たまには地球がチート臭くても良いのではないかと   作:ヤマトとトマトはなんか似てね?

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今回は、いくつかの謎が明かされます。
でも、明かされるのは「全て」ではなかったり。

謎や秘密を楽しんでもらえれば嬉しいっす。






第66話:”オモイカネ、思兼、そして思金”

 

 

 

「せ、師匠(せんせい)、これは……?」

 

 ネルガルの、そして地球連邦の最重要にして最高機密の研究開発施設”火星極冠研究所”……その最深部で、まだ40代だった沖田十三が、恩師のヤマサキ老人に案内され、いくつものセキュリティを潜り抜けて見た物は……

 

「我々は”ザ・キューブ”と呼んでいるよ」

 

 広いドーム状構造物の中心に浮かぶ、一辺30m程の「銀色の立方体」だった。

 表面に細かく幾何学模様(?)が刻まれ、時折発光もしているようだ。。

 それは、地球人類が製造したとするにはあまりに異質だった。

 もし貴方がかつて”機動戦艦ナデシコ”の視聴者ならば、「演算ユニットか……でも、何か変じゃね?」と思うだろう。

 そして、貴方が”トレッキー”なら、「なんでこんな所に”ちっこい()()()()()()()”が?」と思うかもしれない。

 

「沖田君、これが全ての始まりだよ」

 

「は?」

 

「真空相転移機関にディストーション・フィールド、グラビティブラストに量子跳躍とその触媒になるチューリップ・クリスタル、数々のナノマシンテクノロジー……”火星古代遺跡由来”とされる全ての技術は、このたった一つの不可思議なキューブから始まったのさ」

 

「これは、一体……?」

 

()()()()言うなら、人類の技術では最大値計測不能の膨大な演算処理能力と容量をもつコンピューターとも呼べる性質を兼ね備えた”何か”さ。ああ、容量不明の記憶ないし記録デバイスや、人類(われわれ)は使えないが、超光速ネットワーク通信システムも兼ねてるようだがね」

 

 一応、フォローしておくと現在地球連邦での主要超光速通信は、マクロスでお馴染みの”フォールド通信”や、スタトレ方式の光速の約20万倍の速度を出す”亜空間通信”だ。 

 

「”何か”? 量子コンピューターではないんですか?」

 

 するとヤマサキは面白そうな顔で、

 

「量子波の”自然発生的ではない()()()”が計測されているだけで、量子演算が起きているとは誰にも言えない。未処理のインプットされた情報に、演算済みのアウトプットが返ってくる。その途中でどんな処理が行われているのは誰にも分からない。だが、その処理結果は常に正確無比。人間が用意したベンチマーク素材で演算できない物はなかった……我々が知っていることと言えば、そのくらいだよ」

 

「はっ?」

 

「コレの中身は今のところ誰も計測できていない。今の人類の技術じゃ分解して確かめようにも方法がない。現在の地球連邦のもつ技術じゃ傷一つ満足につけられない。これはそういうモノだ」

 

 ぽかんとする沖田にヤマサキ老はクックとしわがれた声で笑い、

 

「その程度で驚いてもらっては困るな。君はナデシコに搭載される”オモイカネ”が、なぜそう呼ばれるようになったか知ってるかね?」

 

「八百万の神々、その一柱である知恵の神”思兼神”にあやかり名付けられたと聞き及んでいますが……?」

 

 ヤマサキは「たいへんよくできました」という表情で、

 

「では質問を変えよう。オモイカネはネルガル……いや人類が作ったはずなのに、なぜ”人類では使()()()()()()()”? 加えて言おう。オモイカネは現存する最も古いモデルでさえ、”使いこなせていない状況であっても”現在の地球連邦の全ての保有艦艇の数倍に達する艦船の管制が可能だ。なぜそんな必要のない物を作った? 明らかにオーバースペックだろ? 技術的に可能だったから? ではなぜ他の”地球連邦の英知()()()製造した量子演算装置”が未だにオモイカネのスペックを超えられない? ナデシコに搭載できる程度の大きさの量子コンピューターに、ナデシコよりも大きな筐体の量子コンピューターが太刀打ちできないのは、明らかに矛盾してないかね?」

 

「そ、それは……」

 

 ふと沖田の脳裏に「ある仮説」が浮かんだ。それを察したようにヤマサキはにんまりと笑い、

 

「君の結論はおそらく正しい。知ってるかね? 思兼神とは”思()神”とも書く。この場合の金は金銭でなく金属その物を表す。古事記では常世思金神とも書かれ、八意思金神と記す書物もあるそうだね?」

 

 ヤマサキが何を言わんとするのか、沖田には分ってしまった。それをヤマサキは察したのだろう。

 

「そうだ。目の前に”ザ・キューブ”こそが、オリジナルの”オモイカネ”だよ。”オモイカネ”とは本来、このザ・キューブを示すコードネームだったのさ」

 

 

 

***

 

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください! 師匠(せんせい)、我々が知るオモイカネは、このキューブの複製品(レプリカ)だと言うんですかっ!?」

 

「まさか」

 

 ヤマサキは涼しい顔で否定し、

 

「言ったろ? 我々にはあれの中身がどうなってるのかも分からないと。構造もわからないのに複製なんてできるわけもない」

 

「なら、一体……」

 

「イメージし辛いだろうが……ザ・キューブを、ご神木かなんかだと思ってほしい」

 

「は、はあ……」

 

「我々は「祈願して」”株分け”してもらってるのさ。いや、種子や苗木を頂戴している言った方がニュアンスは近いのか? 何せ掌に乗るサイズの物だし」

 

「えっ?」

 

「それが沖田君たちが知ってるオモイカネのブラックボックス化されているコアの正体だ。軍に納品される”オモイカネ”の冗談のような高価さは、そのほとんどが”()()()()()()()()()()()()の周辺機器の値段”だよ。100年以上の間、アップデートを続けたのは周辺機器であってコアじゃないのさ。そして、人類は未だにその小さなコアの性能ですら生かしきることはできていない」

 

 ”愉悦”……一言で表すならそのような表情をするヤマサキに、思考が徐々に圧迫されつつある沖田は、何とか疑問を絞り出す。

 

「では……ルリ君やラピス君とは一体……?」

 

「”電子の妖精”、”量子の巫女”ね……随分と詩的な表現だとは思うが、本質は突いてないな」

 

 ヤマサキは表情を消すようにさして面白くもなさそうな顔で、

 

「あれのオリジナルは天河博士……”()()()()”が作った、”ただの翻訳機”さ。”ザ・キューブ”と対話するために必要だったと言ってたかな?」

 

「”翻訳機”?」

 

「だから、人間とも”君たちが言うオモイカネ”とも対話ができるし、仲介もできる。”劣化版の()()()”と言っても、その程度のスペックは持っている」

 

「なぜ、少女の姿を……?」

 

「明人さんが作ったオリジナルを模してるのだろう。言っておくけど、あの複製人形(レプリカ)は我々が作っているわけでは無いよ? いや、機材やら何やらを用意し、製造を依頼して起動させ、製造後のメンテやらなにやらの面倒を見るのは確かに我々だがね。オリジナルを設計したのは明人さんで、現在、製造を監修してるのは”ザ・キューブ”自身だ。我々はそこに関わってない」

 

「なっ!?」

 

「私も不思議なのだよ。ザ・キューブは、なぜあの姿で製造するのか……確かに面影はある。同じアーキテクチャも使っているのだろう。だが、あんなに”肥大化した()()()()()()”なんていてたまるか。”人懐っこい()()()()()()()”など以ての外だ」

 

 少しだけ感情の揺らぎを出すヤマサキ……そこには、どんな思いが去来してるのだろうか?

 

「沖田君、()()()は明人さんが愛した”二人”ではないのは確かだよ。いつか君にも話してあげられると良いな。明人さんのどこまでも純粋で、煌びやかで、鮮やかな”狂気の物語”を。あんな綺麗な狂気を、私は彼以外では見たことがないんだ」

 

 思い出の中に居る件の人物を思い出したのか、老人は少しだけ恍惚とした顔をした。

 

「今の私はね、語り部に過ぎないのさ。老人ができることは、古い話を伝える事くらいしかない」

 

 そして再び愉悦を混ぜた表情で告げる。

 

「沖田君、自分が老いたと、軍に執着する気が無くなったと思ったら、またここに来るといい。そのくらいまでは、おそらく私も生きているだろう。その時は、」

 

 ヤマサキは喉の奥で乾いた笑いを作り、

 

「”同好の士”として歓迎しようじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ヤマサキ老が喋ったのは、彼が「知る物」のほんの一部、触りに過ぎません。

全体から言えば、「沖田の興味を引き、好奇心を煽るための導入部」くらいです。

”ザ・キューブ”の「表層的な側面」しか語ってません。
ルリやラピスが本当は何なのか、オリジナルとはなんなのか?
彼と”初代”とされる天河明人との関係は?
年代を変えて現れる天河明人とは何なのか?
そもそも、天川明人とは何者だったのか?

ネルガル、または地球連邦の抱える闇は、まだまだ深そうです。


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