたり、巨大ワームの口に岩石を押し込んで窒息させたり、中身の無い鎧騎士のカラクリを《凝》で見破って操っていた生物を発見したりと、大活躍だった。これはアレだな。R P Gで序盤の街でレベル上げしすぎてヌルゲーになる奴だ。流石にそこまで酷くは無いが、弟子達にも実際かなり余裕がある。初見の敵にここまで出来れば充分だと思う。特に泡を吐く馬、バブルホースの対処は素晴らしかった。吐く泡の種類を分析し、泡が爆発しない様に《纏》と《絶》で対応し、見事に2回目の遭遇で捕まえた。これがCランク。
こんな感じで彼らは大体の敵を倒す事ができたが…よく出来ているものだ。これは確かに念戦闘のイロハを学ぶ訓練には最適だ。思考の瞬発力が鍛えられる。かつ、そこまで危険は無い。実際の戦闘は一瞬の油断や躊躇いで一気に勝負が決まり、そこで生死も別れるからな。
私もせめてここで訓練してから暗黒大陸に行ったら、多少は違ったかもしれない。ここは確かにあの大陸の敵のチュートリアルと言えるからだ。例えばあのトカゲ。アイツらが暗黒大陸仕様の場合、弱点は無くなるか、あっても腹の下とか口の中とかになる。更にサイズは5倍になるだろう。また、あのマリモも、攻撃を受けたら致命傷レベルの負傷になるだろう。そして巨人。もう思い出したくもない。ここだけレベル差が酷すぎる。暗黒大陸にアレよりマシな巨人がいる事を切に願いたい。じゃないと、ここで楽勝だって調子に乗って挑んだら即死だからな。
こういった課題をクリアできる人材を育成して、乗り越えた者が暗黒大陸へ向かう事ができるというのは理に適っている様に思う。それこそゲーム感覚で鍛えられるところもポイントが高い。私はそれぞれに個別でカードをゲットするように伝え、それぞれが3時間後にはクリアできていた。…先に進むか。
マサドラに着いた。道中でも怪物は出たが、余裕で対処できていた。多分、BからAランクの怪物が出てきても余裕があるだろうな。マサドラでは、怪物カードを売って、結構いい値段になったので、念願の魔法カードを購入する。が、ここで問題が発生した。どうも魔法カードは品薄らしく、全員で5袋しか買えない状態だったため、あまりいいカードは揃わなかったのだ。一袋に3枚入っているから、15枚だな。
【
という状態だ。唯一防御カードである【
店で魔法カードの情報を買い、どんなカードがあるかを確認する。全40種でバランスよく魔法が配置されていて、防御スペルも充実している。それだけに、この魔法カード不足は痛い。アントキバでチームを誘っていた奴等辺りが独占しているのだろうが、このままではあまりにも心許ない。恐らくだが、奴等のプレイスタイルは、チームでの人海戦術で魔法カード、特に防御カードを独占して他から奪いまくる戦術かな。確かにそれなら確実にクリアできると豪語するのも分からなくはないが…厄介だな。だが、今はどうしようもない。対策を考えなければな。
金が余りまくったので、ついでに脱出方法も聞いておくと、唯一の港があるらしい。そこに行って所長からチケットを貰えば脱出できるとの事。
途中の森林では怪物が出るそうだが、何も問題ないだろう。
私の目的は一枚だけで、かつ盗まれる事も物理的に無いので、ここで一旦のお別れかな。
「では、皆。ここで一旦お別れだ。私は欲しいカードがあるからここから別行動をとる。魔法カードは君らにあげるが、【
「ちょっと待った! アタシも一緒に行くわよ!」
「ボクも…そちらに付いていく」
「えっ…。私はこれから好き勝手に動くから無理に私に合わせなくていいんだけど…? それに、カルトはこれも修行だからそちらに居た方がいい。キミは私がいない状況でも対応していく事を学ぶんだ」
「アタシはいいわよね! そろそろ師匠離れしなきゃダメだからね!」
ビスケが勝ち誇った様に言うが、私は1人の方がいいんだけどなぁ…。まぁしょうがないか。カルトは悔しそうな顔をして悩んでいたが、結局従う事に決めた様だ。
「……仕方ない。言う通り、こちらで兄さんのお守りをする。…何かあったら【
「オイ! カルト、お守りってなんだよ! オレは下の妹にお守りされる程頼りなくねーぞ!!」
「アンタは普段の行動からそう見えるんでしょ。ちっとは反省しなさい! ……カルト。淑女協定は守ってやるから安心していいわよ」
「…あんまりできないけど、しょうがない。約束は守ってね」
キルアがギャーギャー言ってるが、ぶっちゃけカルトが従ってくれて安心した。カルトはしっかりしてるから、弟子の野郎共を上手くまとめてくれるだろう。
……しかし、淑女協定って何だ? 気になるが、あまり突っ込んではいけない類だと思うのでスルーした。
「ではみんな、月末に会おう」
そう告げると、マサドラから彼らと別れた。さて、相手はSランク。上手く見つかるといいが。
「2人っきりになりましたわね♪ カーム♪」
「そうだね。しかし、よかったのかい? こっちについてきて」
「私が欲しいモノは全部カームが持ってるわ。カードも魅力的だけど…。でも私は何よりも今は……〝力〟が欲しい」
ビスケがニヤリと笑う。……だから私についてきたか。まぁいいだろう。私にとっても対人の訓練にもなる。ビスケも50倍をほぼ克服しているので、カナリの力をつけているはずだが、まだまだ力を磨きたいという貪欲さは見習いたいものだ。では行くとするか。
◇
「行っちまったな…」
「ようやくアイツらから離れられたな! 早速スペルカードとか試してみよーぜ!」
「兄さん、あまり数がないから、制限して使わないと」
「わーってるよ! とりあえず防御カードかける奴決めようぜ」
「そうだな。役割分担はしとこうか。いざという時に動けるようにな」
「じゃあ移動しよう。ここだと周りに聞かれてるからね」
「宿の目星はついている。こっち」
「流石カルト。探し物は早いね。みんなも行こ?」
「全くカルトの奴…保護者気取りでウゼーな」
「まぁまぁ、そう言うな。それを笑って受け止めるのが年長の務めってモンだぜ?」
「ハイハイ、分かったよ。しょーがねーなァ……」
◇
「どうも〝この姿〟は強いけど、ゴツいから嫌なのよね」
ここはマサドラから少し離れた森林地帯の一角。丁度いい広場があったため、こちらで少し休憩件、ビスケの鍛錬に付き合っている最中だ。
「う〜ん…。私は別にいいと思うんだけどなぁ…。女性にとっては由々しき問題、か」
「そうなの! これは女性にとっては大問題よ!」
「かと言って、どうアドバイスしたものか…。要は、力はそのままでなるべく見た目をマイルドにしたいって事だよね?」
「それが出来ればこんなに悩みはしないんだけどね…。調整が難しいのよ。見た目をマトモにする為にクッキィちゃん全開で頑張ったらガキンチョの姿になっちゃうし」
「そうか…。どうしたもんかな…」
本当にどうしたもんかね。私がそこまでゴツくないのはブリオンのせいで、身体の構造が普通の人とは若干違うからだしなぁ。ビスケの要望はつまり、筋肉をどうにかして縮めることで見た目をほどほどにして、そのまま力を発揮出来るようにする…か。すっごい難しい気がするが…。ビスケの子供姿は筋細胞自体をほぐして縮めている感じだよな。いや、それだけではあの変化の説明がつかない。全身の細胞が連動しながら身体全体を小さく、若く〝変化〟させてるし。内臓とか骨とかどうなってるんだろう。
それすらもビスケの念能力の一部であるならば、実は【
と、するならば。
「ビスケ……考えてみたんだが…。不可能か可能かで言えば、可能であると言える。ビスケの変身は恐らく念の作用で、無意識のうちに細胞を操作していると思われる。つまり、私の想像が上手くいけば、ビスケの理想の
「ホント!? どうしたらいい?」
「まずは、小さくなる時にどうやってるか、イメージとしてはどんな感じか教えてくれないか?」
「あぁ、それね。先ずはクッキィちゃんで全身を揉み解して──。それから骨格矯正マッサージとか脂肪燃焼マッサージとか、オーラローション美肌マッサージとか…とにかくフルコースよ! そうしたら見事に12歳ぐらいの姿まで若返るわ。ただ、筋繊維とか骨格までも揉み解れちゃうからバランスがムズイのよね。パワーとスピード、ついでにオーラまであの姿相応にダウンしちゃうしね」
「なるほど…やはりそうか。多分、見た目に全特化した変身だから、その辺の諸々をある意味弱体化させているんだろう。君も分かってはいる様だけどね。だとしたら……非常に困難だろうが、今の姿を進化させる方向でいったらどうだろう? 君のイメージの問題だ。君は恐らくその姿こそが最強だと思っているね? だからその姿で固定されるんだ。だが、それを覆せ。より最強で理想の姿を。その筋肉を凝縮して、素晴らしいプロポーションをした姿をイメージするんだ。骨格は通常ながら決して折れない程の強度! そう、まるでダイヤモンドの様に凝縮されたイメージだ。しかし柔らかさももちろん兼ね備えている…。当然筋肉も同じイメージだ。より凝縮した筋肉! 全ての筋繊維がそこに集約している…。そして、その姿こそが最強だと。難しいがまずはそこからだろう。そうしたら、【
「………う〜ん…確かにそれは難しいわね…。細身でも骨や筋肉が凝縮してる…か。そこまで来ると最早細胞単位ね。でも、確かにその発想は無かったわ。いや、発想はあったけど、イメージ上での強さを取っちゃった、というのが本当のトコね。言い訳でしかないけど」
「念は奥が深い。極論不可能は無いと言ってもいい。後は自分の信念とか、イメージ力の問題だと思う」
「そうだね…。やってみる価値はある。ありがとう、カーム。方向性が見えたわ」
「キチンとしたアドバイスが出来なくて申し訳ない。私も手助けはする。参考になるかは分からないが、私の腕を見てくれ」
私は袖を捲り上げ、腕を晒す。
「細身だが、細胞単位で非常に強力な強度を実現している。私の場合は
ビスケが恐る恐る触る。次第に揉んでみたり、つねってみたりして、興奮し始めた。
「これは……凄い筋肉、いえ、筋繊維…というか全てが凄い! まるで極限まで凝縮された宝石の様…それでいてとても柔らかい……これは奇跡よ!」
次第にハァハァ言いながら触りまくるビスケ。触り方が若干いやらしいのは気のせいだと思いたい。
「あ〜。とりあえず、参考にはなったかな? とにかく、まだまだ進化の余地があると思っているから頑張ってほしい」
そう言って腕をしまうと、ビスケは若干残念そうな顔をしながら渋々離れた。…まぁ参考になったら嬉しいが。それからビスケはイメージ修行すると言って瞑想を始めたので、私も一言断ってから情報収集を開始した。
さて、「死者への往復葉書」だが……【
◆
ブンゼンという都市に到着した。ここにいるといいなぁ。とりあえず《円》! もちろん隠して! ………いないか。微妙なプレイヤーしかいない。これじゃ期待出来ないな。しかし、《円》をやってみて思ったが、N P Cは本当に念で出来ている。いわゆる念獣だ。しかし、これだけ高度なプログラムが為された念獣は類を見ない。というか、普通はムリだ。改めて、規格外な存在が遺した物なんだなぁと感じた。これを元々設置した者はどう言った人物だったんだろうか。私の同類かな? あと、これをリメイクしたジンさんの仲間も気になる所ではあるな。
とりあえず次に行ってみよう。
◆
2日ほどかけて幾つか都市をまわってみたが、該当する様なプレイヤーは居なかった。……そして遂に思い至る。
……マサドラで張ろう。
言い訳するならば、彼らにはあの時点で別行動しとかないと、際限なくヌルゲーと化すから、あの時別れて正解だった、と思う。もう彼らもマサドラにはいないだろうし、そろそろいいかな?
マサドラならカードが品薄でも、有力プレイヤーなら確認や補給には来るだろうし。……最初から大人しくマサドラで張っておけば良かったというツッコミが聞こえそうだが、それはそれ。
……暗黒大陸脱出に時間かかったのも、私のこういう所が原因なんだろうなぁ…。でも弟子の為には結果オーライと考えよう。とりあえずマサドラに行くか。
◆
途中でビスケの様子を見たが、集中して取り組んでいたため、一声かけてからマサドラに向かった。ここで再び《円》。……まぁいないよね。分かってた。すれ違いになってなければ良いが…。とりあえず何日か張っておこう。
それから5日後、遂に私のセンサーに一定以上の強さの者が引っかかった。ゴン達程ではないが。これなら割といい感じかな? 相手は4人組。いい感じのおっさんパーティーだ。ただ…あのヒゲのおっさんはどこかで見た事がある様な…。
まぁいいや。とりあえず、20メートル範囲ですれ違えばいいよね。《円》を解いて、擬装して…と。よし。自然な感じ。では行くか。
◇
「?」
「どうした?」
「いや…。気のせいか。何か分からないが、大事な何かを逃した様な気がしてな」
「…珍しいな。ツェズゲラがそう言うとは。だが、我々のカード集めも順調だ。ここ最近の大規模チームが鬱陶しいぐらいだが、問題無い範囲だしな」
「うむ…。そうだな。いや、すまなかった。目的に集中しよう。もうすぐ新規プレイヤーも増える事が確実だからな。ここらで差を開いておかねば」
◇
う〜ん。プロだなぁ。20メートルをキチンと把握しながら警戒して歩いてた。私には関係ないが。だが、バインダーの情報には載るだろうから誤魔化せるのも今だけだな。まぁ別にそれはどうでもいいか。とりあえず、カードをセットして、名前を確かめる……ツェズゲラ、ボードム、バリー、ドッブル、か。ツェズゲラ……どっかで聞いた事がある様な……ツェズゲラ……ツェズゲラ……あっ、思い出した! 確か大富豪に雇われた人じゃなかったか? 大富豪の名前は忘れたが、間違いない筈だ。
ということは、カナリのカードを持っている事は間違いないな。それに…上手くいけば大規模チームの対策も何とかなりそうだ。確か同じく大富豪に雇われていたからな。また、奴らの中に「
おぉ…すごい! 彼だけで50種は持ってるな! 後は他の仲間と分散しているか。そして、肝心のカードは……あった! No.31! よし! これで【
◆
【
「…………誰?」
「アタシよ! ビスケット=クルーガーよ!」
……マジで!? いや、確かに服装や髪型はそうだ。だが、余りにも…何というか凄い変化だ。30代〜40代には見えるものの、妙齢の貴婦人といった雰囲気になってる! まだまだマッチョではあるが、身体は大幅に引き締まって、女性的な感じがかなり出ている。骨格も合わせている様だが、見事なナイスボディーだ。そして…ゴツい姿よりも割と細身なはずなのに、更に力強さを感じる。
「凄いな…。正直、言ってはみたものの出来るとは思わなかった」
「ふふ……まだまだ
ボンッ!
あ、元に戻った。
「……ご覧の通り、長くは保たないわ。今のところ30分が限界。戦闘なんかしたら3分で戻りそうだね。慣れるともっと伸びそうなんだけどね。チビの時みたいに」
「いやはや…。これは素晴らしいな。まさかこの短期間で出来るようになるとは」
「普段からの鍛錬も効いてるみたいね。イメージを固めるのがやっぱり苦労したけど。…あと、多分だけど若返りの薬とか飲んだら更に時間が伸びるし、外見も相応になると思うわ」
「……そうか。では頑張らなくてはな。私の方も目処がついた。これから一緒に行動するとしようか。今が8月11日だ。24日までには一旦出たい。後2週間といった所だな」
「分かったわ。アタシはこれからこの格好でフードでも被って行動するから、いつもの様に重力かけて頂戴。
「いいのかい?」
「〝あの姿〟になる為にはやっぱり普段からの鍛錬は欠かせないと確信した。目標は自然に〝あの姿〟になる事! その為に鍛えるわよォ〜」
「了解。ではいくよ」
私は彼女に重力&低酸素をかける。しかし、60倍は相当だぞ? 流石としか言いようがない。2週間後にはビスケの変身姿も更に変化するだろう。それもまた楽しみだな。