たまには地球がチート臭くても良いのではないかと   作:ヤマトとトマトはなんか似てね?

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第69話:”大和とヤマト とある歴史の邂逅点。そして……”

 

 

 

 西暦2199年8月15日、午前8時5分前……

 

 実はこの日を、この時間のこの街を特別なものと考える人間は、この世界線においてはほとんどいないだろう。

 250年以上前の、太平洋領域で起きた今から考えるならほんの”小さな戦争”……この時代、それを歴史の1コマ以上に意味を持たせる人間は、残念なことにほとんどいない。

 

 既に記憶の彼方にあるかもしれないが、この世界の大日本帝国の敗戦は1年早く、また条件付降伏だった。

 大和が坊ノ岬沖で沈むどころか、姉妹艦である武蔵すらも沈まずに終戦を迎えた。

 当然、広島や長崎の上空で人類最初の核兵器が炸裂することもなかった。

 

 人類が核兵器を本格的に使用したのは、1962年のキューバ危機から端を発した”第三次世界大戦”からだ。

 今となっては、どのタイミングかは諸説あるが、キューバに向けてカリブ海を航行していたソ連の核弾頭付ミサイル輸送艦隊に、米国のパーミット級原子力潜水艦”ガトー”が核魚雷を放ち壊滅させたところから始まったとされる説が有力だ。

 

 「世界最初の被爆国」というスケープゴートがいなかった為、残留放射能の恐怖も放射線障害の怖さも軽視され、その威力に魅了された人類は無邪気に核兵器を使った。

 米ソの二大軍事超大国の使用可能核兵器配備数が、「地球を死の星に変えるほどではなかった」ために”限定核戦争になった”……ただそれだけの戦争だった。

 

 『地球人類が滅亡の瀬戸際までいった直接的な原因は第四次世界大戦と”鳥の人”だが、滅亡へのカウントダウンはこの時すでに始まっていた』

 

 と主張する学者も多い。

 なので、日本が条件付降伏で南アタリア島を含む南洋の島々を手放し、アメリカの前線基地と位置づけられたあの戦争、パットン将軍が”エルベの誓い”を無視し、米軍単独でベルリンを制圧下に置いた事から始まる東西冷戦の始まりを告げたあの戦争は、今の人類史的には「まだ核兵器が使われなかっただけ平和な戦争」と認識されていた。

 

 その時代の”キャンペーン戦”扱いされてしまう(事実上、サイパンの陥落で決着がついた)「欧州に比べれば犠牲の少ない」極東の弓状列島が敵役を演じた”太平洋戦争”を語る者は、日本人の名を引き継ぐ者でも随分と少なくなってしまっていた。

 

 

 

 オリジナルの”大和”の話を少しだけしよう。

 戦後、日本の戦艦は老朽化と維持費の問題から、大和と武蔵を除いて全て廃艦となってしまった。

 それもおそらく時代というものだろう。

 条件付降伏した日本は、米国の下部組織として東西冷戦構造の片棒を担ぐしか選択肢はなく、結局戦犯を裁く裁判も開く間もなく翌年1945年8月15日には、”日米同盟”が締結された。

 日本の戦争責任など、南アタリア島で手に入る「大気圏外からの恩寵(アメージンググレイス)」に比べれば、ただ「時間が惜しい」だけで考慮する価値すらないのが米国の本音だった。

 

 その後の大和と武蔵の運命は、米国のモンタナ級やアイオワ級とよく似ていた。

 近代化改修とモスボールを繰り返し、第三次世界大戦にも「陸上砲撃用の機動洋上砲台」として参戦。

 そして、第四次世界大戦では姉妹艦で明暗を分けた。

 母港の呉に停泊していた大和は、軍国を狙った核先制攻撃の余波、水中衝撃波で経年劣化を起こしていた鋼材にひびが入り浸水、着底した。

 だが、健在だった武蔵は戦力とみなされたのか”鳥の人”の攻撃を受け、海の藻屑と消えた。

 

 戦争が終わり半世紀以上過ぎた頃、「人類の歴史復元イベント」の一環として再浮上計画が立案され……こうして今でも浮かぶ博物館(いや、博物艦か?)として、あるいは歴史的モニュメントとして、当時の面影を残した姿が見られる。

 ただ、綺麗に復元され良好な状態に保たれてはいるが、それは決して荒々しさや猛々しさを感じさせるものではない。

 むしろ。「生き抜いた果ての余生を穏やかに過ごす老人」にも似た、古木を連想させる風格があった。

 

 つまりは、この世界線では最初から”この船”が新造宇宙戦艦のカモフラージュにされる運命などなかったのだ。

 では、なぜ地球連邦は”ヤマト”という名を付けたのだろうか?

 

 まず、”大和”という漢名は決してつけられない。

 軍艦から除籍され、あるいは戦闘力を消失して200年の時が過ぎたが、それでも戦艦大和は”生きている”のだ。港に着底しても、再び浮かび上がり、生きている……まだ()()()()()()のだ。

 だから、まだ「二代目に襲名させられない」のだ。

 いささか感傷的すぎる解釈だが、究極的にはそういう事になる。

 

 だが、同時に「大和は未だ沈まず」……これもまた事実なのだ。

 200年以上前、第四次世界大戦前の軍艦で「原形をとどめている」のは、もう大和1隻しかいない。

 

 「二つの世紀を跨ぎ、幾多の戦禍を超え、今尚朽ちず、また不沈也」

 

 ならばそれにあやかってみたくなるのも、また人の心や情というものだろう。

 

 

 

 ”SSX-Y001 ヤマト”は、決して「戦果を求めて」建造された船ではない。

 だが、ガミラスとの和平につながる道を期待され、この時間に存在する他のいかなる連邦艦船よりも「沈まずに無事に帰ってくる」事を望まれている船でもある。

 

 だからこそ、そうであるが故に”ヤマト”なのだ。

 

 

 

***

 

 

 

 連邦軍が誇る純白の制服に身を包んだ軍楽隊が、瀬戸内の美しい海を一望できる埠頭で厳かにマーチを演奏し始める。

 

「ドック注水、完了しましたっ!」

 

 それは、別の世界では”宇宙戦艦ヤマト”というアニメ主題歌として知られるその曲は、この世界では”その船”の為だけに作曲された、ただのマーチではなく全体として勇ましくも美しいシンフォニーとして編曲されている。

 

「抜錨開始っ!」

 

 そして、その演奏がクライマックスに差し掛かった時……

 

「”ヤマト”、発進せよっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

************************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは勇壮で幻想的で、どこか現実感を喪失しそうな光景だったと後世には伝わっている。

 夏真っ盛りらしく燦燦と照らす陽光を浴び、まるで祝福されるように”その船”は海上に飛び出した。

 

 空にはガミラスが放った巨大ミサイルなぞあるわけもなく、ただ太陽の光の中でモコモコの羊を思わせる白い雲が吞気に浮かび、空はどこまでも蒼く、海もどこまでも碧い。

 

 大地は放射能で焼け爛れた赤茶けた焦土などではなく、緑深く豊かで、軍楽隊の調べに合わせるように小鳥も歌っている……

 

 この美しすぎる風景でこの瞬間最も輝いているのは、この世界の主役として陽射しのスポットライトを浴びているのは、紛れもなく、

 

 ”SSX-Y001 ヤマト”

 

 だろう。 

 後年、”白鳥”にたとえられるような優雅な曲線でデザインされたその船は、確かになるほど軍艦と呼ぶには優美すぎるだろう。

 

 その船体はどこまでも白く白く白く……そして、”()()()()”。

 

 

 

***

 

 

 

 呉で交差する歴史の邂逅……古き”大和”と新しき”ヤマト”の軌跡と呼べる一瞬の協調と共演(コラボレーション)……

 希望をその船に託す、身分や生まれた星に関係なく笑顔で見送る”連邦市民(ひとびと)”達……

 

 それは、間違いなく地球連邦史に残る「一枚の名画のように完成されたシーン」だろう。

 当然だ。

 そうでないと困る。

 かけた時間も金も無駄になる。

 そうするために軍も政府も全力を駆けて、”演出”したのだから。

 

 

 

 歴史の語り部を気取るなら、むしろ多くを語るべきではないのかもしれない。

 だから、こうしめよう。

 これが、”この世界線”なのだと。

 

 平和過ぎる風景の中、戦船ではない平和の先駆けとなるべく特務艦として”ヤマト”は旅立つ……

 良くも悪くも、これが”この()()()()世界”なのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




こうして、ついにヤマトは旅立ちました。

69話でw

69……心が洗われるような素晴らしい数字です。
その話数でヤマトが出航できるとは、偶然とはいえまさに「望外の喜び」。

だけど、内容が(69と合致して)ないです。
(エロも)ないです。
6/9が記念日となったつボ〇ノリオ師匠に申し訳が立たないっす。

むしろ前話を69話にすべきだった?

とりあえず、どんな「愉快な旅路になるか?」を楽しみにしてもらえればと。

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