雪は雨を連れて、東京へと向かった。
「十三年ぶりの東京だね」
「うん…」
雪の問いかけに、雨は頷いた。
「どうしたの?なんか、元気ないけど?」
「うん。久々の都会だから、元気が無くて…」
「当然だね…」
雪と雨は、一緒に暮らすことになった、アパートへと向かった。
「ここだよ、私と雨が、このアパートで暮らすの」
「学校には行きたくない」
「行かせるつもりはないよ?
後、山に行くつもりもないから」
「ここから、遠いじゃん」
「そうだね、山から遠いよね、シブヤって」
「遠いんだね」
「後、雨、出来たら、家の家事やっておいてね、
風呂掃除と、トイレ掃除、後、タオルたたみ、
やっててね」
「どうして、僕が」
「もし、人間の生活が、嫌と感じたら、
おおかみとして、生ればいいし」
「じゃあ、今すぐ、帰る」
「それは、ダメ、じゃあ一つ聞くけど、
虫は平気だった?」
「それは…」
「やっぱり!それで、山の主を務めるなんて、
おかしいと思ったよ!」
「おおかみのくせに」
「私と雨は、人間であって、おおかみだから…
その…やっぱり、どっちにするか、決められないよ、
だから…私が高校卒業するまでの、三年間、
人間の生活をするの!
学校には行かなくてもいいから!
とにかく、自分のペースで楽しんだらどう?
人間の生活」
「僕だって…おおかみ人間みたいなものだから、
碌に送れないよ、人間の生活」
「大丈夫だよ、雨なら、出来るから、
まずは、家事の説明書!
これをよく読んで、熟読するんだよ!」
「そんなこと言われても…
押し付けだよ、こんなの…」
「じゃあ、しなくてもいいから、
大人しくしててね!」
「うん」
と、雪の問いかけに対し、
雨は不愛想な頷きをするのだった。
「何時に帰って来るの?」
「夜に仕事もあるから、夜の20時までには、帰ってくる!」
「わかった」
それから、数日後、
都立神山高校の全日制の入学式が、行われた。
雪は入学式に出席したのに対し、
雨は、一日中、家にこもっていた。
雨は何をやっていたのかというと、
暇そうに、自然や山の風景が描かれた、
雑誌を読んだり、
自然豊かな山が描かれた、ポスターカードを
じっと、見つめていたのだった。
雨は思い出すのだった、雪や、
死んでしまった母。花の事を思い出すのだった。
「そう言えば、東京に行くまでの間、
雪から、母の花が亡くなったことを、言われたな…
天国でお母さん、お姉ちゃんと僕のこと、どう思っているんだろう…」
雨は、そう思いつつも、
家事をした後、眠りにつくのだった。