たまには地球がチート臭くても良いのではないかと 作:ヤマトとトマトはなんか似てね?
ハイデルン、バーガー、ネレディアの三人の描写から再開します。
「はぁ!? 補給と休養を終えた後、
さて、随分と久しぶりな気がするゲルバデス級航宙戦闘装甲母艦の1隻”ミランガル”のブリッジから、今回の……2199年を再開するとしよう。
そういえばミランガルは、「空母としては搭載機数が少なく、足は速いが中途半端な性能でコストパフォーマンスの悪い”失敗作”」で、「兵器開発局の増産許可が下りなかった」、「少数生産されたゲルバデス級は、その特性が生かされると考えられた警務艦隊などの治安維持に関する部隊に優先的に配備された」という記述が原作にはある。
少なくとも、この世界線でも”
確かに生産数は、長い年月製造されたガイペロン級よりは少ないだろう。確かに高いし。
”
この三つの組織の中で、多数の艦艇を持ち艦隊として機動的に運用しているのは親衛隊のみだ。
そしてどういうわけか、親衛隊には1隻のゲルバデス級も配備はされていない。
ギムレーは、何時ものように鼻で笑いながらこう告げる。
『何せ”失敗作”ですからね。無駄に金もかかるし整備も煩雑。”
この諧謔に、最早ありもしない貴族という階級にすがる本国の軍人たちは笑った。
だが、彼らは思いもしないだろう。
重火力/重装甲/高機動のこの船が、ドメル軍団にとって「本当に相性が良い」存在だということを。
航空戦力の展開と、「巡洋艦や駆逐艦と一緒になって砲雷撃戦ができるスペック」がどういう意味を持つのか。
『星巡る方舟』で見せた驚異的な粘り腰は、偶然でも演出でもない。
だからこそ、この”
例えば、「ドメル軍団で空母と言えばゲルバデス級を指す」と言われるほどに。
一例をあげよう。有名どころのダロルド、ミランガル、ニルバレスだけでなく、実は同じ艦隊に所属するバルグレイ、ランベア、シュデルグの三隻もカラーリングがオリジナルと同じだけで、れっきとした”
旧式艦の設定はどこへ行ったのか?
まあ、「本来、その名を持つ3隻」は、揃って近代化改修と”高貴なる青い塗装”がなされて使われているのだろう。誰にとは言わないが。
少なくとも、元貴族に使われ、連邦軍に沈められるよりはましな余生なはずだ。
ああ。あと言い忘れていたが……地球との戦訓が生かされ設計変更(設計の一部簡易化、拡大と強化)がなされた、”この世界線”のゲルバデス級、数が多いだけじゃなくオリジナルより地味に強くなっている。
***
さて、長々とゲルバデス級の解説をしてしまったが、当然理由はある。
冒頭でフォムト・バーガー少佐改め中佐が何やら叫んでいたが、まあまとめると叫んだ内容の通りの状況だ。
ヴェム・ハイデルン大佐、いやよく見たら上級大佐を飛び越えて”少将”の階級章をつけてるような気がするが……とりあえず閣下と呼んだ方が良いだろうか?
そのハイデルンが切り出したのは、『
その中でネレディア・リッケが艦長を務めるミランガルが臨時編成エスコート艦隊の旗艦に選ばれたということらしい。
更に同じゲルバデス級のニルバレスと、この世界線ではバーガーと縁が薄いはずの(オリジナルでは濃厚な縁だが)ルタン・ベスターが艦長を務めるランベアが選ばれていた。
「いや、そりゃあ
できれば、二度と戦場では会いたくない……それがバーガーの本音のようだ。
「こいつはまだ公にできねぇ情報なんだがな、何でも”イスカンダルのお方”が仲介するって話らしいぜ? 俺も詳しいとこまでは知らんが」
ならば眉唾とは言えないか……とバーガーは思う。
別に自分が熱心な信者とは思わないが、ガミラスにおける「一般的なイスカンダル信奉」と同程度の感覚は、意外なことにバーガーにもあったのだ。
「なんでミランガル……俺やネレディアなんだよ?」
と嫌そうな顔。少し訂正しよう。どうやら戦場だけでなく「無条件で二度と会いたくない」の間違いのようだ。
「上からのお達しだそうだ。元貴族どもが、停戦の噂が出た途端、不平不満タラタラらしいからな。それで連中が馬鹿な気を起こさないように”信用できる戦力”を抽出して護衛に出すって話になったらしいな」
しかし、どうせその噂とやらもばら撒いたのは親衛隊であろうと結論した(無論、正解である)バーガーは、
「ケッ! どうせまた”親衛隊”がらみなんだろ? 連中、俺たちを便利屋かなんかと勘違いしてねーのか?」
そう吐き捨てるがハイデルンは苦笑し、
「そう言ってやるな。連中とは少なからず”持ちつ持たれつ”だ」
「それで態々、中佐へ昇進ってか? 俺は別に出世なんて……」
「バカ野郎っ!! 中佐程度でガタガタ言ってんじゃねぇっ!! 俺なんざいきなり臨時に出迎えの団長やるってんで”少将”だぞっ!! ついに閣下と言われちまう俺の身にもなってみやがれっ!!」
グダグダ言うバーガーについにハイデルンの名物、”雷”が落ちた!
因みにハイデルンの階級は”野戦任官”扱い。つまり、「この作戦限定で、大佐であるハイデルンに”
理由は言うまでもなく、「地球艦出迎え艦隊」の提督を任命されたからだ。
情報によれば、相手は大将が代表らしいので、こっちも中将をできれば用意したいが、ドメル軍団にはその性質から中将がおらず、経験や実績から今いる少将よりも海千山千のハイデルンの方が適任だという結論になり、こういう処置になったらしい。
ハイデルン自身は、「このエスコート任務が終われば気楽な大佐に戻れる」と思ってるらしいが、果たして……?
「……
軍人としては正直すぎる見解だが、同時に人間としては当然の反応であると言える。
比喩でなく一度殺されかけているのだ。
そんな目にあって、勝てる可能性が恐ろしく低い相手の前にもう一度立ちたい人間なんて、そうそういないだろう。
「良いも悪いもあるか。俺達は軍人だ。忠誠宣誓をしたガミラス帝国軍人である以上、命令には従わねばならん。それにな……」
ハイデルンはニヤリと癖のある笑みを浮かべ、
「今回の任務は、別にテロン人と戦争してこいってわけじゃねえ。なら、別にヤバい橋を渡れってことじゃねぇだろ?」
それは遠回しに「跳ねっ返り貴族と一戦やらかす羽目になるかもしれない」事を示唆していたが……なるほど。確かにテロン人と殺し合いするよりは生存率が高そうだ。
下手をしなくとも、ガトランティス人と
それが数少ない安心材料ではあるのだが。
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「ねえ、フォムト。さっきから酷く不機嫌だけど、そんなに銀河系に行くの嫌なの?」
ハイデルンが、「ほんじゃあ同意も得たって事で、御大将と話し詰めてくんぜ」と自ら”ツヴァルケ複座型”を操縦して旗艦へと帰っていった。バーガーは内心「元気な爺様だなぁ……ところで
「別にあっちの銀河系に行くのが嫌ってわけじゃねーよ。テロン人に会うのが気が進まねぇだけだ」
といら立ち紛れにもう一本タバコをくわえるが、またしてもネレディアに取り上げられてしまう。
「おい!」
「ブリッジは禁煙だって言ってるでしょ? それより、アンタがそこまで不機嫌になるなんて珍しいわね?」
(あー、そういやネレディアは”
まあ、多分に「軍隊への女性参加の御旗」というプロパガンダ臭はするが、リッケ姉の出世は基本的に天の川銀河で達成されたものではなく、ルビー戦線も含めたもっと楽な戦場での戦果だ。
それについては文句はない。
テロン人と戦っていたら、ネレディアは今頃ここに居ないと納得できるが……
(さて、どう説明したもんか……)
自分の当面の課題は、この親愛なる上官にして近い将来の義姉に、どうやって「テロン人の恐ろしさ」を告げるかという事だった。
そしてこの時は、バーガーもネレディアも、ついでにハイデルンも平和な時間を過ごせていたのだった。
今回のオマケは、多分このシリーズ初となるガミラス艦の設定。
今回の主役艦(?)です。
次回あたり、また地球に戻れるかな?
***
ゲルバデス級航宙戦闘
デザイン:オリジナルを拡大し、アングルド・デッキ(斜め飛行甲板)を左右に取り付けた感じ。また主砲配置が変更され、艦橋前の背負式三連装2基は変わらないが、艦橋後方は1基に減らされ(第4砲塔の位置が残された)、その分、艦底部中央に1基増設されている。その砲塔の配置変更により「第3砲塔の格納機構」は廃止され、構造の簡略化に成功している。
また、遮蔽式下部砲戦甲板は構造簡略化のために廃止され、武装が露出している。
「良い感じのハリネズミ」っぽい。
全長:430m
機関
・ゲシュタム機関×2(正副)
・ケルビン・インパルス機関×4(補助)
防御装備
・積層式発展型ミゴウェザー・コーティング(別名:”ツインメリット・コーティング”。従来の帯磁性特殊加工の表面に地球連邦からのリバースエンジニアリングである
・エネルギー転換装甲(同じく地球連邦からのリバースエンジニアリング。ヴァイタルパートや砲塔内部の装甲材等に導入されている)
・シフト配置機関
・集中防御と分散防御のハイブリッド構造と、中空装甲の概念導入
・修復特化型ガミロイドを中心とした
攻撃兵装
・330㎜3連装陽電子カノン砲×4(砲身式。通常のビーム砲に比べ収束率/加速率が高く貫通力、射程などが向上している。艦橋前方に背負式×2、艦橋後方と底部中央にそれぞれ×1。ハイゼラード級やメルトリア級の主砲と共用)
・133ミリ二連装陽電子速射砲塔×6(艦橋左右、船体左右、下面左右に配置/非格納。後期型クリピテラ級航宙駆逐艦に採用されている型と同じ、発射速度を上昇させ、より対空迎撃能力を向上させたモデル)
*遮蔽式上部砲戦甲板×2
・330㎜三連装陽電子ビーム砲×2(ガミラスでは標準的な大型陽電子ビーム砲。オリジナルの280㎜ビーム砲の位置)
・280㎜三連装陽電子ビーム砲×4(オリジナルやメルトリア級に搭載されている物と同じ。オリジナルの133㎜ビーム砲と同じ位置)
・中口径八連装速射輪胴砲塔×4(両用砲扱いのビーム速射砲。鹵獲したガトランティス艦からのリバースエンジニアリング)
・330㎜三連装陽電子ビーム砲×2(船体下面、左右バルバスバウ部下方/非格納なため大型砲塔が搭載できた)
・33㎜連装対空レーザー機銃×8(船体各所。UX-01に搭載されてる物を連装化、CIWS機能を付与した物)
・小口径八連装高射輪胴砲塔×4(船体側面。対空砲。ガトランティス艦からのリバースエンジニアリング)
・四連装ミサイル発射機×6(船体各所。クリピテラ級の物の流用。地球との戦闘で真面目に作れば誘導弾系は思いの外使えると再認識された)
特殊航法装置
・ゲシュタム・ジャンプ(次元歪曲式ワープ。通常一日2回程度は安全に使用可能。緊急時なら3回は飛べる。一回の跳躍距離は200光年以上)
搭載機(2199現在)
・最大55機(従来機に加えDDG410H-4、DWG262E-4、DWG229Cなどの新世代機に完全対応。甲板上での係留になるが空間重爆撃機DBG88 ガルントも運用可能)
・FS型宙雷艇×2(内火艇、脱出艇としての使用も想定)
・汎用垂直離着陸艇SDG61-L×2(内火艇、脱出艇としての使用も想定)
・小型無人多目的ドローン(月面基地で出てきたアレ)
備考
元々はオリジナルと同じだったが、地球連邦やガトランティスとの戦訓、地球連邦から鹵獲した無人機やガトランティス艦からのリバースエンジニアリングを用い設計を簡略化すると同時に拡大/強化したガミラス有数の”強靭で厄介な船”。
また、設計の簡易化と拡大において最も恩恵を受けたのは航空機搭載数で、格納庫を二段にするなどの工夫もあり正規空母のガイペロン級と比較しても遜色のない数字となっている。
原型と比較してほぼ倍加した搭載数に対応するため、アングルド・デッキが左舷にも追加され、左右対称のデザインになったとされる。
そして、真骨頂でもあるのが追加された”装甲”の二文字に象徴されるガミラス艦としては圧巻の防御力だ。
新型コーティングに始まり素材、船体構造に至るまで「ガトランティスから強靭すぎて嫌になる」と泣きが入った”頑丈なガミラス艦”の最初の世代がこのゲルバデス級なのである。
実は、このような防御構造は再設計がなされたセルグート級(=改セルグート級)や、ガイデロール級の後継艦であるハイゼラード級航宙装甲戦艦、デストリア級の後継であるメルトリア級航宙装甲巡洋艦等に続々と採用され、またツインメリット・コーティングなどの一部の技術は、従来艦の
蛇足ながら、「中途半端な性能」という建前の中で、貴族たちに隠匿されていたゲルバデス級がこういう性質の船になった理由は、実は「地球との戦訓」に端を発している。
当時、グラビティブラストなどの地球のロングレンジ砲撃に泣かされたガミラスは、「空母から航空機を飛ばしても」直ぐに砲戦距離に入り、空母を後方に下げる暇がないという事実に直面する。
何しろ、発艦の間合いが近すぎたためナデシコE型のYユニット(多連装高出力グラビティブラスト型)の遠距離砲撃で、飛びだった編隊ごと空母が圧壊させられるという事態が起きたのだ。
これを根本的に解決するには確実にアウトレンジできる”物質転送器”などの開発が必要だが、当時のガミラスではまだ実用化のめどは立っておらず、ならば「いっそ砲戦に参加できる重装空母を作ってしまえ!」という事で生まれたのがゲルバデス級だった。
しかし、歴史とは皮肉なもので、ガトランティスの出現と地球の戦争の小康化がなった地球歴2196年にようやくネームシップとしてゲルバデスが完成したが、開発を後押しした親衛隊(と総統+愉快な仲間たち)は「地球連邦を元貴族のごみ処理業者」に決定したばかり(つまりバーガーが死にかけてた頃)で、せっかくのゲルバデス級を「貴族たちの高価な玩具」にさせる気など毛頭なかった。
そこで一計を案じ、ゲルバデス級に”失敗作”の烙印を押して、建造されたそばから対ガトランティス戦へ投入したという訳だ。
ほぼほぼ地球連邦のせいとはいえ……ガトランティスにとり、さぞ迷惑な話だったろうw
「地球連邦がいたからこそ生まれ、だが一度も地球の船と戦うことなく、技術の入手先の一つガトランティス相手に猛威を振るった」ゲルバデス級は、ある意味において「当時のガミラス帝国を最も象徴する船」なのかもしれない。
そして、特記すべきは……地球との停船、和平締結後の技術交流など様々なイノベーションの結果、2202の時代は近代改修型が生まれ、2205の時代には「脳ミソだけ生身の坊主」を泣かせた「更なる強化発展を遂げた後継艦」を生み出す素体となった事だろう。
作者は、「そりゃガトランティス艦も沈むよ」と思える船を作りたかったと意味不明の供述をしており……