雪と雨の奇妙な日常   作:アッシュクフォルダー

28 / 38
第二十八話 雨とレンと夜空の星

雨はホテルの客室に入った。

 

(姉さんが泊まるはずの部屋…宿泊費も一泊分払っているとはいえ…

この部屋は、僕には広すぎるな…)

 

狭い部屋とはいえ、一人にしては広い洋間の客室。

ベッドと机、イスが置かれており、

トイレとシャワーが別々の部屋に設置されていた。

 

雨は特にすることが無かったので、シャワーを浴びた後、

身体を乾かして、大人しく寝ようとしていたが、

全く寝付けなかった。

 

すると…

 

(眠れないの?)

 

雨は思った。幻聴にでもなっているのか?

 

と、一瞬、振り向くと、ニーゴのレンの姿が…

 

(雨くん…驚かせてごめんね…心配だから、つい…)

 

「僕は幻覚でも見ているのですか?」

 

ニーゴのレン。雨が誰もいないセカイで仲良くしている、レン。

彼が雨の前に幻覚として、真夜中に現れたのだった。

 

(そうだね…ボク。幽霊みたいだね…

でも、雨くんが心配で、どうなるのかなって思って…

それで、気が付いたら、こうなっていて…)

 

「そうだったんだ…」

 

雨の前にいる、ニーゴのレンは、全体的に薄かった。

幽霊みたいに、透明な部分が目立っていた。

 

だが、レンの姿は雨の目ではハッキリ見えていた。

 

「どうして、僕が心配に…?」

 

(雨くん。ずっと、ずっと、何か迷っていたり、

悩んでいたり、辛そうにしていたから、

それで、ボクも雨くんの役に立てたらなって、

ずっと、思っていた…だから…)

 

「ありがとう…そうだな…一人でいるのもアレだし、

大勢も好きじゃないですが…レンがいてくれたら、

僕は幸せかな?」

 

(ボクがいてくれるだけで?)

 

「あぁ、お世辞じゃない。これは。

傍にいてくれるだけで良いから」

 

(傍にいてくれるだけで?)

 

「あぁ、そうだ。外に出ますか?」

 

(えっ?うん…)

 

 

雨と誰もいないセカイのレンは、夜空の元、浜辺で散歩をしていた。

 

「山には結構、入っていたけど、海を見るのは初めてなんだ」

 

(ボクは海も山も観たこと無くて…)

 

「山にはね、先生がいたんだ。昔ね」

 

(えっ?先生?)

 

「僕の人生の生きる道しるべになった先生がいたんだ」

 

(そんな凄い人がいたの?)

 

「人じゃないですけどね…」

 

(えっ?)

 

「ごめん。喋り過ぎた…」

 

(ごめんね…変なこと言っちゃって…)

 

「そんな事無いですよ。少し僕が喋り過ぎただけ」

 

(雨くんは、そ、その…幸せ?)

 

「そうだと思う…かな?」

 

(えっ?)

 

「レンがそう思うなら、そうじゃないの?」

 

(うん…ボク、疲れちゃったよ…)

 

レンは、砂浜に体育座りで、

雨は足を崩して、座り込んで、

二人きりで海をじっと見つめていた。

 

「これから、どうなるだろう…」

 

(う、うん…)

 

「きっと、何とかして見せるさ」

 

雨は思った。おおかみでも、人間でも無い。

ならば、それでも、死が来るまで、

最期になる、その時まで、生きると誓った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。