えむはこう言い出す。
「きっかけは、棚から落ちてきた、フェニーくんなんだ。
あたしの部屋は、おじいちゃんと一緒に撮った写真や、
もらった、ぬいぐるみが沢山あって…
ずっと、見ないようにしていたのに、
急にフェニーくんが、落ちてきて、目に入るようになったんだ。
それでね、クローゼットに閉じ込めようって考えていたけど、
でも、思い出がある物が多すぎて、
クローゼットに入りきれなかったんだ…
おじいちゃんと関係ないのを探すのが、
ずっと、ずっと、大変だったよ。でもね、それで気づいたんだ。
おじいちゃんは、どこにもいないんじゃない。
どこに行っても、何をしても、おじいちゃんと一緒だって、感じたの!」
「…」
「その時ね、世界がぐわわーって、広がったんだ!
ずっと、真っ黒だったのに、キラキラって、光だしたの!
クローゼットに閉じ込めようとしていた、ぬいぐるみを、
一つずつ、ギューッってしたの!
毎日ショーをやっていた、フェニックスワンダーランドにも、
行きたくなったし。
お気に入りだった、たい焼きさんや駄菓子屋さんにも、
行きたくなったんだ。えへへ、すごいよね。
あたしにイジワルしているって思っていた思い出が、
キラキラいっぱいの思い出になったの!」
「…思い出、来るのかな?このノートと向き合える日が来るのかな…?」
「大丈夫。きっとくるよ。
今はまだ、思い出がが悲しい気持ちでいっぱいかもしれないけど、
いつか、今までたくさん感じてきた幸せが、きっと一緒に連れて来るよ。
だから、大丈夫」
「…うぅ。おばあちゃん…本当は捨てたくなかった…
ノートも曲作りも…おばあちゃんのためにも、
頑張れたから…だけど、ノートを見ると苦しくて…」
その女の子は泣き出した。号泣した。
すると、遥が…
「そんなに、自分を責めたり追い詰めないで」
「で、でも…家族にも友達にも心配をかけて…
これじゃあ、おばあちゃんに顔向けできないよ…」
すると、一歌が
「あっ、あのっ!作曲が難しいなら、聴く側って、どう…かな?」
「え…えっ?」
「悲しみに寄り添ってくれたり、元気をくれたりする曲、
それに、あなたの気持ちを受け止めてくれる曲が、
必ずあるって思うんだ。きっとあるから」
「…!おばあちゃん…」
「えっ?」
「似たようなことを言われていて…」
「…!」
「わたしも、少しだけ、試したんですけど、出会えなくて…」
「出会えるから。わたしはあなたのために、曲を作るから」
「うん」
「俺が言えるような言葉じゃねぇが、力になってやる」
「僕も力になりたい」
「ありがとうございます…」
と、その女の子は救われたと、どこかで感じていた。