たまには地球がチート臭くても良いのではないかと   作:ヤマトとトマトはなんか似てね?

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今回は文字数はともかく、三者の視点が入るので文章自体は長いです。
おまけにオマケが長い。

という訳で設定付きで、設定に所縁深い人がちょっと久しぶりに出てきます。




第45話:”宴の始まり、その序曲”

 

 

 

 西暦2196年、天の川銀河辺境、コンゴウ型装甲巡航艦”スターゲイザー”ブリッジ

 

 

 

古代少佐に通信を繋いでくれたまえ」

 

「はっ!」

 

 ジャン=ジャック・ピカード大佐の命令に打てば響くように動く通信士。そのキビキビとした動きにブリッジクルーの練度の高さが見え隠れするが、恐ろしいのはこういう光景は地球連邦軍では珍しくないことだ。

 「当たり前のことを当たり前にやる」のは基本とはいえ、基本であるが故に存外難しい。これは古今東西、軍民問わずに変わらない。

 

 そうこうしてるうちに立体投影映像に映るのは、少佐の階級章を付けていた時代の……ユキカゼ型1番艦”ユキカゼ”の艦長を務めるまだ若い古代守だった。

 

『いかがなさいました? ピカード司令』

 

 無論、守とて現状は認識している。

 既にワープアウトは終え、程なく戦闘は始まるだろう。その上で、戦闘方針を拝聴しているのだ。

 こういうスクランブル発進→即戦のような場合は、吞気にミーティングなんてしてる余裕はない。

 

(そういえば、私は既に司令と言われる身分だったな)

 

 階級より役職で呼ぶことを好む(連邦軍的にはどちらも可。役職+階級が正式かもしれないが、長いのであまり使われない)守の言葉で、改めて自分の立ち位置を自覚するピカード。

 

「古代少佐、君にユキカゼ型を40隻預ける」

 

 合計85隻しかない艦隊の、数上は半分を預けると言い出した。

 ただでさえ数的劣勢なのに、戦力分散は愚の骨頂に思えるが……

 

『かしこまりました。迂回の後、二手に分かれて側面から挟み撃ちでよろしいでしょうか?』

 

 ピカードの推察どうり、まだ若いが出来の良い男であった。

 頭の回転が速いだけでなく、動じてないことから度胸が据わっていることもよくわかる。

 

「うむ。敵がこちらを捕捉できる位置で、”()退()()()()()()()()()()()()()”。できるかね?」

 

『お任せください』

 

 作戦を理解した守に、躊躇する理由は無かった。

 

 

 

***

 

 

 

 そして、通信が切れ、守へ預ける船の抽出を終えると……

 

「麾下艦に各員に通達。会敵後、()()()()()()()()()()()()()()()()後退艦隊機動準備」

 

「おや? こちらも偽装後退ですかな?」

 

 分かってて聞いてくる参謀。別に予定調和ではなく、あえて自分が代表で聞くことでブリッジ詰めの面々にも聞かせ、行動確認を促す……その重要性を、ピカードも艦隊付参謀もよく心得ていた。

 

「うむ。他にやることもないしな。全艦、システム全てをコンバット・ステータスにしておくように」

 

 すると、ピカードは良いことでも思いついたように、

 

「せっかくだ。VF-17D(ヴァルキリー)を全機出しておこう」

 

 コンゴウ型は2機の可変戦闘機運用能力を持っており、配備が始まったばかりの最新鋭機VF-17D”ナイトメア・ディスカバリー”にも対応していた。

 なので、この分艦隊にも都合10機のVF-17Dが配備されているのだが……

 

「ただし、ステルス装備のままで出撃、予想戦域付近、敵探知圏外で待機」

 

 ステルス装備=外部装着オプションを搭載しない状態。VF-17Dはパッシブステルス機なので、外部に搭載するとステルス性能が装備によってはかなり落ちる場合がある。

 

「反応弾は装備させないので?」

 

「いらんよ。”伏兵”として使うつもりだ。勿論、周辺の偵察も同時にやってもらうが」

 

「貴方はいつも徹底している。そういうところは信頼しています」

 

「逆に信頼できない時というのはあるのかね?」

 

 興味深そうにピカードが尋ねれば、参謀は「ふむ」と顎に手を当てて少し考え、

 

「アールグレイのホットを飲みながら、妙に若い奥方(ワイフ)達のホロビデオをニヤニヤしながら眺めてる時でしょうか? 隙だらけで、思考が雑念だらけになる」

 

 『いつまで経っても見た目が幼い。というか、正直、貴方の娘と姉妹にしか見えないんですが?』と、毛のない頭にグサリとよく刺さりそうな鋭利な真実を告げないあたり、この艦隊付参謀はまだ良心的であった。

 

「……中佐、君も言うな?」

 

「お褒めにあずかり光栄至極」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

************************************ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  そして一方、レザックが座乗するガイデロール級のブリッジでは……

 

 

「レゼック閣下! ご覧ください! 敵は後退すると同時に、小型艦が一斉に逃げ出しております! 敵はこちらが撃つ前に壊乱状態にある模様!」

 

「くははははっ! 下等民族の分際で我先に逃げ出すとは、分かっているではないかっ!!」

 

「逃亡する小型艦群、追撃いたしますか?」

 

 だが、レゼックは機嫌よく、

 

「捨ておけいっ! あのような小舟、集まったところで何ができるまでもないわっ! いずれきゃつらの港を焼き落とすのだ。今沈めなくとも、その時に沈めれば良いだけのことっ!」

 

「流石はレゼック閣下! 聡明なご判断です!」

 

「ふん。この程度、吾輩の頭脳をもってすれば当然のこと! 今はあの後退を続ける()()()の追撃に専念せよっ! 獲物の半分が逃げたとはいえ、まだ半分残っておるのだ! 全艦、密集せよ! 更に速度上げ、一気に蹴散らしてくれるっ!!」

 

「ははっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「何をやってやがるあのバカ貴族! あんな見え見えの誘引に引っ掛かりやがってっ!! しかも相手はデータにない新型揃いだぞっ!?」

 

”がんっ!”

 

 思わず艦長席のコンソールに拳を叩きつけるフォムト・バーガーだったが、手が痛むだけで現実は何ら影響は出ない。

 彼が艦長席に座乗するケルカピア級は、既に旗艦からの通信接続を切られていた。

 つまり、レゼックの突撃命令は聞いていない。

 

 そう、悪い意味でレゼックは徹底していたのだ。

 バーガーに散々文句を点けられた(と認識していた)レゼックは、軍事顧問団を「自分の輝かしい勝利を邪魔する厄介者」と判断し、戦いで何もさせないと決めたのだ。

 だからこそ、艦隊通信網から切り離し、ケルカピア級1隻とその麾下のクリピテラ級4隻を艦隊最後方に配置したまま、「()()()()()()()()()()()()()()」のだ。

 つまり、この6隻は今や完全に遊兵化してしまっていた。

 

 無論、自分の軍事的才能とやらに酔い痴れてるレゼックは、そんなことは気にしてない。いや、そもそも目の前の獲物に集中しすぎて、バーガー達の存在すらももしかしたら記憶の彼方に置いてきたのかもしれない。

 

「落ち着けフォムト。あいつらに多くを求めても無駄なことぐらい、わかるだろう?」

 

 そう声を掛けるライル・ゲットーだったが、

 

「俺は冷静さ。ライル」

 

 冷静じゃない者特有の返しに、ゲットーは思わずため息を突きたくなったが何とか耐える。

 

「考えろ。フォムト、俺たちの現有戦力で何ができるか。それが今のお前の仕事だ」

 

「くっ……わーってるよ。艦隊を追尾しての側面支援は……無駄だな」

 

 その結論にゲットーは頷き、

 

「レゼックは、全速突撃を敢行してる。今からじゃ、何をしても追いつけん」

 

 副官らしく立体投影式の宙域俯瞰図を広げるゲットー。

 幸いなことにデータリンク自体は遮断されてないらしく、先行……いや、突出した艦隊主力のセンサー情報も入っており、かなり広い範囲を索敵できている。

 だからこそ、優秀な頭脳とガトランティスとの戦闘経験の合わせ技で、すぐに近い未来に起きるであろうほぼ確定された予測が導き出せたのだ。

 

「罠の口はもうすぐ閉じる。もう間に合わん」

 

「だとすれば……」

 

 バーガーは頭の冷静な部分を必死で搔き集め、

 

「”撤退支援”……か?」

 

「上出来だな」

 

 本当の意味で冷静さを取り戻した友人に、ゲットーはニヤリと笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




たまには凛々しい守も良いよね?

さて、「ガミラスキラー三姉妹艦」のトリを飾るのは、一瞬でも強い輝きを見せた”あの船”ですが、それに合わせてコンゴウ型やムラサメ型もちょこっとだけ改定しております。
では……


***



ユキカゼ型コルベット

ネームシップ就役:西暦2195年

全長 130m

デザイン 
オリジナルを大型化し、船体左右にVF-1初代ヴァルキリーのスーパーパックによく似たデザインのターレット・マウント式の高機動モジュールを取り付けたデザイン。艦首部分がフロント・ウイング状になってることと相俟って、全体の印象はどことなく往年のF1マシンを思わせる。
ヤマモト・ヨ〇コとか言ってはいけない。

機関 
・重力補助型熱核反応炉(ほぼマクロス式)
・重水素/反重水素型反物質炉(対消滅/対生成機関。スタートレック式に近い)
・真空相転移炉(ナデシコ式)
・船体左右ターレット・マウント高機動モジュール内臓インパルス・ドライブ
   
防御装備
繭状重力歪曲場防御壁(ディストーション・フィールド)
任意箇所発生単位相光波・磁場防御力場壁(ディフレクター・シールド)
多層蒸散剝離(ラミネート)耐ビームコーティング(外装表面)
・エネルギー転換装甲材(膨大なエネルギーを生かした可変強度素材)
非常時展開型艦内重力隔壁(ディストーション・ブロック)

攻撃兵装
・艦首光子魚雷発射管×3(魚雷搭載数15+3本)
・28サンチ連装偏向陽電子ビーム砲×2(船体上/下面中央に1基ずつ。ムラサメ型打撃駆逐艦の陽電子砲と同じ物。全周囲射界)
・連装位相重粒子ビーム砲(フェイザー・バンク)×2(ポールマウント砲口と不可視の力場砲身の併用で死角のない射界を持つ。艦首ウイング部左右両端)
・汎用16セルVLS×2(船体左右高機動モジュールに搭載)
・連装30mmパルスレーザーCIWS×6

非殺傷装備
・トラクタービーム(重力アンカー兼用)
・重力ビーム送電装置
・各種超光速通信機材一式
・高出力投光器など

特殊航法装置
時空間歪曲型(フォールド)超光速航法装置(マクロス式。現状最も遠距離に短時間で到着できるが機関負荷が大きくフォールドアウト地点の設定がシビア。1ジャンプ200光年が標準だが、緊急出力での跳躍では500光年跳躍も可能だが機関メンテが必須)
・通常空間加速型超光速航法(ワープ)装置(スタートレック式。2199年現在はワープ9.975=光速の5754倍相当がこの航法の最高速。速度だけでなく1回あたりのワープ航行可能時間も延伸している)

搭載機(2199現在)
・空間汎用輸送機 ”SC-87 コスモシーガル”×1機(専用デッキ。脱出艇兼用)
・90式空間機動甲冑×4機(常設ではなく任務に必要と判断された場合に搭載。基本、船外作業機)
・小型無人多目的ドローン

特記事項
・ブロック工法での設計のため従来の地球艦より短時間で大量建造可能
・地球連邦で最も自動化が進んだ軍艦。定期乗員33名で3交代ローテーションが可能。
・艦橋に見える部位はなく上面の一番高い部分は2番砲塔。艦橋機能はコンゴウ型と同じく艦重防御区画最深部の”CICルーム”にて行われてい
・地球連邦艦最高峰の慣性中和装置


備考
 ガミラス戦役終戦までの間に延べ30000隻が建造されたとされる船であり、艦種別で見れば「最も多くの損傷艦を出すと同時に、最も多くガミラス艦を沈めた船」と呼ばれる。
 そもそもの開発の経緯は、地球連邦側が「激戦なる最初の3年間」で最も苦労した「ガミラスの空間三次元水雷戦術」に対抗するためだ。
 空間三次元水雷戦術は地球側の言い方で、「高機動を生かした一撃離脱じみた高速砲雷撃戦」、例えば2199でドメル艦隊がガトランティスに仕掛けていたのが典型的なそれだ。
 コンゴウ型などの”ガミラスキラー”が登場するまでの、実は地球連邦の軍艦は戦闘特化の船ではなく、代名詞の”ナデシコE型”まで含めて「戦闘可能な汎用艦」という立ち位置だった。
 そもそもナデシコに様々な種類の高価なオプション、”Yユニット”が用意されているのもそれが理由だった。
 
 そして想定されていた戦場は、宇宙では最もオーソドックスな敵味方の舳先を剝け合った正面からの”相対戦”。
 宇宙では三次元機動ができるゆえに側面や上方下方、後方は取らせず、艦隊単位で動き回って被弾面積が少なく火力が集中できる前を向き合っての正面きった殴り合いが常道だと。
 
 厳密に言えば、ガミラスとてその常道はあったのだ。
 正面から殴り合うことを是とするセルグート級のように一級の装甲防御を持つ船や、ガイデロール級のような魚雷を満載した火力特化の船、数は多くないがガイペロン級多層式航宙母艦や幅広な期待を運用するために開発されたポルメリア級強襲航宙母艦なんて航空支援兵力もあった。
 だが、地球を驚かせたのは軽防御でしかないのに高速で肉薄してくる、デストリア級航宙重巡洋艦やケルカピア級航宙高速巡洋艦に率いられた水雷戦隊だ。
 彼らは勇敢に、専門家から「第二次大戦の急降下爆撃機や雷撃機のようだ」と評された突撃を敢行してくるのだ。
 そして当時の地球連邦の軍艦の主力防御装置はディストーション・フィールドで、ビームやレーザーなどには無類の防御力を発揮するが、実体弾にはそれほどでもない。
 だからこそ、中でも厄介とされていたのが実弾メインのクリピテラ級航宙駆逐艦だった。
 小さく小回りが利き、近距離から高速でミサイルを乱射してくる駆逐艦は、撃沈にまでいたるケースは持ち前の防御力の高さからほとんどなかったが、とにかく無視できないほど損傷させられたのだ。
 
 死ぬことはないが怪我はさせられる(ただし大半は返り討ち。きっちり良くて半殺しの目に合わせたが)……その状況を打破するために生み出されたのが、ガミラス水雷戦隊へのインターセプターとなるべく設計された「ガミラス駆逐艦より小型でより強力な」ユキカゼ型だった。
 ユキカゼ型の最大の特徴は一にも二もなく圧巻の運動性と加速性だ。
 戦闘時に最大出力を発揮するインパルス・ドライブが内蔵された船体左右にターレット・マウントで取り付けられた高機動モジュールだ。
 ターレット・マウントのおかげで垂直方向で360度回転、メインノズルが可倒式であり斥力場推力偏向装置などにより水平方向にも万全。
 ぶっちゃけ、その運動性や加速力は、2202のブラックアンドロメダすらもスペック的にしのぎ、故にガチガチの慣性中和装置などを念入りに搭載していた。
 防御力はお堅い地球連邦艦の基準通り。主砲の陽電子ビーム方はムラサメ型と同じ物で駆逐艦程度ならまともに当たれば一撃で大破はかたく、巡洋艦クラスでも当たればただではすまない。
 もし敵機が近づくならフェイザー砲とパルスレーザーで薙ぎ払い、その機動力を何に生かすのかと言えば、とにかく「敵艦に光子魚雷を叩き込む」ことに尽きる。
 光子魚雷は弾速は遅いし射程も短いが、誘導ができる上に威力は絶大だ。1発でも当たり所が良ければ巡洋艦クラスでも轟沈させられ、3発全弾大当たりならガイデロール級を爆沈させることすら容易いだろう。
 
 そして、このユキカゼ型が大挙して戦場に押し掛けてきたのが戦争の後半……本来の意義である「精鋭による敵水雷戦隊を中間迎撃で撃滅する」というシチュエーションはほぼ無かったが、敵と相対すれば存分にその猛威を振るった。
 ただ、「ユキカゼ型がその本領を発揮したのは、連続ワープができるようになったガトランティス戦役だ」とする声も大きい。
 
 最後にユキカゼ型は特に波動機関搭載前は損傷艦が多いことで知られていたが、実はその内情は被弾によるものが多数ではない。
 実はその多くが、「爆沈する敵艦に巻き込まれた」、「爆散する敵艦の破片を避けきれずに食らった」などだ。中には「進路上に飛び出してきた敵駆逐艦にぶちかまし(=正面衝突)をかけて轟沈させ、自分は中破で帰ってきた」なんて船まであった。
 どんだけ肉薄してんだよと思わぬでもないが、それが良くも悪くもユキカゼ型であり、またある意味において当時の地球連邦を体現した船だったといえる。

余談ではあるが、後の時代に「智将にして猛将」、「沖田十三の後継者」と呼ばれる古代守が艦長を務めた初めての船であり、それ故に思い入れも深く、「様々な船に乗ったが、今でもユキカゼこそが最良や最強でなくとも、最高の船だったと思う」と後に語っている。
まだ若い少佐にネームシップたる1番艦が預けられるということ自体が、彼の非凡さを示すエピソードと言えるだろう。







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