雪と雨の奇妙な日常   作:アッシュクフォルダー

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第二十二話 雨と弁慶と演技力

えむの演技の練習に雨が付き合うことになった。

えむが、役者の練習に付き合って欲しいとねだられたからである。

 

「雨くん!今日はよろしくね!」

 

「よ、よろしくお願いします…」

 

えむが出演する舞台は、弁慶と牛若丸の物語である。

 

えむが牛若丸の役。雨が弁慶の役である。

 

雨は弁慶の台本を、何気に必死で読んでいた。

 

(人が作った物語、か…)

 

と、雨は弁慶のセリフを割と本気で覚えていた。

 

「雨くん!いくよ!」

 

「あ、はい」

 

雨は感じるのだった。

 

(えむさんって、こんな凛々しい表情が出来るんだ…)

 

と、感心した。

 

最初から最後まで通しでの、芝居練習だった。

 

「その…司さんのセリフを読んで、演技したらいいのですか?」

 

「うん!そうだよ!」

 

「そ、それじゃあ…」

 

雨は恥ずかしいと思いつつも、弁慶を演じるのだった。

 

「その太刀を置いて立ち去れ!

さすれば、命まで取らぬ!」

 

えむと雨は、クライマックスのシーンの練習演技をしていた。

 

雨のセリフが回って来て…

 

雨は思わず、感情移入をした。

 

「何をくだらん、御託を並べている!

かくなる上は、我が薙刀を受けてみよ!」

 

と、雨が勢いよく、薙刀を使うフリをした、

演技を披露した!

 

「おっと」

 

と、雨の攻撃の演技を避けた。

 

えむは、牛若丸の如く、踊るように動き、

楽しい気持ちを表現した。

 

「貴様、ふざけているのか!?

子供とはいえ、武士ならば、その太刀、

抜いて戦う覚悟を決めろ!」

 

と、雨が演技のセリフを言いだす。

 

えむは、少年風の声を出し続けている。

普段のえむの事じゃない。と、雨は思い、

逆に心が動いてしまう。

 

「そう言われると、ますます、相手にする気がなくなるものだね。

よっ、ほっ、よっと」

 

雨の薙刀のフリの攻撃を、えむが避け続ける。

 

えむは雨から、少し離れた。

 

雨は叫んだ。

 

「貴様ーっ!」

 

えむは、ニヤッと笑っていた。

 

(えむさん…!?)

 

雨は演技の続きをした。

 

「せいっ!」

 

と、雨が叫んだ。

 

「く…!」

 

雨は思わず、苦労した。

 

えむは雨の薙刀の演技をギリギリで避けていた。

目も雨の方を向けていた。

 

(こ、これが、演技!これが、芝居!)

これが…えむさんの本気!?)

 

雨は弁慶の役をやりつつも、何故かムキになっていた。

演技なのか?感情なのか?

 

きっと、両方ともだろう。

 

えむは楽しそうだ。

 

「ええい!ちょこまかと!」

 

えむは牛若丸の演技として、

雨が演じる弁慶をからかっていた。

 

「よっ!」

 

(弁慶の後ろに回って…こう!)

 

えむは雨の後ろに回った。

 

「やれやれ…骨が折れる。

けれど、君のような暴れん坊をからかうのは、

なかなか面白いね。

どうかな?もっと、大きな相手をからかったら、

ますます、面白いと思わないかい?」

 

「な、何を言っている!?」

 

と、雨の感情は昂っていた。

えむは続きの台詞を言った。

 

「源氏の再興には、興味は無いが、

君のように威張っている奴らをからかうのは、

興が乗った、ということだよ。

どれ、少し世をからかってやるか。

弁慶とかと言ったか。君も来るかい?

きっと、楽しい景色を見せてあげるよ」

 

「…!」

 

雨は思わず、心が奪われてしまった。

こうして、演技の練習が終わった。

 

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