たまには地球がチート臭くても良いのではないかと 作:ヤマトとトマトはなんか似てね?
シリアスではないんですが、ギャグでもない、そんな「雰囲気」の話になれば良いなーと。
「生憎と君が好みのメラン産の茶葉は用意してなくてな。代わりと言っては何だが、一杯、どうかね?」
「ええ。確かに喉を潤す頃合いですな。では、軽めの物を」
茶ではなくアルコールの類を薦めるエルク・ドメル。
悪意がないのなら、その意味を理解できぬほどハイドム・ギムレーは愚かではなかった。
ドメルが出したのは、
「銘柄はこれで良いか?」
「特にビールにこだわりはありませんよ。あるのは紅茶ぐらいです」
乾杯をする間柄でもない。二人共そう思っている。
特につまみも用意しない。礼節を欠いてるのではなく、ガミラス人にとってビールは清涼飲料水のようなものだ。飲み方もそれに準じる。
つまみやらアテやらが必要になってくるのは、もう少しアルコール度数が高い飲み物になってからだろう。
「それにしても、親衛隊が
「表向きの話をするならば、もうすぐノルド大管区の”とある植民惑星”で叛乱が起きます」
しれっとそう言うギムレー。
おそらく原作に照らし合わせると、おそらくその惑星とは原作で殲滅のメロディーが奏でられた”オルタリア”ではないだろうか?
原作では明確な位置は語られなかった”オルタリア”だが、この世界線ではノルド大管区とは天の川銀河への進撃路にある平定された地区で、ガミラス本国とバラン星を結ぶいわゆる回廊を形成してる広大な新領土だ。
「まさか自前であれだけの有力な艦隊を持っておいて、叛乱の鎮圧……”弱い者いじめ”に手を貸せという訳ではあるまいな?」
「それこそ、まさかですよ。せっかく協力を得られたドメル軍団をそんな勿体ない使い方をするほど、私は剛毅な性格をしておりませんので。ですが……」
”協力を得られる”……物は言いようであった。
ギムレーはグラスを置いて、
「我々には本国を離れ遠征を行うには、大義名分が必要なのですよ。特に閣下、貴方達の艦隊を引き連れていくなら余計に」
「……仕込んだのか?」
ドメルとてプロパガンダで必要となった側面があるとはいえ、基本的に実力で大将まで上り詰めた男だ。
全てではないが、親衛隊のやり口くらい察しはつく。
「大したことはしてませんよ? 星外からの強制移民で原住民のストレスを上げ、統治者としてガミラス本国では居場所のない没落木っ端元貴族を開拓団として選出、その中からどう考えても彼らを御せない無能者を団長として推挙する……やったのはその程度でしょうか」
あとは開拓団に紛れ込ませた親衛隊の工作員と、現地の過激な反ガミラス主義者たちを接触させ、いつでも好きな時に反乱を起こせるようにしてあるが、ドメルも察してるようだしそこまで説明する必要はないだろうとギムレーは判断した。
その代わり、
「シナリオはこんな感じで如何でしょう? ”表沙汰できない案件”……ああ、これは様々な憶測を呼ぶように情報に細工しますのでご心配なく。を握られ我々親衛隊に同行をせざるえなかったドメル軍団は、
ドメルは少し考え、
「部下への説明はそれで良いかもしれないが、他への説明はどうなんだ?」
前にも出てきたフレーズ、『親衛隊と関わるとろくなことがない。親衛隊が関わると余計にろくなことがない』というのは半ば真実と思われているのだから、当然今回の解釈は、『事実がどうであろうと、親衛隊が出てきたなら仕方がない』という認識である。
こういうイメージを作るために、苦労して粉飾も含めた実績とイメージ戦略を地道に積み重ねてきたのがギムレーなのである。
「問題ありません。そのように誘導しますので。人は”信じたいものを信じる”のですよ? そこは元貴族も大衆も変わりません」
(まあ、ドメル大将の”抱きこみ”が、こちらにどれほどのメリットがあるか、総統閣下の治世にプラスになるかを説けば、あの”
「そういうものなのか?」
どうも国内のプロパガンダ・バトルやキャンペーン合戦に疎いドメルが首を捻ると、
「そういうものなんですよ」
そう満足げに微笑むギムレーだった。
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「疑って訳ではないが、いや、すまん。本当は疑っていたのだが、ギムレー長官は本当に兵器開発局に強いコネがあるのだな?」
とドメルが感心している場所は、親衛隊の息がかかった機密試験艦建造ドックだった。
そこに鎮座していたのは、船体から分離し、脱出艇としての機能も持たされた改ゼルグート級の円盤状艦橋、別名”独立戦闘指揮艦”だった。
特にこのシステムが優れているのは、この円盤に独立したゲシュタム機関が搭載されており、単体でゲシュタム・ジャンプが可能ということだろう。ついでに機動力は、本質的には脱出艇なのにもかかわらず現行の駆逐艦に匹敵するというのだから驚きだ。
更に、この目の前の円盤には、通常の改ゼルグート級のブリッジには有り得ない装備が付いていた。
そう、前に話題に出ていたゲシュタム・ジャンプの理論的応用である”瞬間物質転送器”だ。
どうやら書類上は、オーバーホール中に『ドメラーズ・ドラッヘンの艦橋に”大規模な問題”が見つかり、事実究明のために艦橋を丸ごと交換し調査する。その間、ドメラーズ・ドラッヘンには予備の艦橋が与えられる』ということになるらしい。
その代替される予備の艦橋に”たまたま実験中でくっついていた”のが、本来ならばガミラスの超級秘密兵器である筈の”瞬間物質転送器”だという。
最も書類に物質転送器の記述はないが。
「以前、彼らやその先輩たちが”やらかした時”に少々ね」
「”やらかし”?」
「閣下は”次元潜航艇”というものの概要はご存じで?」
「職業柄、多少はな」
ギムレーは少し思案し、
「特に開発初期の試作艦が、『亜空間に潜ったまま、三次元空間に
「それも、ある程度は……」
「なら、話が早い」
ギムレーはやれやれと言いたげな表情で、
「事故で沈んだと思われていた内の何隻かは、事故ではなく確実にガトランティスに拿捕され、連れ去られていますよ。ほぼ間違いなく」
「……なんだと?」
***
当時、次元潜航艇の開発は難航し、事故が多発。一時は実現も危ぶまれていたが……それでも兵器開発局は、
『文字通り”別次元”の未知の新兵器を開発しているんだ。失敗はつきものだろう』
と強気の姿勢を崩さなかった。
また、当時の彼らは「超機密兵器の開発」を盾に、その実験区域/スケジュール/内容を親衛隊にも公開しなかった。
そして、”その事故”は起きた。
数年前のその日、救難信号を捉えたのは、艦隊勢力拡張中だったために数多く長距離航海訓練を行っていた親衛隊のパトロール艦隊だった。
そして、現場に急行した彼らが見たのは、
”浮上させられ、今にも拉致されそうになっていた実験潜航艇と、連れ去ろうとしていた
当然、問答無用で遭遇戦が勃発。
編成されたばかりで慣熟訓練中の親衛隊艦隊は精鋭とはとても呼べなかったが、相手が戦闘より捕獲を重視した部隊だったことと、秘密潜入任務のせいか少数編成だったので数で勝ってた事が幸いし、親衛隊は辛勝。
何とか実験艦の救助には成功したが、
「捉えた捕虜の”尋問”の結果、彼らは”初任務”でない事が判明しました」
「なんということだ……」
ルビー戦線でガトランティスと恒常的に戦っているドメルとしては、聞き捨てならない内容だった。
だが、この話にはまだ続きがあったのだ。
「ドメル閣下、私が真に問題視したのは、ガトランティスの暗躍を許したことじゃないんですよ。責任追及を恐れ、ガトランティスに拿捕されていたという事実を隠蔽していたならまだしも、彼らは鹵獲されていた事実を
親衛隊の内部調査の結果、判明したのは驚愕の事実だった。
「はっきり申し上げて、当時の兵器開発局の事故調査はお粗末の一言。なまじ、機密指定で保護されていたために、外部からの調査要請が入らなかったのもよくなかったのでしょう」
本来、徹底的に糾弾し、粛正するのが親衛隊の役割だが、
「確かに兵器開発局の上層部、いや大部分を一掃することも出来ましたがね。それでは兵器開発を行う人員が居なくなってしまう。人的リソースは有限……だからこう考えることにしたんですよ」
ギムレーは苦笑しながら、
「”彼らは開発のプロであって調査のプロではない”とね。これはね、閣下。彼らを組織工学上の理由で甘やかしすぎてしまったガミラス全体の責任でもあるのですよ」
そして、親衛隊は事態を派手に表沙汰にして糾弾、大規模粛清で親衛隊の手柄にするよりも、「恩を売り、親衛隊の影響力を強く残すためにソフトランディングによる事態収拾に務めた」のだった。
「君はなんというか……悪党だな」
「よく言われます」
「だが同時に、疑いようもないほど”愛国者”でもある。うむ。間違いなく」
ギムレーは、ドメルの言葉にちょっと驚いた顔をしながら
「それは、あまり言われたことがありませんねえ」
少しだけ、二人の漢の間に穏やかな空気が流れた気がした。
なんか、色々と悪巧みが始まりましたが、彼らの行動の真意が明らかになるのはもうちょい先になっています。
さて、今回は久しぶりに設定を……前回に続きガミラス艦です。
***
改ゼルグート級一等航宙戦闘艦(特装仕様)”ドメラーズ・ドラッヘン”
デザイン:基本的にオリジナルと同じデザインだが、480mm4連装/330㎜3連装陽電子ビーム砲は、全て有砲身式の”陽電子ビームカノン砲”に換装されている。実は、デウスーラII世の武装テストベッドとなった船という設定がある。
全長:730m
機関
・新型ゲシュタム機関×2(機関を小型化しツインドライブ化)
・ケルビン・インパルス機関×6(補助)
防御装備
・積層式発展型ミゴウェザー・コーティング(別名:”ツインメリット・コーティング”。従来の帯磁性特殊加工の表面に地球連邦からのリバースエンジニアリングである
・エネルギー転換装甲(同じく地球連邦からのリバースエンジニアリング。ヴァイタルパートや砲塔内部の装甲材等に導入されている)
・シフト配置機関
・集中防御と分散防御のハイブリッド構造と、中空装甲の概念導入
・修復特化型ガミロイドを中心とした
・多層式耐電磁/光波分散正面傾斜装甲
攻撃兵装
・480㎜3連装陽電子カノン砲×7(砲身式。通常のビーム砲に比べ収束率/加速率が高く貫通力、射程などが向上している。また4連装→3連装と門数は減らしたが発射速度は従来型と同等かそれ以上。配置はオリジナルと同じで非隠蔽式。実はデウスーラII世の登載砲の試作品)
・330㎜3連装陽電子カノン砲×4(砲身式。通常のビーム砲に比べ収束率/加速率が高く貫通力、射程などが向上している。配置はオリジナルと同じ。ハイゼラード級やメルトリア級、ゲルバデス級の主砲と共用)
・133ミリ二連装陽電子速射砲塔×4(円盤状艦橋上面左右、船体左右に配置/非格納。クリピテラ級航宙駆逐艦に採用されているのと同じ、発射速度を上昇させより対空迎撃能力を向上させたもの)
・中口径八連装速射輪胴砲塔×6(両用砲扱いのビーム速射砲。鹵獲したガトランティス艦からのリバースエンジニアリング。内2基は円盤状艦橋下面左右)
・33㎜連装対空レーザー機銃×16(船体各所。UX-01に搭載されてる物を連装化、CIWS機能を付与した物)
・小口径八連装高射輪胴砲塔×8(対空砲。ガトランティス艦からのリバースエンジニアリング)
・艦首汎用魚雷発射管×6(汎用発射管とは従来型より対応している弾種が多く、魚雷だけでなく空間機雷なども散布できる)
・艦尾汎用魚雷発射管×6(対空砲増強のために減らされている)
・艦底汎用魚雷発射管×10(対空砲増強のために減らされている)
*ドメラーズ・ドラッヘンに限り、物質転送器搭載の為オミットされている。
特殊航法装置
・ゲシュタム・ジャンプ(次元歪曲式ワープ。通常一日2回程度は安全に使用可能。緊急時なら3回は飛べる。一回の跳躍距離は200光年以上)
搭載機(2199現在)
・最大16機(従来機に加えDDG410H-4、DWG262E-4、DWG229Cなどの新世代機に完全対応)
・FS型宙雷艇×4(内火艇、脱出艇としての使用も想定)
・汎用垂直離着陸艇SDG61-L×4(内火艇、脱出艇としての使用も想定)
・小型無人多目的ドローン(月面基地で出てきたアレ)
特殊装備
・分離脱出機能付円盤状艦橋(別名:”独立戦闘指揮艦”。独立したゲシュタム機関を搭載し、単体でゲシュタム・ジャンプが可能)
・試製瞬間物質転送器(転送機との表記ゆれもある。艦橋に搭載。ドメラーズ・ドラッヘンの今の所固有装備)
・発展型”ガミラス臣民の壁”制御/エネルギー供給装置
備考
従来のゼルグート級を叩き台に、地球連邦との戦訓や鹵獲した無人機の技術、ガトランティスの鹵獲艦からのリバースエンジニアリングなどを踏まえ徹底的に改設計した大型戦艦。
ただ、元貴族達の目を欺くため(主に親衛隊の入知恵)、「新型艦砲のテストベッドとしてゼルグート級をベースに企画、建造された実験艦」という建前で建造されている為に、実は原作より建造数が多いゼルグート級と比べて、その数は非常に少ない。
まその為、現在は表向き「ガトランティス戦に試験評価の為に投入」されていることになっている。ゼーリックをはじめ元貴族は『ドメルの奴、また実験器具を与えられておるぞ』と笑っているが、何気に「苦労が多いガミラスの内情」を体現したような船だ。
ただ、建前とした「装備実験艦」としての役割はきちんと果たしていて、ハイゼラード級航宙戦艦やメルトリア級航宙巡洋戦艦、ゲルバデス級航宙戦闘
ドメラーズ・ドラッヘンに至っては、『世界で最初に物質転送器を実戦投入した船』として歴史に名を残すことになる。
防御力、攻撃力共に上昇しているが、実は大きく上昇しているのが機動力だ。
ゲシュタム機関のコンパクト化に成功し、それを一種の双発機関として動かすことにより、「重装甲重火力の為に速度を犠牲にした」「通常空間では鈍足」のイメージを払拭し、完全に他の新世代艦に引けを取らない速力をはじめとした機動力を手に入れている。
そのような贅沢な使い方は現実にできるかは別にして、驚くべきことに改ゼルグート級はその気になれば水雷戦隊旗艦として先陣を切ることもできるのだ。
また、旧型ガミラス艦の懸案事項であった「脆弱な防空火器」や「ダメージコントロールの弱さ」の払拭をいっそ涙ぐましいまでに追求した結果、装甲厚に頼らない「間接的防御力」が跳ね上がり、沈みにくさに更に磨きがかかったようだ。
地球との戦訓が十分に生かされた成果ともいえるし、おかげでガトランティスとの戦いでは多少は楽できる。だがそれは、それだけ地球連邦の、特にヴァルキリーに痛い目にあわされたという証左でもあるのだから、素直に喜べないところかもしれない。
その頑強さと火力、それに機動力でガトランティスに何度となく煮え湯を飲ませた改ゼルグート級だが、正直に言えば典型的な「過度期の軍艦」であり、本当の意味でのパラダイムシフトが起こる前の”時代の仇花”的な存在かもしれない。
だが、同時に地球との国交正常化で生まれることができたガミラスの近い将来を担う船に使われる技術の多くが、この改ゼルグート級で試されたことを考えれば、その存在価値は非常に大きかったと言えるだろう。
余談
実は同じ長砲身式3連装砲塔を主砲としているせいか、ヤマト出航の際に見送った山南修座乗の”ユウバリ”と非常にシルエットが似ている船でもある。