クソを下水で煮込んだような性格の男になっちまったよ…… 作:猫太郎
ルーキー日間にこの作品がいた事に驚きを隠せない作者です。
あれから時間が経って、雄英入試があと1年ぐらいに迫ってきた。俺の”爆破”の個性は派手で攻撃力は凄まじい。だが、それ故にその個性を鍛えるのが難しい。
個性を鍛える方法は簡単だ。個性を使い続ける事である。個性も身体機能の1つであり、鍛える事で徐々に個性の出力が上昇していく。
俺の場合は、ひたすらに爆発を起こし続ければいいという事である。単純であるが、難しい。この世界はヒーロー免許というものを持たぬまま、個性を使えば犯罪者扱いされるのだ。身体能力を強化する個性なら、筋トレと同じような事をし続ければいいのだが、俺は無理である。
どこかで爆発を起こしてみろ。爆発が起きるせいで、一瞬で個性を使っているのがモロバレだ。だが、俺は個性を鍛える事が出来た。
どうやったのかというと、簡単な話だったのだ。大きい爆発でバレるなら、小さい爆発でいいのではないかという事である。筋トレも同じだろう。目的によって、高負荷と低負荷のトレーニングを使分けるだろう。俺の場合は、それをずっと低負荷のままでやっていたようなものだ。
何年も浜辺で誰もいないような時間帯で小規模の爆発を起こし続ければ、それなりに鍛える事が出来た。まぁ、実はそれ以外にもあるのだが、時が来たらいつか話そう。
個性以外にも素の身体能力も鍛え続けた。50m走は5秒をあと少しで切るぐらいになったし、ソフトボール投げは90m近くになった。前世で考えれば、明らかに人外レベルなのだが、この世界では確かに凄い方であるが、それでも化け物という程でもない。身体能力に関係のない個性であったとしても、頑張ればこれぐらいになれるのである。流石は漫画の世界と思っておこう。
元の体が「早熟の天才」とか言われていたおかげか、前世では要領が悪かった俺が学内ではトップの成績を誇っている。
え? 俺自身で「ヒーローにならねぇ」とか「雄英になんか行かない」とか言ってただろだって? その通りなんだが、ちょっと諸事情で行かざるをえない状況になっているのだ。その諸事情というのも時が来たらいつか話す。過去に色々とあったのだ。正直、あまり思い出したくないぐらいには、暗い過去が出来てしまった。
まぁ、そんなこんなで雄英に通う事になった。
ぶっちゃけ、それ以外にも行きたい動機はあるが。というか、そっちの動機の方が重要だが。
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中学3年という事で進路を考える時期になってきた。俺は既に言った通り、雄英希望である。この学校から雄英を受けるのは、俺だけではなく、出久もそうである。その情報は、生徒達の目の前で生徒の進路を暴露するなんていうクズみたいな担任によって、あっという間に広がって行った。勿論、教育委員会に報連相を即実行して、その担任はどっかに行ったが。是非とも、そんな奴が2度と教師にならない事を祈るばかりだ。
原作通りに行くならば、出久はあと1年ぐらいで個性を獲得する事になる訳だが、この時はまだ無個性のままだ。無個性で雄英志望。それが学校の中でネタのように扱われて、嘲笑されている。それがあまりに酷くて、脅s……、注意したおかげで多少なりとも収まったと思われる。多分、行いを改めたとかじゃなくて、単純に俺が怖いだけだろう。性格は原作よりもマシだが、目つきは原作以上に悪くなっている。
当たり前だが、俺は原作の爆豪では無いからな。自殺教唆なんていう事はしていないし、俺個人としても出久のヒーローになるという夢は応援している。周りから「諦めろ」だの「現実を見ろ」だの言われているのに、ひたすらに夢に向かって走り続ける彼女を俺はカッコいいと素直に思っている。
毎日、最難関と言われる雄英に受かるように猛勉強して、少しでも無個性と個性の差を埋める為に体を鍛え続けている。確かに現実を見るのは大事であるが、それでも夢に向かって努力し続けるのは後に大きな糧になるだろうから。
それにどうせ、”OFA”を受け継いで、雄英に受かるだろう。原作よりも身体能力を鍛えているから、”OFA"の出力許容量も上昇していると思われる。今の所、”OFA”を授かったようには見えないが、原作ではそろそろだったはずだ。”OFA”継承者に選ばれるのは。
さて、そんな緑谷出久が俺の目の前で顔から湯気を昇らせていた。
「うぅ、分かんないよぉ」
改めて見ると、本当にこの世界では緑谷出久は女子になっている。短めのポニーテールで髪を纏め、鍛えているおかげか女優でもやっていけるのではないかと思えるぐらいにはスタイルが良く、顔も整っている。
今は出久と雄英の筆記試験に向けての勉強中である。雄英の試験には筆記と実技の2つがある。最難関と言われる雄英の筆記試験は、応用レベルの問題が基礎レベルとして出題されるぐらいにはイカレてる難易度だ。俺の方は、元の体のスペックが良かったおかげか、過去問を解いても既に90点台を取れるぐらいにはなっている。ついでに自慢しておくと、学内成績は堂々の1位である。
一方、出久の方は湯気を昇らせている事から分かるようにだいぶヤバい。基礎はだいぶ固めてあるのだが、応用になるとちょっと厳しいのだ。応用が普通に出てくる雄英の試験となると、少し危機感を感じる。まだ1年あるとはいえ、前世で受験をしてきた俺の経験則からすると、試験までの1年なんてあっという間だ。
原作みたいに出久と俺の仲は悪いという訳ではない。幼馴染として何年も一緒にいたぐらいには仲が良いと思われる。そこで出久から勉強を教えて欲しいと頼まれて、市内の図書館で勉強会の真っ最中である。
「ちっ、馬鹿が。んで、どれが分からねぇんだ?」
勉強を見ると言った以上は、ちゃんと教えてやらねばなるまい。自分の勉強も進めながら、出久の勉強も見る。最初は大変であったが、慣れれば苦では無かった。誰かに教える事は、自分にとってのプラスにもなると誰かが言っていたが、真にその通りだった。教える事でその問題への自分の理解度がよく分かるのだ。
まぁ、前世で理系のそれなりの大学にまで行った俺ならば、高校入試ぐらいはいくら難しかろうが普通に行けるレベルだ。なお、社会は除く。理系を専門としていたから、国語の方も少し心配していたのだが、心配する程でもなかった。大学時代に論文を読み漁り、要点を纏めるという経験が役に立っているのだと思う。
俺が1番ヤバいのは、社会である。年号とかその辺が色々と危うい。社会とか全く触れていなかったから、殆ど忘れてしまっている。
俺も社会は不安が残るが、少なくとも目の前で頭を抱えている奴よりは百倍マシだろう。
それでも大丈夫だろう。無個性だと罵られながらも、ヒーローになる努力を絶やさなかった「努力馬鹿」みたいなあだ名が似合うであろう出久ならば。
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勉強は大事だが、今はまだ根を詰める時期でもない。こんな時期から頑張っていると、間違いなく入試直前に燃え尽きる。そういう訳で勉強は程々にして、帰宅する事にした。今日は休日という事もあって、人通りが多い。あまりの人の多さに若干の鬱陶しさすら覚えてしまう。
だが、段々と家に近付くにつれて、人通りも少なくなっていく。別に家の周辺が過疎っている訳ではない。今の時刻は午後3時。休日という事で早くから遊びに行っているか、家の中でぐうたらしているだけなのだろう。俺の両親も我が家でぐうたらしているだろうし。
「昨日、オールマイトがね──」
そんな人がいない道を俺と出久は2人で歩いていた。出久の口からは、毎度オールマイトを始めとした多くのヒーローの活躍が出るわ出る。脳がインターネットに接続されているのではないかと思うぐらいには、その知識は膨大だ。好きなものについて思う存分語っている出久は、とても生き生きとしている様子だった。
おかげで俺はヒーローオタクという訳でもないのに、ヒーローについてそこそこ詳しくなってしまった。
ヒーローについて存分に語る出久に相槌を打っていると、出久が突然その場に止まった。その顔は何故か、酷く暗い。つい先程まで「人生楽しい!」みたいな顔でヒーローを語っていた顔とは思えない。
「ねぇ、かっちゃん。聞いてもいい?」
きっと、これは真面目な話なのだろう。雑に受け答えをしていい内容では無いと思った俺も気を引き締めて、続きを促すように言う。
「かっちゃんはさ、なんで私のヒーローになるっていう夢を応援してくれるの? 学校の先生にも言われたけど、無個性でヒーローになるのは殆ど不可能だよ。もし、なれたとしても、無個性のままでヒーローになった所で危ないのは自分でも分かってる。夢を諦めるなんて事は出来ないけど、その夢がひたすらに遠いのなんて分かってる。かっちゃんは頭良いんだから、そんなこと分かってるでしょ? それなのに、なんで……?」
本音を吐露する出久の顔は不安で揺れていた。確かに出久は無個性である。幼い頃から、ヒーローになる為に体を一生懸命鍛えていたおかげで、一般人よりも何倍も強いのも知っている。格闘術も習っているのを知っている。
その努力の裏には、きっと常に不安が燻っていたのだろう。雄英ヒーロー科受験という夢への1歩が近付いているからこそ、その不安が少しずつ大きくなっていたのだろう。幼少期の頃から、無個性である事を気にし続けて、今になって、その不安が溢れ出したという事だろうか。
それに気付けなかった己の鈍感さが笑えてくるが、今はそんな自己嫌悪は放っておく。
「はっ、確かにお前は無個性だ。無個性でヒーロー免許を得ようなんざ、夢のまた夢だろうよ。それは紛れもねぇ事実だ。個性無しでヴィランと対峙すりゃあ、死ぬ確率は他のヒーローに比べて格段に
俺の思った事を正直に告白するとその顔にあった影が更に濃くなる。今時のヒーローは、戦闘とは何らかの形で関係している個性を持っている。例え、直接攻撃する事は出来ずとも、何らかの形で戦闘に影響している。そんなヒーローに比べて、出久は無個性である。確かにそれは大きなハンデとなるだろう。無個性という状態でヒーローになれる確立なんざ、1%もないだろう。
「だが、お前は俺がそんな事言った所で諦めねぇだろうが。諦めねぇから、今まで頑張ったんだろうがよ。頑張ってる奴の夢を応援してやっちゃ悪いかよ。お前が諦めてねぇから、引子さんとか俺の親が応援してるんだろうが」
いつもいつも、俺の両親は出久の事ばかりを聞いてくる。「無理してない?」だとか「しっかりとサポートしてやんな」とか。他にも、出久と会う事があったら、その度に「頑張れ」と応援している。誰かが頑張っている姿を見ると、ついつい応援してしまいたくなるというのは、ヒーロー社会に生きる俺達の性なのかもしれない
「お前は想いをきっぱりと諦められるような器用な奴じゃねぇだろうよ。誰よりも近くにいた俺が言ってやる。お前は誰よりもヒーローが好きな、ドが付くほどのヒーローオタクで、無個性のくせして、誰よりもヒーローになりてぇって思ってる不相応な夢を抱いてる大馬鹿だってことをよ!」
お節介を仕事とするヒーローを見続けてきたせいか、ヒーローでない者にまで影響しているのかもしれない。
「そもそも、俺が時間割いてまで、ここまでしてやってるのに、今更「ヒーローになるつもりないんです」とか言うつもりか? 俺がそんな事を許す訳ねぇだろ。俺が手伝ってやってんだから、お前のヒーロー免許取得っつうのは、もはや義務なんだよッ!」
「要するに、だ。なれるなれないの話なんか論外だ。んなもん、ゴミ箱にでも捨てとけ。俺が態々手をかけてやってんだから、お前はヒーローになんだよ、なるしかねぇんだよ。オールマイトみてぇな、助けて勝つ最高のヒーローに。それ以外の選択肢ねぇからな。もし、これで雄英不合格だったら俺がぶっ殺す! ヒーローになれなかったらぶっ殺す! No.1ヒーローになれなかったらぶっ殺す! 分かったんなら、うじうじしてないでとっとと帰るぞ!」
言う事だけ言ったし、俺は家に向かって歩き出す。出久は、そんな俺に続くようにして歩き出した。
「言葉が物騒過ぎだよ、かっちゃん…… まぁ、ありがと」
俺のあんまりな言葉選びに出久の口から小さな笑い声が漏れている。「うるせぇ」と言おうと、隣を見てみると、その頬には水の跡があった。流石に、泣いている女子に向かって何かを言う訳にもいかず、何も言わなかった。だが、黙っているというのも俺の性に合わず、かと言って話しかけるのも憚られる。悶々とした気持ちを少しでも誤魔化すように頭を雑に掻いた。
あと、これは恥ずかし過ぎて言えないが、こいつはもう既にヒーローだ。人を救う人をヒーローと呼ぶのなら、お前は俺を救ってくれた
……ところで誰もいない道で涙を流す少女と人を殺した事があるようなヤバい目付きの俺。誰かに見られたら、間違いなく事案な気がする。
轟焦凍を焦凍ちゃんにするか、焦凍くんにするか。どうしましょう?
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焦凍ちゃん見てみたい!
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焦凍くんのままでいい
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ぶっちゃけ、どってでもいいよ