たまには地球がチート臭くても良いのではないかと   作:ヤマトとトマトはなんか似てね?

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今回は、「ドメル過去編」の最終話というか、〆の話となります。
もっと書きたいこともありますが、やりすぎると西暦2199年に戻れない気がしてw

という訳で、「名将の始まり物語」の完結、楽しんでもらえたら嬉しいっす。





第61話:”フェンリルが生まれた日”

 

 

 

「どうやら逃げ切れたようですね? 大佐殿」

 

「ああ。どうやら無事に撤退できたようだな」

 

 そうこうしてるうちに続々と生存艦が集まってくる。

 幸い300隻以上は生き残れたようだった。

 

「ハイデルン上級大尉……だったかな?」

 

「ええ。そうでさぁ」

 

 何故か耳触りの良い濁声に、エルク・ドメルは生存の喜び込みの笑みをこぼれさせ、

 

「どこの誰だか結局わからずじまいだったが……二度と戦いたくない相手ではあるな。そうは思わんか? ()()()()()

 

「そいつぁ正直が過ぎますぜ? ()()()大佐殿」

 

 二人の男が笑い合う。

 その笑い声はいつの間にかガイデロール級のブリッジ全体に広がり、階級を問わず生還の喜びを分かち合ったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 だが、エルク・ドメルという男が不遇を味わうのは、本国へ帰投したその後だった。

 元々、ドメルは貴族たちにとって嫌悪の対象だった。

 平民の台頭を喜ぶ貴族は、原則としていない。原則とあえて入れたのは、例外はどこにでもいるという意味でしかない。

 社会制度として貴族という階層が無くなっても、それは変わらない。

 元貴族たちは、既得権益……その権力や財力によって、パワーエリート層として、相変わらずガミラス帝国に君臨していたのだ。

 

 特にヘルム・ゼーリック国家元帥(中央軍総監)の陣頭指揮をとり、積極的に元貴族の受け皿となっている軍部、特に(ドメルを便利な道具として使えない立場の)将官にそれは顕著だった。

 

 本来なら「貴族を害した罪」で銃殺したかったのだが、今のガミラスに建前的には貴族はいない。

 だからこそ、彼らはドメルを、

 

 ”敵前逃亡の罪”

 

 で銃殺刑にしようとした。

 

『辺境の劣等民族風情に無様に敗北し、友軍を見捨て、自分だけおめおめと逃げ帰ってきた罪、許し難し』

 

 という訳である。

 無論、敗北した責任とやらは、あるとすればどこぞの中将閣下にあるわけだが、彼は戦死したのでその責任は問えず。

 なので、生き残った最高階級のドメルに……という滅茶苦茶な論法だった。

 貴族の横暴、ここに極まれりという感じだが……貴族という階級があった時代ではこの程度は当り前、日常茶飯事であり、彼らはそれに慣れ切っていた。

 

 自分達がもはや貴族などではないという事実は都合よく意識の外に追いやられてたし、時代が変わったことに気づいてなかったのだ。

 

 

 

***

 

 

 

 さて、その”ムーブメント”はどうもハイドム・ギムレー率いる親衛隊が暗躍した嫌疑があるのだが……

 今回の戦いで生き残った兵とその家族を中心に、「ドメル擁護キャンペーン」が大々的に始まったのだ。

 

 ”Power to The People”とは、最もガミラスに似合わない言葉ではあるが、実際にそういう動きだった。

 ドメルの無実を訴えるガミラスの平民、いや臣民が横断幕やプラカードを掲げて往来を練り歩き、大声でシュプレヒコールをあげたのだ。

 軍部は当初、国内弾圧組織として認識されていた親衛隊に詰め寄った。

 

『なぜ弾圧しない?』

 

 と。だが、ギムレーは涼しい顔でこう返したという。

 

『今、往来を奇妙な声を上げながら練り歩いているのは、”貴方と同じ()()()()()()”なのですよ? 閣下』

 

 そして、親衛隊……と思われる存在は、更に次の手を打っていた。

 戦死した中将閣下が、不正蓄財をしていたことが明るみになったのだ。

 無論、これが白日の下にさらされたのは、親衛隊の暗躍によるものだけではない。

 メドム・ナーキン、ローグ・モラムなどの「協力者」達が共謀して、初めて可能になることだ。

 

 さて、ここで少しからくりの説明をしよう。

 実はこの時代、元貴族の高級軍人がガミラスにはまだ大量に生き残っていて、「貴族」という枠組みでは、”能力によって台頭した平民(エルク・ドメル)”を叩きはするが、その内情は決して一枚岩ではなかった。

 

 ゼーリックは、「最有力で最大派閥の首魁」であっても「全ての元貴族の頂点」という訳ではなかったのだ。

 だからこそ、ギムレーは密会をその後も続ける。

 

『それより良かったではないですか? ”無粋な対抗馬”(ポスト・ゼーリック)候補が、まだ芽吹かぬうちに立ち枯れして』

 

 ギムレーは、当然こう言える根拠がある。

 不正蓄財の一件が、他の元貴族にも飛び火したのだ。それも、都合よく「ゼーリック閥を()()()()()()()()」だ。

 無論、当主健在の状態でこれで倒れるほど、軟な連中ではない。

 ギムレーはそんなこと百も承知だ。

 だが、飛び火した者は火消しに走らねばならぬ。尻についた火を放置すれば、やがて全身を焼き尽くすとガミラス貴族は体験的に知っていた。

 言い方を変えれば、火消しに傾注すればその分、別の分野に使われるはずだった力が削がれる。そして、そこに付け入る隙が生まれるのが自明の理であった。

 

『……貴様、何が言いたい?』

 

『大したことではありません。ただ、閣下とその一門とは”()()()()()()()”をしてゆきたいと思ってましてね。この先も』

 

 そうギムレーが差し出したのは、「不正蓄財の罪で没収された、()()()()()()()()」、明らかにその一部を示す目録だった。

 

『今回は、付け届けまでに。今後は閣下の派閥全体に、富が行き渡るように』

 

『ふむ……望みは何であるか?』

 

親衛隊(われわれ)の活動にお目こぼし願いたいのですよ』

 

『ドメルの処遇も含めてであるか?』

 

 国家元帥も決して馬鹿でも無能でもない。もしそうなら、彼はとっくに使い潰され死んでいたことだろう。

 権勢を維持するというのは、それだけで大量の才覚が必要なのが世の常だ。

 それは地球だろうとガミラスだろうと変わらない。

 

『ええ』

 

『きゃつは戦力として使えると?』

 

『まさか』

 

 ギムレーは鼻で笑い、

 

『彼は実際の戦力よりも、政治的に意味があるのですよ。臣民に夢と希望を見せ続ける為には』

 

 独裁者とは、「支配者と被支配者の合意の上に成り立つ者」だという事を、ギムレーはよく理解していた。

 確かに民主主義国家の民意とは意味が違うが、ある意味において民衆との関りはよりシビアであり、大衆にそっぽを向かれた独裁者の末路は、地球でも歴史が証明していた。

 独裁とは、その集中する権力や権威に比例したハイリスクな政治手法であるのだ。

 

『そういうものであるか……しかし、全く処罰なしという訳にはいかぬぞ? 貴族とは面子と体面が重要なのであるからな!』

 

『わかっておりますとも。その辺はお任せあれ』

 

 

 

***

 

 

 

 こうして、ドメルは「一階級降格」で中佐の地位となり、中央から大マゼラン星雲辺境へと左遷された。

 口封じのつもりだろうか?

 今回の平民上がりの生存者たちも同じ末路を辿った。

 

 しかし、不思議なこともあるもので、彼らには「保護観察処分」という名目で十分な静養期間、家族や親しい人々と過ごす時間が与えられ、その間に船はよく整備され、あるいは損傷の多いものは交換され、彼らは思いの外の好待遇に気力と装備を充実させ、中央の辛気臭い貴族の空気からも離れられることと相まって意気揚々と新たな戦場へと向かうのだった。

 

 「降格と辺境送り」を甘いとするドメル憎しの元貴族もいるにはいたが、彼らの話題の大半は「付けられた火をどう鎮火するか?」に移っていた。

 彼らにとって忌々しいことに「開明派と平民が結託し」、自分たちを糾弾し始めたので、処分が決まった”()()()()()()”にかまけてる暇はなかったのだ。

 また、ドメルの処遇に某国家元帥が何も不平を言わなかったことも大きい。

 

 

 

 だが、彼らは気付かない。

 この時点で、自分達の死刑執行許可書にサインしてしまった事を。

 ゼーリックは気付かない……富と「合法的に政敵を始末できる」ことに目がくらみ、”()()()()()()()”を決してしまった事を。

 親衛隊にフリーハンドを与えるとは、そういうことなのだ。

 だから、群狼の王(フェンリル)にご丁寧に翼を進呈し、自由に地球連邦がいない宇宙(ソラ)を羽ばたくことを許してしまった。

 

 

 さて、賢明なる読者諸兄ならもうお気づきだろう。

 エルク・ドメル()()が送られた場所が、後に”ルビー戦線”と呼ばれる場所であることを、だ。

 以後、ドメルを中心にその300隻程度の小さな艦隊は、地球連邦に敗北した者たちの受け皿(貴族曰く「都合の悪い負け犬の捨て場所」)となり、徐々に規模を拡大してゆくことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 そして、数年後……

 

 

 

地球連邦(テロン)人に比べるなら、何とも歯ごたえのない」

 

 唐突に姿を現した”正体不明のならず者”相手に勝利し、そう久方ぶりの勝利に笑みを零れさせる()()がいた。

 以後、彼は大マゼラン星雲の片隅で勝利を積み上げ、地球連邦に敗北を重ね過ぎた貴族をしり目に再び出世の階段を昇ってゆくことになるのだが……

 

 その胸には、燦然と”地球連邦戦域従軍生還章(ブラウ・デア・クリーク・テロン)”、別名”青い九死一生勲章(ブラウ・ウバリーベン)”と呼ばれるガミラスを象徴するような蒼く美しい勲章が輝いていたのだった。

 

 これが、自分のために作られた勲章と聞くと面映ゆく、「何もわからぬ時代に、地球連邦相手に800隻中300隻以上を生き残らせた武勲を称える」とされると何とも複雑な気分になるが……それだけ多くの元貴族たちが地球連邦に負けた事が理由の一つと聞くと、変に納得ができた。

 

 エルク・ドメルという男は、平民上がりで士官学校を出た最初の世代であり、そして誰よりもガミラス帝国軍人らしくあろうとした稀代の名将であろう。

 

 故に望む望まぬに関わらず、「政治的な問題」に巻き込まれやすい立場にある。

 だが、心配はいらない。

 この世界線の彼には、”武運”がある。

 戦の神は彼を見捨てず、彼に居る場所を戦場に選んだ。

 

 「出世と勲章が向こうから勝手に飛んでくる事態」など、ガミラス最大の陰謀家でもあるギムレーとて予想していなかったのだ。

 

 きっと、おそらく、多分、エルク・ドメルの栄光は彼が屍になるその日まで続くことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




終わったぁ~。
いざ書いてみると、思った以上に長かったw

そして、こっそり登場するゼーリック君w

そして……もう、なんだかこの時から色々仕込み始めてるギムレー君は、実に働き者なのでありましたとさ。

いよいよ次回から時間軸は現在、2199年に……多分、またガミラスかな?
そろそろ、ヤマトクルーも書きたくなってしまった。

ガミラスは書いてて楽しいけど、色気がw

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