翌日
雨と龍馬は、えむと会話をしていた。
「ごめんね。急に呼び出して」
「気にするな。あれだけのことがあったからな」
「はい…」
「雨くん。龍馬くん。ここがあたしとおじいちゃんの特等席だよ!」
「おじいちゃん子だな」
「はい」
えむは、こう思った。
(おじいちゃんと、ここで沢山、ショーを観ていたな…
ショーが終わった後も、どこでもショーの話をしていたな…
今でも思い出すと、胸の奥がポカポカしてくるな…
あの子も家族との思い出があったんだよね…
でも、あの子はポカポカしていない。
冷たくて苦しい想いをしているって感じる…)
「やっぱり、ちょっとでも、元気になれる話が良いのかな…」
「無理にとは言わねぇし、
それに、人はすぐに立ち直れたり出来る訳ねぇ。
俺もそこまで強い奴とは言えれなかった」
「龍馬くん…」
「僕もそこまで強い人じゃない…言葉をもらって、
すぐに元気になれる程の人じゃない」
「雨くん…」
「だが、えむ。お前は純粋で真っ直ぐだ。
その輝きが、みんなを照らしてくれそうだな」
「…」
「俺はテニスをして、そして、夢も希望を捨てた。
愛する人も捨てた。友も捨てた。だが、今はどうだ?」
「そんなことない!龍馬くんには、咲希ちゃんや穂波ちゃんがいる!
あたし、知っているよ!咲希ちゃんや穂波ちゃんが、
龍馬くんの話をしている時、すっごく楽しそうだった!」
「フッ、そうか。それなら、別に構わねぇし、良いと思うぜ?
それに、雨。お前、人の事が言えねぇが、
何か背負っているのか?」
「…僕にはわからない」
「そうか」
「雨くんだって、あたしがいる!
それに、咲希ちゃんがいる!奏さんがいる!
穂波ちゃんだっているよ!」
「そう…ですね…」
えむは、龍馬と雨に対して、えむのやりたいことを、言いだした。
「悪くねぇな。むしろ、良いと思うぜ?」
「ぼ、僕もです…」
えむが、泣き始める。
「龍馬くんと雨くんが、聞いてくれて…理解してくれて、良かった…」
「今思えば、俺も憎まれながら生きてきた。
何の当てもなく。ただ、えむや咲希、穂波が、
俺の事を話している時が幸せだって言って、
何も出来ねぇ俺がいるな。情けねぇ限りだ。
だが、えむを見ていたら、その純粋さに救わたと感じたぜ」
「僕は、えむさんと初めて出会ってから、
何かが変わったって思った。
それも、偶然過ぎる出会い。環境が違うのに、
出会うはずが無いのに…何で出会ったかって、
不思議に思う位ですよ」
「あの時の雨くん。すっごく落ち込んでいたから」
「そうですか…」
「だから、雨くんにも、龍馬くんにも、前を向いて欲しい」
「…」
「…」
「あたしは、龍馬くんと雨くんが大好きだよ!」
雨と龍馬は、えむの純粋さに救われつつあった。