たまには地球がチート臭くても良いのではないかと   作:ヤマトとトマトはなんか似てね?

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後に軍の教本にも乗る”沖田戦法”。
その始まりとも言えるシーンです。

本来の沖田戦法は、「死中に活を求める」戦法ですが、この世界線だと地球連邦軍が死中になることはかなり稀なので、ちょっと原作と意味が違ってきます。




第59話:”始まりの沖田戦法”

 

 

 

2191年4月15日

 

 

 

「うむ……うむ」

 

 沖田十三地球連邦軍中将は、未来を知る者からするとまだ生え揃ってない感がする……ややボリュームの足りない髭をしごきながら自分を納得させるように大きく二度頷いた。

 

「当初の予定と少々変わってしまったが、問題ない」

 

 

 

(うわー、動揺してるわね)

 

 ラビティアン特有の優れた聴力で沖田の心音などを聞かなくても、早瀬未沙には努力して泰然自若を装っているのがわかってしまう。

 同時に無理もないとも思う。

 何しろ、”タチバナ”が相転移砲の発射準備を終え、絶妙なタイミングで半包囲による砲撃とヴァルキリー隊の勇戦でギュッと固めた敵艦隊。

 こういう形をとったのは、相転移砲の火力を存分に生かすための処置だ。

 

 相転移砲の射程は1.3光秒、つまり地球と月の間の距離とほぼ同じで、そこに半径120㎞規模の球体状空間を真空相転移させることができる。

 その破壊半径では、500隻をそろそろ割り込んでいるだろう敵艦隊をすべて仕留め切るのは不可能だ。

 だが、防御陣形をとった敵旗艦と思わしき大型艦を爆心地、相転移の中心点に据えればどうだろうか?

 全滅はさせられなくとも、敵の主力は壊滅させられないだろうか?

 沖田の狙いを、美沙はよく理解していた。

 

”可能な限りの戦果の拡大”

 

 おそらく、それに尽きる。

 2週間ほど前にテレザート星系近海に現れた100隻ほどの所属不明艦隊……今回の敵性所属不明艦隊が前回の8倍規模だという事を考えれば、前回の艦隊は先遣隊だったと推測できる。

 いや、今回の規模だって本隊かどうかわからないのが実情だ。

 

 

 

***

 

 

 

 4月1日の交戦で拿捕(鹵獲)した船や、国籍不明の捕虜は既に予備兵力から抽出した別動隊を編成し、後方に送ってしまっている。

 予定では途中で別の連邦艦隊とも合流できるはずだ。

 正式名称を”第15宇宙任務機動群”とするテレザート星系守備隊、第1~第6まであるそれぞれ100隻規模の艦隊、その母港となる球状人工天体拠点”第7ヨコスカ”にも実験を行うためのスクラップじみた敵の残骸はある程度残してあったが、軍事基地としての研究解析部門しかない自分達がこの2週間でできたことは、調べねばならないことの総量を考えればかなり少ない。

 また、知りたいことを知るために本格的な解析をするなら、時間も金も人も物もかかる。そんなものを前線基地が捻出するのは不可能だし、そもそも役割が違う。

 いや、むしろ残骸やら何やらを使って「戦うために必要な知識を得る為の最低限の実験」を過密スケジュールの中で奇跡的にできたのは、その陣頭指揮を執ったテレザート星系方面最高司令官の沖田十三という学者肌の男がいたからだ。

 

 そう、最初の会敵からまだ2週間なのだ。

 こちらから送った状態の良い鹵獲艦や捕虜は、まだ本国と呼べる地球近海にすら辿り着いてないだろう。

 いや、それ以前に明確な敵対行動を取る、『地球連邦が出会った()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の船だ。

 どんなトラップが仕掛けられてるのかもわからないのに、いきなり太陽系へ連行することは有り得ない。

 美沙だけではなく、沖田の予想でも星系全体が軍の所有物である”ニュー・ホワイトサンズ”星系あたりに運ぶのだろうと目星をつけていた。

 

 ルリやラピスが最初の会戦から大して日を置かず合流できたのは、比較的近い星系の軍、いや軍事基地に隣接したネルガルの施設で調整などを受けつつ待機していたからだ。

 ルリやラピスはその性質上、全てのナデシコに標準搭載されるようなものではないが、有事の際……オモイカネの真価を発揮せねばならないような状況が想定される場合は必ず必要になる。

 地球連邦は、テレザートを軽んじてはいない。いや、むしろ生命線の一つとよく認識している。

 こうしてる今でさえ、地球とテレザートの2万光年の間にある地球連邦軍の基地からは増援部隊が編成され、続々とこちらに向かっていた。

 かき集められた戦力は、最終的には1000隻を超えるだろう。

 だが、残念なことに今回の戦には間に合いそうもなかったが。

 

 だからこそ、沖田十三は手持ちの戦力で最大限の戦果を挙げるべく、今回の作戦を立案した。

 

 地球連邦は、地球外起源知的生命体、特に人型のそれに慣れていた。

 三種の獣人系に巨人族の末裔、おそらく単体では地球連邦最強かもしれない全裸系パッキンロリぺったん型精神生命体とそこに住みついてるよくわからないその信者、そしてその精神生命体が引き込んだ魔法の代わりに精神感応を使う宇宙エルフ……正直、連邦的にはもうお腹一杯だが、そうであるが故に接触には慎重に慎重を重ねるし、決して油断はしない。

 

 相手が明確な敵対行動を取り、侵略の意図のある行動を行い、尚且つ地球連邦と同じく艦隊編成を行える数の戦闘艦を持ち、また未知の超光速航行を行う相手……油断できるわけがない。

 

 だが、何もわからない……はっきり言えば、相手が国なのかどうかもはっきりしないし、言葉も今のところは通じない。

 そして、開戦した以上、相手の規模がわからない以上、そうであるが故に倒せるときに徹底的に倒すべきと沖田は考えた。

 柄にもないとは自分でも思う。だが、何もわからない以上、減らせるときに減らせるのは正しいと、軍人として教育を受けた自分自身が答えを出している。

 

 

 

***

 

 

 

 しかし、

 

(相手は何を考えている……?)

 

 こちらの意図に気づき、散会し浸透突破戦術でこちらの半包囲を食い破ろうとするならまだ理解もしよう。

 敵旗艦とその直轄艦隊らしきそれを引き連れ、”更に密度を上げて”こちらに合わせて突出してくるとは、いったいどういうことだろうか?

 センサーの反応から考えてさっきからこちらに通信らしきものを飛ばしてるようで、その中に答えがありそうだが……生憎とこちらはまだ敵対勢力の通信コードも言語も解析し終えていない。

 もっともこの場合、沖田は敵対勢力(ガミラス)の言語が分からなくて正解なのだが。

 蛇足ながらガミラス中将閣下からの通信内容は、搔い摘んでいえばこんな内容だ。

 

辺境の下等民族の分際で、高貴なるガミラス貴族吾輩に”決闘戦(ジョルト)”を挑むとは片腹痛いわっ!

されど寛容な吾輩は、その心意気を汲んでやらんこともないぞ

よかろう。もしお前たちが万が一にも勝つことがあるのなら、ここは潔く引いてやろうではないか

吾輩の寛容に胸打たれ、涙するがよい! わーはっはっはっ!!

 

 前にも少し触れたが、ガミラス()貴族軍人達が考案した”決闘戦(ジョルト)”は、「()()に泣きの一手を与え、それをいたぶり楽しむ為の()()()()()」だ。

 要するにこの中将閣下、「自分達が負け、この戦を失いつつある」ことに気づいてなかった

 この中将閣下が座乗してるのは貴重なセルグート級大型戦艦で、取り巻きはガイデロール級戦艦やガイペロン級母艦など大型艦に座乗し、艦隊のほぼ中心にいたために、沖田の戦術の関係上、目立った被害を出してなかった。

 つまり、中将閣下の脳内図式では「沈むのは巡洋艦クラスかそれ以下の船ばかり=敵には大型艦を沈める術はない=つまり、吾輩の主力には傷一つついておらんわっ! わーはっはっはっ!!」という訳である。

 元貴族軍人では大艦巨砲主義、つまり「でかい=強い」が主流の考え方なため、彼らの国ではそこまで不思議に思われないかもしれないが……

 当然、地球連邦軍は「沈められない」のではなく「沈めてない」だけであり、また実は既にガイデロール級の何隻かはグラビティブラストの直撃を食らって沈んでいるのだが……中将閣下にとり、「自分の目のかけてない雑魚貴族の船など、沈んだところで統計には入らない。ましてや、それを操るのが平民上がりや二等民なら尚更」ということだった。

 

 無論、この通信の内容が理解できたところで沖田のやることは変わらない。

 ただ、状況認識のあまりの祖語に、激しい頭痛に悩まされた事だろう。

 繰り返すが、”やることは変わらない”のだ。

 

「ルリ君、突出してきた敵旗艦を中心とした、”相転移砲”の照準諸元の再計算を」

 

「既に終えています。いつでも砲撃可能です」

 

 やはり、”彼女達”は優秀だった。

 そして、沖田は号令を発する。

 

「最終安全装置解除。各員、万が一に備え対閃光/対ショック防御を密にせよ」

 

 そして、

 

「”相転移砲”、撃てっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

************************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それはある意味、とても幻想的な光景だったという。

 真空の海を前進するセルグート級を中心に、音もなく衝撃もなく白光に包まれた。

 脈絡もなく、唐突に宇宙に現れた半径120㎞、直径240㎞の白い光球……

 何も知らぬ者が遠くから見たら、星の瞬きにも見えるかもしれないそれは、自然界ではそう易々とは起こらないはずの現象だった。

 

 球体状に宇宙から切り取られた真空が一気に数億年、あるいはそれ以上に疑似的に歳をとることでエネルギーに化け、そこにいた船を焼いてゆく……

 その球体の中は、原理的には真空相転移機関の内部で起きていることと同じであり、違いがあるとすれば地球連邦軍の船に積まれてるそれは、人工重力を生み出し、船の動力や推進力、あるいは防御力や攻撃力に転換される。

 

 対して相転移砲が生み出した現象は、ただただ「破壊の為の純粋なエネルギー」として解放された。

 

 

 

 この小さな空間異常を是正しようと、光が消えた時、周囲の空間から真空が流れ込むが……そこにあったのは熔解した「かつて船と呼ばれた物体」だけだった。

 生存者は、いない。

 

 だが、沖田の仕事はここで終わりではない。

 最大限の戦果を求めるなら、ここで終わりにして良いわけはない。

 

「全艦に告ぐ。”掃討戦”よぉーいっ!!」

 

 後に言う”沖田戦法”のこの戦いの最終幕が、切って落とされようとしていた!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「やると決めたからには徹底的に」、それがこの世界線の沖田戦法の骨子っぽいです。

それに付き合わされる皆さんは大変ですがw

今回の戦術は、実は相転移の使用が最重要に見えて、実は「相転移砲で敵旗艦と中核を沈めた後、統制を失った敵艦隊が立て直す前に速やかに掃討戦に移行し、徹底的に叩く」というのが重要だったりします。

実は開発者の一人でもある沖田は、”相転移砲”を射程/効果範囲/威力/使用制限などの様々な理由から、「決戦兵器とは()()()()()()」w

 司令官を失い窮地に陥ったガミラス艦隊ですが、逆にここからがドメルさんの真骨頂かなと。



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