アンブレイカブルハンター   作:エアロダイナミクス

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独自の解釈と設定があります。ご注意を。


92、ノブナガとの死闘

 

 

 

 

「で、どーすんだ? また襲ってこねェぜ」

 

「ケッ! かったりぃ奴らだな。しゃあねェ。『アレ』やるぜ」

 

「げっ、マジかよ。この状況でか!?」

 

 

 ノブナガが止めようとするのも構わず、ウボォーギンは大きく息を吸い込む。

 

 

 

「っは!!!!」

 

 

 

 

 直後、凄まじい大音響が辺りに響きわたる。それはビリビリと周辺を震動させ、まさに音響兵器とも言える攻撃であった。

 

 

 

「バッカ野郎!! やるなら離れてからやれや!!!」

 

「こーゆーのはいきなりやるから効果あんだろ。って、聞こえてねーか。だが、見ろ。霧が晴れてきたぜ」

 

 

 

 ウボォーギンがギャーギャー言うノブナガにジェスチャーで知らせる。辺りは彼の言う通り、霧が晴れてきた。そして現れたのは一面の荒野だ。

 

 

 

「……どこだ? ここは」

 

 

 

 耳が元に戻り出したノブナガが呟く。

 

 

 

 

「わかんねぇ。少なくともヨークシンからは離れたっぽいな。ちと行き過ぎたらしい」

 

「辺りに気配がねェな…。肝心の『敵』はどこだ?」

 

「さぁな…。オレが思うに、アレだけで引く様な奴じゃ絶対ねぇ。案外近くにいるかもしれねェから警戒しとけよ」

 

「テメーに言われなくてもわかってるよ! 出た瞬間その素っ首叩き落としてやるぜ」

 

「ほう。ではどうぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()()。2人の至近距離に白スーツの男がいつの間にか立っていた。2人は警戒を怠らなかった。だが、ソイツは突然煙の様に現れた。

 

 2人は一瞬死を意識した。余りにも自然に死線を越えられたからだ。2人の実力は怪物級と言っていい。だが、それを全く意に介さずに攻撃圏内に立たれていた。相手が声を掛けなければそこで終わっていただろう。

 2人は生存をかけて、全力で反撃に移る。神速の抜刀と、超威力のパンチが白スーツの男に迫る。その刹那、2人は相手が帽子の下で笑っているのを確かに見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 盛大な風圧と風切り音が周囲に響き渡る。…スカされた! そして、相手は少し離れた場所に悠然と立っている。2人には移動した瞬間が全く見えなかった。元からそこにいたかの様な錯覚すら覚えるが、確かに奴は近くに居た。彼らは警戒レベルを最大まで上げる。

 

 

 

「テメェが最後の『陰獣』の『鵺』か。どうやら他の奴らよりは出来るようだな」

 

 

 ウボォーギンが話しかける。その問いに未だに戦闘態勢を取らない男は答える。

 

 

「その呼び方は便宜上付けられたものでね。あまり好きではないんだ。まぁ他の呼び方も教えるつもりはないから別にいいが」

 

「んなこた聞いてねぇ。テメェがオレらをおちょくった野郎だな? この場でブッ殺してやる!」

 

 

 側で聞いていたノブナガも吼える。

 

 

「ふむ…確かにそうだ。だが、君らが我々を狙わなかったら私もちょっかいをかけなかったさ。今からでも諦める気はないか?」

 

「バカ言え! オレ達は止まらねェ。オレの楽しみはテメェみたいな勘違いヤローをブチ殺す事だ。さっきの奴らよりは楽しめそうだからな…覚悟しろよ」

 

 

「引く気はない、か。やはり君達は私の『敵』だ。仕方ない。だが、君達には先に相手がいてね。まずはそちらからやってもらうよ」

 

「ハッ。やっぱり団体で来てやがったか。だが、んな事させると思うか?」

 

「ウボォー、気をつけろ。コイツは恐らく操作系だ。操作されねェようにしろよ」

 

「誰に言ってんだ。テメーこそ気をつけやがれ!」

 

 

 

 そして2人が仕掛けようとする直前、「鵺」は右手をウボォーギンに向けた。そして後方に指を指す。

 

 

 

 

 

()()()()()

 

 

 

 

 

 その瞬間、ウボォーギンの「真後ろ」に10倍ほどの重力がかかる。2人とも《凝》をしてはいたが、全く何をされたかも分からずにウボォーギンは後方に吹っ飛ばされる。

 

 

「うおおぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

 

「ウボォー!! テメェ…何しやがった!!!」

 

「さてね…では選手交代だ。出てこい」

 

 

 

 消えていた気配が浮かび上がり、3名が姿を現す。ゴン、キルア、レオリオである。

 

 

 

「……ガキじゃねーか。コイツらをぶっ殺せばテメェが相手してくれんのか?」

 

「無論だ。無理だと思うがね」

 

「上等だぜ……!! 覚悟しろよ、ガキども」

 

 

 

 ノブナガから強烈なオーラが噴出する。3人は冷や汗をかきつつも、臆する事なく向かい合う。

 

 

 

「では、朗報を待っているよ。これで負けるようでは見込みがない。もし負けたらこの騒動から外す。そして大人しく故郷に帰れ」

 

 

 

 そう告げると、「鵺」は背中を見せて悠然と去っていった。一方、ノブナガは怒り心頭である。()()()()()()()。この自分が、だ。

 自分は仮にも幻影旅団の戦闘班である。先程の「鵺」ならともかく、新しい相手はガキ3人だ。しかも、恐らくコイツらは弟子だと思われるが、その踏み台にされた。これが舐められてると言わずして何と言う。

 

 

 

「ふざけやがって…ペーペーのクソカス共が…! 1分だ。1分以内にテメェらを膾斬りにして、さっきのヤローに首を投げつけてやる…!」

 

 

 ノブナガは左手で刀を持ち、右手で即座に抜刀出来る体勢を整える。

 

 

「……予想以上にヤバそうだぜ。…気合い入れるぞ!!」

 

 

 レオリオが声をかけ、全員が「堅」を行う。そのオーラ量を見て、ノブナガも考えを改める。

 

 

 

「……ちと訂正。『そこそこ』は出来るらしいな。だが、無意味だ。これからそれを教えてやる」

 

 

 

 言い終わった瞬間、ノブナガは自ら急接近した。キルアにターゲットを決めたらしい。凄まじいスピードで近づき、射程圏内に入ると抜刀を行う。ただそれだけだが、ほんの一瞬にして行われたため、他2人は反応が遅れた。

 

 

 

 キルアが避けられたのは、まさしく僥倖であった。彼は予め帯電していた。故に、ノブナガの動きも辛うじて反応出来ていた。そして、自分の首に迫る刀を身体ごと下がる事で何とか躱す。正に首の皮1枚の差で首が落とされる事から免れた。

 

 

「キルア!!」

 

 

 そう言い終わらない内にノブナガは踏み込んでいて、神速の二の太刀がキルアを襲う。しかし、キルアも【神速(カンムル)】で遥か後方へと下がる。

 

 

 二の太刀を振り終わったノブナガは近くの次のターゲットを狙おうとゴンに飛び出そうとするも、凄まじいオーラの集中を感知し、踏み止まる。

 

 

「最初は、グー!」

 

 

 ゴンは既にジャン拳の体勢を取っていた。空気が振動するほどのオーラだ。まともに喰らえばただでは済まない。だからこそ一瞬ノブナガも躊躇したが、考えを改めてゴンへと向かう。拳が届く前に叩き斬ればよいと。

 

 

「ジャン、ケン、グー!!!」

 

 

 ノブナガの射程に入る直前、ゴンはジャン拳を地面に叩きつける。カナリの量の岩石が飛び散るも、ノブナガは()()()()()。似た様な技を使う男としょっちゅうコンビを組まされていたのだ。強化系の考える事は大体分かる。

 真横に飛び、撃ち終わった直後のゴンを再び狙う。しかし、射程圏外からメスが2本飛んできてそれを弾く為に手を取られる。メスは2本とも真っ二つになった。その間、再びオーラがゴンに集中する。

 

 

「あいこで…」

 

 

 未だ相手とはかなりの距離がある。だが同じ事だ。再び接近しようとしたその時

 

 

「パー!!!」

 

 

 

 巨大な念弾が迫る。流石にそれは予想外だ。ノブナガは全オーラを刀に集中して、念弾を唐竹斬りにしようと試みる。

 

 

「ぬおおォォオ!!」

 

 

 斬!!!

 

 

 

 

 

 

 土煙が舞い、ノブナガが現れる。流石に余波で若干のダメージは負っているが、健在だ。

 

 

 

「……もう少し訂正だ。黒髪のガキ、テメェは見込みがあるな。マフィアじゃなくてこっちに来いよ。テメェと馬が合いそうな奴がいてな」

 

「絶対ヤだ。人殺し集団の所に行く気は無い!」

 

「そういう強情な所もそっくりだぜ。少なくとも後ろのガキよりゃ見込みがあるんだがな。見ろよ、アイツは震えてやがるぜ」

 

「キルアの事を悪く言うな!」

 

「あんだけブルってる奴を庇うたぁ、熱い友情だなぁ。だが、教えてやろうか? アイツはもうダメだ。テメェが死のうが何しようがあそこから動かねェよ」

 

「お前に何が分かる……! キルアはきっと来る!! お前なんかコテンパンにしてやる!」

 

 

「ゴン! 耳を貸すな!!!」

 

 

 首から多少の出血をしたキルアを、レオリオが治癒しながらゴンに呼びかける。

 

 

「後ろのニイちゃんは回復役か。ますます見込みのある奴らだ。殺すのが惜しいぐれェだ。だが、そう来るならオレも容赦しねぇ。今、テメェは実質1人だ。タイマンじゃオレには絶対勝てねェぜ。テメェを殺してから後の2人は料理してやる」

 

「なんで…」

 

「あん?」

 

「なんでそんなカンタンに殺せるんだ!」

 

「それか。決まってんだろ? 『殺りてェから』だ」

 

「ふざけるな! お前らも仲間がいるんだろ!? 殺された人にも家族や仲間がいたはずだ!!!」

 

「だから何だ? 殺される弱えー奴らが悪い。オレらでもそうさ。そして、テメェらも弱いから死ぬ」

 

「お前らは野放しにはできない…! クラピカの為にも、ここで止める!!」

 

 

 ゴンの身体からオーラが迸り、収束していく。

 

 

「ふ〜ん。面白ェコトやってんなぁ。んで、クラピカってさっきの奴か? だが、無駄だ。ここで死ね。そんでクラピカってのもブッ殺す」

 

 

 

 ノブナガの周囲4メートルにピンとオーラが満遍なく張り巡らされる。《円》だ。彼のレベルにしては範囲が狭い。だが、ノブナガにとっては十分な範囲だ。これには理由がある。彼は《円》の範囲内に入った者を例外なく叩き斬る。その為、攻防力の大部分を刀に集中して《周》をしているからだ。

 ノブナガ自身が斬れぬ物は無いと信じるに足る程の量を割り振っているからでもある。ただでさえ名刀ではあるが、更に強力なオーラの補助を受け、そこから放たれる斬撃は、通常時とは文字通り桁が違う程の威力と速さを実現している。

 当たり前だが、これは超高等技術である。通常、《円》は戦闘には向かない。何故なら、《円》とはオーラを満遍なく薄く拡げるものであるからだ。攻防力移動が重視される念戦闘に於いて、お世辞にも《円》は使えるとは言えない。よって普通は戦闘時は《円》は使わない。だが、ノブナガはオーラの集中を刀に行いながら、余ったオーラで《円》をしている。それだけでも変態的な技術と言えよう。

 ノブナガは抜刀術の達人である。どんな不利な体勢からでも一刀のもとに斬り捨てる。故に、彼は敢えて《円》を使う。一撃で決まるからだ。

 その性質から、彼はタイマンで無類の強さを発揮するのだ。逆に複数戦ではあまりやらない。抜刀術の性質上、連発は向かないからだ。既にノブナガは相手を見てもいない。オーラで感知したら斬り捨てる。ただそれだけだ。

 よって、彼の《円》は狭い。だがそれで十分と考える。範囲に入ったら斬る。ただそれだけを極めた男の本気の形態である。

 

 

 一方のゴンは、その危険さに気付いてもいる。近付いたら一刀両断されるのは明白だ。だが、ゴンは引かない。ゴンは近くにあった石を拾い、ノブナガに投げつける。すると、石は見事に真っ二つになり、ノブナガの左右に落ちる。

 ゴンは次々と石を投げるが、ノブナガも神速の抜刀からの刀捌きで次々と斬り落とす。

 

 

「無駄だ。確かに連撃は精度が落ちるが、人間を真っ二つにするのは容易だ。そっちがこねェならオレから行くぞ」

 

 

 そう言って歩き出し、ゴンに近づく。ゴンは後ろに下がり、大岩が転がっている方に向かうと、そこから身の丈の倍以上の岩を持ち上げた。そして、そのままノブナガに突進する。

 

 

「ほう? 考えたなガキ。だが、そんなんでオレを攻略しようなんざ甘ェんだよ!」

 

 

 大岩がノブナガに衝突する瞬間、張り付いていたゴンは嫌な予感から咄嗟に飛び退く。次の瞬間には念入りに《周》をしていた筈の大岩は切り裂かれ、そしてゴン自身も胸元から腹部まで薄く斬られていた。飛び退かなければ重症になっていただろう。

 血が薄く滴る。しかし、すぐ側に来ていたレオリオが治療を行い、また、ゴン自身の回復力で即座に傷が癒える。近くにはキルアも来ていた。

 

 

「キルア!!」

 

「わりー。ちっとブルっちまった。だけどもう大丈夫だぜ」

 

 

 そう言いながらも彼の手は震えている。だが、無理矢理別の手で抑え込む。彼は、初撃を躱した時に圧倒的な力量差を感じ取り、呪縛が発動した。そしてそれは今でも続いている。こうして会話する間にも逃げろという警告が頭に鳴り響いている。それはカームやビスケにも指摘されていた事である。逃げ癖とも呼べるソレの正体は、歪んだ愛。頭に埋められた針である。だが、カームは気付いていてもソレを抜く事は無かった。それが条件であるが故に。

 そして今、逃げ出したい気持ちでいっぱいのキルアだったが、無理矢理それを押し込み、ここまで来た。

 

 

 

「ほう、戻ってきたか。ま、逃げ腰の雑魚が増えたところで同じだ。仲良く2つに分けてやるぜ」

 

 

 ノブナガは油断せずに一歩一歩進んで来る。

 

 

「キルア、一旦下がって。無理しないで」

 

「…オレはできる!」

 

「いいから。オレに考えがある。レオリオも来て」

 

「確かに無策で突っ込んだら真っ二つだからな、で、何だ。そんなに余裕はねーぞ」

 

「こうするんだ。ゴニョゴニョゴニョ……」

 

「……馬鹿野郎! 死ぬぞ!!」

 

「アイツをぶっ飛ばすにはこれしかない。協力してくれる?」

 

「……ゼッテー大丈夫なんだろな!?」

 

「任せて!」

 

 

 

 

「作戦会議は終わったか? なら1人ずつ死ね」

 

 

 ノブナガは相変わらず一歩一歩ジワジワと歩を進める。彼の状態では一気に行くのは難しい。入ってくる情報量が多すぎる為だ。彼はどちらかと言えばカウンタータイプだ。だが、ジリジリと仕掛ける事もできる。そして、もうすぐ射程圏内だ。

 その時、レオリオ、キルアの2人は散開し、ゴンも後方に下がる。そして丁度ノブナガを三角形で囲む形となる。それを見てノブナガも歩みを止める。

 

 

「……馬鹿が。同時にかかって来ようとも結果は同じ。まとめて斬り捨てる」

 

 

 これは事実である。ノブナガは同時に来ようが3人諸共に一刀でいける実力はある。そして実力差もある。仮に時間差で来ても連続で仕留める。いかに策を練ろうが無駄だ。その瞬間をイメージし、ノブナガはその場で更に集中する。

 

 

 

 絶対に斬る、という圧力がノブナガから発される。だが、それに動じず3人は動き出す。レオリオが上着から最後のメスを2本取り出し、投擲する。しかしノブナガは最小の身体の動きで躱す。だが、次の瞬間にはキルアが頭上高くに飛び上がっていた。

 

 

 

 【落雷(ナルカミ)】!!

 

 

 

 瞬間、ノブナガは何を喰らったか分からなかった。分かるのは身体への強い衝撃と、全身の痺れだ。そこを狙って、後の2人が迫る。ゴンは最後になるだろうジャン拳を溜めながら。

 

 

 

 ()()()()()()

 

 

 

 

 ノブナガ=ハザマという男は只者ではない。全身が痺れ、碌に身体が動かない状況でも何万回と繰り返した技は発動した。狙いはつけない。もうそこにいるから。後は繰り返した動きだ。標的は前後2人、そして落ちてくる1人。二太刀だ。

 

 

 

 流星(りゅうせい)】!!

 

 

 

 自分の出身の名を冠したこの技は、()()()()()()()()からも繰り出される。そして今、正面から来るゴンの首を正確に捉えて抜刀された。その軌道と煌めきは正に流星の如し。

 次の瞬間、背後から飛んで来たオーラが踏み込んだ背中に当たり、僅かに体勢が崩れる。だが、それで止まる様なノブナガではない。変わらずゴンを目掛けて刀は放たれる!

 

 

「ジャン、ケン」

 

 

 その刹那、ゴンは方向を変え、刀に正対し、ジャン拳を発動した。

 

 

「グー!!!」

 

 

 

 

 ガッギイィイィン!!!

 

 

 

 

 凄まじい音を発して拳と刀が衝突する。ノブナガは驚愕した。凄まじいオーラと肉体強度!! ウボォーギンに匹敵しかねない程だ。だが、ノブナガの方が威力は上だ。刀は徐々に拳にめり込み、ゴンの肉体を引き裂きだす。数瞬もしない内に右手から身体まで真っ二つになるだろう。このまま引き裂いて、背後の奴諸共叩き斬る! そう考えたノブナガだったが、思わぬ拳と刀の衝突で一手遅れた。先にレオリオが至近距離に到達していた。

 

 

 

 

 〝浸透勁〟!

 

 

 

 

「ガハアッッ!!!」

 

 

 

 全身のオーラが跳ね回る! 本家には遠く及ばないが、それでも高威力である。堪らず仰け反るノブナガに刀が右手首までめり込んだゴンから更なる攻撃が発せられる。

 

 

 

「あいこで、グー!!!」

 

 

 

 ()()()()放たれたソレは、ノブナガの胴体中心を捉え、彼を刀ごと吹っ飛ばす。胴体が千切れなかったのは、彼のこれまでの研鑽によるものだろう。しかし、流石のノブナガも超威力の3連撃には耐えられず、彼の意識を夢の世界へと旅立たせた。彼は最後まで刀を手放さず、ゴンの右手から抜けた刀を手に倒れた。

 

 

 

 

 

 最後まで刀と共にあった男であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イテテ…」

 

「バッカ! やっぱり無茶しすぎなんだよ!! 最悪右手が使えなくなるぞ」

 

 

 

 治療をしながらレオリオが告げる。ノブナガは簡単な治療をされて、厳重に拘束されている。

 

 

 

「ゴン……悪かった。オレがもっと…」

 

「キルア。それは言いっこなしだよ。キルアは来てくれた。それに、あの攻撃が無かったらオレは死んでたよ」

 

「だけど……」

 

「キルア、気にすんな。それが普通の反応だ。でもキルアの技が無かったらゴンと仲良く真っ二つになってただろうから、助かったぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だが、危うかった」

 

 

「カーム!」

 

「お前! マジヤバかったんだからな!!」

 

「ではどうする? 辞退するか? それでも構わないぞ。これは君らとは関わりの無い闘いだからな」

 

「……さっき闘って思った。この人達は自分の都合でカンタンに人を殺しちゃう。クラピカだってアンダーソンだって、無事じゃすまない。それは嫌だ」

 

「ゴン……」

 

「そうか…。ありがとう。厳しい闘いはまだまだ続く。頼りにしているよ。だが、キルア」

 

 

 ビクッとしたキルア。

 

 

「君は、あの悪い癖が出たね。危惧していたが、やはり今回もそうだった。このまま続けるのであれば、君はゴンや仲間を見殺しにするぞ。そうならない内に離れたらどうだ?」

 

「……オレは、嫌だ。ゴンと離れたくない」

 

「カーム! キルアは大丈夫だよ!! そうならない様にオレももっと強くなる!」

 

「そうだぜ。仲間がフォローすれば良い話だ。何も離れる必要はねぇ」

 

「そうか。ならばいい。だが、キルア。君はその癖を改めない限り、同じ問題が付き纏う。心しておくがいい。君がゴン達を大切に思っているなら尚更な」

 

「……わかってる」

 

「よし。この話はここまでだ。君達もいい経験になっただろう。痛い代償は払ったがな。普通は右手は再起不能になるだろうからもっと自分を大事にするといい…見せてみろ」

 

 

 カームはゴンの手を奇跡で治療する。すぐに右手は完璧に治療される。

 

「さて、これでよし」

 

「…相変わらず反則だよな。オレの存在意義が問われるぜ」

 

「あの男の対処は後で考えるとして、()()()は終わったかな?」

 

「そうだぜ! コッチは3人がかりでこの有様だからな…。向こうは大丈夫なのか!?」

 

「心配いらない。向こうには『彼女』が付いてる。それにあの2人はもう一流の域だ。問題もそこまでないだろう」

 

「ゲッ。あの妖怪ババアか! そりゃ大丈夫か…?」

 

「レオリオ、そんな事言ってるとキルアみたいにぶっ飛ばされるよ?」

 

「しかしなぁ。お前もビックリしただろ? なぁキルア」

 

「………」

 

「キルア?」

 

「ん? あぁ…そうだな……」

 

「ダメだ。こりゃ重症だなぁ。ま、こればっかりは自分でケリつけるしかねーからなぁ」

 

「その通りだ。キルア、自分でその問題はよく考えておけ。さて、迎えに行こう。彼らの勝利を祈って」

 

 

 

「無事だといいね…」

 

「無事だと信じろ。君たちが無事だった様に」

 

 

 そう締めくくり、彼らはまだ気絶している男を抱えて歩き出す。もう一方の闘いの行方に思いを馳せながら──




バトルって中々難しいですね…

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