夕方になった。雨は帰ろうと思っていたが、バスの本数が、
今日の便が、もう無い。
雨は最初から渡されていた、テレホンカードで、
姉の雪に電話した。
(もしもし、雨です…帰りたいですが…!)
(あっ、雨!伝えるのを忘れていたけど、宿泊する事になっちゃって、
もうすでに宿泊費は支払っているから、
私が泊まるはずだった部屋で一泊して!)
(どういうこと?)
(元々、会場のスタッフとして、参加したかったけど、
バイトが急に立て込んでいて…だから、雨に頼んだの。
雨。詳しくは、参加者に聞いて欲しい!ごめんね!伝えるのを忘れちゃって!)
(…)
雨の前には、冬弥が心配そうに見つめていた。
「雪さん。ボランティアスタッフとして参加するはずだったが、
バイトが立て込んでいたんだな」
「はい」
「雨。向こうで、みんなが待っている。行った方が良い」
「わかりました」
雨は冬弥と一緒に、バーベキュー会場に…
そこには、顔馴染みのある人が何人か参加していたが、
雨は大して気にしていなかった。
「雨。何が食べたい?」
「食べられるものなら、別に何でも良いですよ」
「それでは困る」
「…じゃあ、肉で」
雨は冬弥が焼いてくれた肉を食べる事になった。
それも、タレさえ付けずに。
「俺、ちゃんと焼けているか?」
「焼けていますよ」
「そうか。それなら、良かった…!」
すると、雫が…
「雨くん。野菜は食べれるかしら?」
「わかりました…」
みのりと雫が、バーベキューで野菜を焼いてくれた。
「キミが雨くんだね!初めまして!花里みのりです!」
「そう言えば、みのりちゃんは、雨くんに会ったことが無かったわね」
「愛莉ちゃんからは、よく聞いているよ!
年下の割に、しっかりしているって!」
「そ、そうですか…」
「私には雨くんと同い年位の弟がいるの!」
「僕には姉さんがいます」
「雨くんを見れば見る程、しいちゃんと似ているの!
初めて会った時から、そっくり!って、思っているの!」
「言われてみれば…志歩ちゃんと似ているかも!
あっ、志歩ちゃんと一緒のチームだったよね?」
「僕は志歩さんや彰人さん、それに愛莉さんと一緒でした」
「これまた、意外な面々!」
と、みのりが感心していた。
と、バーベキューを雨は細々と楽しんだ後、
雨は瑞希に言われて、瑞希を撮影する事になった。
瑞希は奏と絵名とまふゆの為に、線香花火を見せる予定。
「雨くん!ボクのスマートフォンの操作方法、わかった?」
「わかりました」
「じゃあ、奏と絵名に繋げるね。おーい!」
「瑞希!それに、雨くんまで!?」
「僕は姉さんの代わりに来ているだけで…」
「私は雨に初めて出会った」
「えっ?そうなの?」
と、奏は驚きを隠せなかった。
「うん」
(この人が奏さんが言っていた、まふゆさん…)
と、雨とまふゆは、お互いの存在こそ知ってはいるが、
画面越しとは言え、初めて顔を合わせた。
「そう言えば、雨くんがまふゆに出会う事、無かったね…」
と、絵名が言いだす。
「ボクや奏、絵名には会ったことがあるけどね…」
と、まふゆと雨は、ようやく出会った。
「それじゃあ、みんなに見せたいのがあるから!
雨くん!ボクのスマートフォンをスタンバイ!」
「はいはい…」
雨は瑞希のスマートフォンで、
瑞希が線香花火をしているところを撮影した。
「線香花火だ」
「うん」
「花火はキレイだけど、雨くんが困っているけど?」
「ひょっとして、嫌だった?」
「えっ、い、いや、そうじゃないです…」
その後、雨は線香花火が散ったタイミングで、
瑞希のスマートフォンを瑞希に返した。
「みんなに、どうしても見せたくて…つい…」
「僕は何だっていいですけどね…」
「そっか」
「まふゆ?」
「雨くん。私と違って、気持ちを口に出しやすいね」
「まふゆ!雨くんを困らせたらダメだよ!」
「絵名さん。僕は気にしていないので…」
「まぁまぁ…それじゃあ、この辺で!また、会おうね!」
瑞希がスマートフォンの録画を終えた後…
「僕は帰るので」
「えっ?もう帰っちゃうの?」
「疲れましたので、客室に戻ります…」
「そっか」
と、瑞希は雨に別れを告げた。