たまには地球がチート臭くても良いのではないかと   作:ヤマトとトマトはなんか似てね?

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今回は、戦闘の最終局面と、地球側の「その後」が少々語れらます。

果たしてエルク・ドメル大佐は、「名将としての器」を見せられるか?








第60話:”将たる者の器の大小は、むしろ負け戦の時に測れるのかもしれない”

 

 

 

「全艦、緊急離脱用意っ!」

 

 ガイデロール級のブリッジで、エルク・ドメル大佐はそう叫んだ!

 無論、何の根拠もないわけではない。

 件の中将閣下は、その幕僚団や取り巻きを、自分の息のかかった、あるいは気に入ってる元貴族達で固めていた。

 この時代のガミラス帝国軍は前にも出てきたが、将官以上は元貴族あり、佐官の大半がまだ元貴族であった。

 貴族という社会制度がなくなって久しいが、それでも軍の士官学校が「身分の貴賎に関わらず、能力のみを合格基準とする」ようになってからまだそう長い年月は経っていない。

 かく言うドメルがその最初の一人であり、同時に平民出身の軍人の出世頭だった。

 

 地球の歴史用語風に言うなら、”デスラー・ボーイズ”の第一期生の一人がドメルだ。

 だからこそ、ドメルは生きてるデータリンクを使い、将官が全員「消し飛んでる(=座乗艦のデータが”ロスト”を示している)」事を確認してから上記の命令を出すあたりが、存外に抜け目ない。

 

 残ってる最上位の階級は大佐であり、そして序列的には自分が最先任である。

 現実はどうあれ、建前上は軍は階級と序列が全てのはずだ。

 だが、案の定……

 

『ドメル、貴様! 我々におめおめと逃げ帰れというのかっ!?』

 

『高貴なる”決闘戦(ジョルト)”で卑怯極まりない武器で逝かれた閣下の無念、それを我々が報いんでどうするっ!!』

 

『我らガミラスの崇高なる戦争遂行目的をなんとするっ!?』

 

 同じ階級でも、公式序列では自分より格下の元貴族大佐達が通信で一斉に嚙みついてきた。

 あの俗物としか思えない中将の敵討ちを言い出すものが居たことにドメルは内心軽く驚きながら、

 

(何を言っているんだ? こやつらは)

 

 現実が見えていないのなら仕方が無い。軍人として言うべきことを言おうと、

 

「これは異なことを。既に我らに勝機はありません。であるのであれば、ここは速やかに撤退し、未知の兵器を含めた敵の諸情報を持ち帰るのが軍人としての責務であり、真なる国家国民への奉仕でありましょう」

 

『貴様っ! 平民の分際で我らに意見するかっ!!』

 

『臆したかドメルっ!!』

 

『敵前逃亡は銃殺ぞっ!!』

 

『そうだ! 衛兵、その敗北主義者を今すぐ射殺せよっ!!』

 

 わめくもはや存在しない貴族という地位に縋る者たちを冷めた目で見ながら、

 

「通信士、貴族艦、いや貴族艦だけの通信を切れるかね?」

 

「もちろんです。喜んで」

 

 

 

***

 

 

 

 ブリッジに同乗していた叩き上げの軍人、半世紀生きてきた人生の大半を軍にささげたヴェム・ハイデルン上級大尉はそのやり取りに苦笑しながら、

 

「よろしいんですかい?」

 

 と声を掛ける。この時まで実はハイデルン、ドメルと必要最低限の会話しかしていなかった。

 どうもハイデルンなりに、「この平民上がりの若者の資質」を確かめたかったようだ。詳しく言えば、「本当の武人か、政治的理由ででっちあげられた偽物」かを。

 まあ、どうやらドメルはドメルで、「上級大尉=一兵卒の終着点にして兵にとっての元帥(昔は平民が佐官になれなかった為、ここが最終階級とされた)」という図式を知っていたらしく、遠慮がちだったようだが。

 

 どうやらドメルとハイデルンの存外長い付き合いは、どうやらここら辺から始まってるようだ。

 

「構わんさ。生きてこそ、次がある」

 

 そして、ドメルは通信士に広域通信で呼びかける。

 敵に傍受される可能性はあるが、今のドメルには知ったことではない。

 

「私はエルク・ドメル大佐だ。我が意に従う者だけで良い。全艦速やかにこの宙域をゲシュタム・ジャンプで離脱せよっ!!」

 

 同時に彼は、ゲシュタム・ジャンプで撤退した後の集合空間座標を全艦に伝達するよう伝えていた。

 その座標のリンクを、「通信を切っていた」事を理由に通信士が伝達しなかったのは、ある種のファインプレーだ。

 この平民上がりの通信士、貴族嫌いでドメルのファンのようだ。

 

 ドメルはこの冗談のような、悪夢のような戦場での自分の最後の役割を決めていた。

 それは、「一人でも多くの兵を母国に連れ帰る」こと。

 今の火力では未知の敵には太刀打ちゆかず、自分はもはや戦闘には貢献できない。

 ならば、「自分ができる最善かつ最良の行動を取る」……そこには後年、ガミラスきっての”名将”と呼ばれる漢の姿が、確かにあったのだった。

 

 つまり、「元貴族に媚びて死ぬ暇があるのなら、一兵でも多く祖国に連れ帰る」だ。

 自分がそこまで総統(デスラー)に対して忠義が厚い男だと自身では思ってないが、それでもそれが今の自分にできる最大限の祖国(ガミラス)へ対する軍人としての忠誠の示し方だとだとドメルは考える。

 

「今の我々に、あの”白い光球”を防ぐ手段はないのだから」

 

 その光景は、長きに渡りドメルの脳裏に焼き付いていたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「敵ながら見事な引き際だ……」

 

 沖田十三はそう感嘆したと多くの歴史書に描かれた。

 ”名将 vs 名将”の「歴史上、最初で最後の戦い」と評される戦いは、まだ互いに誰と戦ったままわからないが、撤退を指揮した男を称賛する沖田の声で締めくくられた。

 

 掃討戦に移行した直後、敵性艦隊は二つのグループに別れた。

 一つは速やかに撤退する部隊と、その支援の為だろうこちらを足止めする為だろう。残留し、最後の最後まで戦う覚悟を決めた部隊だ。(後年、実はこれが誤解であることがわかる。残留艦隊にドメルの撤退支援の意思はなく、ただ破れかぶれで戦っていただけだった)

 

 正直に言えば、残留部隊の戦いに見るべきものは少なかった。

 統制は乱れ、単艦突撃してくるような船も珍しくなかった。

 ただ、中には「宇宙の水雷戦隊」と呼べるような動きの良い小部隊もあり、決して最後まで気を抜くことが出来なかった。(ガミラスの数隻の巡洋艦/駆逐艦で編成される戦隊は、バーガーがそうだったように尉官が率いるケースが珍しくなく、この時代では”大型艦より水雷戦隊の方が強い”事が普通だった)

 

 実は、規格外の性能を持つナデシコやアマリリス型のような大型艦を除く、数的な主力である巡航艦や駆逐艦(正確には、それ相当の戦闘艦)は、ガミラスのそれに比べ、「(超光速航行は話にならず)防御力では勝るが、火力でやや劣り、通常空間での機動力、特に運動性においてはガミラス艦に完全に軍配が上がる」というものだった。

 実際、後年に発表されたこの時代の戦力比較表では、「(超光速航行能力を評価に入れず)地球連邦軍は、大型艦で総合性能でガミラスに勝り、中小型艦でやや劣る」と評された。

 問題なのは、これが地球連邦軍で発表されたデータということだった。

 

 後に「ガミラスキラー三姉妹」とされたコンゴウ型、ムラサメ型、ユキカゼ型の三種中二つが駆逐艦とコルベットという区分になったのは偶然ではなかった。

 そして、”彼女ら”が生まれる理由が、今も結果として表れていた。

 

「結局、300隻以上は逃がしたか……」

 

 沖田も本当に全滅できるとは思っていなかった。

 だが、もう少しいけると思っていたのが本音だ。「駄目押し」できるだけの火力も足りてなかった。

 敵艦の引き際が見事だったし、地球連邦軍艦が日に1回しかできない”次元歪曲式超光速航行(トランス・ワープ)”を出現と撤退、さして時間を置かず二度も使われると打つ手がない。

 

 本来、軍が最も損害を出すのは”撤退戦”、逃げる側が圧倒的に不利で、追撃側圧倒的有利の戦いだ。

 だが、

 

(今の地球の技術力では、それは難しい……)

 

 例えば、スクランブル出撃を通常空間(スタトレ式)ワープを使うとしよう。現在の地球の技術で可能な通常空間ワープ速度は、「ワープ9.9=光速の3053倍相当」だ。一日換算すると移動距離は8光年程、実際には連続ワープ時間は12時間が上限とされているから現実的には一日4光年の移動が限界だ。

 今回の戦闘場所はテレザート星系から20光年ほどの領域……つまり、敵を捉えてから現場にたどり着くまで5日以上かかる計算になる。

 そして、それだけの余裕を与えれば、敵性艦隊(ガミラス)は確実にテレザート星の真上までやってこれる。

 

 悔しいことにそれが今の地球の技術的限界だった。

 結局、スクランブル迎撃には、機関冷却などの関係で1日1回しか使えないフォールド航法を使うしかないのが現状だ。

 いや、よしんば二度のトランス・ワープができるような船ができたとしても、逃げ出した敵をこの広い宇宙のどこにいるのかを探知する手段がない。

 

 寡兵で大軍を討つ……きっとこの戦いはプロパガンダを込めてそう評されるだろうことは、沖田にも想像がついた。

 なるほど。確かに800隻の敵艦を500隻で迎え撃ち、その半数以上を撃沈・、戦闘不可能ないし航行不可能(大破や中破の損傷艦)、降伏に追い込んだのは大戦果と言えるだろう。

 

 損傷艦は中小型艦を中心にかなりの数に昇るだろうが、被撃沈艦は20隻行くかどうかで、しかも小型艦ばかりだ。

 地球単独時代を含め、艦隊戦史上稀に見る大勝利と言えなくもない。

 

 だが、沖田十三の心に去来するのは、不完全燃焼という思いだった。

 

 

 

***

 

 

 

 この戦いから約1年後、沖田十三と今回の戦いに参加した艦隊全将兵/乗員は戦力ローテーションの一環で地球に帰艦し、再編と同時に沖田をはじめ多くが艦隊を離れ、新しい任地へと向かうことになる。

 

 その時、沖田は半ば予想通り「英雄の凱旋」と連邦市民にとらえられ、連邦軍も政府もそれを煽ってプロパガンダとして利用したが……だが、その時の沖田の心境は推して知るべしというところだ。

 

 実際、この時に「連邦宇宙軍大将への昇進」の打診があったが、色々とうんざりしていた沖田は、これ以上人寄せパンダにされるのは御免とばかりそれを辞退する。

 何と無く、”ヤン・ウェンリー”を彷彿させるエピソードだ。

 最も沖田は、紅茶だけでなくコーヒーも愛飲するし、2秒でスピーチを終わらせる才覚もない。

 その証拠が、下にある逸話だ。

 政治的センスが悪くない沖田は、各方面に角が立たぬように辞退の理由として……

 

『戦争はまだ始まったばかり。大将として太陽系や司令部にとどまるより、中将としてまだまだやるべきことは多い』

 

 という趣旨のコメントを発表した。

 これは、「流石英雄。自分の栄達より連邦の安全を優先するなんて、凡庸な男にできることではない」と市民に好意的に受け止められた。

 受け止められたが……

 

 以後、連邦の対ガミラス戦では「全てにおいて沖田十三が基準」となり、市民にはそれ以上のパフォーマンスを求められた。

 地球連邦は、民主主義国家で連邦市民の声は無視できるものでも、無視してよいものでもない。

 

 「凱旋後」の沖田の「大衆受けする軽薄な」振る舞いや、異端の軍人である沖田が基準とされた事に、芹沢虎徹やその一派が神経を逆なでされたのは、想像に難くないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




サブタイがまんまですが、実は勝てる将は確かに素晴らしいけど、負け戦で「引き際を間違えない」、故に味方の損害を最小限に抑えられる者こそ、名将かなと思っております。

「ヤバいと思ったら直ぐに逃げる」これが存外に難しく、この状況で、如何にガミラス艦の方が超光速航行能力に優れているとはいえ、「800隻中300隻以上も生き残らせた」というのは、後世に残った歴史資料から察するに「素晴らしい成果」と評されそうです。

 実はこの頃の地球の中小型艦は「防御力以外は」大した性能ではなく、沈められる船もそこそこあったみたいですよ?
 特にガミラス式宇宙水雷戦術、強力な核兵器込みの実体弾を叩きつけられる戦術とは、相性悪かったみたいです。
だからこそ、「ガミラスキラー三姉妹」が生まれたんですがw
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