たまには地球がチート臭くても良いのではないかと   作:ヤマトとトマトはなんか似てね?

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今回は、原作と比べ「とても平和な航海」を、日常の1コマ風に書いてみたいと思いましてw

まあ、ヤマトの福利厚生設備(?)の紹介を兼ねた幕間パートとでも思っていただけると。






第72話:”素晴らしき日々”

 

 

 

 ヴァルケ・シュルツらのザルツ人の活躍や華々しい散りっぷりを期待していた皆さんには申し訳ないが、”ヤマト”の旅路は少なくともガミラスのエスコート艦隊と合流するまではこれといった波乱もなく平穏そのものだ。

 

 最初のイスカンダル式ワープも何事もなく終了し、続いてフォールド航法、機関を冷却し休ませている間に通常空間ワープを12時間ほど行い更に10光年ほど距離を稼ぎ、続いて本日二度目のイスカンダル式ワープ。

 

 フォールド航法は機関負荷の大きさゆえに相変わらず1日1回が限度だが、方式や原理の違う次元波動機関は、ちゃんとインターバルを取れば1日2度のトランス・ワープを行える強みがある。

 機関冷却の間を用いて行われる無理のない12時間のスタトレ式ワープ(因みに通常空間ワープの連続航行時間は、1回あたり16時間以内が連邦軍推奨)を含めれば、驚くべきことに”ヤマト”は1日で610光年も航行できるのだった。

 

 しかも、これは過剰なまでの安全マージンを取った末の結果だというのが末恐ろしい。

 例えば、原作でのヤマトは最繁期には「1日に2度しかできないワープを5度もやって」距離を稼いだ。

 そりゃあ航海中、随所で機関不調も起こす訳である。

 

 だが、少なくともこの世界線における地球連邦は、そんな無茶が必要となるような投機的な作戦は立てないし、そもそも好まない。

 「余裕を持って2年間で16万8千光年先の星を往復できる船を建造し、その船には余剰人員を満載しても3年間無補給/無寄港で航行できるスペックが持たされていた」というだけでも、今の地球連邦の「石橋を叩いて渡る」姿勢が見て取れる。

 

 また、”余裕を持って”のくだりだが、16万8千光年という距離を1年で航行するとなると、単純計算で1日の必要航行距離は460光年ほどだ。

 だが、”ヤマト”は「安全に」1日600光年以上の航行が可能……この意味は大きい。

  無論、建造当時では「敵国であるガミラスの施設を使う」ことなど一切考慮されてない。

 ある地球連邦の幹部によれば、

 

 『ヤマト計画は、冒険行であってはならない。地球の命運を、そんな不確実なものに託すわけにはいかない』

 

 『余裕がなければ人は焦る。焦りは辻褄合わせの無理を呼び、無理は容易に失敗の触媒となる。当然だ。この世は道理で動いている。無理を通せば道理が引っ込むなど世迷い言だ。通した無理は歪みを招き、いつかそれは是正ならねばならない。それを含めて道理だ』

 

 のだそうだ。

 という訳で、クルー全員にはこなすべき任務があるが、それと同時に(戦闘配置時を除けば)休憩時間もあれば仕事終わりのプライベートタイムだってある。

 確かに船、特に軍艦は「24時間体制の小さな眠らない街」ではある。だが、ヤマトは十分な交代要員を確保している。

 正規搭乗員は3000名以上推奨だが、この自動化が進んだ時代で1隻の船にこれだけの人員が配備されるのは稀で、超長期航海を踏まえた、念入りな「交代要員の確保と万全のローテーション」を目指した結果だろう。

 なので勤務は基本、一日勤務時間は原則8時間の完全週休二日制。まあ、24時間3交代のシフト制ではあるが典型的な公務員の勤務体系だ。

 

 だから、当然のように休日だってある。

 では、本日はそんな私的な時間を過ごす二人の青年をクローズアップしてみよう。

 

 

 

***

 

 

 

 さて、”ヤマト”には、原作にあったような大規模な食堂や普通の意味での酒保(PX)は、他の長距離パトロールなどの長期航海前提の大型艦のように当然備わっている。

 

 だが、それとは別に実はこじんまりとした”飲み屋街”が艦内にはあるのだ。

 先に言っておくが、初代マクロスのように避難民(民間人)が努力して作った街ではない。

 あくまで乗組員の福利厚生の一環で、リフレッシュできる街並みを再現してるだけだ。なのでここでの働き手は軍人ではないが、軍属ではある。

 このような飲み屋街や商店街を含む繁華街再現型テーマパーク区画を作った理由は、言うまでもなくストレスケアだ。

 食堂、酒保、他にもフィットネスジムなどなど地球連邦の福利厚生に対する情熱と充実は中々のものだが、所詮それは”仕事場にある設備”という感じになる。

 これが数ヶ月の航海ならまだしも、足掛け2年(アクシデントが起こればそれ以上)にも及ぶ超長期航海、しかも航路のかなりの部分を締めているのが未だ敵地(停戦条約の締結がない以上、少なくとも書面上は)のガミラスの支配地域や領域を通るのだ。

 

 ストレスケアは、非常に重要視されたのだ。

 だからこそ、「休日には任務から心身ともに開放される空間」が必要とされ、提案されたのが安直ではあるが「惑星上、都市部での日常」を再現したこの場所だった。

 

 ついでに言うと、当然乗組員全員には給料は出てるのだが、船の中にいる限りは食堂や酒保だけでは大した使い道がないのだ。

 この時代でも一大商業勢力のネット通販だが、地球連邦の超光速通信領域内であっても軍艦という性質上、自由に使えるネット環境は非常に限られたものだし、そもそも一定の距離以上の連邦領内から離れたら通信範囲外になることは確定している。

 仮に注文できたとしても、決して航行中のヤマトに商品が届くこともない。

 

 だが、実は散財、「買い物などで自分で稼いだ金を使う」というのは、ストレスケアとしても大きな意味を持つのだ。

 皆さんも経験ないだろうか? 商品を選ぶときの楽しさや、何かを買うときの高揚感を。

 何なら、行きつけの店の新メニューや、旬の食材を使った期間限定メニューの食べ比べの楽しさでも構わない。

 

 要するにヤマトの設計者たちは、「”自由な金の使い道”を与えることでメンタルヘルスの一助とすることを企図し、また小規模ながら経済循環を生み出すことで、生活感を維持する」という考えを持っていたのだ。

 

 

 

 さて、そんな擬似的な街並みの一角に、その店はあった。

 パブ素晴らしき日々(NICE DAYS)

 

 壁には幸運のお守りとしてもメジャーな蹄鉄が壁にさり気なく飾られた、正統派英国式パブに近い作りの中々雰囲気のある店だった。

 

 

 

***

 

 

 

「いらっしゃいませ~」

 

 そう出迎えたのは、店主を任されているらしい、まだ若く見えるエクリプス人(ホーシアン)の女性だった。

 なんとなくだが、つい「ナイスなねーちゃん」という言葉が浮かんでしまうような……そんな下町のような気さくな感じがする、親しみやすい雰囲気の美人だ。

 

「お二人様かな?」 

 

「ええ」

 

 代表して古代進が答え、

 

「カウンター? テーブル? どっちがいい?」

 

「島、カウンターで良いか?」

 

「ああ」

 

 その日、パブを訪れたのは進と島大介の士官学校同期二人だった。

 そしてすんなりスツールに着席し、

 

「俺は”スピットファイア”をパイントジョッキで」

 

「俺は……エールよりドラフトが好きだから、ドラフトのおまかせを同じくジョッキで」

 

「はいはいっと♪」

 

 いかにも戦闘機乗りらしい注文する進と、棚に並んでるのは試したことのない銘柄が多いためにお任せにした島。

 なかなか良い手付きでビールを注ぐ店主から渡されたジョッキを軽く掲げ、

 

「とりあえず、乾杯」

 

「ああ、乾杯」

 

 注がれたビールが、わずかに揺れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




久しぶりに原作名コンビの古代と島を書いてみたくなりましてw

あと、原作より余力のある地球が作った船なら、こんな贅沢な設備もメンタルケアの一環としてはありかなーと。

因みに出てきた女ホーシアンの店主さんのモデルは、言うまでもなく店名からも分かる通り某ネイチャさんですw

大体、ゲーム初登場から10年後くらいの女盛りのイメージかな?
一応ネタ的には、

・ゲーム中、実家が下町の商店街にある飲み屋(BAR? スナック?)のような言い回しがある。

・元ネタ競走馬のナイスネイチャの父方の祖父”ノーザンダンサー”は、カナダ産馬。カナダは昔、一部がブリティッシュ・ノース・アメリカという英国領だったので、今でも地域によっては英国式パブが多くある。

とまあ、こんな感じで。
作中に出てきた”スピットファイア”は実在するビールで、本当に名戦闘機のスピットファイアから名付けられたんですよー。


そして、彼女にもそれなりのドラマがあったり……

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