たまには地球がチート臭くても良いのではないかと   作:ヤマトとトマトはなんか似てね?

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週末恒例の深夜アップ―。

前回が爽やか(?)なヴァルキリー隊メインの話だったので、今回は台風に影響受けまくってる今の天気のようにジトっとした感じの話を。

ただし、エロ方面ではないです。
そういうのを書くのも好きだけど、今回は違う方向性でじっとりさせようかと。
あと、新キャラ出ます。
ええ、ついにあの作品から……






第57話:”地球連邦にだって、大っぴらに言えない仄暗い部分くらいあるんです”

 

 

 

(まったくえげつないこと考える人だよなぁ……)

 

 ナデシコE型の15番艦”タチバナ”の艦橋、その艦長席で山南修は、提督席に座る沖田十三中将を見やる。

 軍人として駆け出しだった時代に出会い、軍大学時代の先輩だったこの男……この男の評価は、「優秀だが変人」という物が割と多い。

 それに関しては、山南も納得する所だ。

 

(あと、「軍人というよりも学者」っていうのもメジャーか)

 

 これも確かに納得いくが、ただこちらには少々後ろ暗い……影のような物が付きまとう印象がある。

 「科学者がビーカーの中身を見るような目で戦場を俯瞰し、実験を行うように戦術を組み立てる」……だが、それはまだ好意的な味方だ。

 沖田は、人格者とされているにも関わらず、どうにも一部の「真っ当な軍人、あるいは軍政家から明確に距離を置かれてる」傾向があるように思えてならない。

 その最右翼は芹沢虎徹である。

 

 その理由は、沖田の生い立ちや若くして中将まで出世したその理由にあると山南は踏んでいた。

 

 大きな戦争がなかった自分達がまだ若い頃、沖田はどうやって出世したのか?

 新人のころに少し世話になり、軍大学で再会したとき、沖田は研究者としてそこにいた。

 宇宙物理学博士号持ちというのは原作でもある設定だが、この世界線では更に収斂されており、大きな意味では古代アケーリアス文明の研究者、より範囲を狭めれば軍や政府、民間を問わず多くある「古代火星遺跡研究チーム」の一員だった。

 

 世間のイメージだと地球に一番近い惑星である火星、そこにあるロストテクノロジー系古代遺跡の研究などとっくに終わってると思われている。

 真空相転移機関にグラビティブラスト、ディストーション・フィールドなどの重力系技術やあまりにも広い分野をカバーするナノマシン技術や、量子跳躍まで可能にした量子工学技術……火星由来の技術は全て実用化され、後は発展させるのみだと。

 

 だが、それは大いなる誤解……古代宇宙文明の闇はそんなに浅くもなければ狭くもない。

 研究と解析は、火星の遺跡調査が始まり軽く一世紀以上経過した今でも、いや今なお”()()()”なのだ。

 ちょっと考えてほしいのだが、特にそんな仰々しいテクノロジーが埋まってない遺跡でも、地球単独時代の人類は、一体何年かけて調査したというのだろう?

 21世紀でも調査終了と思わせておいて、後年に政府の怪しげな非公開機関や軍部の所属を明かせないセクションがこっそり調査を継続していた……なんて都市伝説じみた話まである。

 そして、現在の地球連邦ですらも、例えば……「火星や木星の遺失技術遺跡が、”誰が(Who)何のため(Why)”に作った」のかは正確にはわかっていない。

 いや、それどころか”いつ(When)”に関してもかなり大雑把だ。

 一説には、「古代宇宙飛行士達が、第四次世界大戦末期で大暴れして地球人類を絶滅の一歩手前にまで追い込んだ”鳥のような謎の巨大生命体”を観測するために設営した基地」と言われているが、それも確固たる証拠があるわけでは無い。

 正直に言えば、地球連邦のどんな科学者であろうと、古代の英知の「ほんの断片」しかわかっていないというのが実情だった。

 何しろ、地球史に多大な歴史的変遷をもたらせた南アタリア島の異星人(巨人族)の船に、”鳥の人”、更に火星や木星にプラントを設営するだけして姿を消した古代宇宙飛行士達……それの因果関係すらうまく説明できないでいる。

 そもそも”古代アケーリアス文明”という名称すらも、数々の遺失物から拾った文字でそれっぽい物を拾い「地球人類の有史以前からトンデモネー技術をもって宇宙を生活の場にしていたトンデモ集団」に、総称がないと不便だからと便宜上つけただけだ。

 つまり、地球連邦は所詮、「まだその程度しか知らない、理解していない駆け出し宇宙文明」なのだった。

 

 

 

***

 

 

 

 そして火星と名がつけば、必ず出てくる組織がある。

 そう、元”火星開発公社”、今の名前は”ネルガル・グループ”だ。

 よく軍装備品で名を聞くエステバリス・シリーズやナデシコ・シリーズの生みの親であるネルガル重工は、その1セクションに過ぎない。

 

 ネルガルと政府、軍の繋がりはここ1世紀は「仄暗い話」として、特に陰謀論じみたフィクションの題材として好まれた。

 まあ、無理もないところだ。

 今でこそ、ネルガルは「採算重視の民間企業の()()」を取っているが、その実態は”民間企業の皮をかぶった軍や政府の別働組織”と言われても仕方ないフシがあるのだ。

 

 例えば、初代ナデシコ。ナデシコA型は最初は軍艦ではなく、「火星開発公社時代からため込んだ遺失技術の実験」としてネルガル・グループが半ばプライベート・プランとして計画したのだが、絶妙なタイミングで連邦政府と軍部が資金提供や技術提供を申し入れ、ネルガルもそれを受諾し、最終的に”実験”として完成し、就役した。

 その時の運用スタッフは、軍民半々だったとされるが……その実態はわかったものではない。

 

 火星古代遺跡とネルガル・グループ……これは、沖田十三の経歴に密接に結びついていた。

 軍大学で火星古代遺跡研究チームの一員であり、ナデシコの時とは逆に、ネルガル・グループがそこの資金提供をしていたと噂される。

 事実、沖田が所属していたチームはネルガルの技研チームとよく共同研究をしていたと山南は記憶する。

 

 そして、本当か噓かはわからないが……沖田は20代前半に見合い結婚をしているが、噂ではその時の見合い相手はネルガルの会長一族として名高い”秋月”一門の流れだという。

 何度かお宅訪問してる山南としては、あの仲睦まじい中年夫婦が、後ろ暗い背景の末に生まれたものだとは思いたくないのだが……

 

 だが、結婚後は経歴の半分を博士号持ちの技官として、もう半分を船乗り……「本当は外宇宙には軍人としてではなく科学者として訪れたかった」という原作の願望を組んでか、エンタープライズ型探査船の軍出向組乗組員として、驚くようなスピードで出世したのも事実なのだ。

 

 芹沢虎徹やその一派からすると、わかりやすく言えば「ユイを娶って碇姓になりネルフの頭になった碇ゲンドウ」みたいな印象なのだろう。

 別に彼は婿入りして姓を変えた訳では無いし、あそこまで露骨ではないが……それでも、彼の出世の裏側にはネルガルの影が(事実はどうあれ)チラついて見えるのは仕方のない事だった。

 

 そして、

 

(”この大砲”の開発にも関わっているんだよなぁ……)

 

 

 

***

 

 

 

ルリ君、包囲網……敵艦隊封じ込めの現状は?」

 

「進捗率92%。予定通り進むなら、あと360秒以内に所定の密度に達します。提督」

 

 クールな声で返すのは、雪のように白い肌と金色の瞳、ミスリルを思わせる銀色の長い髪をツインテールに結わえた、明らかに”異質な少女”だった。

 

ラピス君、ヴァルキリー隊の帰還状況は?」

 

「えへへ。全機、既に退避行動に移ってるよ? 発砲タイミングから逆算すると、全機安全圏内に離脱できてる筈だよ。おじちゃん♪」

 

 と、どこか壊れた印象でにこやかに微笑むのは、先程のツインテールの少女の特徴をそのままにダウンサイジングしたようなストレートヘアーの”幼女”……

 

 提督席の左右を固めて機嫌がよさそうな二人と、それを優し気な瞳で見る沖田に、山南は素直にこう思う。

 

(やっぱりこの先輩(オッサン)、どこか頭おかしいわ……)

 

 この少女と幼女、実は軍人でも従兵でもない。そういう動きをする時もあるし、ラピスと呼ばれた幼女に至っては、休憩時間に沖田の膝の上で寛ぐという暴挙に出ることもあるが……断じて軍などではない。

 

 一応、連邦法の関係で”連邦市民”扱いには建前的にはなるが、本来の扱いは”人間()()()()のだ。

 正確に言えば……戦闘規模拡大の予想に伴い、急遽ネルガルより「支援物資」として送られてきた”タチバナ”、いやナデシコ型に搭載される「大規模量子演算機(オモイカネ)専属の()()()()()()」……

 あるいは、人造の神である思兼神(オモイカネ)と人を有機的に結びつける”電子の妖精”にして”量子の巫女”……

 またあるいは、”()()()()()()天河明人なる()()()”の「狂気の結晶」……

 

 彼女たちに人間のような名はない。”ルリ21900401”ラピス21900401……略式開発コードと正式稼働開始日を示す数字の組み合わせがあるだけだ。

 ただし、その姿は細かい差はあるが通称劇ナデに出てきた2人に、「とてもよく似ていた」。

 

 軍人としてまっとうな感覚があると自認してる山南は、「異質な少女と幼女が旗艦のブリッジに居る。しかも艦載コンピューターのパワーアップ・キットとして」という現実に、国家の闇を見るような……連邦軍人として踏み込んではいけない領域に来ているような気がしたが、大して沖田は”当然のように”受け入れていた。

 

 誤解のないように言っておくが、別に沖田が異常な感性の持ち主という訳では無い。

 ただ、山南が知らない事実を知っていただけだ。

 

 そう、「オモイカネが()()()()()()()()()()ためには、二人の巫女の存在が不可欠」という単純明快な事実をだ。

 だからこそ、沖田は大して感情のこもらぬ声で告げる。

 

「ルリ君、ラピス君、”相転移砲”の発射準備を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ついに出ましたねー。山南さんとルリとラピス。
ただし、名前からわかるように、「オリジナル」ではありません。
オリジナルなら、彼女達は相当……2191年の技術でも生存が難しいくらい高齢な”筈”です。
なので、この二人は「新規製造」であり、オリジナルと性格も違います。
なら、ルリとラピスという名前でなくとも良いのではと思うかもしれませんが、「求められた役割」がルリとラピスなのです。

地球連邦にも闇の部分も、仄暗い部分もあります。
例えば、第四次大戦後、生存した人類は半世紀ほどではありますが「人生五十年」が比喩ではなく、文明がちゃんと復興するまで(地球連邦が発足するまで)、「暗黒時代」を経験し、また地球人類のほぼ全員が、残留放射能による放射線障害を持っていることに気づきます。

そして、欠損した遺伝子情報を是正するため、生き延びるためにDNAチューニングに手を出し……紆余曲折の果て、その結果、生まれたのが二人のオリジナルというイメージをもっていただければと。

この世界線のアキトは、復讐鬼ではありませんが……”The Prince of Darkness”ではあるような気がします。
作中には出てこない可能性が高いですが、朧げな設定だとそんな感じです。

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