アンブレイカブルハンター   作:エアロダイナミクス

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大っ変遅くなって申し訳ないです…!

師走のおしごとラッシュとクラピカさんの闘いがメチャ難しく…(言い訳)
何とか出来ましたので、よろしくお願いします!
2連投、1話目!


93、2本目の脚

 

 

 

 

 

 ──時は少し遡る。

 

 

 

「うおおおぉぉぉ!」

 

 ウボォーギンは未だに飛ばされていた。あの男から受けた謎の攻撃から中々逃れられない。そうして飛ばされる事約2〜3キロ。突然身体を支配していた拘束が解ける。

 

 

 ズドン!!

 

 

 彼の身体は地面に着地する。ようやく解放された。この場所が何処かも分からないが、そこに相手はいた。3名だ。中心の金髪の青年と、脇に黒髪の少女1人、後方にもう1人のゴスロリ少女だ。

 

 

「ふうぅ…あんのクソヤロー! 後で覚えてろよ!! ……で、テメェらがオレの相手か」

 

「待っていたぞ。この時を」

 

 

 金髪の青年は上着を脱ぐ。他の2人は黙って見ている。

 

 

「ふん。覚悟決めたような顔しやがって。何かオレらに因縁でもあんのか?」

 

「その質問に答えるには、聞き返さなければならない事がある。お前は殺した者達の事を覚えているか?」

 

「少しはな。まぁ印象に残った相手なら忘れねーぜ。つまるところ復讐か。誰の弔い合戦だ?」

 

「クルタ族」

 

「? 知らねェな」

 

「緋の眼を持つルクソ地方の少数民族だ。5年程前にお前たちに襲われた」

 

「ヒノメ? お宝の名前か? 悪いが記憶にねェな。5年前ならオレも参加してるはずなんだが」

 

「……およそ関わりのない人間を殺す時………お前は、一体何を考え、何を感じているんだ?」

 

「別に何も」

 

「クズが。死で償え」

 

 

 

 ウボォーギンの顔が歓喜で歪み、爆発的なオーラが漏れ出す。

 

 

 

「たまにこういう奴がいるからやめられねェ。殺しはな。オレの一番の喜びを教えてやろうか? おめぇみたいなリベンジ野郎を返り討ちにする事だ!! ふんっ!」

 

 

 ウボォーギンは強大なオーラを込めて、地面を抉り出して浴びせかける。

 

 

「くらえ! 破岩弾!!」

 

 

 無数の岩が砕け散り、周囲に広がるも、3人は散開して躱す。

 

 

「ビスケ! カルト! 最初は私にやらせてくれ!!」

 

 

 金髪の男、クラピカがそう告げて、岩を躱しながら【縛る中指の鎖(チェーンジェイル)】で反撃するも、ウボォーギンは余裕をもって躱す。だが、地面に触れた鎖を見て、その威力に内心舌を巻く。ただの鎖じゃない。相当強い念が込められている。迂闊に喰らうのはまずいと判断してウボォーギンは先手必勝を狙う。躱しながら急接近して、凄まじい威力のパンチがクラピカを襲い、クラピカは岩場まで吹っ飛ばされる。

 

 

「ハッハァ! 女にカッコつけてイキるからそうなんだぜ!! 後はお嬢ちゃん、お前らがオレの相手か?」

 

 

 見ていたビスケとカルトに問いかけるが、両者共にクラピカの方を指差す。そこには、無傷で出てきたクラピカの姿があった。

 

 これには流石のウボォーギンも驚いた。強化系でもない限り、あのパンチは防げないはずだ。相手は強力な鎖を使う能力者。どう考えても操作系か具現化系が妥当だ。

 

 

「馬鹿な…無傷だと…!?」

 

「今のパンチ…まさか全力か?」

 

 

 

 

 ブチッ

 

 

 

 

「くくく…面白くもねェ冗談だな!? 安心しろ。2割程度だ。じゃあ半分くらいで行くぜ!?」

 

 

 

 そう告げて猛攻を仕掛けるも、クラピカは体術で翻弄する。彼の素早さや体術は技術的な面を差し置いても最早超一流の域に至っている。「緋の眼」の効果も相まって、いかにウボォーギンでも捉えることができない。ウボォーギンの拳や蹴りを躱しながら縦横無尽に打撃を与えるクラピカ。彼我のオーラ差と肉体性能によりダメージらしいダメージはない。だが、確実にウボォーギンのイラつきは加速していった。

 

「ちょこまかと動き回りやがって。だがな」

 

「『今の隙にオレを鎖でとらえなかったことを後悔するぜ』か? くだらん負け惜しみはやめて全力でこい。時間の無駄だ」

 

 

「……やってやるぜ 全開だ!!!」

 

 

 カッ!!!

 

 

 

 すさまじいオーラが噴出する。総量は不明だが、おそらく人類最高峰を超える程度はあるだろう。強化系の極みに至る男、その全力全開の顕在オーラは大気を震わせる。

 

 

 

「ふむ……なるほど。すさまじい程のオーラだ。だが、()()()()()?」

 

 

 

 ウボォーギンはクラピカの挑発に乗らず、そのオーラを拳に集中させて地面を思いっきり殴る。目の前が爆発したかのような錯覚が起きるほどの破壊。クレーターができるほどの攻撃は同量の土を巻き上げ、そして微細な土煙が視界を遮る。その瞬間、圧倒的な気配を放っていたウボォーギンの気配が掻き消えた。

 クラピカは瞬時に《隠》と悟り、《凝》を行う。すると、うっすらとウボォーギンのオーラが見える。かなりレベルの高い《隠》であり、全力状態の全身のオーラを隠せるウボォーギンはただの脳筋ではない。その戦闘技術は超一流、実戦で鍛えあげられた鍛錬の賜物であるといえる。

 だが、クラピカもまた怪物。彼らは知らないが、今よりはるか劣った技術を持ったクラピカでもタイマンで打ち勝っている。そして今、クラピカはウボォーギンの動きが手に取るように分かっている。ここまで数瞬の攻防だが、確かにクラピカはウボォーギンの動きを見切っていた。

 

 ヒュオッ

 

 ウボォーギンが煙の中から現れ、本気の【超破壊拳(ビッグバンインパクト)】を繰り出すも、動きを見せずに見切っていたクラピカは躱しながらカウンターのパンチを顔面にお見舞いする。

 

 

 

「グボッ!!」

 

 

 確実に当たると思い、オーラをかなり集中していたウボォーギンもこれにはたまらず、たたらを踏んでしまう。だが、これで戦意を喪失するような男ではない。更に攻撃を繰り出そうとしたところで身体の動きが極端に鈍くなったことに気付く。そして、ついに身体が動かなくなってしまった。

 

 

「!!!  まさか……!!」

 

 

 瞬時に《凝》をすると、うっすらと鎖が自らを縛っていた。

 

 

「《隠》をここまで使えるとは思わなかった。だが、この程度の作戦なら強化系はやってくる。どうやら想定していたことが当たったようだ。そして、《隠》を使えるのは私も同じ」

 

 

 

 【縛る中指の鎖(チェーンジェイル)】!!

 

 

 

 すさまじい締め付けがウボォーギンを完全に封じ込める。ウボォーギンは身動きが取れず、ただひたすら同じ姿勢で固まっていた。

 

 

「てめェ……具現化系か!! 普段から鎖を出してやがったのも『本物の鎖』に見せかけるため!」

 

「その通りだ。『実在する鎖』を操作する能力者を装っておけば、敵は見える鎖だけに注意を払うだろう? まさに今それが証明された。お前がつまらん強がりを言いかけた時、鎖はすでにお前の体を覆っていたのだよ」

 

 

 ギシィ

 

 

「捕縛、完了」

 

 

 

 

 ()()()()()()()でウボォーギンの動きを封じ込めるクラピカであったが、実のところあまり余裕はない。原作とは違い、制約と誓約がないからだ。だが、それでも彼の鎖の効果はすさまじい。特に仇の幻影旅団を相手にしているという部分も大きいだろう。現時点でウボォーギンの動きを封じ込めたということが証明している。

 

 

「ぐぎぎぎぎ…ガアァァ!!」

 

 

 しかし、この鎖は相手の《練》までを封じる。つまり、相手は本来の力を発揮できないにしろ、念能力は使えるということである。よってウボォーギンも必死で抵抗する。オーラによるガソリンが全開で供給できない中、肉体性能とわずかなオーラで鎖を引きちぎろうともがく。

 鎖が軋み始める。ウボォーギンの肉体のパワーは凄まじい。例え《練》が無くとも鎖を引きちぎろうとしている。だが、そこを大人しく見過ごすクラピカではない。すぐにオーラを纏った蹴りをウボォーギンにブチ込みまくる。

 

 

「ゲハッ!」

 

 

 流石のウボォーギンにも僅かにダメージが入る。顕在するオーラの差である。だが、それでも獣は繋がれた鎖を引きちぎろうと踠く。二重の鎖に亀裂が入り始めた時、クラピカはパワー不足を痛感し、鎖に更なる誓約を課そうと、自らに【侵入する小指の鎖(ジャッジメントチェーン)】を発現して差し込もうとした。

 

 

 

 

 

 その時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめなさい! クラピカ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウボォーギンに勝るとも劣らない大声量が響きわたる。その声を受けて、一瞬動きが止まる両者。2人してその声の元を見れば、いつの間にか巨大化したビスケの姿があった。

 

 

 

「全く…アンタはコレだから危ういのよね。もっと人を頼る事を覚えなさい。気持ちは分かるけどね」

 

 

「ビスケ…」

 

 

「ペッ! 随分逞しいお嬢ちゃんじゃねェか。オレ好みだぜ。待ってな。今このクソッタレな鎖を引きちぎって相手してやるぜ」

 

「生憎、アンタは好みじゃなくてね。それに、アタシが相手するまでもないわ」

 

「あぁ!? どういう事、モガァ!!」

 

 

 血反吐を吐き捨てて、ビスケにも噛み付くウボォーギンだったが、その背後から大きめの和紙が迫り、顔にピッタリ貼りついた。若干濡れており、見事に呼吸が塞がる。剥がそうとしても拘束され、上手く剥がせない。更に踠きまくるウボォーギンだったが、前後からクラピカとカルトの攻撃を受けてよりドツボにハマっていく。その内、ウボォーギンの動きが緩慢になり、遂には沈黙した。

 

 

 

「ありがとう…。やはりこのクラスを抑えるにはパワーがイマイチだったか」

 

「途中までは良かったよ。詰めが甘かっただけね。でも、あの相手にあれだけ出来れば十分。これなら大抵の相手は抑え込めるでしょ。で、死んだ?」

 

「いや、気絶した段階で解放した。ギリギリで死んでない。ボクもその辺は見誤らないから」

 

「だ、そうよ。どうする? トドメ刺す?」

 

「……いや……今はいい。コイツらは死すら生温い。私に考えがある。一旦彼らと合流しよう」

 

「ま、それこそ貴方の自由ね。処置は任せるわ。とりあえず拘束したまま連れてくわよ」

 

 

 

 

 ウボォーギンは厳重に拘束され、ビスケに担がれ運ばれていった。これにて幻影旅団の囮兼戦闘班の2人は恐るべき敵の手に落ちた。残る脚は10本。

 旅団崩壊の序曲は2人の敗北で幕を閉じた。


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