たまには地球がチート臭くても良いのではないかと   作:ヤマトとトマトはなんか似てね?

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週末恒例の深夜アップとなったので夜咄ということでw

原作では「最初のワープ」でも相応のドラマがありましたが、この”世界線”では……という感じです。






第71話:”Fall D 超光速航行夜咄”

 

 

 

 当然だが、この世界線の冥王星や太陽系の惑星にガミラスの基地は存在しない。

 というか、現時点で地球連邦領域にガミラスの基地は存在していない。

 その代わり、”ヤマト”を太陽系外縁部で待っていたのは、”土方竜”大将が提督を務める”地球連邦軍第1艦隊(太陽系防衛艦隊)”の中で、冥王星の衛星”カロン”に基地を置く太陽系外縁守備隊だった。

 その都合1000隻より盛大な”無事なる帰還を願う願掛けの祝砲”の歓迎を受けたのだ。

 

 寂しいと評される風景のはずの冥王星周辺を彩る極彩色の光の中で、軍楽隊に奏でられるのは驚くべきことに”この世界線”ではこの時代でも軍艦の出航にはド定番となっている”軍艦”。

 一般には”軍艦マーチ”として知られるその曲は、日本という国が他の国同様に第四次世界大戦で消滅(公式的には全ての旧国家は発展的解消したという扱い)した為、本来の歌詞やその意味も失われて久しいが、その旋律だけは200年の時間の果てでも残ってることは、なんだか感慨深い。

 

 だが、これには沖田十三は苦笑いし、

 

「仇なす敵を討ちに征く訳じゃないのだがな」

 

 むしろ、”ヤマト”に期待される任務は真逆だ。沖田としても、最終的には、停戦のその先にある和睦を目指したい。

 

(せめて、”錨を上げて(米海軍のマーチ)”にならなかったもんかな?)

 

 どっちも本来の歌詞を知る沖田的に言わせれば、まだ後者の方がシチュエーションにあってるだろう。とはいえ、ここで文句をつけるのも無粋すぎるというものということも理解していたので特にチョイスに口を出す気はなかったが。

 

 

 

  彼らが太陽系最後の見送り手となり、”ヤマト”はついに最初のイスカンダル式トランス・ワープを敢行する。

 

 

 

 

***

 

 

 

 とはいえ、原作のようなドラマティックな展開はない。

 というのも、前話で話した通り、地球連邦は「イスカンダル製のコアを用いた地球連邦製の次元波動機関を搭載し、イスカンダル式トランス・ワープを行う船」は”ヤマト”が初めてだが、戦争の割と初期段階から「ゲシュタム機関を搭載したゲシュタム・ジャンプを行う船」ならレストア品でそれなりの数を保有しており、また船体は修復不能だったが機関部分だけ取り出し、地球の実験艦に移植したハイブリッド艦も実は、少数だが存在している。

 

 その代表的な船であるのが、ブロック構造を大胆に採用し、量産性/整備性/拡張性/発展性が特に花丸評価の「ガミラスキラー三姉妹」、特に長女のコンゴウ型の1隻を改装した異星技術実証/実験艦”アスカ”であろう。

 

 実は、”アスカ”はヤマトの主要キャラtp割と馴染みが深い。

 船の性格的に真田志郎が企画立案/設計段階から関わっていたのは誰も不思議に思わないだろうが、新見姓時代の薫もアスカで多くの実験を行っており、竣工から短期間、沖田が艦長兼実験統括責任者を務めた時代もあった。

 

 加えて原作2205との艦名つながり(ドレッドノート改級補給母艦アスカ)ではないが、森雪が教練の一環としてだが「軍人として初めて着任した船」もアスカである。

 

 このように広義な意味でイスカンダル式トランス・ワープを行える船は、相応にあるのでヤマトの全乗員は非戦闘員も含め、全員がそれを一度以上は訓練として経験している。

 

 というのも、実はイスカンダル式に限った話ではないが、フォールド空間歪曲超光速航法でも、あるいはスタトレ式通常空間ワープでも、意外とネックになるが「ワープ酔い」だ。

 

 回を重ねれば慣れる人間もいるが、同時に何度乗っても体質的に必ず酔う人間もいる。

 こればかりは、地球自慢の医療用ナノマシン・インプラント技術も「病気とかではなく体質の問題」なので、お手上げらしい。

 ”脳細胞自体は復元できても中身の記憶はどうにもならない”、”メンタルヘルスは苦手で、PTSDとかには無意味”に続く医療用ナノマシンの久しぶりに見つかった弱点らしい弱点だ。

 体質というのは人により千差万別で、「良い悪い」をはじめ22世紀になってもかなり判別やらカテゴライズしにくい。

 明確な悪性新生物や病原性細菌やウイルス、あるいは生体異常である血圧や血糖値の異常上昇/下降、コレステロールの固着による血管閉塞や、危険な体内腫瘍の初期段階での治療などは大得意だが、こういうファジーな物はどうやら苦手分野らしい。

 例えば、「アルコールに弱い体質」や「乗り物酔いしやすい体質」は、そもそも治療するものなのかというものもある。

 

 原作では、加藤三郎とその他がワープ酔いする描写があるが、”この世界線”においてはヤマトのクルーにそれはあり得ない。

 なぜなら、ヤマトは下記の通りの特殊航法システムを搭載している。

 

・イスカンダル式トランス・ワープ

・フォールド航法(マクロス式トランス・ワープ)

・通常空間加速式ワープ(スタトレ式。ワープ係数”9.99”=約光速8000倍の速度を出せる最新試作型ワープ機関)

・量子跳躍(疑似ナデシコ式。緊急回避などの非常用)

 

 少なくとも上位三つは、16万8千光年の航路を1年(できれば1年以内)でクリアするため毎日使うことが確定してる為、これに毎度酔ってるようではクルーとしては話にならない。

 なのでヤマトの乗員は、民間人を除く全員が上記の特殊航法に元々耐性が強く酔わない(異常をきたさない)か、あるいは「克服」済みだ。

 そうなれなかった人材は、選考初期段階で落選してしまっている。

 

 ちなみに加藤は後者の克服組である。

 訓練母艦がフォールド航法を重ねるうちに慣れ、似たような事象のイスカンダル式にも耐性がついていたようだ。

 弱った(げっそりした)加藤が見れず、メディックの原田真琴としてはちょっとだけ残念かもしれない。

 

 

 

***

 

 

 

 ちなみにこの時、古代進たちVF-19運用実験チームも、斎藤始たち空間騎兵隊装備実験中隊も合同スペース(両部隊の希望で割り当てられた大規模汎用整備区画)において、パイロットスーツやバトルスーツを身に着け、不測の事態が起きた場合に対応するため待機していた。

 

「大尉殿、この”イスカンダル式ワープ”ってフォールド航法とどう違うんだ? 同じく空間歪曲(トランス)ワープなんだろ?」

 

 空間騎兵隊を含む地球連邦軍宇宙海兵隊は基本的に「敵地にたどり着いてから」が仕事の開始だ。

 なので超光速航法をはじめ、超光速航法による長距離移動は(原作と異なり)慣れっこだ。

 

 例えば、斎藤始や永倉志織に至っては、ガミラス相手ではないが非合法武装組織の殲滅作戦で、エステバリスや空間機動甲冑ごとボソンジャンプし、敵地中枢に強襲をかけた経験すらある。

 

「俺もそこまで詳しくは知らないけど……上手く説明できるかな?」

 

 古代進は、ちょっと考えながら、

 

「そういえば、フォールド航法の正式な名称って知ってるかい?」

 

 周囲の反応を見る限り、あまり知られて無いようだ。

 

「フォールドはローマ字で書くと、”Fall D(フォールド)”、”Fall Dimension”の略語で、”次元落下”って意味になる」

 

 そして一旦言葉を切り、

 

「名前の通り、居所重力歪曲場で三次元空間に穴をあけ、”次元を落ちる(フォール)”ことで移動するのが基礎理論だったかな? で、その場合は重力井戸を掘って繋げた出現先の空間と『連結した空間の整合性を取るため』”空間の入れ替え”が発生する。だから周辺の状況確認には注意が必要っと」

 

 よくマクロス・シリーズで描写される”周囲の品々を巻き込んだフォールド”だ。

 ただ、最近の軍艦のフォールド航法システムはかなり高精度で、「ディストーション・フィールドの外側をギリギリ覆うフォールド空間の精密発生」が可能になっているので、昔のように周囲を大きく巻き込む危険性が激減しており、また飛ぶ距離は同じでも消費エネルギーは小さく、時空振動の発生や機関への負荷もそれに準じて小さくなっている。まあ、それでも危険性は0にはならないので、緊急時を除き地表や大気圏内でのフォールドは非推奨となっている。

 また、重力の影響を受けやすいので、惑星のような大質量な重力源のそばでフォールドすると、フォールド自体は可能でも「転移先の大きな座標ずれ」が生じるリスクが大きく高まる。過去には、これが原因で痛ましい事故がいくつもあったそうだ。

 ここしばらく性能向上は頭打ちになっていたが、イスカンダルからの技術供与の余波で、更なる性能飛躍の目途が立ってきたらしい。

 

「原理とか理論は違うけど、現象的には実はワープ機関非搭載船舶用の星系内移動装置”次元跳躍門”のそれに近いんだ」

 

「えっ? ”次元跳躍門”ってヒサゴプランの? あれって船舶も通れる”でっかい量子跳躍のゲート”じゃないの?」

 

「永倉、正解。原理的にはそうなんだけど、ボソンジャンプっていうのは、そもそも”量子のもつれ”って性質を利用した量子テレポーテーション……量子通信の応用技術で、数学的な解釈をするなら”二つの異なる地点のある情報を等価とする”、全く異なる場所を情報的にA=Bとすることなんだ」

 

「なんだそりゃ? 全然、意味がわからねぇんだが……」

 

 空間騎兵隊の面々は、大体似たような反応だ。

 というかこれは本来、宇宙物理学の工科大生とかが学ぶ分野のそれである。多分、彼らも座学で基礎理論くらいは聞いたことがあるだろうが、それで理解できるようなら誰もテストで苦労などしない。

 全て解ったような顔をしてる山本玲も、実は「私がわからなくても進さんがわかっていれば問題ない」と思考を放棄してるし、実はちゃんとわかってるのは……

 

「うんうん♪ それで?」

 

 続きを促すユリーシャくらいだろうか? ニコニコした表情からそうは見えないだろうが、イスカンダルの科学力やそれを操るイスカンダル人をなめてはいけない。

 

「つまりこれは、物理事象的には”AとBという空間が、=で結ばれる連続情報体である”ということなのさ。ほら、”地球の静止衛星軌道上のターミナル・ステーションにある木星行の次元跳躍門を、起動時に覗くと木星が見える”ってあるだろ? あれは木星の門の向こう側の空間と地球側ゲートの空間が”()()()()()()()”って状態なんだ」

 

「ああ、何となく解った。フォールドは空間に重力ドリルで穴掘って空間をこじ開けて繋いで、ボソンジャンプは情報的に”ズルして”違う場所を繋げているのかぁ」

 

 どうやら永倉の地頭はかなり良いらしい。

 

「あん? ってことは何か? ボソンジャンプっていうのは、実は光速を超えてるワープの一瞬ってことか?」

 

 だが、古代進は少しだけ考えるそぶりを見せ、

 

「”繋げる空間同士によっては、()()()()()()()()()()()()()()()”っていうのが正解かな? 例えば、AとBの距離が近ければ、光速を超えてないケースも多々あるし。それに”量子跳躍限界”っていうのがあるから、厳密にはワープとは呼べない。ヒサゴプランが星系間移動なんかの外宇宙には使われない理由もそれだよ」

 

「そういえば、そんな言葉聞いたことあるウサ」

 

 と妙なところから声が上がる。見れば、古代の膝の上にはいつまにか幼女と呼んで差支えないサイズのアルミラージ人(ラビティアン)が陣取っていたのだ。

 そう、第37話の居酒屋で、進にふにゃふにゃにされてた部隊斥候役の(見た目は)仔ウサギだ。実は進より年上である。

 

「細かい理屈を言うと長くなるから割愛するけど、三次元空間に”自然的に存在する物質”、僕たち人間みたいな有機物や、宇宙船みたいな無機物もまとめて、便宜上”フェルミオン状態”にあるという事にしておくよ? そのフェルミオン状態にある存在が量子跳躍を行おうとすると、量子跳躍に適した状態、”ボース粒子(ボソン)状態”に置換しなければならない」

 

「ちょっとまつウサ! それって、ウサ達がボース粒子ってのに量子分解されて転送されてるって意味ウサか?」

 

 と怯える仕草のウサ娘。なんかあざとい。

 

「それに関しては心配はいらないよ」

 

 そう優しく撫でる進に、再びフニャっとなる仔ウサギ。「あ~、これはクセになるし、ダメになるうさぁ~」と小声で言っていたが、誰も気にしてはいない。

 

「これは火星や木星の衛星特産品であるチューリップ・クリスタルっていう触媒を用いた()()()()()()()()()()を利用してるだけだからね。実は次元跳躍門にも大量に使われていて、動かすたびに少しづつ消費されているんだ。ただ、この疑似ボース粒子でいられる時間はとても短くて、しかもそれに必要なクリスタルは質量と容積に比例する。そして、ボソンジャンプは本当の意味ですべての距離を一瞬で移動できるわけじゃなくて、距離に応じて必要時間が長くなることが解明されているのさ。結局、一番効率が良いのが、今の使い方なんだろうね」

 

 実はチューリップ・クリスタルを生成できるのは未だに古代火星遺跡系のプラントだけで、こうしてる今でも製造は続き、現状の連邦の保有量も火星の地質に内包された埋蔵量も膨大なのだが、「それが永遠に続く」とは地球連邦の誰も考えてない。

 チューリップ・クリスタルを限りある資源と考えれば、今のような使い方が適切なのだろう。

 

「えーと、対してイスカンダル式のトランス・ワープは、次元歪曲型と言っても”人工的にワームホールを生成する”方式だから、フォールドとは基礎となる理論から違っていて、厳密に言えば空間歪曲型というよりむしろワームホール型と言うべき……」

 

 

 

 こうして古代進の「ワンポイント超光速航法講座」は続いてゆく。

 実は、進が若くして大尉の地位にあるのは、パイロットとしての腕前や異星人に対する特異なメンタリティ、あるいは地球系にしては驚異的な身体能力や”()()()”が理由ではない。

 いや、その手の評価が全くないという訳ではないが、実はその頭脳が高く評価されているのだ。

 

 彼の専攻は別に宇宙物理学ではない。いや、進にしてみれば各種の超光速航法を説明できる特殊理論の理解や、軍への入隊には必須の連邦標準語だけでなく現在地球連邦に存在する、ほぼ全ての種族の”ローカル言語”を理解し、そこにガミラス語が加わり、イスカンダル語も遠からず加わるだろうが……それらは全て”教養”に過ぎない。

 

 言い方を変えれば古代進という男は、天才というよりはどちらかと言えば、また”異能”に属する類のスペックの持ち主だった。

 

 彼はこの先、半ば自業自得とはいえ数奇な、あるいは奇妙な、はたまた奇天烈な運命を歩むことになるのだが……

 逆に言えば、そうなるだけの資質を既に持っているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




実は、文字数がこのシリーズ最大にw

いやあ、なんか最近、(主にシモ事情で)古代進がおバカキャラ枠になってしまったらどうしようと危惧がありまして……
ちょっと宇宙艦隊士官っぽい話でもさせようとしたら、このZAMAっすw

とはいえ、戦闘力は未知数ですが「スペックがバグってる」なのは割と初期からの設定なんですよねー。
いわゆる「天才より異能」って感じで。

しかも色んな言語覚えた理由が、「他の星の人たちと仲良くなりたいから」ですから。
まあ、その願いは叶ってはいるのですが……叶いすぎた結果、代わりに周囲への被害が(胃腸的な意味で)甚大になってしまったというw

追記
指摘頂いたのでいたので、ちょっと補足。
この世界線のフォールド航法は、「繋いだ先の空間と今いる空間を入れ替える」という事象は同じですが、厳密にはマクロスのFold(フォールド)と同じ物ではないです。
”技術的整合性”を取るためのナデシコと全て同じではない「時間移動しない、純粋な量子跳躍なボソンジャンプ」とか「光磁気式のディフレクター・シールド」とかと同じカテゴライスだと思っていただければなーと。




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