たまには地球がチート臭くても良いのではないかと   作:ヤマトとトマトはなんか似てね?

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今回は、”アレ”の発砲前の1シーン。
ヴァルキリー隊の勇戦、あるいはある中尉の活躍を描いた話かなーと。




第56話:”エースに至る条件”

 

 

 

「うわっ!?」

 

 スカルマークを誇らしげに描いた白地に赤のラインが鮮やかな愛機VF-11Bを人型に変形させ、近距離から手頃な重巡洋艦のブリッジにバヨネットを突き刺して一連射を浴びせていた一条輝だったが、それを助けようとしたのか横合いからいきなり遮二無二突っ込んでくるガミラス駆逐艦。

 

 その勇気あるとも無謀とも思える機動に押されるように、ステップを描くような回避運動をするが、銃剣を突き刺していたせいか位置が悪かったのと、近距離からのガミラス艦の割には発射レートの早いビーム乱射のため、1発はどうしても当たってしまいそうだった。

 

”バヂッ!”

 

「くっ!」

 

 伝わったのは音ではない。”盾”に当たった振動をI-IFSによって、音として輝は認識したのだ。

 だが、重要なのはそこではない。

 

 突っ込んできたクリピテラ級航宙駆逐艦の砲撃を回避行動しながらも攻撃に備え輝は積層蒸散型(ラミネート)耐ビームコーティングがされた盾を掲げ、「280㎜陽電子ビーム砲1発を、()()()()()()した」のだ。

 コーティングは大分持っていかれたために2発目、3発目は厳しいだろうし、分極メッキしか施されて無い部分なら、例えその下がエネルギー転換装甲でも、少々まずいことになっていたかもしれない。

 だが、現状で輝が操るVF-11Bは、「戦闘に支障をきたすようなダメージは()()」だ。

 

 何を言いたいのかわからないのかもしれない。

 この例えが適切かわからないが、こうイメージしてほしい。

 太平洋戦争中、「ゼロ戦がたった1発とはいえ、近距離から放たれた米駆逐艦のMk1/ 5インチ38口径長砲を装甲の一番分厚い部分で無効化してみせた」と。

 おそらく、戦時中にまじめにその可能性を考えた者はいないだろう。それほどまでに馬鹿げた話なのだ。

 ちなみに巻き添えを食ってブリッジをつぶされていた重巡洋艦は、損傷部に流れ弾の直撃を浴びで轟沈してしまう。

 加えて、

 

「よくもやってくれたなっ!!」

 

 お返しとばかり、輝はファイターモードに変形し吶喊! プラズマ焼夷効果を発揮する40㎜徹甲榴弾を至近距離から浴びせ、ランチャーから頭を出していたミサイルの弾頭に見事に命中させる! 直撃を食らったミサイルはランチャーごと誘爆し、船体を真っ二つに圧し折った。

 戦闘機の内蔵機銃のみで駆逐艦を沈めるなど、いったい当時の誰が想像するだろうか?

 「ルーデル閣下が操る、カノーネンフォーゲルなら、一撃で敵駆逐艦の魚雷筒を撃ち抜き撃沈する」ことができる?

 確かに、あのお方ならそうかもしれない。ガーデルマンいれば更に容易いかもしれない。

 だが、当時のルフトバッフェの一介の飛行中尉にそれが可能だろうか?

 

 誤解のように言っておくが、確かに一条輝は優れたパイロット資質を持ち、潜在能力も高いが……別に「連邦最強のパイロット」というわけではない。

 確かにそうなる可能性もあるだろうが、それはいずれにせよ未来の話で、今はまだ「頭に卵の殻を乗せたヒヨっこ」に過ぎない。

 現時点での一条輝は、岩本徹三でも西沢広義でもないのだ。

 だが、それがこのような離れ業が新人に毛が生えた程度のパイロットでも「性能的に可能」なのがVF-11Bであり、また現時点での彼我の技術差だと考えてもらっていい。

 

『輝! そろそろ引き上げるぞ!』

 

「先輩! まだいけますっ!」

 

 撃沈した駆逐艦から離脱したところをどこに残っていたいたのか2機の戦闘機(デバッケ)が背後を取ろうとするが、輝は即座に人型に変形させてオーバーシュートを誘発。

 逆にすれ違い際に背後を取った瞬間、I-IFSのイメージで残存の4発のマイクロミサイルとガンポッド、頭部レーザーガンを全開発射し(フルバースト)見事に2機をまとめて火の玉に変える!

 これで、最初の反応弾で沈めた1隻を含めて撃沈3、敵機撃墜5…ちなみに彼より1期下のマクシミリアン・ジーナスとミリア・ファリーナも同等の撃墜数(スコア)を記録していた。文句なく三人そろって仲良く”エース”だ。

 

 実はガミラスと接触する前は、対外戦争がご無沙汰となり、有人惑星に落下の危険性がある危険な小惑星やデブリの排除、星間重武装犯罪集団の討伐を含んだ連保内航路の安全確保、地方自治政府では対処不能の災害出動(実は、地方行政府管轄での対人治安活動の類はあまりない。地方の治安組織は精強で優秀なのだ。特に獣人系の治安……鎮圧部隊は、正規軍の陸戦隊がビビるほどおっかないと評判。合同訓練とかやると「獲物を見るギラギラした捕食者の目」で見られるらしい)などが主目的だった。

 まあ、制宙権の維持と国土の保安が軍の第一義なので、広義な意味での国防活動としては全く間違ってないのだが……そのような情勢下なので、”エース”という呼び名も大分形骸化していた。

 また、エースという称号も、実戦が遠のいたからこそ憧れ含みでハードルが上がり、地球単独時代では「単純に5機以上撃墜」がエースの条件だったものが、今は「1回の出撃で5機以上撃墜」と厳しいものになっていた。

 それが、フォッカーの直結(スカル)小隊の准新人と新人が3人まとめてエース獲得……ヒヨッことは一体?

 

『バカ野郎! ”まだいけるは、もう危ない”だ! 残弾カウンターを見てみろ!』

 

 と怒鳴るのは言うまでもなく我らが大隊長、ロイ・フォッカー少佐。彼はこの戦いに参加したヴァルキリー乗りで唯一、”一回の出撃で撃沈/撃墜数総数二桁(ダブル・エース)”だ。

 少しだけ前言を訂正するが……性能は良いと言っても、後に戦闘詳報やその他のデータ集計で明らかになったのだが、この時のヴァルキリー隊の平均撃沈・撃墜数は1は超えているが、2には届いていない。

 つまり、約150機出撃して、相手を沈めたり墜とした数は150は超えていても300には届いていない。

 現実の戦争を知る者にとっては、これでも十分にハイスコアに感じると思うのだが、その中でフォッカーやスカル小隊の面々の数字がいかにおかしいかわかるだろう。

 

 ついでに言えば、ヴァルキリー隊の損耗率も0ではない。

 防空網を突破するときは無事と言って良かったが、陣形の内側に入れば濃密な弾幕や、温存していたらしい数は少ないが高火力の防空機(ツヴァルケ)などのせいでそうも言ってられなかった。

 損耗率は1割は超えないが、被撃墜数は10機を越えた。

 

 それでもコックピットブロック脱出装置が有益に働き、5機分は味方に無事お持ち帰りされ、残りはファイター状態で330㎜陽電子ビーム砲の直撃を食らって消し飛んだり、ツヴァルケの30㎜砲でコックピットごと撃ち抜かれたり、あるいは誤って味方のグラビティブラストの射線に飛び込んだり、中には敵艦に接近中に背後を取られ一発くらい、そのまま制御が利かず脱出も間に合わず「結果として特攻」し、敵艦もろとも爆散したという壮絶な最期を遂げた者もいた。

 母艦からの重力ビームが届かない、ディストーション・フィールドが展開できない距離での戦闘ならば致し方無いところだろう。

 基本、この時代で機動兵器搭載のディストーション・フィールドが有効的に使えるのは、艦隊防空戦の時だろう。

 安心してほしいのは、別に特攻したパイロットは柿崎という姓ではない。

 確かに地球連邦の機体もパイロットもチートじみた優秀さを誇るが、別に全員が超人という訳ではない良い証拠である。

 

「!?」

 

 輝はここにきて気づいたのだが、翼に吊り下げていたミサイル類は最初に使い果たし、マイクロミサイルは残弾ゼロ。ガンポッドも最初の弾倉は使い果たし、今使っているのは盾の裏に装着してい予備弾倉であり、その残弾も50発を割り込んでいた。

 今更だが、人型に変形できるメリットの1つは、予備弾倉を携行できれば戦闘行動中に弾倉交換をし、装弾数を回復できるというのも地味に強い。

 そして、まだ「残弾数が意識の外にあった」というのは、まだ彼が新米の領域にあることに少しだけ安心する。

 パイロットだろうが歩兵だろうが、「経験が浅い新人が実戦で焦るシチュエーション」の上位の一つが”弾切れ”だ。ちなみに輝はマガジン・チェンジをオートにしていたのでなおさらだった。

 一応、I-IFSを通じて警告は出ていたのだが、どうやら某”赤いあくま”ばりに「うっかり」していたらしい。

 

 逆に豪放磊落に見えて周囲がよく見えてるフォッカーは、事あるごとにI-IFSで配下の状態をモニタリングしており、シンプルだが的確な指示を出していたらしい。

 

(もっと、弾数が多い機体が欲しいな……)

 

 その夢は叶い、約二年後……「激戦続きの最初の3年」の最後の1年で、エンジンも武装も防御力も強化し外部搭載ペイロードを1.5倍に増やした”VF-11C サンダーボルト・コンバット”を受領し参戦。「ガミラスとの最大規模の軍事衝突」で遺憾なくその実力を発揮し、ガイデロール級戦艦を含む総撃沈・撃墜数20を超える大殊勲をあげることになる。

 

『それに、そろそろ帰らんと()()()()()()事になるぞ?』

 

「げっ……?」

 

 フォッカーの言わんとすることはすぐに分かった。”アレ”に巻き込まれるのは確かに御免だ。

 敵艦の爆発に巻き込まれるよりよっぽど生存率が低いこと請け合いだ。

 

「了解しました」

 

 そして、帰投する。

 帰り道に無茶や無駄な戦闘は避け、極力速やかに帰艦路を進む。

 フォッカーは言うに及ばず、マックスやミリアもそれに従った。

 誰だって、味方の”空間爆砕”に巻き込まれて死にたいとは思わないだろう。

 

 比喩ではなく、機体も死体も残らないような戦死は御免だった。確かに苦しむ暇はないだろうが。

 

 

 

***

 

 

 

(終わったな……)

 

 輝は、背後で音もなく爆ぜる”巨大な光球”を映すバックカメラの画像を見ながら、戦いの終わりを感じていた。

 あれでも全滅することは無いだろうが……それでも、自分がこの戦いで出撃することはないだろう。

 直感的にそう感じていた。

 

 拳をギュッと握る。

 確かに感触はあった。手応えは感じた。だが……

 

(何かをつかみかけたけど、まだそれが何なのかわからないな……)

 

 きっと良い兄貴分(フォッカー)に聞いたら、「そんなモンさ。そんなモンを繰り返し、パイロットは腕を上げるのさ」と笑うだろうか?

 一条輝にとって初めて経験する正面切った大規模戦は、きっちり結果を出したとはいえその大半が興奮と感情の昂ぶりに支配されたものだった。

 今は妙に疲労を感じる……ただ、恋人(未沙)の膝の感触がやけに恋しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




意外と書く機会の少ないヴァルキリー隊の戦闘をクローズアップw
実は、乱戦気味の方がヴァルキリーは輝くと思うんですよ。

今回の一条輝の戦果

高機動中型ミサイルで2機のデバッケを撃墜
 ↓
反応弾で軽巡1隻撃破
 ↓
新たな獲物を探してる途中、艦隊防空で上がってきた通りすがりのツヴァルケを交差しながら1機撃墜
 ↓
ちょうどよいところに居た重巡洋艦。大物っぽいので威力を高める為に銃剣でブリッジに破孔をあけて銃口を突っ込んでガンポッドを連射。
 ↓
飛び込んできた駆逐艦に1発食らいながらも反撃で返り討ち。
 ↓
最後に殴りかかってきたデバッケ2機をオーバーシュートさせてスプラッシュ。


あれ? 存外に強化されてる……というか、戦い方が原作より荒っぽくなってね?w



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