たまには地球がチート臭くても良いのではないかと   作:ヤマトとトマトはなんか似てね?

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時間的にお盆休み最後の投稿です。
コロナ禍のせいか来客が少なかったので、思いの外執筆時間が取れて満足っす。

今回はキャラが一言も喋らない珍しい回です。
おまけに内容が政治とかクソ真面目が混入。
正直、面白くないかもしんないっす。





第22話:”火入れ式”

 

 

 2199年4月某日、その日のトップ検索ワードは「地球製波動機関 イスカンダル製波動コア 火入れ」だったとされる。

 

 ”それは厳格で神聖な祭事のようだった”

 

 と後世の歴史書に書かれることになるその式典は、M理論をその骨子とする理論で動く地球製の次元波動機関に、イスカンダルの技術以外では作りえない高精度な波動コアが、地球連邦の要人を従えたイスカンダルの王族の二人……儚さと美しさを兼ね備えた相似形のような美少女、第二王女とサーシャ・イスカンダルと第三王女ユリーシャ・イスカンダルの手で厳かに装填された時にクライマックスを迎えた。

 原作と異なり、エンジンルームにいるのに防護服姿ではなく姉妹のほかにも拍手する全員が正装で、見栄えも悪くない。

 いや、むしろ華があるとも言えるだろう。

 

 他から引っ張るのではなく、自前の副動力……円盤状の第一船体に搭載された重水素とテレザート由来の反重水素を対消滅させる反物質炉から必要にして十分な電力供給があり、ポール状の第二船体に収められた波動機関は何事もなかったように起動、むしろ快調さをアピールするように軽妙な音を立てて量子フライホイールを回し始めた。

 

 第二船体から正面から見るとU字状に見えるアームで左右斜め上に連結されるエンジンポッドに納められる真空相転移機関は、まだその目覚めを迎えていない。性質上、出力を得るのにより純度の高い真空を必要とするため、その真価を発揮するのは宇宙空間に出てからだろう。

 

 ”地球連邦とイスカンダルの新たな絆、これから始まる友誼と親愛の証”

 

 きっと俗っぽくそう銘打たれることになるだろう”火入れ式”は、地球連邦とイスカンダル双方に実利(メリット)のある……どこまでも政治的な式典として企画され、そしてその意図の通りに開催され、地球連邦全域に生中継され、そして期待通りの反応を連邦市民より引き出した。

 

 

 

 それにしても凄まじい船である。

・第一船体には重水素/反重水素型の対消滅反物質炉を搭載。非常時による第二船体との分離時には、第一船体のみで通常空間ワープによる避難が可能。

・第二船体には次元波動機関を主機として搭載。また予備電源として重力補助式熱核反応炉が8基併載されている。また、フォールド式とゲシュタム式の二種類の空間歪曲型超光速航行(トランス・ワープ)を備える。

・左右のエンジンポッドには巡航機関と大規模重力発生/制御装置として真空相転移炉と補助反動推進器としてインパルス・ドライブが搭載されている。

 

 これらの効果はその速度と航続距離に端的に表れている。

 現在、地球連邦軍艦の航続力は、機関負荷を考慮し一日一回が限度の通常跳躍距離200光年のフォールド航法と、通常連続12時間に制限されるワープ係数9.975(=光速の5754倍)のスタートレック方式の通常空間加速式ワープだ。

 つまり、一日の移動距離は合計207光年となる。

 これ以外にも実は量子跳躍装置(ボゾンジャンプ)装置が標準搭載されているが、障害物から船を緊急回避させるとか、あるいは人や物を静止衛星軌道から惑星上に送り込むといった場合には使い勝手の大変良いシステムだが、同時に超光速/長距離航行にはあまり相性の良いシステムではなかった。

 

 

 

 しかし、イスカンダルまでの距離は凡そ16万8千光年。連邦上層部の要求は、往復二年。つまり片道1年だ。

 そうなると、一日の移動距離は460光年強/日となる。

 確かに従来のフォールド航法でも1回に限りオーバーブーストで500光年の跳躍は可能だ。だが、それをしてしまえば機関はメンテナンスどころかオーバーホールしなければ、超光速航行はできなくなる。無理にフォールドしようとすれば、かなりの高確率で機関爆発を起こしデブリが一個うまれることになろう。

 

 だが、次元波動機関とその搭載により実現可能となったゲシュタム……いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()は、その困難な課題をいとも容易く実現してみせた。

 

 基本構造は、実はガミラス艦の持つゲシュタム機関/ゲシュタム・ジャンプ・システムと大きく変わらず、1回の跳躍距離もフォールド航法と大差ない(ガミラスのゲシュタム・ジャンプも1回あたりの距離は同等か少し上)だろう。

 だが、イスカンダル式の最大の強みは、「一日に数度の超光速航行が可能」ということだった。

 

 実は正面戦闘力で優位に立っていながら、これまで地球連邦艦隊がガミラス艦隊に「完勝とは言い切れず、良くて判定勝ち」という状況が続いていたのは、主にこの「ガミラス艦が短時間で再ワープ可能となる」せいだった。

 確かに優れた超光速航行能力を持つガミラス艦とはいえ、連続ワープは不可能だ。だが……

 

・ガミラス艦隊がワープで地球連邦宙域に侵入→連邦艦隊が同じくフォールド航法で迎撃に向かう→戦闘に趨勢がつき始めた頃には、ガミラス艦隊は再ワープ可能な状態となっている→結果、ガミラス艦隊はタイミングを見計らいワープで撤退

 

 もっとも典型的な戦闘である上記のケースでは、フォールドを使い切ってしまった連邦艦隊には追撃の手段がなく、逃げる敵艦の尻を黙って見送るしかなかったのだ。

 

『逃げろ逃げろ。どうせあいつらはコッチのケツには食らいつけん』

 

 これはとある戦いで、撤退を指揮したガミラスの頬に傷が出来たある青年将校の言葉らしいが……当時の現状を端的に表している。

 確かに敵が撤退した以上、防衛戦としては成功したし、特に敵艦隊を全滅させる必要はない。だが同時に、地球連邦軍人には非常にフラストレーションが溜まる日々が続いていたのも事実だった。

 

 それが今や「一日500光年の宇宙航」を余裕を持って達成できるスペックを地球は入手することができたのだ。

 安全マージンを考慮に入れてイスカンダル式ワープも一日二回としているが、それで十分だった。

 実は片道一年、往復二年というスケジュールは、イスカンダル式トランス・ワープの能力を考えれば、不意の故障などに対するトラブルシューティングの時間まで見込んだ、それなりに余裕のある航海スケジュールだったのだ。

 

 

 

***

 

 

 

 しかし、である。

 ちょっと穿ってみたいこともある。

 それは、”イスカンダルがなぜ、このタイミングで波動エンジンやコアの技術を渡してきたのだろうか?”ということだ。

 実は地球連邦、既にイスカンダル式……厳密にはゲシュタム機関/ゲシュタム・ジャンプが可能な船はイスカンダルよりの使者が来る前からそこそこ保有してたのだ。

 それは無論、修復したガミラスの鹵獲艦であったり、あるいは実験的にガミラスのエンジンを移植した地球連邦艦だったりだ。

 だが、”彼女ら”実証艦や実験艦以上の存在になれなかったのは、偏に「地球連邦では製造できないから」だ。

 安定的に使用できないものをテスト以外の目的で実戦投入する軍隊は、まあ末期的と言っていいだろう。

 

 しかし、イスカンダルはそれを供与した。

 最初の使者、ユリーシャ・イスカンダルが来訪したのは1年前……「ガミラスに停戦の意思あり。地球連邦にもその意志あるのならイスカンダルが仲介する」というメッセージと共にだ。

 それは即ち、「停戦に至る道筋が見えたから、地球にガミラスと同等の高性能トランス・ワープ装置を渡した」のではないだろうか?

 地球は、「航続力に劣るゆえにガミラスに逆侵攻をかけない」とイスカンダルが見ていた()()がある。

 逆に言えば、「ガミラスに敗戦の可能性があるうちは、ワープ装置を渡す気はなかった」のではないだろうか?

 

 無論、サーシャ・イスカンダルもユリーシャ・イスカンダルもそのことについては何ら言及はない。

 だが、地球連邦首脳部はそこに気づかないほど無能でもなければ、お人好しでもない。

 

 それをわかった上で、あえてイスカンダルの誘いに乗ったのだ。

 何故なら、それは地球連邦の利害と一致するからだ。

 連邦としても、これ以上のダラダラとした戦争継続は望むところではなかった。

 できれば、「戦費の捻出より戦後の権益を考えたい」というのが首脳部の偽らざる本音だった。

 

 

 

 だが、そんな事は地球連邦市民には関係の無い事だった。

 市民を何より喜ばせたのは、一般公開された”その船の形”だった。

 この姿の船ならば、停戦、そしてその先にある和平を実現できるかもしれないと、深い根拠もないのに自然にそう思えた。

 

”SSX-Y001 ヤマト”

 

 初めて地球製の波動機関とイスカンダル製の波動コアを搭載した船は、()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




”SSX-Y001”の意味は次回にて。
ただし元ネタは松本零士大先生繋がりですw

これで残弾0、マガジンはすっからかんなので、次回投稿はちょい時間がかかるかもです。
でも、なるべく早く投稿したいですねー。


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