たまには地球がチート臭くても良いのではないかと   作:ヤマトとトマトはなんか似てね?

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今回は少しだけイスカンダル・アンチが入ります。
翅川が、軽い「イスカンダルへのディスり」を見たくない方は、軽く読み流してください。

でも、それが「どんとこい宇宙戦争!」という剛毅な方は、ちょっとクスッと笑うかもしれませんよ?






第80話:”正しいけど「正し過ぎない」 Black Cat”

 

 

 

 翅川巽は思考する。

 深く深く……

 

(何でもは知らない。私が答えを出せるのは、知ってることだけ……)

 

「だから、知らなければならない。答えを出すために。それが私が求められた、私が望んだ役割だから」

 

 翅川は自分でも変人だと思っている。

 同時に、「今の地球連邦の、良くも悪くも混沌とした(カオティック)状態」を体現してるとも。

 

 そもそも、彼女はネコ耳や尻尾が生え、風貌は”黒猫型美少女”だが、純粋なシャパリュ人(キャーティアン)ではない。

 

 例えば、彼女の父方の祖父は地球系(アーシアン)の祖母と結婚した、母星の”カンバーランド”の外では滅多に見ることはないとされる”()()()エクリプス人(ホーシアン)”だ。

 

 よく言われることではあるが……ホーシアンの男女差を表すときに、こんな言葉がある。

 

『馬の持つ野性味や競争心、闘争本能を体現してるのが雌で、馬の優しさや繊細さ、臆病さを因子として持つのが雄だ』

 

 と。

 実際、男性のホーシアン個体数は女性のそれに比べて極端に少ない。

 ホーシアンは実は連邦内において、地球系に続く第二位の人口数、非地球系では最大の人口を誇る。

 例えば、今の連邦の総人口は約260億人で、そのうち195億人が地球系とされている。

 だが、残り65億のうち、実に30億人までがホーシアン系なのだ。

 

 更に驚くべき数字がある。ガミラスとの戦争が始まった2191年から2199年までの間に、戦争への無自覚の危機感から軽いベビーラッシュが起きて、人口が約250億→260億人となったが、内訳は地球系が190億人→195億人で、60億人しかいない非地球系が同じく5億人増やしており、その中の3億人がホーシアンだ。

 

 だが、30億人いるホーシアンの中で男性は5億人に満たない……つまり、ホーシアンの男性比率は全体の2割にも満たないのだ。

 無論、これは地球連邦の平均男女比率よりずっと低く、比率だけで言うなら半分以下だ。

 

 だが、ホーシアンに言わせれば、これでもまだ「随分と回復した」方らしい。

 これには地球連邦との接触するより百数十年前、ホーシアンに起きた”ある歴史的悲劇”に端を発するが……それは本題とかけ離れ過ぎるために今は割愛する。

 

 そして生まれた父はケモ耳と尻尾を持たない地球系だったが、同じく地球系とキャーティアンのハーフである母と恋に落ち、生まれたのが自分という訳だ。

 

 そして、耳と尻尾は母から受け継ぎ、分類上はキャーティアンなのだが……体つきは、どちらかと言えばホーシアン寄りで、身体能力もそれに準ずる。(つまり跳躍力や身の軽さより、パワーやスタミナに優れる)

 ちなみに曾祖母はとてもグラマーな人だったらしい。

 

 どうも調べてみると他にもうっすらと異星系の血筋が入っていそうなのだが、

 

「いっそ見事なまでのキメラっぷりよねぇ」

 

 とはいえ、それは別に嫌ではない。さっきも言ったが、それが”良くも悪くも連邦”だった。

 だからだろう。自分は義務教育を終えた直後、『お父さん、お母さん、私の学費に積み立てていたお金、別のことに使いたいの』と上の学校には行かずに旅に出た。

 それは、連邦内の有人惑星すべてを回るという中々に壮大な物だった。

 母は「にゃはは♪ 自由気ままを愛する猫の気質が、これまた派手に出たわね~♪」と笑い、父は『遊びの旅行ではなく勉学の一環として広い世界を、いや自分がどんな世界に住んでるかをその目で見てくるんだ。ああ、それと先々で何を見て何を感じたのかレポートにして送ってきなさい』と快く送り出してくれた。

 

 ただ、律儀に送っていたこのレポートが、その後の翅川の人生を大きく決定づけることになる。

 数年ぶりに戻ってきた地球の軌道エレベーターにある宇宙港で彼女を出迎えたのは、あんまり老いた印象のない父母と、見覚えのないMIBのような男女の黒服だった。

 

 差し出された名刺(まだ風習として残っていた)に書かれていたのは……

 

「えっ? 外務省のリクルート・エージェント?」

 

 

 

***

 

 

 

 どういうコネなのか未だに謎なのだが、父に送っていたレポートは、父を経由して「友人の外務省某高官」の手に届いていたらしく、しかもそれは「部外秘」のスタンプが押され、外務省の公文書館に保管されているらしい。

 

 旅を終え、「自分がどんな世界に住んでいるのか?」をそれなりに理解し、納得した翅川は割とすぐに自分の知識と経験を生かせるならと入省し、分析官や調査官として様々な仕事をこなしてきた。

 

 基本的に地球連邦は、多星民族/多星文化の寄り合い所帯だ。だから、単純な統一国家にせずに、各地……特に地球外起源種の母星やそれを含む星系に強い自治権を持たせた連邦としたのだ。

 

”無理に一つの文化や国家にしようとせず、緩く連邦というフォーマットでまとまりゃいい。俺たち外務省の仕事ってのはな、新規のお付き合いできる連邦外国家でも出てこない限り、自治区同士のもめごと仲裁、潤滑油をやりゃいいのさ”

 

 というのが、翅川が今でもよく覚えている先輩の言葉だった。

 

(そして、今はこうして遥か16万8千光年彼方を目指す船の中、と)

 

「思えば随分と遠くへ来たもんよねえ」

 

 自分なりにはそう悪くない人生を歩んでいると思う。

 成功してるのかはわからないが、楽しめてるか? 満足してるか? と問われれば迷いなく「それなりに」と答えられる自信はある。

 もし、「十全に満足してる」と答えてしまうと、色々と終わってしまいそうで避けたくはある。

 

「さて、お仕事の続き続きと」

 

 

 

 イスカンダルから齎された情報は、外務省的にそれまでの「ガミラスの謎と疑問点」の大部分に対する回答となった。

 無論、海千山千の自治区間トラブルシューター集団の外務省は、それを素直に鵜吞みにするほど無邪気な集団ではない。

 

 これまでの獲得情報や捕虜の証言と照らし合わせて矛盾点を洗い出し、また情報を突合せ整合性を確認、可能な限りの検証と考察を行った。

 

 結果として、イスカンダルからの情報は「状況と照らし合わせて矛盾はなく、おおむね事実と整合性が取れてる模様。ただし、イスカンダルからの視点や価値観、見地が多分に含まれてるために地球連邦職員による実地検分が必要」と結論された。

 

「『特にプロファイリングの結果、明確な差別意識はないもののイスカンダル人にとりガミラス人は、無自覚/無意識の”()()()()”という認識が潜在的に存在してる』か……故に、留意が必要。なまじご長寿(メトセラ)なだけに、お隣さんに定着して1000年たった今でも、戦争難民って意識は抜けてないのかもね」

 

(そもそも、イスカンダル人はガミラス人を永住させる気はなかったんじゃないかな? だから、本来は人類が住むにはあまり向いてるとは言えない隣の星を、”()()()()()()()”として貸し出した)

 

「だけど、イスカンダルにとって予想外のことが起きた。それはガミラス人が予想以上に”壊れかけの隣星に過剰適応”してしまったということ……」

 

 寿命の長いイスカンダル人にとり、本来、遺伝子レベルの変異が起き環境に適応させるのはもっと長いスパンの出来事なのかもしれない。

 そして、イスカンダル人は持ち前の種族的なホメオスタシスの強さや自然治癒力の高さから、医療系技術を重んじてこなかった。

 

「そして問題なのは、イスカンダルは”人が居住した場合の隣星の居住不可能化予想”を甘く見積もってたんじゃないかな?」

 

 だから、ガミラスの行動を本質には止めようとせず、その真意を知りながらも『間接的に()()()()()()()()()()()()()()』方向へ舵を切った。

 

「イスカンダルを甘く見るべきじゃないわね。ユリーシャ・イスカンダルはともかく、女王であるスターシャ・イスカンダルは、地球に対して悪意はないけど、その分、善意など()()()()()()()()()()()と思って対処した方が無難だし、間違えないかな?」

 

 そもそも、ガミラス帝国に『イスカンダル主義の拡大』なんてものを戦争のプロパガンダに使うことを黙認してる時点で、翅川に言わせれば確信犯だ。

 

「まあ、かつての”やらかし”に対する償いの意識かもしれないけど、いくら建前でも『あまねく星々に住む知的生命体の救済』とか言い出すなんて、ちょっと正気とも思えないわね……」

 

 大体、イスカンダルを名乗りひきこもる前の彼女らは、次元波動機関を用いた大規模破壊兵器をバズーカ感覚で気軽にぶっぱなし、ブイブイ言わせていたけど、結局、大マゼラン一つ天下統一できなかったのだ。

 

(そんな勢力が、”あまねく救済”? 随分、(ナメ)られたものよね……)

 

「それって他の惑星の住人が全て、『()()()()()()()()()()()()()()』だって言ってるようなもんじゃない。自分達より下等だって」

 

 第一、イスカンダルがご迷惑をおかけしたのは大マゼラン。天の川銀河は関係ないはずだ。

 

「救世主ごっこがしたいなら、大マゼランだけでしてよね。銀河系までしゃしゃり出てくるなってーの」

 

 少し口調が荒くなるのを自覚する。

 だが、構うことはない。これも翅川の本音だ。

 

 翅川巽の心に静かに炎が灯る。

 その闘志が燃料となる炎は、漆黒の色をしていた……

 

 翅川は、聡い娘である。

 自分が何故、この重責の任に選ばれていたかよく心得ていた。

 旅を経て様々な知見もあるから?

 それもある。

 特に分析力と解析力がハイスペックだから?

 確かにそれもある。

 他文明に対する高い柔軟性と受容性?

 まあ、当然だ。

 

 だが、それは要素であっても根本的な理由ではない。

 翅川巽というこの上なく有能な女性が選ばれた理由、それは……

 

「あんまり地球連邦(われわれ)を甘く見るニャよ? イスカンダル」

 

 彼女は、”疑う”ことを忘れてなどいないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この世界線の翅川巽は、羽川翼を原型としててもやっぱり別人です。

確かに理性は強そうですが、怒るときは怒ります。
面白くない物は、”ちゃんと”面白くないと感じます。

聖人でも聖母でもなく、もっと生々しく”生きて”ます。

故に「正し過ぎない」んです。

正し過ぎないから、イスカンダルの標榜する「正しさ」が、それが例え建前だとわかっていても気に入らないんだと思います。

だから、「信じる前に”疑う”」んです。

でも、こういう娘って必要だと思うんですよ。
キーマンにも、「イスカンダルの呪縛」から抜け出せないガミラスにも。


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