たまには地球がチート臭くても良いのではないかと   作:ヤマトとトマトはなんか似てね?

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今回は、”タチバナ”のブリッジより。
マクロス系で新キャラ出てきます。かなり珍しいキャラも……

あと、沖田さんのとある一面とか。





第58話:”沖田博士はかく語れり。ついでにエリートってなんだっけ? なんだっけ?”

 

 

 

 2191年、時系列は僅かに戻る。

 飛び征く恋人()の姿をレーダースクリーン越しに心配げに見送りながら、父が現在、地球の目と鼻の先の火星(現在の地球連邦人の感覚だと、日帰りできる場所どころか、地球からの通勤圏内)勤務のエリート軍人で、母は地球生まれの地球育ちなアルミラージ人(ラビティアン)の一条……いやいや、それは未来の話で現在はまだ早瀬姓の”早瀬未沙”大尉は、母親譲りの髪と同じくカフェオレ色のピンと立った長いウサ耳で、聞くともなくブリッジの音を拾っていた。

 

「山南君、君は”相転移砲”をどうイメージする」

 

 横に従えた銀髪金眼、白磁色の肌の美少女と美幼女が妙に目立つ沖田が唐突にそう切り出すと、山南は少し困った顔で……

 

「イメージですか? イメージと言われましても、現在の宇宙……特定の空間の現在の真空から、”より低位の真空”へ強制的にシフトさせることにより、余剰となったエネルギーを解放させる武器としか」

 

 それはそうだろうと美沙は思う。技術職ではなく一介の航空管制官(オペレーター)である自分も、あまりピンとこない質問だ。

 「軍人は安定職の国家公務員。しかも福利厚生もしっかりしてて、恩給もよい。いいことづくめだぞー」と推す父親の影響で軍の幼年学校に入学し、それなりに優秀な成績で卒業し、特に迷うこともなく士官学校へそのまま進学した。

 

 そのおかげで花形とされる旗艦型戦艦のオペレーターに選抜されたが、そのことよりもこの仕事に就いたおかげでモロに好みど真ん中の「げんきで可愛い年下の男の子」に出会えた事が本人的には喜ばしい。実に喜ばしい。

 自分の膝で毎晩安らかな寝息を立てる輝の顔を見てるだけで、生まれてきたことの幸せと喜びを感じてしまう。

 将来的には子供は欲しいけど、今はまだ輝をベタベタに甘やかしたい。ズブズブに溺れさせたい……

 

(戦場では命の危険があるからしっかりしてて欲しいけど、その分、私生活はもっとダメダメで良いと思うの。もういっそ、私がいないと生活に支障をきたすレベルで……やっぱりメリハリって大事よね?)

 

 今のところ、美沙が一番プライベートで行ってみたいセリフは「もう。輝ったら私が居ないと何もできないんだから♡」である。

 割と似たようなセリフは日常でも聞きそうだが、彼女の場合ガチに「自分じゃ替えの靴下の位置すら把握してない」ような状況に輝がなってから言いたいのだ。それまでのとっておくのがモアベター。

 無論、輝の介助がしたいとか介護がしたいという理由ではない。確かにそういう風に「本気で何もできなくなった輝を思う存分可愛がりたい」という願望もあるにはあるが、出来れば怪我も病気なく元気でいてほしい。

 第一、輝と【うさぴょい♪】できなくなったら困るのは自分だ。いろいろ持て余すだろうし、何より初孫を楽しみにしてる早瀬沙紀子(おかあさま)に申し訳が立たない。

 

 『パパが人族でしょ? やっぱり、異種族間だとちょっとできにくいのよ。ママ、美沙ちゃんが授かるまで10年以上【うさぴょい♪】頑張ったもの♪ だからね、ママも早く美沙ちゃんの赤ちゃん見たいのよ。きっと可愛いだろうなー♡』

 

 だが、一番頑張ったのは早瀬隆司(おとうさま)なんじゃないかなーと内心は思っている。

 それにお母様が自分を生んだのは、年齢的に二十代前半も前半。それから逆算すると……『それは異種族間交配がどうのこうのではなく、単純にお母様の肉体的な準備が整ってなかっただけなのでは? 小柄だし』と思わなくもないが、まあラビティアンはヒューマンの基準に当てはめちゃ駄目な部分もあるし、そういう生態(もの)なんだと思うしかない。結果として自分が生まれたので、それで良しということにしておこうと美沙は考えている。思考放棄と言ってはいけない。

 十中八九、お母様に迫られた結果だろうけど、それにホイホイされちゃうお父様って……

 

(エリートってなんだろ?)

 

 とちょっと根源的な疑問に思考がずれたところで、

 

「悪くない回答だ。言い方を変えれば、密閉された真空相転移機関の中で起きている現象を、解放領域である宇宙空間で疑似的に行う……言ってしまえば、それだけの事だがね。だが、開発に携わった者として、こうも考えてしまう。我々は安直に兵器として完成させてしまったが、本来これには別の用途があったように思えてならないのだよ」

 

「は、はあ?」

 

「現在の真空状態をより低位の真空状態、よりエネルギー状態の真空へ移行させるという意味を考えたことはあるだろうか?」

 

「い、いえ……」

 

(えっと、確か宇宙は今なお膨張状態(インフレーション)にあるから、その宇宙の膨張に使われるエネルギーを抽出するっていうのが、インフレーション理論の骨子よね? 真空を相転移させるのは、そのための手段で……)

 

 すぐに回答を思い浮かべるのは、彼女が才女たる所以だろう。

 例えば、同じブリッジ詰めのオペレーター・ガールズの中にはさっきからの頭上にでっかい?マークを浮かべてる者もいる。

 現在、彼氏絶賛募集中と公言しているシャミー・ミリオム、お前のことだよ。

 

「我々は、”宇宙に()()()()()()()()のだよ。人工的に、な」

 

「……は?」

 

(は?)

 

「はい?」

 

 だから合法ロリ(シャミー)、君はぬこ耳をぴょこんと立ててまで参加しなくてよいとあれほど……

 

「今なお宇宙は拡大を続け、時間経過ごとに容積は拡張される。そしてそれは、エネルギー保存の法則から考えれば同時に宇宙の容積当たりのエネルギー密度低下を意味する。言ってしまえば、若々しく膨らむ宇宙を強制的に老いさせる事によって、その活力を我々のエネルギーとして変換してるとも言える」

 

「何か宇宙にとんでもないことをしてる気分になってきましたが……」

 

「実際、とんでもないことをしてるのさ」

 

 沖田はなぜか愉快そうに笑い、

 

「だがね、我々の現在の科学力で宇宙に与えられる影響など、逆に言えばその程度だ。山南君、”相転移砲”の射程と効果範囲を言ってみたまえ」

 

「最大射程は約1.3光秒。効果範囲は、半径120㎞の球体状空間です」

 

 ちなみに1.3光秒は約390,000㎞程で、月-地球間の距離にほぼ等しい。

 

「その通りだ。さすがによく勉強している」

 

「どうも」

 

 嬉しさを感じられない、むしろ困惑気味の山南の態度に沖田は気にした様子もなく、

 

「宇宙全体、いやこの天の川銀河から見ても、芥子粒にも満たない小さな範囲だ。この程度の空間異常はすぐに周囲の空間に飲み込まれ是正されてしまう……地上で爆発などで発生した小さな真空が、瞬く間に周囲の大気が吹込み平準化されてしまうようにね。さらに言えば、この砲が最大の威力を発揮するには、真空相転移機関が最大効率を発揮するのと同じ条件……より、純度の高い真空が望ましい。当然だろう? 同じ原理なのだから。濃密な大気の中では、相転移砲も本来の効果も発揮しないだろう」

 

 実はこれ、TVシリーズ放送当時でも一部のファンが言っていたことだ。

 ”真空相転移機関が純度の高い真空の中でしか本来の力を発揮できないのなら、同じ理屈の相転移砲も同じ結果になるはず。なので、火星遺跡にドカスカ撃っても効果が無いのは当り前。効果がキャンセルされる以前に威力が出てないはず”と。

 何しろ、相転移させる真空がないのだから。

 

「は、はあ」

 

「今の儂には、兵器転用することぐらいしか思いつかん。それも万能とは程遠い」

 

 沖田は少し目を細め、

 

「それほどに小さな力だし、同時に儂の科学者としての限界……己の小ささの証明よ。だが、いつか見てみたいものだな。それ以外の用途……いや、あるかもわからない相転移の”本来の用途”というものを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

************************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無論、いつまでもそんな講釈を垂れているほど沖田十三は無能な男ではない。

 ”半径120㎞の球体状の空間”……敵艦隊全てとは言わないが、敵旗艦とその主力を押し込める事には成功したようだ。

 徐々に間隔を狭めて押し込むような半包囲での砲撃も、ヴァルキリー隊の強襲攻撃も、全てはこの状況を生み出すための呼び水に過ぎなかった。

 

「旗艦艦隊、前進」

 

 後は、その密集した敵を1.3光秒以内に捉えれば良いだけだった。

 

 だが、あえて言おう。

 どんな緻密な戦術も考え抜かれた作戦も、たった一人の馬鹿者によって台無しにされることがあると。

 

「敵旗艦と護衛艦隊、こちらに合わせ前進してきます!」

 

 どうやらレーダー・オペレーターを務めているらしいシャミーの声に、沖田は思わず天を仰いだ。

 

「どうしてそうなった……?」

 

 答えられるものは、ルリやラピスを含めて誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




気まぐれにちょっと崩壊キャラ紹介w

早瀬未沙
お父さんは地球人です、お母さんは地球生まれで地球育ちのアルミラージ人。
性格は原作のようにツンデレではなく、長いうさ耳(と尻尾)と重めの愛はお母さん譲りで、実は割とのんびりした性格はお父さん譲り。実はその性格のため、幼年学校や士官学校でも首席は取ってない(ただ、非常に優秀な成績だった)。
現在は仕事場では輝を見送る艦隊航空管制官の一人で、プライベートでは輝を甘やかすことに熱意を傾ける。
その熱意は、どこぞの「魔王様」級と考えて良い。
クリーク! クリーク! クリーク!

早瀬沙紀子
要するに美沙ママ。地球生まれの地球育ちだが、血統的には純粋なラビティアン。旦那への愛情は未だ衰えず。容姿も実年齢に比べてかなり若い。
精神面のモデル(メンタルモデルではない)は、”亜子ママ”。

玉置亜子
本編とは全然関係ない「ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?」のメインヒロイン。
ちょっと変だがとにかく可愛い。面倒だけどそれを補って余りあるくらい可愛い。そして、母親が割とかっ飛んでて、母娘(おやこ)揃ってウマ娘並みに愛が重い。お父さんと主人公はすげー良い人。

シャミー・ミリオム
いつの間にか入り込んでいた初代マクロスでコアな人気を誇ったオペレーター三人娘の一角。
この世界線では航空管制はやっておらず、普通の意味でレーダー・オペレーターなのでヴァルキリー隊から「皆殺しのシャミー」呼ばわりはされないと思う。多分。
そして、未だ登場しない”第三の獣人系”である可能性も捨てきれない(ただし、ケモ耳はただの描写で、ミスリードの可能性もある)





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