たまには地球がチート臭くても良いのではないかと 作:ヤマトとトマトはなんか似てね?
とはいえ、最初は大人しめです。
あと、後半は割と珍しい組み合わせかもしれないっす。
「イスカンダルに、だよ♪」
そのどこか神秘的な雰囲気がある長い金髪の少女は、こう続けた。
「わたしがね、”イスカンダルへのお土産にください”って地球連邦の偉い人にお願いしたんだよ?」
気配がわからぬ登場と、地球起源種の女の子にはない空気感と美貌にどぎまぎする進だったが、その少女は気にすることなく、
「だってこんなにきれいな飛行機なんだもん。欲しくなっても仕方ないと思わない?」
噓ではないが、真実を全て語ってるわけではない。
確かに最大の動機は、「イスカンダルの美しい空と海の狭間で、この純白の優美な機体を飛ばしてみたい」だ。
ゴツいVF-17シリーズや前進翼がいかにもやんちゃなVF-19シリーズより、流れるようなラインのVF-11の方がイスカンダル人の心には響くらしい。
もっとも地球連邦でもVF-11が時代遅れの烙印を軍部から押されようと未だ根強い人気を誇るのは、その扱いやすさや性能ではなく美しさだとされてるので、あまり人のことは言えない。
とはいえ、自分の美意識を満足させるためだけにやることではない。
「えっと……貴女は?」
「わたしはユリーシャ・イスカンダル。公式にはイスカンダルからの”最初の使者”で、下の王女だよ?」
”ぴしっ”
その瞬間、確かに場の空気は固まったという。
***
「うふふ~♪ 君が異星人の女の子好きで有名なススム・コダイ君だね? あれ? 好きなのは地球起源種以外の女の子だっけ?」
フリーズから復帰した進の顔を楽しげに覗き込むユリーシャだが、
「ど、どこでそれを……」
「な・い・しょ♪」
種を明かせば簡単で、地球連邦軍裏サイトの一つ”女子会あんぐら☆ちゃんねる”に思い切り自慢話あるいは惚気話として暴露されていた。
ちなみに書き込んだのは、『投稿者:飼いウサギの
巧妙に隠蔽されてるサイトだが、まあ連邦軍最高機密の実験が行われてるホワイトサンズ星系を探れる彼女たちなら、それを見つけるなどお茶の子さいさいなのだろう。
言うまでもないが、ユリーシャは毎日その書き込みをチェックしてるクチだ。
そして、今度は玲へ振り向き、
「貴女が”ペットのウサギさん”だね?」
「は、はい。進さんの
本音が駄々洩れだった。
すると……
”なでなで”
「あっ……」
気がつくと頭を撫でられていた。
「うふふっ♪ 思った通りふわふわで、いい毛並みだね~。ご主人様にいつも毛繕いしてもらってるのかな?」
「はい」
玲は、気持ち良さそうに目を細めて答える。
特に抵抗はしない。相手が王族を名乗る以上、下手なことをすれば取り返しのつかないことになる……と思ったからではない。
髪を優しくなでる手のぬくもりを通じて、わかってしまうことがあったのだ。
(あっ、この人、私の同類だ。目的の為には手段を選ばないタイプの……)
これが獣人系特有の野生の直感というものだろうか? 何か違う気もするが。
***
「またやることがあるから。じゃあ、
一頻り撫で心地を堪能し満足したのか、ユリーシャは来た時同様に唐突に去ってしまった。
まあ、それは良いのだろうが……
「古代、お前……」
「な、なんでしょう? 少佐殿」
「随分、あのお姫様に気に入られてるみてーだな? 山本込みで」
「うっ……」
「まあ、なんだ……」
イサムはこの先想定しうる面倒と困難を、
「とりあえず、頑張れ」
一言に乗せてぶん投げた!
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シーンは切り替わり、同じヤマトの艦内でも第二船体の波動エンジン機関室……
「実に興味深い」
「そうかね?」
見学にやってきた技術将校、スポックス・バーナム・グレイソン少佐に機関室の主にして連邦軍屈指のベテラン機関士”徳川彦左衛門”
地球連邦軍にとり、階級の前に特務とつくのは二つのパターンがある。
一つは文字通り”
むしろ、存在を秘匿されてる者も多い。
二つ目は士官学校などを経ずに文字通り「現場からの叩き上げ」で、本来は一兵卒の出世上限とされる下士官の枠組みを越えて士官(尉官以上)へと出世した者たちだ。
つまり、それだけ長い間、下積みから軍に奉公したという証である。
叩き上げで特務と付けば、実質的には二階級上の権限があるというのが軍の不文律だが、普通は特務がつけられるのは尉官の一番上の大尉までで、徳川のように特務を付けたまま佐官にまで出世するのは例外中の例外だ。
特務尉官が兵たちにとって上官の枠を飛び越えた将軍なら、特務佐官は兵たちの元帥だろう。
中学を卒業し、食えないからという理由で軍に就職して釜焚き一筋40年以上は伊達ではない。
軍に半生を捧げた徳川だが、孫も生まれもう円満退役の時は刻一刻と迫っていた。
だからこそ、徳川はこのヤマトを最後の奉公先と決めていた。
彼の生き様は知らなくとも、特務少佐がどういうものかを理解しているスポックスは丁寧な口調で、
「ええ。波動コアの精度如何で、余剰次元の抽出率や展開率が変化する様は実に興味深いです。波動エンジンというのは、展開した余剰次元の受け皿として最適化されている」
「儂にはそのあたりの理論はさっぱりだが、良い釜かどうかはわかるぞい。こいつは儂が扱ってきた釜の中で最上の部類だ」
「理論より感性ですか? それもまた興味深い」
「それほど大それたものではないんだが……ところでスポックス少佐」
軍の入隊に必要だったというのもあるが、ミドルネームとファミリーネームは義姉と母からの借り物ゆえ、本来の自分の名前はスポックスのみと考える彼は、そう呼ばれることを望んでいるようだ。
それを言うなら徳川も名前+階級で呼ばれるより、徳川機関長と役職で呼ばれることを好むようだが。
「なんでしょう?」
「あの
「余剰次元開放によりマイクロ・ブラックホールを生成、再爆縮し、得られたホーキング輻射を収束し指向性を持たせて螺旋状に放射する……”次元波動爆縮放射機”ですか」
「うむ」
スポックスは少し考えながら、
「使う使わないは艦長に一任されるでしょうが……真田中佐によれば『いざという時の選択肢は多い方がよい』程度の物だそうです」
「そういうもんかのぅ」
「地球の古い言葉で”転ばぬ先の杖”、あるいは”備えあれば患いなし”という危機予測や危機管理を端的に要約した論理的なものがあるそうじゃないですか? 推測ですが、真田中佐はそういう認識なのだと思います」
「なるほど。そういう考え方もあるか」
「それに、真田中佐の本命としてるのは別の波動機関応用装備のようですよ?」
「そんなものがあるのか?」
「ええ」
スポックスは頷き、
「”波動防壁”。そう呼ばれる装備だと聞き及んでおります」
しょっぱなから”古代の
しかも何やらシンパシーが芽生えたような?
Mr.スポックと徳川機関長の組み合わせって、あんまり前例はない気はしますが、なんとなく相性が良い気がします。