たまには地球がチート臭くても良いのではないかと 作:ヤマトとトマトはなんか似てね?
普通、あれだけ軍事にぶっこめば財政破綻してもおかしくないと思うんだが……それ、禁句かな?
いきなりだが、西暦2191年より始まったガミラス帝国との戦争、後に言う「ガミラス戦役」において地球連邦は劣勢という言葉は全く使えなくなっている。
2199年現在までに敵占領下にある星系や陥落した惑星はなく、年間の戦死者/作戦中の行方不明者は開戦以来1万人を下回っている。
これが今の日本の自衛隊のような小規模軍ならとても無視できる数字じゃないが、今の地球連邦は戦争の危機感からか国民は子作りを頑張ったのか、2191年当時は250億を少し超える人口だったが、この8年で総人口260億人目前まで増加している。
となれば軍隊も相応の規模になるわけで、現在の地球連邦軍の人員数は、こちらの2021年の日本の総人口に匹敵する1億2千万人だ。
無論、正規人員だけで、だ。
これに即時招集可能な即応予備役を含めると1億5千万、予備役軍人の最大招集でざっと2億人といったところだ。
元々公務員の中でも高給取り(現在の日本円換算で平均年収1500万)だった軍人は人気職の狭き門だった。それがガミラスとの開戦で門戸を広げたのだが……
実は軍部にはある懸念があった。
『せっかく門戸を広げても、戦死を恐れて志願者が集まらなかったらどうしよう……』
だが、幸いにしてそれは杞憂に終わった。
そもそも左翼政治家は言うに及ばず、活動家やら不穏分子やらの○○団体やら○○○○の会やらの怪しげな有象無象、挙句の果てに公立学校の教師まで「自衛隊は違憲です」と真顔で(あるいはヒステリックに)言いだすどこぞの島国とは国防意識が根本から違う。
200年前に人類同士の戦争で滅びかけ、良く分からない鳥っぽい物にとどめを刺される直前までいった地球連邦市民の一般的な認識としては、国防直結の軍はれっきとした立身出世コースの一つなのだ。
それに死者/行方不明者が年間1万人に届かないということを噓偽りのできない形で発表しているのも爆発的に軍への志願者を増やしている要因でもある。
実際、その数字は年間の病死者、不慮の事故による死者、自然災害犠牲者、あるいは年間の殺人事件の被害者のどれと比べても小さな数字だ。
ぶっちゃけ、
『1年で死刑になる人間よりも少ないんだもんな~』
地球連邦は軽犯罪はともかく、重犯罪者にはかなり厳しめの沙汰が下りやすい国だ。少なくとも「犯罪者に甘い」と称される事の多い日本よりは厳しく感じる(逆におそろしく甘い……というか緩い部分もある)だろう。
例えば、今の日本では死刑になることのない脱税や詐欺罪でも金額や手口、対象によっては死刑になることも珍しくなく、しかもすべての罪は”併科主義(犯した罪の合算。今の日本は複数の罪状で逮捕された場合、原則として最も重い罪で裁かれる)”での量刑になるのでなおさらだ。
今の地球連邦は地球原産の人類だけじゃない。幸いヒューマノイドと認識できる二足歩行の知的生命体がほとんど(まあ、テレサのような例外もいるが……)とはいえ、生まれも育ちも価値観も倫理観も異なる違う惑星の出身者同士が一つの地球連邦というフォーマットで生きようとすれば、相応に締めるべきところは締めるという発想だろう。
まあ、法律自体も連邦憲章(憲法)、連邦法、各惑星の自治政府に裁量権のある自治法(日本の県条例ではなく米国の州法に近い)と種類というか段階があるのだが。
そんなこんなで開戦による門戸拡張の公式発表を聞きつけた志願書類に連邦軍人事部のサーバーはパンクしかけ、担当職員は最初は懸念が払拭され嬉しい悲鳴、やがてヒューマンリソース的な意味で処理が追いつかなくなり、職場が半ばブラック化したことで阿鼻叫喚となった。
まあ、志願枠拡大に伴い人事部も心持ち人員強化をしていたのだが、軍部の予想をはるかに超える希望者が集まったゆえの悲劇だった。
だが、これに苦い顔をしたのが連邦政府の財務を扱う大小を問わない多くのセクションだ。
彼らとて敵対的異星人と遭遇した昨今、国防の重要性を理解してないわけではなかった。
いや、理解していたからこそ頭を抱えたのだ。
軍は基本的に破壊と殺戮を職業とする者たちで、そこに生産性はなく消費しかない。
軍は需要を生むが、彼らが仕事をしても金は生まない。いや、むしろ熱心に仕事をすればするほど赤字は増えてゆくのだ。
そしてその需要を補うのは税金だ。
戦争特需というのは確かに存在するが、その特需を生み出す資金源がどこなのかを忘れるべきではない。
加えて、軍に過剰な人員が流れ込むのも問題だった。
軍に志願できるということは、言い方を変えれば「健全な労働力」ということだ。
地球連邦の失業率は平均してここ100年、2~3%の間をウロウロしている。つまり、決して高いわけではない=余剰人口が多いわけではない。
軍は確かに失業対策になることはあるが、少なくとも連邦ではそのような理由で軍を維持する必要はなかった。
ましてや、戦争が始まれば平時には存在しない消費が生まれ、生産の拡大のため労働力はますます必要とされ失業率も下がるだろう。
そして戦争が下手に拡大すれば、生産力不足で一部物資が需要に供給が追い付かず市場での高騰を招いたり、それも度が過ぎれば最悪は一部の物資は配給制になるかもしれない。それは悪夢以外の何物でもない。
すでに8年も戦争しているが、幸いにして極端に大きな被害や歴史に名を残すような大敗北が無いせいもあり、国民の戦意は高く特に政府は扇動してるわけでもなく、ただ淡々と事実を流しているだけなのに戦争に肯定的だ。
戦争特需による税収アップ、戦争税と明確に用途を明言した消費税率の5%の引き上げもすんなり受け入れられ、戦時特別国債も飛ぶように売れている。
国防費の増加はそこでペイできているが、かと言ってこのままで良いわけではない。
現在の連邦経済は、なんとか健全性を維持できている……言い方は悪いが今のところは余力で戦争できているが、それもどこまで持つか誰にもわからないのが現状だ。
そもそも論になってしまうが、戦争特需ありきの国家運営、「戦時経済に特化した国家」など、人が豊かさを求める生き物である以上、政府も軍部も国民だって誰も望んではいない。
国家を維持発展させるために必要なのが軍隊だが、軍隊を維持することが国家の目的になってしまえば、後は破綻しかない。
かつて地球上で国家が乱立していた時代にはいくつも見られた事例だが、2199年現在でもそういう意味ではかなり危険領域に踏み込んでいる国があるらしい。
その名を”ガミラス帝国”というらしいが。
「和平……それは
「ああ」
先日、この8年の
『内密の話がある』と、出世したばかりに数少なくなってしまった上官であり、古い友人でもある藤堂平九郎と呼び出され、切り出されたのが
『ガミラス帝国との和平のため、イスカンダルへ向かう船の艦長に就いてはくれないか?』
だったのだ。
「正確に言えば、和平交渉の前段階である停戦合意の締結と戦後処理の話し合いだ。和平の足がかりが作れれば御の字といったところだろう」
「彼らも戦争のこれ以上の長期化は望んでいないということでしょうか? 彼らのはた迷惑な覇権主義的領土拡張政策も陰りが見えたと?」
藤堂は少し考えながら、
「それだけではないが、そういう側面もあるだろう。知っているかね? 急速な拡張政策で大量の艦船が必要となり、乗組員確保のしわ寄せで陸上の人員が不足し、支配地の治安維持の大半はAI制御の戦闘用アンドロイド頼みになってるらしい」
藤堂がなぜそれを知っているかは疑問だったが、そこは今は聞くまいと沖田は思った。
話を聞いていけば、自ずとわかるはずだと。
だが、
(正直、
「……なぜ”ガミラスとの和平のため
沖田はふと、自分の死刑執行書にサインをした気がした。
オマケ設定
実は本編で入れそびれた、このシリーズにおける地球連邦の国力(経済力)のメモ
地球連邦の経済力(西暦2199年時点)
金額的数字は、2021年当時の日本円換算
人口:約260億人
一人当たりGDP:約3000万円(現在の日本の一人当たりGDPの7倍強)
連邦総GDP:約78京円
国家予算:約36京6600兆円(対GDP比:47%。一般会計予算)
国防予算:約2京3400兆円(対GDP比:3%。現代の日本は約1%)
連邦軍保有艦船数:約5万隻(非武装艦、非戦闘艦も含む)
人員:正規約1億2千万人(非戦闘員含む)
ちなみに財政支出における医療費の割合は、実は今の日本よりかなり低いです。
というのも、高性能医療用ナノマシン・インプラントの普及やクローン技術の応用による再生治療の一般化で、化学系薬品に対する需要が激減したからなんですね。
なので基本、赤字国債の恒常的発行というのはなく、何か追加予算が必要で国債の発行が必要な場合、目的を明記した上での期間限定の臨時国債が一般的です。
例)戦時国債(国防債) 発行機関:2191年~ガミラス戦役終結まで