雪と雨の奇妙な日常   作:アッシュクフォルダー

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第三十五話 えむと思い出と立ち直り

えむはこう言い出す。

 

「きっかけは、棚から落ちてきた、フェニーくんなんだ。

あたしの部屋は、おじいちゃんと一緒に撮った写真や、

もらった、ぬいぐるみが沢山あって…

ずっと、見ないようにしていたのに、

急にフェニーくんが、落ちてきて、目に入るようになったんだ。

それでね、クローゼットに閉じ込めようって考えていたけど、

でも、思い出がある物が多すぎて、

クローゼットに入りきれなかったんだ…

おじいちゃんと関係ないのを探すのが、

ずっと、ずっと、大変だったよ。でもね、それで気づいたんだ。

おじいちゃんは、どこにもいないんじゃない。

どこに行っても、何をしても、おじいちゃんと一緒だって、感じたの!」

 

「…」

 

「その時ね、世界がぐわわーって、広がったんだ!

ずっと、真っ黒だったのに、キラキラって、光だしたの!

クローゼットに閉じ込めようとしていた、ぬいぐるみを、

一つずつ、ギューッってしたの!

毎日ショーをやっていた、フェニックスワンダーランドにも、

行きたくなったし。

お気に入りだった、たい焼きさんや駄菓子屋さんにも、

行きたくなったんだ。えへへ、すごいよね。

あたしにイジワルしているって思っていた思い出が、

キラキラいっぱいの思い出になったの!」

 

「…思い出、来るのかな?このノートと向き合える日が来るのかな…?」

 

「大丈夫。きっとくるよ。

今はまだ、思い出がが悲しい気持ちでいっぱいかもしれないけど、

いつか、今までたくさん感じてきた幸せが、きっと一緒に連れて来るよ。

だから、大丈夫」

 

「…うぅ。おばあちゃん…本当は捨てたくなかった…

ノートも曲作りも…おばあちゃんのためにも、

頑張れたから…だけど、ノートを見ると苦しくて…」

 

その女の子は泣き出した。号泣した。

すると、遥が…

 

「そんなに、自分を責めたり追い詰めないで」

 

「で、でも…家族にも友達にも心配をかけて…

これじゃあ、おばあちゃんに顔向けできないよ…」

 

すると、一歌が

 

「あっ、あのっ!作曲が難しいなら、聴く側って、どう…かな?」

 

「え…えっ?」

 

「悲しみに寄り添ってくれたり、元気をくれたりする曲、

それに、あなたの気持ちを受け止めてくれる曲が、

必ずあるって思うんだ。きっとあるから」

 

「…!おばあちゃん…」

 

「えっ?」

 

「似たようなことを言われていて…」

 

「…!」

 

「わたしも、少しだけ、試したんですけど、出会えなくて…」

 

「出会えるから。わたしはあなたのために、曲を作るから」

 

「うん」

 

「俺が言えるような言葉じゃねぇが、力になってやる」

 

「僕も力になりたい」

 

「ありがとうございます…」

 

と、その女の子は救われたと、どこかで感じていた。

 

 

 

 

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