たまには地球がチート臭くても良いのではないかと 作:ヤマトとトマトはなんか似てね?
いや、そんな明るい話でも無いですが。
なんだか色々ときな臭い、というか血生臭くなる予感がしなくもない、そんな回です。
西暦2196年、天の川銀河辺境宙域
天の川銀河系への出征前、フォムト・バーガーはいくつか不思議な、あるいは名状しがたい経験をした。
日本の夏の定番たる怪談話的なそれではない。
ただ、あまり普通とは言えない経験をしたのだ。
例えば、今回の遠征に”軍事顧問”として派遣される主だった者が集められ、そこで任務の概要が説明された。
ただ、意味が分からなかったのは、その主催が軍部ではなく親衛隊であったことだ。
そして、一通りの説明が終わった後、ますます意味不明だったのは、多忙であるはずの親衛隊長官、ハイドム・ギムレーが通信映像ではあるが出てきてこう短い講釈を垂れたのだ。
『諸君、この戦いに勝利する必要はない。君たちが顧問すべき相手が何者であるかを考えれば、わかることだね? それがわからぬのであれば、よろしい。遠慮なくテロン人と戦い散ってきなさい。国家にそのような愚物はいりません』
そして、こう続ける。
『まず、生き残りなさい。生きて国家に奉公なさい。君たちが戦力として使えるようになるまで、国家は時間をかけ、国民は血税を捻りだしている。諸君らの命は諸君らの物ではない。国家は英雄的な行動であっても、一戦も持たずに死ぬような兵は求めていない。国家が求めるのは、しつこくしぶとく粘り強く、国家が必要と判断する限り戦える兵なのです。そこを思い違いしてはいけない。良いですか? 生き残れれば、それだけ国家に奉公できる時間が延びるのです。そういう兵をガミラスは求めているのです』
***
そして、”
だが、地球連邦の話題を出した途端、大半の先輩の目からハイライトが轟沈し、口は鉛を詰め込んだように重くなった。
だが、その断片的な情報はこんな感じだった。
「敵艦の前に出たら、まともに撃ち合おうとするな。こっちのビームは残らず弾かれる。質量弾なら効くかもしれんが、その前にハチの巣にされるぞ?」
「というか、何をぶつけたら沈むんだ? テロン艦」
「俺、重力の塊にグッシャとされる死に方は嫌だなぁ……」
「敵の戦闘機とはまともに戦うな。あれは巨人に化ける。そして、巨人に化けたら手が付けられん。甲板上に降りて0距離で急所めがけて撃ってくる」
「あっ、俺、艦橋に銃口突っ込まれて中身が細切れにされる瞬間見たわ……」
「俺、艦橋が飛び蹴りで潰されたの見たことある……」
「とにかく、ヤバいと思ったらすぐ逃げろ。ヤバいと思わなくても逃げられるなら逃げろ。テロン艦はゲシュタム・ジャンプで逃げたら絶対に追ってこない」
「いいか、坊主? ゲシュタム・アウトしたら程なく戦闘が始まる。何があっても次のゲシュタム・ジャンプができるようになるまで生き残れ。そうすりゃ十中八九逃げられる。それまでが勝負だ」
誰も彼もがこんな感じだった。
勝てるとは誰も言っておらず、内容は総じて「どうやって生き残り、どうやって逃げ切るか?」に終始していた。
最初こそ「臆病風に吹かれたのか?」と思わなくもなかったが、聞く人すべてがその反応では、流石に背筋にうすら寒いものを感じてしまう。
***
だからこそバーガーは、今回の分艦隊司令官に意見を求められた時は率直に、
「敵は先ずは防御陣形を取るのが基本のようなので、一当てしたら退避行動も考慮すべきでは?」
と提言したのだ。
それが、元貴族……いや現役で貴族であるつもりの男の癇に障った。
まず、「貴様は敗北主義者かっ!?」と罵られた。
だが、バーガーは努めて冷静に、
「慎重論を述べてるだけです」
と切り返した。
それがますます面白くなかったのだろう。
この元貴族……せっかくだから名前を付けよう。”劣化版の国家元帥”みたいな感じ、あの「ぶるぁぁぁっ!」の身長を寸詰まりにして贅肉を増量し、その分脳味噌を軽量化、ついでに頭髪まで薄くした雰囲気だから、劣化ゼ〇リック、略して”レゼック”でよいか? レリックだと意味が変わってしまうし、微妙に格好いいのが腹立たしい。
そして、レゼック少将は、
「我らが高貴なる青い肌の艦隊が進軍すれば、下等民族のボロ船などたちどころに沈むわっ! 貴様にはそれがなぜわからんっ!!」
一応は公式に残っているレゼックの戦歴は、バーガーの記憶にない名前の現占領下にある有人惑星の制圧戦。
満足に戦闘艦もそろえられなかった星に対する戦争がなんだと思わなくもないが、どうやらそれがレゼックの成功体験になってしまってるらしい。
「
「それがどうしたっ! ならば吾輩がテロン人を粉砕する最初の一人になればよいだけではないかっ!!」
結局、レゼックはこの作戦の本質を分かっていなかったのだ。
国家から貸し与えられた150隻の旧式艦と間に合わせの人員……レゼックはこれが「自分の威光で集めた精強な大艦隊」だと思い込んでいる。
だが、バーガーは知っている。
確かに小さな戦力しか持たない田舎惑星を陥落させる分なら、十分な戦力だろうし大艦隊であるかもしれない。
だが、相手はこれまでガミラスがまともに勝てた試しのない……バーガーが尊敬に値すると思える先輩たちが、「怯えを隠し切れなくなる」ほどの強敵なのだ。
この程度の規模艦隊など、大して意味のない威力偵察くらいにしか使えないだろう。
メリアの為にも戦死者名簿に自分の名前を載せたくないバーガーは、語気が荒くなるのを自覚しながらも食い下がった。
結果……
「バーガー大尉、君の意見はよく分かった」
いくらレゼックが将官といっても、所詮はお飾り階級。正規軍人、それも中央から軍事顧問として派遣されたバーガーを勝手に解任することはできない。
だからこそ一計を案じたのだ。
「君の軍事的才能は、よく分かった。吾輩には劣るが認めてやろうではないか」
あくまで上から目線で告げる。
「吾輩の権限で、貴様を”上級大尉”に任官する。そして軍事顧問として派遣された者たちを、全て船ごと軍事顧問の中の最先任となった上級大尉の麾下につけてやろうではないか」
無論、そんな権限はレゼックにはないのだが、この艦隊の幕僚は腰巾着か子飼いばかり。誰も異論は唱えない。
「そして貴君たちには、吾輩の精鋭艦隊の活躍を、特等席から見られる栄誉を与えようではないか」
こうして、バーガー達が正面戦力から外され、「機甲予備」という名目で艦隊最後方に”隔離”されることが決定した。
それが巡洋艦×1+駆逐艦×5の戦力が、バーガーに一任された理由だった。
本来なら、それはバーガーにとり、いやゲットーを含め軍事顧問団にとり悪い話ではなかった。
何せ阿呆の面倒を見るという厄介ごとを、向こうから断ってきたからだ。
だが……現実は甘くなかった。
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「先輩たちが言ってたのは、こういうことだったのかよっ!!」
2196年のその日、バーガーの眼前には阿鼻叫喚の地獄が広がっていた……
果たしてバーガーは何を見たのか?
まあ、「化け物」でしょうね。勿論、比ゆ的に。
しかし、親衛隊が善良に見えて困るw
でも、本音でもあるんですよ?
この戦争が「どんな結末を迎えるとしても」、しぶとい兵は必要です。
ギムレー君:「英雄なんて必要ないんですよ、我がガミラスにはね」