たまには地球がチート臭くても良いのではないかと 作:ヤマトとトマトはなんか似てね?
とりあえず、バーガーのお客さんです。
そして、ガミラス目線から見た……
さて、”ミランガル”のブリッジに来るなり、愛喫する紙巻を伊達男らしく革製のシガレットケースから咥えて取り出し、火を点けようとするフォムト・バーガーだったが、
”ぴっ”
まるで二指真空把のような素早い動作でネレディア・リッケに咥えタバコを取り上げられてしまう。
「オイ!」
不満たらたらに頬の傷を歪ませるバーガーだったが、
「ブリッジは禁煙よ? 何度言ったらわかるのかしら?」
艦長として至極当然の苦言を呈するネレディア。
まあ、噂では初代なクロス艦長は自ら率先してブリッジで愛用のパイプを吹かし、よくオペレーターに怒られていたらしいが。
「同期のよしみだろ? そのぐらい大目にみろよ」
「近い将来の義理の姉としては、素行不良の義弟の悪行を見逃せないのよ」
「ぐっ……」
紫煙を吐き出せず、ぐぅの音くらいしか出せないバーガーである。
実際、彼女の妹で今頃は本国で通信士官をやってるだろう”メリア・リッケ”は、バーガーの
という訳でこのバーガー、軍隊生活がそれなりに長いせいで歳相応には擦れているが、擦り切れてるわけでもなければヤサグレてるわけでもない。
まあ、ちょい悪っぽいが中身はそれなりに「綺麗なバーガー」だ。
少なくとも部屋でタバコを吸ってメリアに「メッ!」されたら、すごすご灰皿を持ってベランダに撤退する程度の可愛げはある。
まあ、それでもタバコを止めないあたりがバーガーがバーガーたる所以かもしれないが。
それはそれとして、
「ところでフォムト、さっきからお客様がお待ちかねよ?」
「俺にか? 誰だ?」
とネレディアに促され視線を向ければ……
(うげっ!?)
既に見飽きたといえるくらい顔を見慣れたカミナリオヤジが、腕を組みつつ如何にもお冠という表情でそこにいた。
「ようやく帰ってきたか。随分とまたお楽しみだったみてぇじゃねぇか? なぁ、バカ」
「
とりあえず反論はしてみるが、
「はしゃぎすぎて、いつまでも頭の中からも性根からもガキ臭さが抜けねぇ奴なんざ、バカで十分だ」
と返り討ち。
バーガーにだって苦手な人物ぐらいはいるのだ。
***
「ところで、何でおやっさんはわざわざ”ミランガル”に? まさか、俺っちに小言を言いに来たってわけじゃないでしょ?」
「いや、確かにそれもある」
(あるのかよ……)
正直、説教は勘弁なバーガーだったが、
「バーガー、細かい話は後回しにしてだな。とりあえず、今からこの階級章つけとけ」
そうハイデルンはゴツい手で真新しい階級章を突き出してきた。
それは、
「げっ!? これ”中佐”の……?」
無言で頷くハイデルン。
だが、バーガーはそれなりに軍隊で生き残ってきた身だ。
少なくとも「理由の見えない昇進」を喜べる素直さは、
そして、こういう昇進には総じて裏があることも、経験則で知っていた。
(あの時もそうだったな……)
************************************
3年前、天の川銀河、辺境
「テロン人など所詮は蒼く尊い肌を持たぬ劣等民族に過ぎぬ! 我ら誇り高き高貴なるガミラス人が、何を恐れることがある!!」
その「第28次天の川銀河侵攻作戦」と仰々しく銘打たれた作戦の会議室で、僅か150隻程度の……その程度の器と判断された、既に制度上は存在しない”貴族”というものに存在意義を追求する少将の階級章を付けた男は、実に威勢の良い口上を述べた。
まあ、威勢が良いだけで中身など無かったが……
(率直に言って貧乏クジだぜ……)
”軍事顧問”という役割で幕僚の一人として召し抱えられたバーガーは、心の中で毒づいた。
当時のフォムト・バーガーは、ドメルの指揮下では無かった物のガイペロン級多層式航宙母艦の1隻を母艦とし、愛機”DMB87 スヌーカ”と共に大マゼラン星雲の
なので貴族の血を引いてるわけでもないのに、自分は一昔前なら考えられないほどあっさり大尉にまで昇進できたのだが……
(だが、バカ貴族のお守り、しかも
少し解説がいるだろう。
”軍事顧問”とはなんぞや?ということだ。
確かにこの貴族少将もれっきとしたガミラス帝国の軍人であり、軍事顧問がついてるというのもおかしな話だ。
だが、それはこの威勢の良い少将閣下が、「実力で将官になれる器量を持った人材ならば」だ。
地球連邦と全力で戦った最初の3年、当時は主流だった「多少は軍事的才能をもち、少しは提督として使えると判断された元貴族系将官」は、そのことごとくが摺り潰された。
軍艦や乗員が失われたのは痛いが、この手の人材は惜しくは無かった。
彼らも「劣等人種を仕置きしてやる」望んで戦場に立ったのだから、国家としても文句を言われる筋合いはない。
ガトランティスが出現した次の2年は様子見。
地球連邦が挑発しても逆侵攻をかけないことを確認。そして挑発させるように見せかけ、実は「どこに手を出せば連邦艦隊が出てくるのか?」、つまり”
そして、最後の3年は「精強な正規軍」を対ガトランティスに割り当て、地球は「貴族の処分場」とする事にデスラーは決めた。
当時のガミラスにはまだ「戦場に出ない故に生き残ってる元貴族」がそれなりの数いたのだ。
だから、デスラーは、いや親衛隊長官ギムレーや副総統のヒスは頭を捻り、一計を案じた。
つまり、戦場に立たない、いや建前はどうあれ「立てない」理由を検証したのだ。
最初に餌……「地球連邦から切り取った星は自領にしてよい」と半ば貴族としての復権を約束することで、関心を引いた。
次に私有艦隊、私設艦隊じみたものを維持したり編成したりする財力や権力が無いものには、「十分な信頼と実績を持った歴戦の軍艦」を貸し与えることにした。
別の言い方をすれば、”
乗員?
自分の腰巾着や、未だに領主/領民の感覚が抜けない者、更には血の気の多い二等ガミラス人をあてがえばよい。
地位向上を約束すれば、死に物狂いで戦ってくれるだろう。
そして、駄目押し。
戦争も戦闘も満足に知らない、できない彼らに「プロの軍人」を教官として充当しよう。
確かに危険な任務だが、もし地球人と殺し合い生きて帰ってこれることができたのなら、軍人として一皮以上剥けることになるだろう。
何しろ、ガミラスの感じる「真の強敵」とは勢い任せのガトランティスではないのだ。
後に”ドメル・ムーブメント”と呼ばれるこの一種の通過儀礼……「地球人と戦い、生き残れた者は精強にして理想的な軍人になれる」という暗黙の了解の元、将来を嘱望される「劣勢の中でも生き残りそうな軍人」の一人として選ばれたのが、このフォムト・バーガーという若い大尉だった。
そんな後ろ暗い本国の事情を、この時のバーガーは知る由も無かった。
少しだけ過去話が続きます。
まあ、ガミラスから見た「この3年の一幕」的な話になるかと。
果たして、バーガーは戦場で何を見たのか?