アンブレイカブルハンター【完結】   作:エアロダイナミクス

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99、反省点

 

 

 

 フェイタンはイライラしていた。余りにも長い通路、無限にあるかのような階段、そして襲ってくる謎の椅子や机。最初はイライラに任せて叩き壊していたが、その内思い直して動きを確認する実験台として使っていた。自分もかなり鈍っている。だからあんなにアッサリ跳ね返されたのだ。最盛期までカンを取り戻さねば。それが奴に勝てる唯一の方法だ。そして、自分の能力で跡形も無く消滅させる。

 

 

 そう考えてひたすら進みながら動きの確認をする。自慢のスピードも大分勘が戻ってきた。戦闘の勘も同じく、だ。

 

 

 どれぐらい登っただろうか。長い階段の果てに、大きな両開きの扉が現れた。恐らくここがゴールだろう。手間かけさせやがって。そういった怒りに任せて勢いよく扉を開くと、既に誰かが闘っていた。

 

 

 アレは…シャルナークか。オーラが膨大だ。切り札の自動モードを使っているようだ。だが、それでも、奴は凄まじい攻撃を軽くいなしている。あまつさえこちらに顔を向けて話しかけてきた。

 

 

 

「やぁ。君が第二号だ。待ってたよ。さぁ、どうぞ?」

 

 

 

 その物言いにフェイタンの我慢は限界を迎える。

 

 

 

「お前……殺す」

 

 

 言うと同時に一直線に飛び出す。接敵の直前に残像を残し、背後から回り込む。丁度奴を挟んで二対一の状態だ。服に仕込んだ仕込み刀を背後から突き刺そうとした瞬間、右上から嫌な気配を感じて刀で振り払う。

 

 

 

 ガキッ!!

 

 

 

 いつの間にか迫っていた念で象られた尻尾の様なものを撃ち落とす。《隠》だ。しかし、これがダメなら次だ、と再び残像を幾つも作り、アタックする。しかし例の尻尾に弾かれる。あのシャルナークの相手を正面からしながら、だ。コイツは後ろに目でも付いているのだろうか。フェイタンはよりギアを上げる。強い。ターゲットにここまで抵抗されたのは久しぶりだ。最近は弱い相手としか闘わなかったから正に圧倒的格上と対峙しているこの状況は新鮮だ。だが、あまり悠長にはしていられない。シャルナークが限界に近いからだ。もうかなり消耗しているのが見てとれる。このままいけば近い内にガス欠になるだろう。そうなる前に決着をつける。

 

 

 一旦下がったフェイタンは、シャルナークの背後に周り、死角から突撃する。シャルナークは自動操作状態だが、意図を察したようで最後の猛攻を仕掛ける。そして、遂に彼の腕を掴んで自らの身体に引き寄せる。

 

 

 ズブッ

 

 

 シャルナークの腹部をフェイタンの仕込み刀が貫く。しかも《硬》だ。決まったと思った。しかし、刀は止まっている。よく見れば相手の背後から現れた巨大な人型が手を挟んでいた。その人型は複数の手を持ち、空いた手で自分達を薙ぎ払う。シャルナークは既になすすべなく吹っ飛び、《硬》が仇となったフェイタンも多大なダメージを受けて吹っ飛んだ。

 

 

「なるほど。仲間すら犠牲にしても勝利を目指したか。だが残念だったな。それじゃあ私には通用しない」

 

 

 

 フェイタンは激怒した。身体は既にボロボロだ。骨折8箇所以上、内臓も痛めているだろう。……だが、条件は整った。

 

 

「驅囎…厦遲乃了…下澂!(クソが…調子に乗りやがって)」

 

 

 いつの間にか、フェイタンの身体は拘束具の様な、防護服の様な物を身に纏っていた。もちろんオーラで出来ている。

 

 

「ふむ、奥の手かな? これは…範囲攻撃か?」

 

「彝庹乃湄!(痛みを返すぜ)」

 

 

 ──灼熱に変えて!!──

 

 

 フェイタンの手から変化したオーラの塊が飛び出す。

 

 

「おっと…これは不味いな」

 

 

 

 相手に若干の焦りが見える。だが、関係ない。

 

 

 

 【許されざる者(ペインパッカー)

 

 

 上空に待機したオーラが輝き出す。

 

 

 【太陽に灼かれて(ライジングサン)

 

 

 

 カッ!!

 

 

 

 オーラから強烈な熱が発生する。オーラを熱に変化させたものだが、その熱量は桁違いだ。辺り一面が灼熱地獄へと変わる。生物なら間違いなく即死する程度には熱量がある。本来であれば、発動する前に叩くか、発動した段階で逃げなければならない。もっとも、その段階で逃げられるわけもないが。

 

 

 フェイタンは勝利を確信した。これまでの鬱憤と怒りとダメージが相まって、過去最大級の熱量が出力されたからだ。生物である以上、ましてや人間である以上、どんなにバカげた力を持っていようが瞬時に蒸発するだろう。コンクリートすら蒸発しそうな程だ。フェイタンがそう確信するのも当然だと言えよう。

 

 

「豼也叭吧吧吧吧! 撚鷃菟攲炉!!(ヒャハハハ! 燃え尽きやがれ!!)」

 

 

 

 ──1秒

 

 

 

 ──2秒

 

 

 

 ──3秒

 

 

 

 

 灼熱の時間が経過してゆく。()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 ──4秒

 

 

 

 ──5秒

 

 

 

 ──6秒

 

 

 

 

 

 

 ここにきてフェイタンはその異常さに焦りをみせる。相手に効果がないのだ。流石のフェイタンも動揺する。

 

 

「……莫龢无!! 爲故气个嬭!!?(バカな!! 何故効かない!!?)」

 

 

 

「何と言ってるか分からんが、疑問に思うだろうから答えよう。()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 平然とした物言いに絶句するフェイタン。普通なら喋る事すら不可能だ。だが、ならば更に出力を上げよう。自分の生命すら削る。瞬時に判断して自らに更なる誓約を課す。即ち、生命力を削って威力を上げる。後には引けない。引く気も無い。旅団員としてのシンプルな行動原理が、彼を更なる高みに押し上げる。

 

 

 

 

 結果

 

 

 

 

超新星爆発(スーパーノヴァ)

 

 

 

 

 ──カッ!!!

 

 

 

 瞬間的に、辺り一面が白で塗りかえられる。そして、凄まじい威力の熱量が展開される。その熱は既に太陽の表面温度を超えた。最早一個人が出せる威力ではない。戦略兵器クラスだ。自身もオーラの防護服も意味を為さず、手足が燃え始めている。ここにきてフェイタンは人の限界を超えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 目の前の男は立っていた。フェイタンの手足は炭化し、生命と引き換えの熱も下がりつつある。フェイタンは更に力を引き出そうと、生命力の総てを引き換えにしようとした、その時

 

 

 

 

「君は……凄い使い手だ。戦闘者としては超一流だろう。覚悟もある。だが、相手が悪かった」

 

 

 

 

 ドスッ!

 

 

 

 

 

 オーラの尻尾の先の針がフェイタンの燃え尽きつつある防護服を貫通して心臓に突き刺さる。最早フェイタンにはなす術も無い。

 

 

 

 

「畜呴…狌(ちくしょう)……」

 

 

 

 

 オーラが消え、身体が麻痺する。視界がボヤける。霞がかってゆく意識の中、フェイタンは自身の周りや近くにいた者達を覆うオーラを見た。つまり、この男は。あれ程の攻撃を受けながら周りに被害が出ない様に立ち回っていたのだ。余りにも余りすぎる力の差に笑いが込み上げる。全てがこのバケモノの掌の中で踊らされていたのだ。こんなに可笑しいのはいつぶりか。自分達はまるでピエロだ。ヒソカを笑えない。

 

 

 

 

 思えば好きに生きてきた。その終点がこれだ。この世は所詮そういうものだ。単に自分の番が来ただけのこと。心残りがあるとすれば、団長含む何名か脱出して蜘蛛が存続すればよいが。今の自分にはそれも栓の無いことだ。一部炭化し、更に麻痺する顔に歪んだ笑みを浮かべ、フェイタンはその意識を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死んだ……の?」

 

 

 ゴンが問いかける。

 

 

「いや、まだだ。殺してはクラピカに悪いからな。もう寸前ではあるが。両者生命維持程度には回復させてやろう」

 

 

 敵2人を申し訳程度に癒し、雁字搦めに拘束していると、ゴンが俯きながら話しかけてきた。

 

 

「オレ達は……弱かった」

 

「……」

 

「この人と闘ってたら間違いなく死んでた」

 

「そうだな」

 

「……オレは、強くなれるかな?」

 

「……私は、正直に言えば君たちが弱いとは全く思っていない」

 

「でも! 負けちゃった…」

 

「そうだな。私が敢えてそうなるようにしたからな」

 

「おい! そりゃどういう事だ!?」

 

 

 レオリオも会話に入ってくる。

 

 

「言葉通りだ。君達が負けるような組み合わせにした。結果、予想通りになっただけだ」

 

「な……! じゃあ負けたのは必然だったってのか!?」

 

「そうだ。だが、実は君達が勝てる目もあった。前の闘いを活かせばな。しかし、君達は慢心した。命が懸かった真剣勝負で全力に徹しきれず、隙だらけだった。結果、敗北に繋がった」

 

「オレ達は全力でやったよ!!」

 

「そうか? では、何故不意打ちなどをせずに律儀に待っていた?」

 

「! それは……」

 

「んな卑怯な事、できっかよ!」

 

「相手は遥か格上、そして命が懸かった闘いだぞ? ありとあらゆる手段を用いるべきだ。死ねば卑怯もクソも無い。実際待ち構えていたにも関わらず、相手に仕掛けられて先手を取られたからな。更に、相手の会話にも乗って自身達の名前すら晒している。何が起こるか分からない念戦闘で、情報のアドバンテージを失う事は致命的だ。それらの情報で強烈な攻撃を受ける事は充分考えられる。ジンが何故、あれ程厳重に情報を管理していたか、考えてみるといい」

 

「うっ……」

 

「君達は今現在でも十分強い。戦闘力や精神力という意味でだ。だが、致命的な弱点がある。それは、経験不足による状況や想定の甘さだ。厳しい事を言うが、先の戦闘では私が何とかすると、心の底で思っていなかったか? 本当に全力で出来る全てをやったか? 私がいない状況だったら2人は操り人形の末にボロボロになって死んだだろう。その想定の甘さ、相手との戦闘における心構えの違い、それらが相まって二対一という有利な状況でも負けた。そう言った意味では、弱い、と言える」

 

「「…………」」

 

「だからこそ、私は知って欲しかった。致命的な事が起きる前に。後々後悔しても遅いんだ。私がかつてそうだったように。闘わない、という事も生き残る為には重要な事だ。だが、どうしても闘わなければならない場合、負ける事は許されない。今回の事を教訓によく考えてくれ。もう、2度と負けない為に」

 

「……わかったぜ。オレはもう負けねぇ」

 

 

 レオリオが先に返事をする。負けた分素直になれたようだ。続いて、ゴンも同じように返事する。

 

「…………わかったよ。悔しいけど、肝に銘じとく。でもカーム、もしよかったらカームの話も聞かせてね」

 

「いいだろう。だが、それは今じゃない。時期が来たら必ず話すさ。まずはこの騒動を終わらせないとな」

 

「そうだ! クラピカやキルアやカルトは!? 無事なの!?」

 

「落ち着け。あの3人を信じろ」

 

「でもキルアが!!」

 

「それも含めて、だ。私がいるからには酷い事にはならん。それに、君達は自分の心配をした方がいいぞ?」

 

「どういう事……ハッ!」

 

 

 気付いたか。背後から迫る圧力に。

 

 

「2人とも〜? お話中悪いけど、ちょっとアタシのトコまで来てくれな〜い?」

 

 

 

 顔中に怒りマークをこさえて、尚且つ満面の笑みを湛えるビスケがそこにいた。やっぱりビスケは流石だな。瞬殺だったか。哀れ、ゴンとレオリオは首根っこを掴まれてズルズルと引き摺られていった。

 可哀想に…多分2時間コースかな? ま、充分反省するといいさ。今ならいくらでもやり直しがきくんだから。彼らに貴重な体験をさせられた。それだけでも今回の件はお釣りがくる。その点では旅団に感謝だな。後はキルアとカルトとクラピカか。特にキルア。これで例のアレがどうにかなるきっかけになるといいが。

 

 

 

 信じて待つとしよう。こうしてるとなんか悪のラスボスにでもなった気分だ。あながち間違ってないのがなぁ。ともかく、上手く事が運ぶようにもうひと頑張りするか。




2、3日でと言っていたにも関わらず、更新が大変遅くなって、本当に申し訳ありませんでした。
私生活及び仕事でゴタゴタしまくってて、小説が中々纏まらず、こんなに遅くになってしまいました。今後しばらく少し更新が遅れがちになるかもしれませんが、絶対にエタらないようにしますので、今後もどうかよろしくお願いします。
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