クソを下水で煮込んだような性格の男になっちまったよ……   作:猫太郎

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ランキングにお邪魔させていただいた事に気が付き、狂喜乱舞した作者です。
ついに5以下の評価が付いてしまった事に気が付き、orzした作者です。
とりあえず、続きを書きましたのでどうぞ。


第3話 泥野郎

 あの「3連続ぶっ殺す」発言から少し日が経った今日。今でも偶に現れる出久の夢を馬鹿にする不良共を適当に追い払い、学校から出久と2人で帰っている時の事。

 

「Mサイズの隠れミノ……」

 

 後ろから声が聞こえた。振り向くと、そこにはマンホールから出てきた人の形をしたヘドロがいた。いつか来るとは思っていたから、3年生になってからいつも以上に出久と共に行動するようにしていたが、ちゃんと俺と一緒にいる時に現れてくれて良かった。

 

 ヘドロは俺達を視認すると同時に出久に向かって飛び掛かった。男の俺よりも女子の出久の方が乗っ取りやすいとでも思ったのだろうか。

 

「死ねやッ!」

 

 出久を庇うようにして前に出てから、周りへの被害が最小限になる程度の爆発をお見舞いした。まさかの俺の反撃にヘドロヴィランは呻き、怯んだご様子。

 

「今の内に逃げるぞ!」

 

 ヘドロヴィランが怯んでいる内に突然のヴィランの出現に呆然としている出久の手を掴んで、逃走を図る。ここで撃退してもいいのだが、ここは住宅街であり、近くには出久がいる。俺の”爆破”は威力と攻撃範囲は折り紙付きだが、それ故に使用場所が限られる。威力の加減は出来るが、それでも周りへの被害を考えるとここは逃げを選ぶべき。てか、一般人の俺が個性を使えば、面倒事に巻き込まれる。

 

 怯みから回復したヘドロヴィランが俺達を何とかして捕まえようと追いかけてくる。追いかけてくるが、俺も出久もヒーロー志望であるし、体もそれなりに鍛えている。全力で逃げ続ける俺達との距離が中々縮まらない。

 

 それでも、個性を使用しているヴィランの足の方が速く、距離は徐々に徐々にその距離は無くなっていく。だが、問題無い。ある程度の時間を稼ぐ事が俺の目的だからだ。何故なら……

 

「もう大丈夫だ! 私が来たッ!」

 

 No.1ヒーローであるオールマイトが原作通りに来てくれるから。オールマイトは、目にも留まらぬ速さで光速のパンチを繰り出す。その拳1つで巻き起こされた風圧がヘドロヴィランを散らさせ、一瞬で無力化に成功した。やっぱり、オールマイト強いなぁ……

 

「か、かかか、かっちゃん! オ、オオオ、オールマイトだよ! 生のオールマイトだよ! 私服姿のオールマイトとかレア中のスーパーレアだよ! やっぱり、オールマイトだけ画風が違うよ!」

 

 俺の肩をがっちりと掴んで揺らす出久。オールマイトと出会って嬉しいのは分かるが、そろそろ俺を揺らすのを止めて欲しい。あまりの揺さぶりにちょっと酔ってきた。爆発を使った高速移動で鍛えられた俺の三半規管をも貫通するとか、どれだけ高速で揺らしてんだよ、出久。

 

「少年少女、怪我は無いかい! いやぁ、ヴィラン退治に巻き込んでしまって、本当に悪かった! いつもはヴィランを逃がすなんて事はないのだけれど、私とした事がオフだったのと慣れない土地で浮かれちゃったかな! HAHAHAHAHA!」

 

「あ、あの、オールマイト! このノートにサインを!」

 

 先のオールマイトのパンチにも劣らぬ速度で出久はバッグから一冊のノートとペンを取り出す。

 

「無論、構わないとも! これでいいかな!」

 

「ありがとうございます!! 家宝に! 家の宝にさせていただきます!」

 

 サインを書いてもらった出久は、そのサインを見て、ブンブンと頭を下げる。頸椎を損傷しそうな程にヘッドバンキングをする出久。本当に首からバキッという音がしてもおかしくないレベルでお礼をしている。

 

「じゃあ、私はヴィランを警察に届けるので! 液晶越しにまた会おう、少年少女!!」

 

 オールマイトは、ググッと力を溜めるように膝を曲げる。元々巨大だった足が更に筋肉が隆起し、ズボンが張り、ビリッという聞こえてはいけないような音が聞こえる程に足が大きくなっていた。

 

「これからも応援よろしくねえええぇぇぇぇぇ!」

 

 溜めた力を一気に解放して、オールマイトは跳躍した。空に羽ばたく鳥のように。一瞬で豆粒程の大きさになり、オールマイトはすぐに見えなくなってしまった。

 

「帰るぞ、出久…… ん?」

 

 隣を見たら、いるはずの出久がそこにいなかった。周りを見ても、出久の影すらない。

 

 ……あ、そういえば、ここで原作だと跳んで行ったオールマイトに出久が引っ付いたんだっけ。ど忘れしていた。実は、原作の記憶もだいぶ曖昧になっている。

 

 俺の記憶では、「中学3年の時に出久がヴィランに遭遇し、オールマイトに助けてもらった。その後でオールマイトから「君はヒーローになれる」との言葉を貰った」ぐらいしか頭に残っておらず、細部まで頭に残っていない。詳細な時期も分からなかった為、3年になってから行動を共にするしか無かったのだ。

 

 それでも薄れていた記憶が段々と形を取り戻してきた。そういえば、この後に俺こと爆豪勝己が逃げ出したヘドロヴィランに捕まってしまい、そこに主人公が飛び出してくるんだっけか。それがオールマイトの心に響いて、主人公を自分の後継者に認めるとかいう話だった気がする。

 

 この場合、どうした方が良いんだろうか。

 

 俺がそのまま真っ直ぐ帰れば、俺がヴィランに捕まるという可能性は消える。そもそも、ヘドロヴィランが逃げ出すなんていう事が起きない可能性もある。だが、原作では男だった筈の出久がこの世界では女子になっているように、何らかの相違点が出てくる可能性も十分に有る。

 

 例えば、ヘドロヴィランは原作通りに逃げられてしまい、捕まるのが俺以外の誰かになるとか。

 

 俺はどうするべきなのだろうか……

 

 よし、決めた。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 俺は家には帰らず、都市部の方を目指していた。そして、歩いている時に何処かで大きな爆発音がしたと思ったら、ある場所から煙が空に向かって舞い上がっていた。それを見た瞬間、俺は無意識に駆け出していた。

 

 どうせ、どこかのヒーローが助けるだろうに、それでも行かずにはいられないのは出久の影響なのだろうか。

 

 事が起きている場所に到着すると、そこには野次馬が殺到していた。辛うじて見えるのは、原作通りに逃げ出したヘドロヴィランとそれに捕まる1人の女子校生、そして手をこまねいているヒーロー達。

 

 ヘドロヴィランに囚われた女子校生を俺は知っているし、今日も会った。学校で出久に絡んでいたから、俺が返り討ちにした不良の女子校生である。確か、あいつの個性は”炎を手から出す”個性。俺の炎バージョンの個性みたいなものだ。火力は俺の方が圧倒的に上だが。要するに、俺の代わりにあいつが囚われたという事だ。

 

「くそがっ! んな事だろうと思ったぜ!」

 

 俺が見た爆発は、その炎が何かに引火した事によって起きたのだろう。

 

「おい!? 危ねぇから下がってろ!」

 

 その時、ヒーローの慌てる声が聞こえた。向こう側の野次馬から誰かが飛び出しているのが見えた。否、「誰か」なんていう曖昧な表現をせずとも、誰が飛び出したのかなんて決まっているだろう。

 

 必死に走って、その顔にちょっとした勇気を浮かべて、助けを求めていた者に向かって行ったのだ。無個性であるあいつが個性を悪用するヴィランに。つい今朝、自分の夢を馬鹿にした奴に。

 

 本当に、流石は緑谷出久と言う他ない。ならば、曲がりなりにもヒーローを志す俺もそれに遅れる訳にはいかないだろう。

 

 爆発を使い、野次馬を飛び越える。野次馬か、それともヒーローか。俺に危険だと言う声が聞こえる。だが、その全てを今は無視する事にしよう。

 

 俺の爆発の音に気が付いたのか、ヘドロヴィランと出久がこちらを向き、共に驚いたように目を見開いた。

 

「か、かっちゃん!? なんでここに!?」

 

 自分の事を棚に上げて「なんでここに」と言われるとは思わなかったとだけ言っておく。

 

「おい出久! そいつの手を絶対に離すんじゃねぇぞッ!」

 

 それは俺への信頼と受け取っていいのだろうか。俺の言葉を受けた出久は、必死にヘドロを掻き分け、囚われた女子高校生の手を掴んだ。

 

 ところで、ヘドロヴィランに物理攻撃は殆ど効かない。流体状の体であるが故に。ならば、どうするか。液体の体を吹き飛ばせばいいだけだ。先程、オールマイトはパンチによって発生した風でヘドロヴィランを吹き飛ばした。

 

 俺にも風ぐらいなら、楽勝で起こせる。正確には「爆風」だが。風は風である。先程、襲われた時に俺の爆風がこいつに効くのは実証済みだ。あの時は周囲への被害を考えてだいぶ手加減していたのであまり効果は無かったが、今は周りを気にする必要は無い。周囲の建物は既に使い物にならないだろうし、これなら俺が更に壊しても問題ないだろう、多分。ヘドロヴィランも先の俺の攻撃を思い出したのか、その汚ぇ腕を俺に伸ばすが、俺の方が速い。

 

「くたばりやがれ!」

 

 地面に向かって、俺は全力の爆発を叩きつけた。それによって、巻き起こる大爆発、爆風、轟音。その爆風はヘドロヴィランの体を半分以上も散らし、大幅に弱体化させる事に成功した。

 

 それを好機と見た出久は女子高校生の体を引っ張り出して、ヘドロヴィランから人質を奪い返す事が出来たようである。

 

「クソガキがぁああああああ!!」

 

 俺の爆風を受けても、未だにヘドロヴィランは行動不能になっていなかった。それでも、体を構成していたヘドロは半分以上がそこら中に飛び散ったせいで俺以上に大きかったその体は俺より少し大きいぐらいにまで縮んていた。

 

 だが、それでも小さくなった顔を憤怒に染めたヘドロヴィランは、俺に向かって突進を開始した。道に落ちている瓦礫を流体の体で無視して、怒りのままに行動を起こす。

 

 それを見ても、俺がヘドロヴィランを撃退するなり、逃亡するなりの行動をする事はない。

 

 何故なら、既にこいつの運命は決まっているのだから。あのヒーローがこれだけ魅せられておいて何もしない訳がない。てか、野次馬から飛び出した時にあの金髪が見えた。これで何もしなかったら、本気で「ニセ筋」と呼ぶ事にしよう。まぁ、それでもあのヒーローは来てくれるだろう。

 

 さて、これからブタ箱にぶち込まれるであろうヘドロヴィランにお別れの挨拶でもしておこう。中指をしっかりと上げて、分かりやすく見下したような笑みを浮かべて、こう言ってやるのだ。

 

「とりま、死んどけや、泥野郎」

 

「このクソガ──「DETROIT(デトロイト) SMAAAASH(スマアアッシュ)!!」

 

 俺の挑発に反応したヘドロヴィランだったが、突如として現れたオールマイトは拳を振るった事でその体は完全に吹き飛ばされた。オールマイトのその拳は台風と錯覚する程の暴雨と竜巻を起こしたのだ。その風が止んだ後には、先程まで青天だった空が曇天に染まり、雨を降らせ、この場で起きていた火事を鎮火した。

 

 拳1つでヴィランを撃破し、天候を変えたオールマイトを見て、その場には大喝采が巻き起こった。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「かっちゃん、大活躍だったね。私は「君が行く必要は無かったんだ!」って怒られちゃった……」

 

 隣で歩く出久の顔を見れば、気分が沈んでいる事は明白だった。ヒーローに絶賛された俺と叱られた出久は一緒に帰り道を歩いていた。2人とも、火事現場にいたせいで服が煤で汚れており、ババアに叱られる事は逃れられない運命だろう。

 

 それにしても、ヒーロー共は見る目がない。真っ先に飛び出した出久には叱るだけ叱って終わりなのだから。一方、凶悪犯の顔をした俺は絶賛された。注意されたのは個性を使ったぐらいだが、大して何も言われなかった。めちゃくちゃ聞き流したおかげで、ヒーローの言葉は既に忘却の彼方だ。

 

「じゃあ、なんだよ。お前はさっきの事を後悔してんのか? 自分は行くべきじゃなかったって? あいつを見捨てるべきだったとでも思ってんのか?」

 

 我ながら、随分と酷くて極端な質問だなと思う。それを言うと、つまりはあれを見ていた野次馬全員があいつを「見捨てた」という事になるのだから。これは極論過ぎる話だろう。

 

「そんな事ない! 結局、私は何も出来なかったけど、飛び出した事は後悔してないッ! ……助けを求めた人に応えるのがヒーローだから」

 

 俺の酷い質問に出久はそう答えた。出久は基本的にはうじうじしている。だが、オールマイトに憧れて、無個性だと馬鹿にされても、必死に腕を夢に伸ばし続けた事で身に付けたヒーロー精神は本物だと俺は思っている。

 

「なら、それでいいじゃねぇか。それが本当なら、あの場でお前は誰よりも、俺よりもヒーローだった。ヒーロー共よりも助けに応えたヒーローだった。それだけの話だろ?」

 

 ヒーロー共には危なっかしい中学生に見えたのだろう。無個性で暴れるヴィランに立ち向かったのだから。なんなら、俺も出久を危なっかしいとすら思っている。それでも、その心は既にそこらのヒーローには負けはしないだろう。というか、断言出来る。心は勝ってると。

 

……本当にかっちゃんはずるいなぁ

 

 その心に付いてこれるだけの力があれば、出久はいつかきっと、最高のNo.1ヒーローになる日が来るだろう。後は、その理想への道を歩くだけの力があれば。

 

 そして、その力をくれるであろう人は目の前にいる。

 

「すまないけど、私は彼女に話があるのだが、借りてもいいかな。彼女は私が責任を持って送り届けると誓うよ」

 




爆豪君をヘドロヴィランにプレゼントしようか超迷いましたが、結局こんな形になりました。

次回は雄英入試まですっ飛びます。出久とオールマイトの修行シーンはオールカット。
あと、出久視点の話をUSJ後にでも入れようかなとか思っています。

轟焦凍を焦凍ちゃんにするか、焦凍くんにするか。どうしましょう?

  • 焦凍ちゃん見てみたい!
  • 焦凍くんのままでいい
  • ぶっちゃけ、どってでもいいよ
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