たまには地球がチート臭くても良いのではないかと 作:ヤマトとトマトはなんか似てね?
それは必然で、選ばれるだけの理由があった。
そして、2191~2199までの空白期間、沖田さんに起きた”非日常”をちょっと書いてみたいなーと。
藤堂さんと怒鳴りあったり、美人の若い嫁さんに寝込みを襲われたりと何かとユーモラスなこの世界線の沖田さんですが、まあたまには。
沖田十三という男は、「ヤマトと戦うという運命線につながらなかったために生き残り、そして最終的に本人が絶対望まない地位についてしまった」エルク・ドメルや、後世の歴史家から「あいつはいったいどこを目指したんだ?」と歴史ミステリー扱いされる古代進に匹敵するほど……違うベクトルだが、同じ意味で”数奇な運命”という言葉がよく似合う人物だった。
この男に比べれば、その勇敢な戦いっぷりからやがて”
ついでに言えば、カークは宇宙の英雄らしいプレイボーイっぷりの逸話もあるが、実は「複数の女性とまじめに交際した」結果、中々にハッピーライフを送りそうな予感がするし、ピカードは単純に「いくつかの可能性を天秤にかけて、嫁を取った」という生き方だ。彼らは間違いなく成功者だろう。
では、沖田が”失敗者”かというと、流石に無理がある。
というか地球連邦の常識的に、宇宙軍の大将にまで出世しておいて(しかも40代半ばに最年少の大将就任レコードを樹立できる機会があったのに、本人が辞退している)人生失敗したなんて言ったら、普通にグーで腹パンされる。
腹にレナパンされる悪夢は置いておくとして……実は、沖田の経歴には奇妙な「空白期」が点在してるのだ。
書類上はそんな物はないが、実際には
それは、つい最近もあったのだ。
2191年4月1日のガミラスとの最初の接触から1年後の、一番最初の会敵やドメルが居た艦隊との戦闘を含め、合計3回のテレザート星系近海防衛戦に成功した沖田に、地球連邦から帰還命令が届いた。
彼がテレザート星系方面軍司令官でいたのは2192年3月31日までで、その後は同じく中将だった年上の土方竜に引き継がれた。
ローテーションの時期でもあり、納得の人事だった。
4ヶ月の帰艦行程(当時の標準的な地球・テレザート間の日数)の後、過度の英雄視されるのに癖癖する沖田に命じられたのは、翌年人事発表までの休暇と待機だった。
とはいえそれは過熱し過ぎたマスコミなどのほとぼりを冷ますために設けられた期間で、本当の休暇と言えたのは1ヶ月程度だったと言われている。
先に結論から言うと、ヤマトの艦長に就任するまでの約7年間、沖田は対ガミラスの最前線に戻される事はなかった。
一説によれば沖田十三という男のこれ以上の英雄視を面白く思わなかった芹沢一派が妨害したとか、あるいは大将への昇進を蹴った事で軍や上層部の怒りを買ったせいだとも言われているが……実はこれ、大噓だ。
確かに芹沢虎徹とその一派は当時から存在していたが、まだ人事に介入できるほどの権力はなく(それは2199年でも同じ。沖田のヤマト艦長就任を反対したが、結局阻止はできなかった)、また彼が昇進を辞退したことは、確かに一部の将官の怒りを買ったようだが、上層部は特に問題ないとしていたのだ。
実態は、軍上層部が「一人でも多く実戦経験を積んだ将兵を育てたい」と積極的にローテーションを行った(後に名将と呼ばれる人材が多く生まれ、ガトランティス戦役を乗り切れた根本的な理由)ことと、沖田自身から一度も「実戦部隊への配置嘆願」が出なかったことが大きいのだ。
2192年9月ごろから、待機中であった沖田は、翌年までよく姿を消すことになる。
無論、軍はその動向をつかんでなかったわけでは無く、むしろ事実は逆で沖田は軍の意向もあり、”古巣”あるいは沖田十三という男を形成した”第二の故郷”とも言うべき火星、そこにあるネルガル本社や研究施設に顔を出していたのだ。
そして沖田は、そこで恩師とも呼べる男と再会することになる。
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2192年10月某日、ネルガル・グループ本社直轄”火星極冠研究所”
ネルガル重工どころかネルガル・グループ全体を見回してもほんの一握りの人間しか立ち入りが許されない、ネルガルの……いや、地球連邦の最重要機密研究開発拠点の一つだった。
そこに沖田は招かれていたのだ。
「やあ、沖田君。君がここに招待される日を持っていたよ」
彼を出迎えたのは、この世界線では珍しくなってしまった”老い”をこれ以上ないほど明確に感じさせる男だった。
この世界では、平均寿命こそ西暦2021年の日本より少し長い程度(例えば、作中に登場した「人生100年時代」というのは今でも使われるフレーズだ)だが、2192年と2021年の170年の差は、「健康寿命」の圧倒的な差がある。
要因の一つは、言うまでもなく連邦市民ならまず投与している医療用ナノマシン・インプラントの普及だ。
実際には細かく機能分与されているが、これのおかげで連邦政府は「国庫を極端に圧迫する医療費の呪縛」から逃れられたと言っても過言ではない。その為、未投与者や投与拒否者は国民健康保険には加入できない決まりとなっている。無論、民間の保険も同様だ。
いずれちゃんと書いてみたいものだが、はっきり言えば「隠れた地球の超級チート」ではないだろうか?
免疫抗体系ナノマシン一つとっても、「血流に乗り全身をパトロール。健常体でも一日数千は必ず生まれるがん細胞は必ず駆逐。病原性の細菌やウイルスも同様」「ありとあらゆる免疫細胞に擬態できる」「宿主が持つ人間本来の免疫細胞に情報提供したり指揮したりできる」「未知のウイルスや細菌、悪性新生物を発見した場合はナノマシン同士が”第11使徒イロウル”のように知性回路を形成。対抗手段を模索」「自分達の演算で解析不能だった場合はI-IFSとも連携。演算強化すると同時に外部情報ネットワークと接続し対抗手段を検索する」「同時に必要なら救援要請(増援ナノマシンの追加や特化型医療用ナノマシンの投与要請)も出す」「以上の行動の中で対抗手段を構築する」だ。
イメージ的には「はたらく細胞」に出てくる免疫細胞キャラの中に、「超善性でイロウルの機能まで持ったT-1000型ターミネーター」が紛れ込んで、姿を状況に合わせてスイッチしながら大暴れするようなもんだ。
だが、目の前の老人は、枯れ木を連想するようにやせ細り、電動車椅子に乗っているのだ。
「お久しぶりです”
沖田はその老人に頭を下げながら、
「相変わらず肉体の再生治療はしないんですか? せめて、義体処理くらいは……」
200年前に一度、滅亡の瀬戸際まで行った地球連邦の医療技術は凄まじい。
地球人類のほぼ全員が第三次と第四次世界大戦の残留放射能で放射線障害を持ち、「人生五十年が比喩でない時代が約半世紀」続いた。
その暗黒時代を生き残る術として、人類は人間に対する遺伝子操作を全面解禁し、生存者たちは万感の思いでそれを受け入れた。
はっきり言えば、今の地球原産人類は、全員がスタートレック風に言うなら生存特化の「優生人類」の末裔だ。ガンダムSEED風に言うなら「第一世代コーディネーターの末裔」と言ってもいいかもしれない。
無茶苦茶な話だが、地球人全体が優生人類やコーディネーターになってしまえば、カーン・ノニエン・シンやパトリック・ザラのような事例は難しいだろう。事実、地球連邦はそうなり、現在まで続いている。
加えて、地球人類は「どんな遺伝子操作をしても、地球発祥人類では足元にも及ばない能力を持っている異星起源人類がこの銀河系にはごまんといる」事を知ってしまった。
だからこそ、今は「遺伝子操作を受けた俺は優秀=はぁ? アンタ、バカ?」の図式が成立してしまう。
しいて言うなら、遺伝子操作の技術が飛躍的に発展した。
その余波で伸びたのが、iPS細胞などのクローニング培養を基軸とした再生医療だ。
DNAチューニングとクローニング技術は切っても切り離せない。
実際、この分野は非常に進化していて、欠損部分を部分クローニングで作成するのは当たり前となっている。
言ってしまえば、この地球連邦は必要なら「本人のiPS細胞があれば脳細胞を除く全身の肉体再生が可能」なのだ。
ただし、相応の手間暇、時間と金もかかるが。
厳密に言えば、”脳細胞だけ”なら再生もできるのだが……「壊れたり失われた記憶」はどうにもならない。
「沖田君、無粋な事を言うもんじゃないよ。私は老いというものを全身で楽しんでいるのさ。この衰え自由が利かなってゆく感覚が、何とも愉悦だと思わないかね?」
カカッとその老人は、外観から想像もつかないほど快活に笑う。
そこに一切の感情の曇りはなかった。
「相変わらずですね。”
この老人の名はヤマサキ。
「くくっ。君にもいつかわかるかもしれないな?
「そういうものでしょうか?」
「そういうものさ」
そう答えるヤマサキの車椅子は思いの外軽妙に180度ターンをし、
「ついてきたまえ。君を”深遠”に案内しよう」
沖田十三を地球連邦が持つ”闇”の一端、その場所への案内人だった。
ヤマサキ老人はオリキャラではなく、劇場版ナデシコに登場した”危険人物”の一人ですね。
ぶっちゃけ高純度の”マッド”w
だけど、この世界線では綺麗とは口が裂けても言いませんが、「過去と現在を繋ぐ」キーパーソンの一人でもあります。