アンブレイカブルハンター   作:エアロダイナミクス

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 それにしてもここまでヒロインのヒの字も出てこない。そんな事ってある…?ちなみにこれからもしばらく出て来ない。
 だが、私は引かない、媚びない、省みない。
 そして遂にマイケル君登場。ジョセフ君と並んでヒロインワンチャン…?

※主人公はノーマルです。



9、文字通り弟子

 

 

 

 ジュニアハイ、日本では中学かな。ここに入っても相変わらず私の扱いは変わらなかった。小中高一貫校だ仕方ないか。まぁ私のやる事は変わらないから。なんだかんだいっても充実しているし。心機一転、頑張っていこう。

 え?浮いた話は無かったかって?

 

 

 無いよ(怒)

 

 

 流石にこの時代はまだ女子の社会進出は成されていないのだ。よってこちらは男子校である(泣)

 いや、むしろ学校に行けるだけでも幸せだよ。忘れがちだが、この時代は200年以上昔の時代なのだ。まだまだ人々に余裕は無いのだ。

 さて、いよいよマイブラザー、もとい将来のドンが入学してきた。マイケル君(7)である。私と違って小さい頃から活発で、何処でも駆け巡ってるタイプだった。そして、よく私にも突撃してきた。私は修行をしたかったので、念をマジックっぽく使って適当に相手をしていたが、いたく気に入った様だ。そんな彼もエレメンタリースクールに入る頃には周囲から私の噂を聞いて、尊敬の念を覚えた様だ。しばらく観察してたかと思えば、常に私に付き纏って来る様になった。申し訳ないが修行の邪魔である。仕方がないので《絶》で撒くのだが、どういったわけかすぐに発見されるのである。どうしてそんなに執念深くくっついて来るのかって聞いたら、

 

 

「兄貴みたいに強くなりたいから」

 

 

 だと。う〜ん。どうしたものか…。あまり念について無闇矢鱈と広めたくない。あるか分からないがハンター協会に怒られるだろうし。ただ、どうして強くなりたいのかと続けて聞いたら、言い淀みながらも

 

 

「……パパのお仕事は、僕がやるから、そのために強くなりたいんだ。兄貴はパパのお仕事やりたくないんでしょう?兄貴の方が向いてるのに…」

 

 

 ……どう反応すればいいんだろう。マイケルは家の仕事を分かっているのだろうか。それに、確かに私は継がずに家を出てハンターになりたかったが、そんなそぶりは見せなかった筈だ。…しかし、そうか。家族だからな。そろそろマイケルや両親とも進路について話し合う時期がきたかもしれない。

 

「…お前の言う通り確かににいちゃんは家を継ぐ気はない。でも、別に家族が嫌いってわけじゃないからね。そこは誤解しないでほしい。にいちゃんはどうしてもこの世界を見て回りたいんだ。その為に昔から準備してきた。うちの仕事はこんなやる気の無いやつがやってもダメだと思う。お前には悪いけどね」

 

 

「いや、そんなことないよ。僕だってパパは好きだからお仕事はやってみたい。でも、パパや兄貴みたいには僕じゃなれなそうにないからさ。怖いんだ。だから強い兄貴に力を貸して欲しいんだ」

 

 

 …こいつ本当に7歳か?頭良すぎない?周り見え過ぎててこっちが怖い。それとも父の入れ知恵かな?ともかく力を貸す事はやぶさかでは無い。私の代わりにマイケルに継いでもらうという関係上、それなりに彼には手助けしてあげたい。しかし、力を手に入れて無軌道、無計画にそれに振り回されても困る。なので覚悟を聞く事にした。

 

 

「お前にはお前の良さがあるが…わかった。にいちゃんの強さの秘訣を教えてやろう。その代わり3つ条件がある。

1つ、にいちゃんの指示は絶対だ。

2つ、秘密を守る事。誰にも教えてはいけない。それぐらい大事な力だ。

3つ、この力を人を虐げる事に使わない。

以上だ。さて、お前はこの約束に何を()ける?」

 

 

「命を」

 

 

 ノータイムで答えたマイケルは、親指の肉を噛みちぎり、私に差し出した。血の掟だ。…コイツ本気だな。普通は針で刺すものだ。痛かったろうに…。平然とした顔をしてる。

 

 …やっぱりお前の方が向いてるよ。

 

 いいだろう。私も彼の覚悟に応えるべく同じ様にした。痛い。やっぱり私にはマフィアは向かないが、流石に5歳下の弟にみっともない所を見せる訳にもいかず、何とか顔を平静に保ちながら親指を合わせた。

 

 

 

 

「これにて血の掟は成された!では、師匠として、まず最初の指示を伝える」

 

 

 

 

「私の事は兄貴ではなく、お兄ちゃんまたは兄ちゃんと呼べ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その夜、私は久しぶりに父の書斎に赴いた。私なりのケジメだ。

 

 

 

「父さん、話がある」

 

 

 

「奇遇だな。私からもお前に話があった。まずはお前から話しなさい」

 

 

 

…敵わないな。何もかもお見通しか。流石はファミリーの頭張ってるだけあるよ。ならば回りくどい事は無しだ。

 

 

「僕は将来この世界を見てみたい。家の事はマイケルに任せる。だから僕なりにアイツを鍛える。父さんには悪いと思ってるけど、これは決めた事だ」

 

 

 一息で言い切った。長い沈黙。念能力もないのにこの人のプレッシャーはキツい。だが、私は引かない。これはケジメなのだ。

 長い沈黙の後、父はフッと息を吐いて静かに語り始めた。

 

 

「…お前は身体が弱くて、小さい頃は母さんと心配し通しだった。苦しむお前に何も出来なくて随分歯痒い思いをしたものだ…。

 子供は7歳まで神の子だ。いつ召されるかと覚悟はしていた。

 …だが、お前は生き延びた。自分の力でだ。血は争えん。お前が大きくなるにつれて、人の頭に立つにふさわしい男になっていくのを見て、私も夢を見たのだ。

 …お前にファミリーを託したいとな。だが、どんどん成長していくお前を見て、考えが変わった…。

 お前は世の中を変える男だ。何か使命をもって産まれてきたのだろう。…ならば、私に出来る事はお前の事を気持ちよく送り出す事だ。

 家の事は心配するな。それは私の仕事だ。お前はお前の好きに生きろ。その考えは今も昔も変わらん。もちろんマイケルもだ。だが、お前もマイケルも大事な家族だ。出て行ったとしても家を継がないことなど気にせず、いつでも帰って来い」

 

 

…ああ、やっぱり私はこの人には敵わないな。泣きそうだ。普段は口数少ない癖に、いつも家族の事を思いやってくれるこの父が大好きだ。前世の家族も好きだったが、今世の家族も大好きだ。涙を堪えながら感謝の言葉を告げる。

 

 

「ありがとう。でも、僕はさっき言った事は守るよ。スクールが終わるまではね。これは僕なりのケジメだ。マイケルが望む限りの力にはなる。約束だ」

 

 

 

 父は笑顔を見せながら書斎の棚から高そうな瓶を差し出し、こう言った。

 

 

 

「飲め。お前はもう立派な男だ。これはその祝いだ」

 

 

 

 その後、父とは色々な事を語り合った。小さい頃の思い出。スクールの事。ジョセフの事。マイケルの事。そして私の事。やはり父は私の力の事を知っていた。知っていて黙ってくれていたのだ。場合によっては沢山利用価値があるはずなのに、好きにさせてくれた父には感謝でいっぱいだ。

 私も将来こんな器の大きい男になりたい。短い様な長い様なこれまでの人生で唯一尊敬できる人だ。これからも大事にしたい。私はこの家族の為ならば、力の限り助けよう。

 

 

 それが私の誓いだ。

 

 

 

 私は体質的に酒は効かないが、愉しむ事は出来る。その後も沢山沢山語り合った。夢の様な時間だった。父も楽しんでくれたのなら何よりだ。今後もちょくちょく付き合おう。しまいに酔い潰れて寝てしまった父をベッドへ運び、寝かせようとした時に、微かに父が呟いた。

 

 

「……マイケルの事を、頼む…」

 

 

 わかったよ父さん。マイケルの事は任せてくれ。そう告げたら嬉しそうな顔で父は眠りに就いた。

 

 

 

 

 

 ありがとう。父さん。約束は守るよ。




 書き溜めとか関係ねぇ!とばかりに投稿したい時にしていくスタイル。
 アンダーソン家は非常に家族思い。古き良きマフィア。

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